大林組のESG・サステナビリティの取り組みは?株価推移や配当も【2022年10月】

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2015年9月27日に国連サミットでSDGs(持続可能な開発目標)が採択されて以降、世界中でESG・サステナビリティへの関心が高まっています。大手建設会社の大林組もESG・サステナビリティの取り組みを行う企業の一つであり、社会問題や環境課題の解決を念頭とした様々な事業活動を行っています。

そこでこの記事では、大林組のESG・サステナビリティについて詳しく説明していきます。大林組のESG・サステナビリティの活動や実績、株主優待内容などに興味のある方は参考にしてみてください。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2022年10月9日時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。

目次

  1. 大林組の特徴
  2. 大林組の株価動向
  3. 大林組のESG・サステナビリティの取り組み
    3-1.脱炭素
    3-2.価値ある空間・サービスの提供
    3-3.サステナブル・サプライチェーンの共創
    3-4.ESG経営
  4. 大林組の配当・株主優待
  5. まとめ

1 大林組の特徴

大林組(1802)は、東証プライム市場に上場する建設会社であり、スーパーゼネコンの1つとして知られています。大林組が手がけた建築物は、オフィスやマンション、病院、学校など多岐にわたり、中でも東京スカイツリー、東京国際空港、六本木ヒルズなど有名建築物の建設も多数行っています。

また、国内建設事業を軸に海外建設事業、開発事業において、グローバルに事業を展開しているほか、グリーンエネルギー事業にも着手しています。

2021年、各事業の売上高・営業利益の推移は以下の通りです。

2021年度 国内建設事業(建築) 国内建設事業(土木) 海外建設事業 開発事業
売上高 10,599億円 3,468億円 3,884億円 611億円
営業利益 -89億円 238億円 28億円 203億円

大林組の主力である国内建設事業では、上記のようなオフィス、マンション、商業施設、病院、学校をはじめ、トンネル、橋梁、ダム、河川、高速道路などのインフラ施設の建設にも取り組んでいます。

海外建設事業では、東南アジア、北米、オセアニアにおいて建築および土木事業を展開しており、例えば、ラオスでは水力発電の建設、バングラデシュでは幹線道路の改修および建設、インドネシアでは都市高速道路の建設、シンガポールでは空港施設の建設など、数多くのインフラ・商業施設の建設を受注しています。

開発事業は、都心部を中心に賃貸用不動産の開発・保有を行い、継続的なインカムゲインと私募ファンドの活用によるキャピタルゲインの確保を目的にしています。また、環境負担軽減を重視した環境配慮型ビルの開発にも力を入れているのも特徴です。

2 大林組の株価動向

大林組は、鹿島建設や大成建設などと同じく建設株セクターに該当します。建設株は、景気動向に左右されやすい傾向があり、景気が良い時は建設需要が高まる一方、景気が悪い時には建設需要が弱まるなど、景気サイクルの影響を受けやすいのが特徴です。

過去10年の株価動向を見ると、株価が約2.7倍上昇するなど時期によって多少波はあるものの、長期では堅調に推移しています(※2022年10月6日時点)。

直近では、2020年〜2022年10月9日時点まで、株価は1,100円~950円の間を推移しており、方向感に欠ける展開が続いています。2020年には新型コロナウイルスの感染拡大で中小規模の案件が減ったことや、海外における工事の遅れなどで、同年の株価は25%以上の下落となっています。

2021年は、鉄骨などの資材価格高騰により予期せぬコストが増えたほか、建設段階での見直しもあり、大幅減益となりました。ただし、主要因である資材価格高騰は、大林組のみならず建設業全体に影響していることから、大きくシェアを失ったわけではありません。

2022年第1四半期では、例年売上が伸びず、低くスタートする傾向があることや、資材価格高騰の影響により売上高は減少となっています。ただし、同四半期決算で、第2四半期以降の業績回復が示されたことで、今後の株価上昇が期待できます。2022年10月6日時点の株価は950円台で推移しています。

3 大林組のESG・サステナビリティの取り組み

大林組は、「地球に優しいリーディングカンパニー」を企業理念とし、サステナビリティの実現やESG経営の推進を行うことで、SDGs達成にも貢献しています。実績として「サステナブル建築賞」「リデュース・リユース・リサイクル推進功労者等表彰」「地球温暖化防止活動環境大臣表彰」「低炭素杯2016 ベスト長期目標賞」など数多くの受賞経歴があります。

2016年に大林組のサステナビリティに関する長期ビジョン「Obayashi Sustainability Vision 2050(OSV2050)」が策定され、「地球・社会・人」のサステナビリティが実現された状態を2050年のビジョンとし、具体的なアクションプランとして「脱炭素」「価値ある空間・サービスの提供」「サステナブル・サプライチェーンの共創」を掲げています。

3-1 脱炭素

「脱炭素」に向けては、以下7つの基本方針を策定しています。

  • 徹底した省エネルギーの推進
  • 軽油代替燃料などの導入
  • ハイブリッド建機・電気建機の導入促進
  • 再生可能エネルギーへの転換
  • ZEBの推進・拡大
  • 低炭素資材の活用
  • 脱炭素に貢献する技術開発の推進

1つ目は「徹底した省エネルギーの推進」です。これまで建設現場等で、省燃費運転やアイドリングストップをはじめ、様々な省エネ活動を推進してきています。

2つ目は「軽油代替燃料などの導入」です。事業活動を通じて排出されるCO2の多くは、建設現場で使われる軽油などの燃焼から発生しています。そこで大林組は、天然ガス由来の軽油代替燃料やバイオディーゼル燃料などを活用することで、CO2排出の低減を図っています。

3つ目は「ハイブリッド建機・電気建機の導入促進」です。排出されるCO2の多くは、建設現場の建機に使用される軽油などの燃焼から発生したものなので、ハイブリッド建機や電気建機の導入促進を行い、燃料使用量の低減を目指しています。

4つ目は「再生可能エネルギーへの転換」です。建設現場やオフィス、社員寮等で使用する電力を再生可能エネルギーに転換し、2030年までに建設現場、開発不動産における全賃貸物件、オフィスや社員寮等で、再生可能エネルギー100%を目指しています。

5つ目は「ZEBの推進・拡大」です。ZEBとは「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル」の略称で、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物を指します。大林組では、太陽熱および地中熱、地下水利用など、最新の省エネ技術を用いることでCO2削減に取り組んでいます。

6つ目は「低炭素資材の活用」です。CO2排出量を最大80%低減した低炭素型コンクリートの活用や大型建築物の木造・木質化を推進することにより、CO2の排出削減を行っています。

7つ目は「脱炭素に貢献する技術開発の推進」です。石油や石炭などCO2を排出するエネルギーとは違い、水素は燃焼しても「H2O(水)」しか発生させないことから、大林組は水素を次世代エネルギーの一つとして注目し、水素利用を含めたカーボンニュートラルに貢献する技術開発を推進しています。なお、水素は製造時にCO2が排出される点やインフラ整備などをする必要がある点など、水素エネルギーには課題も多い点には注意が必要です。

3-2 価値ある空間・サービスの提供

「価値ある空間・サービスの提供」に向けては、企画、設計、施工、アフターサービスの各段階において、一貫した品質管理体制を整えています。

価値ある空間・サービスの提供のプロセスとして、大林組は、技術者の施工管理能力の向上を目的に、専門知識を学ぶ講義や体験型の技術研修など、各種研修プログラムを行っています。

各種研修プログラムでは、新入社員を対象に、測量、鉄筋・型枠の組み立て、材料検査などの体験型研修を実施しています。入社4年目までの社員には、専門知識の習得や施工計画に関する技術研修を毎年行っています。

中堅社員向けには、レベルの高い品質・現場施工管理のための研修など、入社年数に応じた高度な教育環境が整っています。

3-3 サステナブル・サプライチェーンの共創

「サステナブル・サプライチェーンの共創」に向けては、大林組の基本理念である人権の尊重や環境保全・環境負担低減の事業活動、持続可能な社会の発展に努めることなどを、調達先および調達先のサプライチェーンに対しても理解、浸透を図っています。

具体的な活動として、CO2排出量や水使用量、資源リサイクルなど、環境負担への影響が大きい項目について建設現場ごとに検証するほか、環境負担の少ない事務用品および建設資機材等の優先的な調達を行うなど、環境保全においての配慮を徹底しているのも特徴です。

3-4 ESG経営

ESGとは環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)の頭文字の略称です。ESGは環境問題や社会課題の解決を促進するのみならず、ESGの3つの観点が、企業経営において長期的に成長するために必要不可欠であるという考え方をもとに、世界中で広がっています。

大林組は、ESG経営において、以下6つの重要課題を特定しています。

  • 環境に配慮した社会の形成
  • 品質の確保と技術力の強化
  • 労働安全性の確保
  • 人材の確保と育成
  • コンプライアンスの徹底
  • 責任あるサプライチェーンマネジメントの推進

1つ目は「環境に配慮した社会の形成」です。具体的なアクションプランとして、環境配慮型事業の推進、グリーンエネルギー事業の推進、脱炭素の推進、循環型社会の実現への貢献などに取り組んでいます。

2つ目は「品質の確保と技術力の強化」です。具体的なアクションプランとして、確かな品質の追求、技術力による生産性のさらなる向上、良好な施工管理体制の維持などに取り組んでいます。

3つ目は「労働安全性の確保」です。具体的なアクションプランとして、労働安全衛生マネジメントシステムの徹底が挙げられ、2022年~2024年度の死亡災害件数0件を目指しています。

4つ目は「人材の確保と育成」です。具体的なアクションプランとして、働き方改革の推進やダイバーシティの推進などに取り組んでいます。

5つ目は「コンプライアンスの徹底」です。具体的なアクションプランとして、企業倫理プログラムの推進、情報セキュリティ管理の徹底などに取り組んでいます。

6つ目は「責任あるサプライチェーンマネジメントの推進」です。具体的なアクションプランとして、CSR調達の推進、技能労働者の育成支援などに取り組んでいます。

このほか、大林組は環境問題や社会課題に取り組むための資金調達として、「ESGファイナンス」を行っています。例えば、「大林組グリーンボンド」は、再生可能エネルギー事業、省エネビルディングの建設など、環境改善効果がある事業やプロジェクトに要する資金を調達するため、発行される債券となっています。

また、特定の社会的課題への解決や環境面での持続可能性に貢献する事業に要する資金を調達するため、「大林組サステナビリティボンド」という債券も発行されているほか、あらかじめ定められたサステナビリティおよびESG目標を達成するか否かによって条件が変化する「大林組サステナビリティ・リンク・ボンド」もあります。

このように、大林組はESGやサステナビリティ活動を積極的に行っており、環境問題や社会課題に対して高い意識を持っています。また、大林組のESG・サステナビリティの取り組みが評価され、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がESG投資において採用する4つのESG指数にも選定されています。

4 大林組の配当・株主優待

大林組では株主優待を実施していませんが、長期安定配当を第一に、業績に応じた適切な利益還元を基本方針としています。大林組の配当金推移は以下の通りです。

項目 2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度予定
中間配当金 14円 16円 16円 16円 21円
期末配当金 18円 16円 16円 16円 21円
合計 32円 32円 32円 32円 42円

2017年は20~30%を目安に配当を実施してきました。2022年は、利益の蓄積による自己資本の充実を中長期的に還元することを目途に、株主資本配当率(株主資本に対する配当金率)3%程度を配当額の目安とする方針です。そのため、2022年度中間・期末配当金は1株当たり21円、年間42円の配当を予定しています。

国内株式の平均配当利回りは約2%なので、大林組の配当利回りは平均以上の水準となっているほか、しっかりした財務状況等を考慮して配当狙いで長期保有する投資家も多くいます。

まとめ

大林組はESG・サステナビリティ活動をサプライチェーン全体で実施している上、CO2排出量など環境負担が大きい項目に関しては、事業所ごとにモニタリングするなど、積極的にサステナビリティ経営に取り組んでいます。

また、建設業界の中でもトップクラスの売上高が強みのほか、財務基盤もしっかりしているので、ESG投資先として今後も高い期待が寄せられています。

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HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チーム

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