投資信託を長期保有する際のポイントは?注意点や長期保有向きのファンドも

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「投資信託を長期保有するといっても、何年間運用して、どんなことに気をつけたらいいのか分からない」といったように、具体的な運用方法がわからないという方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。

投資信託は長期投資に向いた金融商品ですが、具体的な運用年数の指定は無いので、長期運用のイメージは掴みにくいものです。どんなファンドを保有したらいいのか、判断に迷うこともあると思います。

この記事では、投資信託の長期保有とファンド選びのポイントについて解説しています。資産形成のために投資信託の運用を始めたい方は、ご確認ください。

目次

  1. なぜ投資信託の長期保有?
    1-1.複利効果が得やすい
    1-2.時間の効果によるリスクコントロール
    1-3.心理的バイアスの排除
    1-4.具体的な運用期間は?
  2. 一括投資とつみたて投資
    2-1.つみたて投資
    2-2.一括投資
    2-3.余裕資金は一括投資
  3. 投資信託を長期保有する際の注意点
    3-1.定期的な見直しが必要
    3-2.短期的視点に陥らない
  4. 長期保有に適したファンド
    4-1.分配金が年1回程度
    4-2.複雑な構造のファンドでない
    4-3.資産残高が大きく変動していない
  5. まとめ

1.なぜ投資信託の長期保有?

そもそも、投資信託の運用はなぜ長期保有が望ましいのでしょうか。長期保有が資産形成に適している理由を見ていきましょう。

1-1.複利効果が得やすい

単利に対して複利は雪だるま式に利益が積み重なっていく効果を得られますが、投資信託の長期保有には複利効果を得やすい仕組みがあります。ポイントは「投資元本と受け取った利息」に対して利息がつく、という点です。

投資信託は分配金の再投資によって、総資産を増やしながら運用することができます。例えば年に1回、収益分配金が発生した場合、うまく運用できれば毎年積み上げた資産に対して、分配金が計算されます。投資信託は運用期間が長ければ長いほど、複利効果による利益を得やすい構造になっているのです。

なお、分配金なしのファンドでは運用益が自動的に再投資に回されるため、分配金ありのファンドよりも複利運用がしやすくなります。また、分配金受取時の課税もありません。

1-2.時間の効果によるリスクコントロール

長期投資のメリットは複利効果の他に、リスク分散の効果もあります。長期間投資することで、1年あたりの価格のブレが小さくなることを期待するもので、時間分散効果と呼ばれています。

10年間投資した場合の価格のブレが少なくなるということは、1年あたりの平均のブレが少なくなるということです。10年間投資すると1年間の投資よりも価格のブレが少なくなる、ということではない点には注意が必要です。

1-3.心理的バイアスの排除

ドルコスト平均法を用いながら長期間つみたて投信を継続していくことで、売買の判断ミスを誘う心理的バイアスを回避することができます。

ドルコスト平均法では毎月同じ金額を投資しますので、買いすぎを予防できたり、チャンスを逃しにくくなります。長期保有が目的で毎月積み立てるので、購入のつど基準価額を気にすることなく、売買のタイミングで判断を誤ることは無くなります。

投資スタイルを長期保有・ドルコスト平均法で決めてしまえば、心理的バイアスを大幅に抑えることができるのです。

1-4.具体的な運用期間は?

具体的な長期投資の期間は主観によるところが大きく、これといった決まりはありませんが、長く続いているファンドのグラフをみると5年を超えたあたりから、最大リターンと最小リターンの幅が狭くなってくるケースが多く見られました。10年を超えると、プラス収益の運用ができているファンドは、おおむねプラスのままで運用ができている傾向です。

したがって、長期運用でパフォーマンスを期待する場合、最低でも5年以上は保有したいところです。

長期運用の出口

長期の運用で十分に増えた資産は、使わずにそのまま持ち続けるか、少しづつ使うのか、運用スタートの時点である程度考えておくと良いでしょう。

切り崩して使う場合に有効なファンドは、毎月分配型のファンドです。毎月分配型のファンドは、特別分配金による資産の切り崩しの可能性があり、資産を増やす段階ではうまく機能しないことがありますが、資産を切り崩す場合には有効なケースがあります。

毎月分配型のファンドを活用すると、運用せずにそのまま毎月切り崩していくよりも、緩やかに資産を消費することができます。

2.一括投資と積立投資

長期保有の運用を始めるにあたって、ファンドを一括で買い付ける方法と分散して買い付ける方法のどちらが良いのでしょうか。それぞれの特徴を見ていきましょう。

2-1.積立投資

積立投資の特徴は以下のとおりです。

つみたて投資とドルコスト平均法

買いすぎやチャンスを見逃す予防策として、毎月機械的に決まった金額を買い付けるドルコスト平均法が長期投資と相性の良い投資手法です。

例えば、毎月10万円と決めて機械的に買い付けた場合、当然10万円の範囲内で買える分だけしか買い付けることができません。したがって、基準価額が高いときは数量少なめ、基準価額が安いときは数量多めに買い付けます。これによって、心理的バイアスを排除し、買い付けコストを平準化し平均取得単価を抑えることができるのです。

つみたてNISAと長期保有の親和性

つみたてNISAは最長20年の運用期間で、金融庁が指定した長期運用に適したファンドにしか投資できない決まりがあります。毎月定額を長期運用に適したファンドに投資する、という仕組みが最初から設定されており、年間40万円までの範囲内で、譲渡益が非課税となるメリットがあります。

国が率先して長期運用がしやすい仕組みを構築し、案内していますので、投資信託の長期保有を考えている方は、つみたてNISAを選択する方法もあります。

2-2.一括投資

一括投資の特徴は以下のとおりです。

最初からリターンが大きい一括投資

積立投資は、最初は資産額が少ないので価格変動によるリターンや、分配金による複利効果があまり得られません。しかし一括投資の場合は、最初から大きな金額を投資することが前提となっていますので、リターンや分配金の再投資による複利効果を早期に得ることができます。

同じ年数運用した場合、一括投資のほうが得られるリターンは大きくなる可能性がありますが、最終的な損益は投資タイミングに大きく影響されます。積み立ての期間が長くなればなるほど、一括投資との投資効率の差が開いていくことになります。

2-3.余裕資金は一括投資に回してフル活用

投資効率を考えると、余裕資金がある場合は最初に一括投資してしまったほうが効率よく運用できます。ある程度まとまった資金でファンドをフルに運用し、そこに毎月ドルコスト平均法で足していくスタイルにて投資効率を高めることが可能です。

2つの方法を組み合わせることで、最初に高値掴みしてしまった場合でも、状況しだいで平均取得単価を下げられる可能性があります。

下記は120万円を一括投資した場合と、分散投資した場合の運用成績の差を表にしたものです。

経過時間 基準価額 一括投資 積立投資
購入金額 評価額 損益 購入金額 評価額 損益
1月 10,000 1,200,000 1,200,000 0 100,000 100,000 0
2月 10,045 0 1,205,400 5,400 100,000 200,450 450
3月 10,091 0 1,210,920 10,920 100,000 301,368 1,368
4月 10,136 0 1,216,320 16,320 100,000 402,712 2,712
5月 10,182 0 1,221,840 21,840 100,000 504,539 4,539
6月 10,227 0 1,227,240 27,240 100,000 606,769 6,769
7月 10,273 0 1,232,760 32,760 100,000 709,499 9,499
8月 10,318 0 1,238,160 38,160 100,000 812,606 12,606
9月 10,364 0 1,243,680 43,680 100,000 916,229 16,229
10月 10,409 0 1,249,080 49,080 100,000 1,020,207 20,207
11月 10,455 0 1,254,000 54,600 100,000 1,124,716 24,716
12月 10,500 0 1,260,000 60,000 100,000 1,229,557 29,557

3.投資信託を長期保有する際の注意点

資産形成に有効な投資信託の長期保有ですが、具体的にどのような点に気をつけると良いのでしょうか。

3-1.定期的な見直しが必要

長期保有型の運用は、成績の良いファンドを買い付けて、長い間保有していればプラス運用できると考えてしまいがちですが、実際には定期的な見直しのもとに投資判断を行う必要があります。

何年ごとに、どのようなポイントを抑えて見直し、総合的な判断を下すのか、情報収集力と経験が問われるのです。またマイナス運用のファンドを長期保有しても意味がありませんので、適切な期間での見切りも必要となります。

3-2.短期的視点に陥らない

短期的視点は、投資経験の浅い方がファンドを買い付けた直後に捉われることが多く見られます。長期保有のつもりで買い付けたのに、毎日の基準価額の変化に一喜一憂してしまうのです。

長期保有に適した安定ファンドを運用している場合、基準価額は月に数回確認するに留めても問題ありません。気にしすぎて途中で手放してしまうと本末転倒です。長期運用にあたって、短期的視点にとらわれないことは大事なポイントです。

4.長期保有に適したファンド

長期保有に適したファンドに必要な要素を3つピックアップしました。

4-1.分配金が年1回程度

年1回の決算日に運用成績が良ければ収益分配金を出す、という方針のファンドは、投資元本を毀損せずに運用を継続していくことが期待できます。

毎月分配金を出すファンドは、中には収益がマイナスの月でも分配金を出すことがあります。分配金を受け取ってしまうと、資産を引き出していることと同じになりますし、分配再投資をするにしても手間と税金が発生してしまうので、長期保有で資産を増やしたい場合は、頻繁に分配金を出すファンドは避けたほうが良いでしょう。

4-2.複雑な構造のファンドでない

投資信託のファンドは、インデックス型のようなシンプルなものや、市場が値下がりすると逆に基準価額が上がる構成が複雑なファンドがあります。複雑なファンドは、信託報酬が高いことが多く、値動きが大きな傾向が見られますので長期保有には向いていません。複雑なファンドは、短期的な収益を狙う場合に適しているものが多くなります。

4-3.資産残高が大きく変動していない

預かり資産が多く、極端な流出がないファンドは長期保有に向いています。預かり資産が少ないと、運用の成績にも影響しますし、途中で運用終了となり強制償還となってしまう可能性が高くなります。長期保有を目的に運用をスタートしたのに勝手に途中で終わってしまうと、投資計画が崩れやすくなるほか、再投資の手間もかかってしまいます。

まとめ

投資信託の長期保有のメリットは、複利効果を生かすことができる、時間によるリスク分散の効果が期待できる、という点です。5年以上の運用を目標に、安定した運用が狙えるファンドを選びましょう。

投資対象が国内債券のファンドでは、債券の仕組み上、低リスクに利息分の積み上げが期待できます。取れるリスクに応じて株式などを組み合わせることで、収益を狙うこともできます。

定期的な運用資産の見直しを行いつつ、長期にわたるプラス収益を目指して運用を行いましょう。

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sayran

「資産形成をより身近に」をモットーに、証券会社にて投資信託を中心にリスクの低い資産形成をオススメしていました。 テキストではよりわかりやすくみなさんの興味分野を解説し、資産形成の理解を広めていきたいと思っています。