日経平均のリスクは?相場のポイントをプロトレーダーが解説

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2023年6月現在、日経平均株価が急上昇しています。日本株を中心に投資をしているという投資家の中には上昇の恩恵を受けているという方も多いでしょう。

しかし相場の上昇には、いずれ終わりが来ます。本稿ではプロトレーダーの筆者が、日経平均株価の上昇局面で注意したいポイントや、2023年の年末までの見通しを解説します。

※本記事は2023年6月21日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。


目次

  1. 現状の日経平均株価について
  2. 日経平均株価で今後考えるべきこと
    2-1.短期的にはテクニカル的に過熱感があり
    2-2.業績が良好な状態を織り込んでしまっている
    2-3.夏場のアノマリー
    2-4.海外投資家のリバランス
    2-5.日経平均株価の平均値幅はリーマンショック並み
  3. 今後の日経平均株価は?
  4. まとめ

1.現状の日経平均株価について

まずは、2023年6月現在の日経平均の上昇幅を確認しましょう。

ドル円チャート
※図はTradingView[PR]より筆者作成

上記は日経平均株価(青色)、米国S&P500指数(オレンジ)、ドイツDAX(水色)の年初からの騰落率を示しています。日経平均株価は30%近く上昇していると分かります。

一方でアメリカS&P500指数の上昇は14%程度、ドイツDAXは11%程度であり、日経平均株価と比較して、あまり上昇していません。

日本株は米株などと比較して割安であり、海外投資家の資金流入により上昇しています。

また日本と海外の金融政策の差も大きく影響しています。日銀は大規模金融緩和を継続するスタンスを堅持しています。一方で米国や欧州は、インフレ沈静化のために利上げを継続しています。

政策金利の引き上げは、株価にとってマイナスです。日銀の金融緩和も、日本株が選好されている理由です。

2.日経平均株価で今後考えるべきこと

2-1.短期的にはテクニカル的に過熱感があり

週足の日経平均株価
※図はTradingView[PR]より筆者作成

上記は、週足の日経平均株価にRSIとストキャスティクス、ローソク足にはボリンジャーバンドの2σを表示させています。

RSIは買われすぎの水準を維持し続けており、ストキャスティクスも高い水準で張り付いている状態です。ボリンジャーバンドも2σを突破したまま上昇が継続しており、過熱感が高まっていると判断できます。

日経平均を2023年6月現在の水準から、ロング(買い)ポジションの構築は、リスクリワードを考えても難しいとの判断になる投資家も多いでしょう。

2-2.業績が良好な状態を織り込んでしまっている

日経平均株価を、EPSとPERで分けて分析してみましょう。PERは将来への期待を、EPSには各企業の業績が反映されます。

今回の上昇は、PERの寄与度が7割を超えています。一方でEPSの寄与度は、3割程度となっています。

日経平均の上昇はPER主導であり、海外投資家による日本株への期待が反映された相場と言えるでしょう。

EPS×PERの計算式から、現在の株式の水準が測れます。2023年6月現在のPERは15倍超であるため、33,400円÷15=2,266円(EPS)となります。

この計算から、EPSが2,266円以上ではないと理論上は日経平均株価が33,400円以上で推移できないと判断できます。

EPSの推移をチェックすると、割高なのか割安なのかを判断する材料になります。ただしあくまで理論であるため、参考程度に留めましょう。

2-3.夏場のアノマリー

短期的に日経平均株価を考える上では、夏場のアノマリーも参考になります。

7月、8月、9月は過去30年程度の月次のパフォーマンスの平均がマイナスとなっています。6月から8月のお盆あたりまではポジション調整の影響で下落することが多く、特に8月前半のパフォーマンスは弱い傾向があります。

8月まではロング(日本株の買い)ポジションを作らず、待つ戦略も、選択肢の一つでしょう。

6月は、日本人のボーナス支給月であり、一時的に上昇しやすいタイミングです。上昇すると買いたくなるものですが、堪えて下落を待つと高値掴みのリスクを軽減できます。

一方で10月、11月のパフォーマンスは上昇する傾向があります。10月から11月の上昇を狙って、安い価格で仕込んでいく投資戦略も、選択肢の一つでしょう。

2-4.海外投資家のリバランス

海外投資家が日本株のポートフォリオの割合を増加させています。しかし、四半期に一度等大幅な見直しが入る場合があります。

機関投資家は、債券と株式の割合を定期的に見直しています。株式市場が上昇する一方で、利上げがそろそろ最終局面を迎えるため、株式の割合を減らし、債券を増やす動きが出やすくなります。

日本株の割合は元々小さく、大きくなってきている段階であるため、今回のリバランスで売られない可能性もあります。世界の投資家は安定した利回りを確保するには?という視点で動いています。今後、日経平均株価がさらに上昇する場合は、ポートフォリオのリバランスのフローの影響を受ける可能性があるため、注意しましょう。

2-5.日経平均株価の平均値幅はリーマンショック並み

日経平均株価の値幅は、リーマンショックで発生した急落時の値幅を超えてきています。2008年のリーマンショック時は8,161円であり、2023年の年初は25,000円台後半でした。2023年6月現在は、33,000円台後半となり、8,000円以上の値幅が発生しています。

プロトレーダーの筆者としては、値幅に注目しています。マーケットは、投資家がまだ上昇すると言っている時こそ、上昇が止まる傾向があります。相場の過熱感に惑わされ、高値掴みをしないように、注意しましょう。

3.今後の日経平均株価は?

プロトレーダーの筆者としては、日経平均株価は年末にかけて30,000円前後まで下落すると考えています。38,000円との意見も出始めているものの、上昇の維持は難しく、年内には到達しないでしょう。

7月まで高値圏を維持する可能性があるものの、その後夏場にかけて下落し、30,000円を挟んだ水準で推移すると予想します。

ただし急落は考えにくく、ジリ安と底堅い展開が秋口まで続くでしょう。夏場に急落する局面があれば、ロングポジションの構築を検討できるでしょう。

4.まとめ

本稿では日経平均株価が上昇している理由と、株価を見るうえでのポイントを5つ紹介しました。

相場が上昇しても冷静に、リスク管理をしながらトレードを行いましょう。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12