貸付金利を主な収益源とするソーシャルレンディング投資において、「シニアローン」や「メザニンローン」という二つのローン違いがあります。実際に投資・融資かどうかを判断するためには、これらの言葉の意味を正しく理解しておくことが重要となります。
今回はシニアローンとメザニンローンの違いやソーシャルレンディングにおけるメリット・リスクについて解説します。
目次
- シニアローンとメザニンローンとは
1-1.シニアローンとは
1-2.メザニンローンとは - シニアローンとメザニンローンのメリット
2-1.シニアローンのメリット
2-2.メザニンローンのメリット - ソーシャルレンディングにおけるシニアローンとメザニンローンのリスク
3-1.シニアローンのリスク
3-2.メザニンローンのリスク - メザニンローンを含む案件に投資する場合の注意点
4-1.案件ごとに設定されている担保を確認する
4-2.LTVは目安であることを理解する
4-3.募集金額が大きいほど資金回収に時間が掛かることを理解する - まとめ
1.シニアローンとメザニンローンとは
企業が事業資金を調達する方法には、主に負債による調達と自己資本による調達の2つの方法があります。
自己資本による資金調達は、事業主個人の自己資金を利用したり、発行した株式の譲渡などにより、会社の資本として資金を集める方法です。
一方、負債による調達では、金融機関などから融資を受けて事業資金を調達することになります。そのため、この調達方法では融資の返済義務が発生し、万が一、返済が滞った場合は担保となる資産を差し押さえられることになります。
そして、負債による調達方法において存在するのが「シニアローン」と「メザニンローン」となります。
1-1.シニアローンとは
シニアローンとは、金融機関からの融資で資金を調達するように、資金調達が必要な場合に中心的な役割を果たす資金調達方法のことをいいます。従来から実施されている通常のローンのことであり、多くの場合、銀行からの借入のことを指します。
1-2.メザニンローンとは
例えば8,000万円の事業資金が必要で、自己資金で1,000万円、銀行から5,000万円しか融資を受けられなかった場合、何らかの方法で残りの2,000万円の資金を調達しなければならなくなります。
ただし、銀行などの金融機関からの融資が期待できない以上、銀行以外のカードローン会社やソーシャルレンディング会社などからの資金調達を目指すことになります。
このように、シニアローンで必要金額に達しなかった場合に受ける少額ローンのことをメザニンローンといいます。メザニンローンは、通常借入であるシニアローンより劣後する(返済順位が後になる)借入れで、その分金利が高くなる特徴があります。
2.シニアローンとメザニンローンのメリット
シニアローンとメザニンローンは、それぞれメリットが異なりますので、しっかり理解しておきましょう。
2-1.シニアローンのメリット
シニアローンのメリットは、貸し手側のリスクが低い出資方法であるということです。
シニアローンでは融資審査を厳しく行う反面、低金利での融資となります。借り手側からみた場合に審査は厳しくなる半面、低金利にて融資を受けられるため、返済に掛かる負担を軽減することができます。
万が一の場合でも優先的に弁済される仕組みとなっていることから貸付のリスクが低く、融資先もより良い条件で融資を受けられることになります。シニアローンより優先して弁済が行われることから、貸し倒れのリスクが低く、貸し手側のリスクも低い出資方法となります。
2-2.メザニンローンのメリット
メザニンローンのメリットは、シニアローンほど審査が厳しくないために融資を受けやすく、資金調達がしやすいということです。
資金調達の場面ではシニアローンが優先的に返済を受けるため、メザニンローンの貸し手は融資した資金を回収できないリスクを抱えることになります。貸し手はそのリスクをカバーするために金利を高く設定しており、審査の厳しさが緩和され、出資した貸し手(投資家)の利回りも高くなります。
さらに、メザニンローンは小口融資であることが多いため、運用期間が短い案件が多くなります。短期間の投資を考えている場合も、メザニンローンを組み込んだ案件のほうが適しているといえます。高金利のソーシャルレンディング案件に投資したい場合は、メザニンローンを組み込んだ案件を探すといいでしょう。
3.ソーシャルレンディングにおけるシニアローンとメザニンローンのリスク
ソーシャルレンディングにおける融資の内容がシニアローンかメザニンローンかは非常に重要です。なぜなら、案件に設定された担保を処分した際の返済の優先度に大きく影響し、投資した金額の回収の可否が左右されるためです。
ここでは、ソーシャルレンディングの案件において、融資がシニアローンかメザニンローンかによって発生するリスクについて紹介します。
3-1.シニアローンのリスク
ソーシャルレンディングの案件がシニアローンで組まれている場合のリスクは、投資した全額が返還されるとは限らないということです。
ソーシャルレンディング案件にはLTV(Loan To Value)という数値が表示されています。これは、案件に設定されている担保の評価額に対して、貸付金額が占める割合を示すもので、LTVの数値が低いほど担保としてのリスクも下がることになります。
ただし、シニアローンの場合は貸し倒れが発生したときに優先的に弁済を受けることになりますが、担保が評価額通りの金額で売却できるとは限らず、場合によっては投資金額を完全に補償できないリスクがあります。
シニアローンで組まれたソーシャルレンディングの案件であっても、投資元本を毀損する可能性があるということを理解しておきましょう。
3-2.メザニンローンのリスク
ソーシャルレンディングの案件がメザニンローンのみ、またはシニアローンとメザニンローンが融合して組まれている場合、貸し倒れが発生した場合に回収できる金額が少なくなりやすいというのリスクがあります。
下記のような案件で貸し倒れが発生し、評価額2億5,000万円の担保が1億8,000万円で売却できた事例を見てみましょう。
- 募集金額:2億円
- 担保評価額:2億5,000万円
- LTV:80%
- シニアローンとメザニンローンの割合:50%:50%
この場合、シニアローンとメザニンローンの割合がそれぞれ50%であるため、売却金額のうち1億円が優先的にシニアローンの投資家の返済に充てられます。
そして、残りの8,000万円がメザニンローンの返済に充てられるため、元本の80%しか資金が回収されないことになります。担保の売却金額が低くなると、回収できる金額はさらに少なくなります。
4.メザニンローンを含む案件に投資する場合の注意点
メザニンローンを含むソーシャルレンディング案件は、投資した資金を回収できる可能性が低いため、投資リスクは高くなります。一方で、投資家に対する利回りが高い、短期的な投資に向いているなどのメリットもあります。
これらを踏まえて、メザニンローンを含む案件に投資する場合は、以下のポイントに注意してみましょう。
- 案件ごとに設定されている担保を確認する
- LTVは目安であることを理解する
- 募集金額が大きいほど資金回収に時間が掛かることを理解する
4-1.案件ごとに設定されている担保を確認する
メザニンローンの案件に投資をする場合は、案件に設定されている担保について、できる限り情報を集めて確認することが重要です。
例えば、収益不動産へ融資するソーシャルレンディングにおいて、案件に設定していた不動産担保の評価額が実際の売却金額と大きく乖離しており、投資家から集めた資金の3分の1程度しか回収できなかったケースがあります。
このような事態が発生する可能性がゼロではないため、設定されている担保の評価を誰が行い、担保物件の住所や詳細が明らかになっている案件へ投資することは、一つのリスクヘッジとなります。
担保物件の評価額や実際の価値を調べるには、路線価や公示地価などを調べて試算してみましょう。担保の評価額は絶対とは言い切れないものの、評価額と売却金額が大きく乖離するケースを避けられる可能性が高くなります。
ただし、匿名組合契約を行うソーシャルレンディングにおいて、融資先の詳細が明らかになっていない事例は少なくありません。担保の評価をソーシャルレンディング会社が独自に行なっている場合には、特に注意が必要です。
どうしても担保の詳細について確認できない場合は、リスクとリターンのバランスを再度考慮し、他の案件とも比較しながら投資について慎重に検討してみると良いでしょう。
4-2.LTVは目安であることを理解する
不動産の評価額は市況などに応じて常の変動しているため、LTVはあくまでも目安の数値であることも理解しておきましょう。タイミングによっては、10%前後の変動が起こることもあります。
メザニンローンの割合や返済順位などと合わせて、自分が許容できるLTVの数値の範囲内であるかを十分に確認しましょう。
4-3.募集金額が大きいほど資金回収に時間が掛かることを理解する
募集金額が大きい案件の場合、設定されている担保の評価額も高くなります。貸し倒れが発生した場合でも担保物件の買い手が見つかりにくく、投資資金の回収に時間が掛かることがあります。
案件のリスクを重視する場合は担保の流動性にも注目し、募集金額が大きいほど資金を回収することが難しくなることに注意しましょう。
まとめ
今回はシニアローンとメザニンローンの違いや、ソーシャルレンディングにおけるそれぞれのリスクについて紹介しました。
シニアローンとメザニンローンでは、返済の優先度が大きく異なります。また、金利や運用期間の違いによってメリット・デメリットが発生します。それぞれが一長一短であることに加え、投資金額の回収にも影響するため、その内容を正しく理解しておくことが大切です。
ソーシャルレンディングに投資をする場合はこのような出資方法の違いを理解し、投資に掛かるリスクについて正しく判断するようにしましょう。
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山本 将弘
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