IPO株(新規公開株)とは、新たに証券取引所に上場される株式のことです。IPO株を上場前に購入し、上場より初めて付いた値である「初値」で売却すると、利益を得ることができるケースも少なくありません。IPOへの投資手法はシンプルで利幅も狙いやすいため、投資初心者の方にも人気があります。
そこでこの記事では、IPO投資の特徴やメリット・デメリット、おすすめの証券会社、少額でIPOに参加できるサービスをご紹介します。株式投資が初めての方、IPOの抽選に当たりやすい証券会社を知りたい方は、参考にしてみてください。
目次
- IPO投資とは
1-1.IPO投資のメリット
1-2.IPO投資のデメリット - IPO投資でおすすめの証券会社は?
2-1.IPO株を取り扱う証券会社
2-2.主幹事・幹事になることの多い証券会社
2-3.初心者におすすめの証券会社は? - リスクを抑えて少額でIPO投資ができるサービス
3-1.ネオモバ「ひとかぶIPO」
3-2.株式投資型クラウドファンディング「ファンディーノ」 - IPO投資を始める手順
- まとめ
1 IPO投資とは
IPOは、未上場企業が証券取引所に新規上場することで、その企業の株式は新規公開株とも呼ばれています。
通常の株式投資は、証券会社を通じてすでに取引所に上場している銘柄を売買するものですが、未上場の株式は取引所で購入することができません。そこで、取引所での上場が予定される未上場企業の株式を、上場前に取引所を通さず証券会社から購入する投資方法がIPO投資となります。
IPO投資では、最初の成約価格(初値)が上場前に設定された公開価格(IPO株の売出・購入する価格)を上回るケースが多いため、上場前にIPO株を取得して上場直後の初値で売却することで効率的に利益を狙うという投資方法が人気となっています。
1-1 IPO投資のメリット
では、IPO投資の具体的なメリット・特徴を見ていきましょう。
初値売却で利益を得られる可能性が高い
2015年~2019年の5年間で上場前に公開価格で購入したIPO株を初値で売却した場合、下記の通り、8割前後のケースで売却益が期待できる計算となります。(もちろん、その時々の経済情勢や銘柄ごとの状況もあるため、今後も同様の傾向が保証されるわけではありません。ケースによっては大きな損失が出ることもありますので、十分に情報収集をしてからご判断下さい)
過去5年間のIPO案件
年 | 新規上場案件 | 初値が公開価格を上回った案件 | 初値が公開価格を下回った案件 |
---|---|---|---|
2019年 | 86件 | 76件 | 9件 |
2018年 | 90件 | 80件 | 10件 |
2017年 | 90件 | 82件 | 8件 |
2016年 | 83件 | 67件 | 15件 |
2015年 | 92件 | 82件 | 8件 |
初値売却は利益も大きい
IPO株の初値売却は、騰落率(=初値が公開価格に対して何%変化したかの割合)が大きくなる傾向があるのも特徴です。例えば、2019年に新規上場したIPO案件で大きなプラスとなった銘柄は次のようになります。
IPO銘柄 | 公募価格 | 初値 | 騰落率 |
---|---|---|---|
ウィルズ | 960円 | 4535円 | +約372% |
サーバーワークス | 4,780円 | 18,000円 | +約277% |
AI inside | 3,600円 | 12,600円 | +約250% |
2019年の全86銘柄の初値騰落率の平均値は+約75%で、2018年や2017年では100%を超えています。公募割れ(公募価格を下回ること)のケースも少ないながらありますが、上回れば大きなリターンを期待できます。
1-2 IPO投資のデメリット
IPO投資をする際の注意点やリスクも確認してみましょう。
抽選に当たる確率は低い
IPO株に投資するには、基本的に証券会社による抽選で当たらなければなりません。IPO株は主幹事および幹事の証券会社(上場予定の会社を支援する業務を行う証券会社)で購入することになり、IPO株の投資家への割り当ては、各証券会社の判断で行われます。
その割り当て方法には、主に証券会社の担当者判断で行われる「裁量配分」と、機械式に公平な方法で決める「抽選配分」の2種類があります。裁量配分は、店頭証券との取引実績や個人の資金力によって決められるため、富裕層などが主な対象となります。
一方、抽選配分は主にネット証券で行われている方法です。特に資金力に関係なく抽選に参加できる平等抽選は、投資初心者でも参加しやすいのが特徴です。しかし、このようなIPO抽選は人気が高いため倍率も高く、当選するのは難しいのがデメリットと言えます。
まとまったお金が必要
IPO銘柄の購入に必要なお金は各証券会社や案件で異なりますが、基本的にまとまったお金が必要です。例えば、2019年に上場した「AI inside」というIPO銘柄の場合、公開価格が3,600円のため、100株単位の購入に必要な投資額は36万円になります。
また、証券会社による抽選では、取引実績の多い投資家にIPO株を多く割り当てる方法を採用する場合もあります。そのため、資金量や取引実績が少ないと、それだけ当選する確率が低くなる場合もあります。
ただ、後述する通り、1株から申し込めるIPO投資や、少額でも参加できる投資サービスもあるので、投資初心者の方はそちらも検討してみるのもおすすめです。
2 IPO投資でおすすめの証券会社は?
IPO投資では当選しやすい証券会社を選ぶことも重要です。その判断に役立つ3つのポイントをご紹介します。
2-1 IPO株を取り扱う証券会社
そもそもIPO株は、その扱いが可能な特定の証券会社からしか購入できない点に注意しましょう。IPO株を投資家に割り当てることができる証券会社は「主幹事証券会社」と「幹事証券会社」(及び彼らの販売委託を受けた証券会社)です。主幹事証券会社は最も多く株式を割り当てられる証券会社で、幹事証券会社は残りの分を割り当てられる証券会社です。
そのため、IPO投資を行うにはIPO株を扱う主幹事、幹事、委託先の証券会社から購入する必要があり、その取引口座を開設しておくことが大前提となります。
2-2 主幹事・幹事になることの多い証券会社
IPO抽選に当たるためには、主幹事と幹事になる回数の多い証券会社と取引することも大切です。特にIPO株の割当量の多い主幹事証券会社で口座を持ち取引量を増やしておくことが重要になります。
例えば、2019年には以下のような証券会社が主幹事と幹事になっています。
IPO主幹事の件数
SMBC日興証券 | 20件 |
大和証券 | 20件(共同含む) |
野村證券 | 17件 |
みずほ証券 | 12件 |
IPO幹事の件数
SBI証券 | 82件 |
SMBC日興証券 | 61件 |
みずほ証券 | 55件 |
マネックス証券 | 45件 |
上表の通り、主幹事では大手証券会社が多いのですが、幹事ではSBI証券やマネックス証券などのネット証券も多く担当しています。
2-3 IPO初心者におすすめの証券会社は?
IPO投資に初めて参加する場合は、個人抽選配分の割合が高いネット証券などがおすすめです。上記の通り、大手証券会社では取引実績などを重視してIPO株の割り当てを判断するケースがあるため、優良顧客ほど有利になる傾向があります。
一方、取引実績重視ではなく、単に抽選で選定する証券会社も最近は増加しています。例えば、個人投資家向けの抽選配分割合の高い証券会社や、完全抽選制度を採用している証券会社などでは、投資初心者でも平等に当選する機会が与えられます。
なお、IPO株に応募する場合、証券会社の口座に資金を入金するのが一般的ですが、入金の時期は証券会社により異なります。大手証券会社などでは申込時での入金が必要となるケースが多いものの、ネット証券などでは当選時以降でも問題ない場合もあります。
申込時に入金の必要のない証券会社では、資金的に複数の証券会社へ応募しやすくなるため、当選確率を高めることができます。
3 リスクを抑えて少額でIPO投資ができるサービス
以下では、IPO株に1株から申し込むことが可能な証券会社や、少額投資が可能な投資サービスをご紹介します。
3-1 ネオモバの「ひとかぶIPO」
ネオモバの「ひとかぶIPO」は、SBIネオモバイル証券が提供する少額のIPO投資サービスです。ネオモバの運営元はSBI証券の出資会社であり、SBI証券のIPO株の委託販売をしています。
1株単位の応募が可能
「ひとかぶIPO」は、1株から99株までなら1株単位の申込みが可能です。IPOの取引単位は基本的に100株ですが、ひとかぶIPOでは1株から購入できるのが特徴です。まとまったお金を用意するのが難しい方や、リスクを大きく取りたくない方などに向いています。
初心者でも当選しやすい抽選方法
「ひとかぶIPO」では「優遇抽選」と「完全抽選」の2種類の抽選方法が採用されています。
優遇抽選では、20〜30代の当選確率が高くなる「若年優遇」や、ネオモバでの取引状況に応じて当選確率が高まる「取引継続優遇」による抽選が提供されています。一方の完全抽選は、優遇措置のない公平な抽選方式となります。
若年優遇や完全抽選では証券会社との取引を無理に増やす必要がないため、初心者でも利用しやすい抽選方法と言えます。
3-2.株式投資型クラウドファンディング「ファンディーノ」
「IPOに何度もチャレンジしているがぜんぜん当選しない」「少額で色々な会社に投資をしてみたい」という方は、IPOやバイアウトなどを目指す未上場の新興企業の株式に少額から投資できる「ファンディーノ」というサービスも利用を検討されてみると良いでしょう。
ファンディーノでは、これまでベンチャーキャピタルや大口の投資家に限定されていた未上場のベンチャー企業に、クラウドファンディングの仕組みを使って個人でも数万円から投資をすることができます(※非上場企業が発行する店頭有価証券となるため、流動性や換金性は著しく劣る点に注意が必要です)。
ファンディーノで資金調達を完了した企業のなかには、イグジット(M&AやIPOなどにより投資家利益を確定すること)を達成し、投資家にリターンを提供した企業も出てきています。新規案件は定期的に公開されていますので、まずはどのような募集案件が公開されているかを確認した上で、IPO投資とあわせて検討してみると良いでしょう。
4 IPO投資を始める手順
IPO投資を始める一般的な手順は以下の通りです。
まず、利用する証券会社で取引用の証券口座を開設する必要があります。口座開設の手続きは、WEB上で氏名、年齢などの必要事項を入力し、マイナンバーカード等の本人確認書類などをアップロードすれば、短時間で済みます。その後、ログインIDやパスワードなどの情報が郵送され、それらの情報をもとにログインします。
口座開設後は、株式取引のページ等でIPO案件の募集があるかを確認し、ブックビルディング(公開価格を決めるための需要調査で、投資家はその期間にIPO案件に申込む)期間中に申込む必要があります。資金を事前に入金する必要があるかどうかは、証券会社に確認しておきましょう。
抽選日に当選か否か判明しますが、当選の場合は「申込み」か「辞退」するかを選ぶことができます。申込めば当選で確定した株数の購入が可能となります。なお、辞退した場合、証券会社によっては以降の抽選で不利になるケースもあるため、注意しましょう。
購入したIPO株を上場直後の初値で売却したい場合は、各証券会社の取引ルールに従って売却注文を出します。なお、経済状況等が悪化している場合、初値が公開価格を下回る可能性もあるので、慎重に判断することも大切です。
まとめ
IPO投資は初心者でもできる投資方法です。IPO抽選に当選するのは簡単ではありませんが、初値が上場前の公募価格を上回るケースも多く、大きなキャピタルゲインを狙えるのが特徴です。
ただ、IPOはハイリスクな投資でもあり、元本割れになる可能性も少なくありません。そのため、IPO投資の中でもリスクの低い手法として、1株単位でも申し込めたり、少額で参加できたりする投資サービスが注目されています。特に20〜30代の若年層が抽選に当たりやすい抽選方法を採用している証券会社もあるので、若い方や資金不足で悩んでいる方は検討してみてください。
- 外国株(米国株など)が買えるネット証券会社
- IPO投資に強い証券会社、少額からIPOに参加できるサービス
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