累計370億円以上もの募集金額を誇るクラウドバンク。そのクラウドバンクが、新しい種類のソーシャルレンディング投資案件として、米ドル建てのアメリカ不動産投資案件の提供を始めました。
日本国内に投資先を限定するリスクを軽減するために、日本とアメリカに投資対象を分散。さらに所有通貨も日本円と米ドルと、二つの通貨に分散できるメリットがあります。
しかし、投資する際には、よく検討せずに分散投資をすることは禁物です。そこで、クラウドバンクの米ドル建て案件に投資する時には、どのようなリスクがあるのかお伝えします。
目次
- 為替リスクに注意
1-1.市況の暴落が起こると、円高に触れやすい
1-2.両替時のスプレッドが存在する - アメリカの不動産市場に対する知識やリスクの理解
2-1.日本国内でどの程度、アメリカの不動産市場を学べるか
2-2.日本とは不動産に関する商習慣が違う - アメリカという国のリスク
3-1.災害によるリスクが高い
3-2.アメリカは世界の中心であり、問題に巻き込まれやすい - 利回りや運用期間などの条件の問題
- まとめ
1.為替リスクに注意
まず、海外案件に投資をするときに考えるべきは、為替リスクです。クラウドバンクの今回の案件に関しては、為替ヘッジが付いていません。また、円建て案件でもありません。
そのため、運用期間が終わった後も、米ドルのまま保有しておくことが可能です。このメリットを生かすためには何を理解しておけば良いでしょうか。
1-1.市況の暴落が起こると、円高に触れやすい
世界規模の経済危機が起きた場合、ドル円の関係は『円高・ドル安』に陥りがちです。例えば2007年のサブプライムローン時、そして2008年のリーマンショック時には、1ドル115~125円前後であったドル相場は暴落し、1ドル75円まで円高が進行しました。
日本は政策金利が非常に低く、経済危機が発生すると、安定性の高い通貨として買われる傾向にあります。そのため経済危機が起きた場合、円高に進行しやすいのです。
円高になると、ドルを日本円に両替した時には損失が発生します。1万ドルを保有していても、1ドル100円なら100万円ですが、1ドル80円時には80万円にしかなりません。
2018年10月時点で、ドル円相場は110円前後を推移しています。これまでのドル円相場を見るに、円安時と円高時の振れ幅を比較すると、円高の振れ幅の方が余地は大きいです。
そのため、両替のタイミングには気を配らなければいけません。逆に円安に進行すれば差益が発生しますし、ドルのまま保有してアメリカで使うのであれば問題はありません。ドルのまま出金することもできますが、一定の時間が掛かります。
1-2.両替時のスプレッドが存在する
ソーシャルレンディングに投資する時に、クラウドバンクでは入金された日本円をドル円に両替してくれます。そのため、ほぼ日本円感覚での投資が可能です。また、両替手数料も無料ですので、投資金額が増えれば増えるほど手数料がかかることもありません。
ただし、買いと売りの間のスプレッドが0.6円分存在します。このスプレッドとは円でドルを買った時、ドルで円を買ったときの差額です。このスプレッドが0.6円分あるので、両替のタイミングに気をつけないと損益が発生する可能性があります。
2.アメリカの不動産市場に対する知識やリスクの理解
クラウドバンクの米ドル型案件は現在、全て不動産投資案件です。そのため、アメリカの不動産投資市場に関する知識がないと、思わぬリスクが発生することもあります。
2-1.日本国内でどの程度、アメリカの不動産市場を学べるか
まず、気をつけなければいけないのは、日本国内でアメリカの不動産市場に関する情報をどの程度把握できるかという点でしょう。日本国内であれば、全国どのエリアでも不動産価格を知ることは容易です。
「このエリアであれば現在上昇傾向にあり、不動産を購入しても値下がりは起こりにくい。逆にこのエリアの不動産物件は運営が非常に厳しいので、事業が失敗する可能性が高い」など、情報を入手して判断しやすいです。
アメリカの不動産に通じている人であれば、十分そのような情報を入手できるかもしれません。しかし、個人投資家や副業サラリーマンの方などが、アメリカ全土の不動産市場を把握するのはかなり難しいと言えます。
特にアメリカは日本よりも大変広い国土を持っています。50の州が有り、それぞれの州によって不動産の事情も異なってきます。日本の不動産よりも、調べなくてはいけない情報量はかなり多いでしょう。
投資対象となっているテキサス州などの不動産市場を調べるだけでも一苦労です。日本のように簡単に情報を手に入れることができませんので、詳しい人に聞いて判断する必要があります。
2-2.日本とは不動産に関する商習慣が違う
また、日本とアメリカとでは不動産取引に関する商習慣も違います。この点はクラウドバンクのホームページでも記載されており、『アメリカの不動産取引市場は日本よりも情報の開示性が高い』と書かれています。
『買主側は仲介手数料を請求しない』『不動産の営業エージェントには高い資質が求められる』『新築物件よりも中古物件の取引が一般的である』など、日本とアメリカでは様々な条件や常識が違ってきます。
商習慣の違いがそのままリスクになるわけではありませんが、商習慣の違いを知っておけば、よりリスクを減らして投資先の選定が可能です。
3.アメリカという国のリスク
また、アメリカという国ならではのリスクもいくつかあります。
3-1.災害によるリスクが高い
日本は自然災害大国ですが、アメリカでは日本の台風よりもはるかに強力なハリケーンという自然災害が毎年発生しています。このハリケーンにより、運営していた不動産が甚大な被害を被ってしまう可能性もあるのです。
他のソーシャルレンディング会社の例を見ると、ガイアファンディングでも実際にハリケーンの被害が発生しました。スケジュールどおりに不動産事業の運営ができず、リファイナンスもできなかったため貸し倒れが起きました。
自然災害リスクは国ごとにありますが、アメリカの不動産案件に投資する時はハリケーンや竜巻による災害リスクを考えておかなければいけません。このような災害リスクに対して、どのようなリスク対策を融資先の事業者が行っているかも調べておきたいところです。
3-2.アメリカは世界の中心であり、問題に巻き込まれやすい
また、アメリカはGDP世界一の大国であり、良くも悪くも世界の中心です。2001年には9.11テロが発生し、2004年にはイラク戦争。そして現在も、中国との間に貿易摩擦が発生しています。リーマンショックも、アメリカが発生源でした。
アメリカという世界一の大国だからこそ、様々な問題が起こりやすいと言えます。
4.利回りや運用期間などの条件の問題
今回のクラウドバンクの米ドル建て不動産投資案件ですが、利回りは6.9%。運営期間は約2年間となっています。利回りは現在のソーシャルレンディング業界で見れば平均的な数値ですが、運用期間の2年間は長期案件としてのリスクを考えなければいけません。
日本国内では起こりにくいリスクでも、アメリカでは発生する可能性があります。
特にアメリカのソーシャルレンディング案件への投資が初めての人にとっては、2年間も資金を拘束されることは、どうしてもリスクが高いと言わざるを得ないでしょう。
この2年間を「安定して収入が得られる期間」と考えるのか、それとも「自由に解約できずに資金が拘束される期間」と考えるのか、人それぞれですが、集中投資は避けたほうが無難です。
5.まとめ
クラウドバンクは、ソーシャルレンディング事業が順調に推移している会社です。そこに新規顧客の開拓のため、または顧客の選択肢を増やすために、今回の米ドル建て案件を運用開始しています。
その内容を見れば、日本国内の案件よりも決して好条件と言えるものではなく、特に運用期間の長さはどうしてもリスクになってしまいます。分散投資が必須だからといって、無条件にアメリカの不動産案件に投資するのではなく、アメリカならではのリスクをできるだけ勉強してから投資先を決めていくと良いでしょう。
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