投資先を選定する際、「配当性向が高い銘柄が良い」、「株主優待で商品券がもらえる銘柄が良い」といった条件を設ける投資家は多く見られます。配当・株主優待がある銘柄は人気が高く、絶対条件とする人もいるほどです。
しかし、配当や株主優待がない銘柄も、投資するメリットがあります。この記事では、配当・株主優待がない銘柄へ投資するメリットについて解説していきます。
目次
- 配当・株主優待銘柄が人気を集める理由
1-1.投資の楽しみができる
1-2.株主優待で生活に必要なものがもらえる
1-3.定期的な収入が得られる - 配当・株主優待がない銘柄へ投資するメリット
2-1.減配や優待内容の変更などに左右されない
2-2.権利確定日前後に値動きが荒くなりにくい
2-3.必要な株数だけ購入できる
2-4.事業が成長する期待がある
2-5.方針転換により株価が上昇する可能性がある - 株主優待を廃止する企業が増えている
- まとめ
1.配当・株主優待銘柄が人気を集める理由
配当や株主優待が受けられる株式は、関連書籍も多く出版されており、投資家から広く人気を集めています。まずは、その人気の背景について解説します。
1-1.投資の楽しみができる
配当や株主優待銘柄が人気を集める理由として、投資の楽しみができることが挙げられます。
通常、株式投資は「安く買って高く売る」キャピタルゲインによって利益を得ます。株式を保有している間は、売却のタイミングを探るだけで、利益を得られる機会はありません。とくに長期保有を目的としている場合は、「利益が出るまで退屈だ」「投資の楽しみがない」と感じることもあるでしょう。
配当・株主優待銘柄では定期的に配当が入金されたり、優待品が届いたりすることから、投資の醍醐味を感じられるタイミングがあります。
1-2.株主優待で生活に必要なものがもらえる
生活に必要なものがもらえるのも、株主優待の魅力のひとつです。
株主優待の内容は企業によって異なりますが、中にはお米やお肉などの食品や、ティッシュペーパー、家庭用洗剤などの生活必需品が贈られる銘柄も多くあります。日常生活で必ず購入するものを株主優待で受け取ることで、結果的に家計の節約につながる効果があるのです。
また、新製品や自分では買わない商品を試せるきっかけにもなり、生活にちょっとした楽しみができることも株主優待のメリットです。
1-3.定期的な収入が得られる
配当銘柄では、定期的な収入が得られる点が大きなメリットです。国内企業では年1・2回の頻度が一般的ですが、米国株式になると年4回に分けて配当を出す企業もあり、うまくポートフォリオを組めば、毎月配当金が入ってくる仕組みを作ることも可能です。
仕事で得られる給与とは別に、定期的な収入が得られるのは心理的にも大きなメリットがあります。もちろん配当金は企業の業績によって変動する可能性はあるものの、一定の不労所得が得られることは多くの人にとって嬉しいメリットです。
2.配当・株主優待がない銘柄へ投資するメリット
ここまで、配当・株主優待が人気を集める背景について解説してきました。では、配当や株主優待がない銘柄は投資の魅力がないのかというと、決してそうではありません。ここからは、配当・株主優待がない銘柄へ投資するメリットについて解説していきます。
2-1.減配や優待内容の変更などに左右されない
配当・株主優待銘柄では、たびたび減配や優待内容の変更がアナウンスされることがあります。このようなアナウンスは、投資の楽しみが減ってしまうことに加え、多くの投資家が失望売りを行うことで株価が下落するリスクがあります。
一方、配当・株主優待がない銘柄では、そもそも減配や優待内容の変更がないことから、配当や優待内容の変更によって株価が影響を受けることがありません。
2-2.権利確定日前後に値動きが荒くなりにくい
配当・株主優待がない銘柄では、権利確定日前後に値動きが荒くなりにくい点もメリットのひとつです。
配当・株主優待銘柄では、権利確定日の前後で株価が乱高下することも珍しくありません。わかりやすく次の具体例で解説します。
1日(月) | 2日(火) | 3日(水) | 4日(木) | 5日(金) |
---|---|---|---|---|
– | 権利付最終日 | 権利落ち日 | 権利確定日 | – |
権利確定日とは、「配当や株主優待が受け取れる権利を付与される日」です。上記例では4日(木)を基準日として、配当や株主優待が受けられる株主が決められます。
しかし、4日(木)当日に株式を購入しても権利は得られません。権利確定日に株主の認定を受けるためには、「権利付最終日」までに株式を取得する必要があります。このケースでは、2日(火)が権利付最終日です。
権利付最終日にかけては、権利を得たい投資家の駆け込み需要があり、株価が上昇する傾向にあります。
しかしその後、「権利落ち日」を迎えると株価は下落基調に転じるケースもあります。権利付最終日までに株式を保有していれば、権利落ち日以降は株式を売却しても権利を維持できるためです。こういった要因から、配当・株主優待銘柄では権利確定日前後に値動きが荒くなるデメリットがあります。
一方、配当・株主優待がない銘柄では、権利付確定日前に配当目当ての駆け込み需要などが起こりにくいため、株価が乱高下することはありません。企業の業績や業界動向以外の特殊要因に株価が左右されないのは、投資家にとっても大きなメリットです。
2-3.必要な株数だけ購入できる
配当・株主優待がない銘柄では、自分が必要な株数だけ購入すればよい点もメリットのひとつです。
株主優待銘柄では、株主優待を受けるための必要株式数が定められています。例えば、ゆうちょ銀行では、株主優待としてカタログギフトがもらえますが、対象となるのは500株以上保有している株主です。株主優待目当てで保有する場合は、500株以上の株式を取得する必要があり、場合によっては投資資金の予算をオーバーすることもあるでしょう。
一方、配当・株主優待がない銘柄では、自分が必要な数量だけ購入すればよいため、各自の投資意向に合った金額内で取引することが可能です。
2-4.事業が成長する期待がある
配当・株主優待がない銘柄では、事業の成長性に期待できるメリットもあります。配当や株主優待を行わず、企業の内部留保を増やすことで、新規事業に投資できたり事業を拡大できたりするためです。
事業が成長すれば、当然株価も上昇する期待が持てます。配当・株主優待がない銘柄は、保有期間中にインカムゲインは得られないものの、最終的にキャピタルゲイン(値上がり益)として株主に還元される可能性があります。
もちろん、中には「業績が厳しくて配当が出せない」という企業もあるため、「配当がない=内部留保が増える」というわけではありません。このあたりは、財務諸表をよく分析しながら銘柄選定を行うようにしてください。
2-5.方針転換により株価が上昇する可能性がある
現在配当や株主優待を行っていない企業でも、方針転換や業績拡大などによって株主還元に取り組み始めることがあります。これまで配当を行っていなかった企業が新たに配当をだすことになると、配当を好む投資家の資金が集まり、株価上昇につながるケースがみられます。
無配株が配当株へ転じるケースを事前に読むことは難しいものの、急激に業績が拡大している企業や、業績が回復して復配しそうな企業などは、配当への期待感から値上がり益を狙える可能性があるのです。
3.株主優待を廃止する企業が増えている
最近では、株主優待を廃止する企業も多く見られます。その要因のひとつに「上場の規定が変更されたこと」が挙げられます。
2022年4月の東証再編を受けて、上場の基準も大きく見直されました。東証プライム市場については上場に必要な株主は800人以上となっており、以前の2,200人以上という基準と比較するとかなり緩和されていることが分かります。
そのため、企業側は上場のために多くの株主を集める必要がなくなり、集客手段であった株主優待を廃止する動きが出てきているのです。
また、海外投資家から平等を求める声が出ていることも要因のひとつです。株主優待は商品券や日用品、食品など多くの種類がありますが、海外投資家は活用が難しく、株主間で不平等が生じているとの声が上げられています。
企業としては、すべての投資家に公平に利益を還元する義務があるため、このような背景から株主優待を廃止する企業も増加しています。恐らくこの流れは今後も加速していく可能性が高いと考えています。
まとめ
本記事では、配当・株主優待がない銘柄に投資するメリットについて解説してきました。配当や株主優待は投資家のひとつの楽しみであることから、多くの投資家が銘柄選定の基準にしている点でもあります。
しかし、無配株や株主優待がない銘柄にも、「事業の成長性が期待できる」「必要な株数だけ保有できる」など多くのメリットがあります。「配当がない銘柄は投資する意味がない」と除外してしまうのではなく、長期の成長性に投資するひとつの選択肢として取り入れるようにしてください。
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山下耕太郎
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