企業にとって、資金の状況を把握することは大切です。資金の状況を正しく理解しないと経営判断が難しくなるからです。また、利益が出ていても現金が足りないために経営破綻してしまう、いわゆる黒字倒産という事態を防ぐためにも、資金状況の把握は欠かせません。そのため投資家にとっても、企業の資金の流れを知ることは必要不可欠です。
この記事では、キャッシュフローとは何か、そして、キャッシュフロー計算書の見方と株式投資への活用方法について解説します。
目次
- キャッシュとは
- キャッシュフローとは
- キャッシュフロー計算書とは
- キャッシュフロー計算書の見方
4-1.営業活動によるキャッシュフロー
4-2.投資活動によるキャッシュフロー
4-3.財務活動によるキャッシュフロー - 直接法と間接法の違いを知る
5-1.直接法
5-2.間接法 - キャッシュフロー計算書で割安株を探す
- まとめ
1.キャッシュとは
キャッシュフロー計算書のキャッシュ(現金)とは、現金または現金とほぼ同じとして扱われるものをいいます。
現金には、現金に換えやすい普通預金や当座預金、3ヵ月以内に満期を迎える流動性の高い定期預金、3ヵ月以内に償還される公社債投資信託などが含まれます。
そして、現金化が困難なもの、価値が変動するもの、繰延税金資産など現金化の可能性のないものは、原則として現金に含めません。
2.キャッシュフローとは
企業に入ってくるキャッシュ(現金)を「キャッシュイン」、出ていくキャッシュを「キャッシュアウト」と呼びます。そして「キャッシュフロー」とは、「キャッシュイン」から「キャッシュアウト」を差し引いた残高のことです。
- キャッシュフロー=「キャッシュイン」ー「キャッシュアウト」
3.キャッシュフロー計算書とは
キャッシュフロー計算書は、現金(キャッシュ)の増減とその理由を示します。期首にどれだけの現金があり、期末にどれだけの現金が残っているかという、現金の流れを把握できるものです。
3つの財務諸表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書)のうち、貸借対照表はお金をどのように調達し、どのように投資したかを、損益計算書は利益をどのように生み出したかを示しています。
そして、キャッシュフロー計算書は、会社の1年間のお金の流れ、つまりどのようにお金が入ってきて、どのようにお金が出ていったのかをあらわした表です。
貸借対照表でも前期と比較してどのくらい現金が増えたのかわかります。しかし、より詳しく現金の増減を判断するためには、キャッシュフロー計算書を見なければなりません。
貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書は密接に関連しており、すべて確認することによって企業の状況を総合的に判断できるのです。
4.キャッシュフロー計算書の見方
キャッシュフロー計算書は、「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つに区分して表示されます。それぞれの内容について解説します。
4-1.営業活動によるキャッシュフロー
会社の本業である営業活動によって増減した現金です。プラスであれば本業で順調にキャッシュを稼げていることを示し、マイナスであれば業績不振もしくは事業拡大のための仕入れや販管費が膨らんでいることを示唆します。
4-2.投資活動によるキャッシュフロー
投資活動によるキャッシュフローは、会社が余剰資金を運用したり、設備投資を行ったりして生じた現金の増減です。プラスであれば運用益が出ており、マイナスであれば新規投資が行われたことが把握できます。
4-3.財務活動によるキャッシュフロー
財務活動によるキャッシュフローは、借入金や借入金の返済、株式の発行などの資金調達による現金の増減です。
5.直接法と間接法の違いを知る
もっとも重要なキャッシュフローである「営業キャッシュフロー」の表示方法には、「直接法」と「間接法」の2つがあります。それぞれの表示方法について解説します。
5-1.直接法
直接法とは、営業キャッシュフローを総額で捉える方法で、キャッシュフローを主要な取引ごとに総額で表示します。本来、商品の販売による収入と商品の購入による支出は相殺されるべきものですが、直接法では相殺せず、別々に表示している点が大きな特徴です。
直接法のメリットは、営業活動に関するキャッシュフローが総額で表示されるため、キャッシュフローの流れを詳細に把握しやすいことです。
5-2.間接法
間接法は、損益計算書から営業キャッシュフローを計算する方法です。具体的には、損益計算書の税引前当期純利益に調整項目を加減して、営業キャッシュフローを算出します。
損益計算書は収益と費用からなり、基本的にキャッシュフローを生み出しますが、中にはキャッシュを伴わないものやタイムラグもあります。これらは「非資金損益項目」と呼ばれ、減価償却費、減損損失、のれん償却費などが含まれます。
また、売掛金、棚卸資産、買掛金などについても調整が必要な場合があります。
6.キャッシュフロー計算書で割安株を探す
キャッシュフロー計算書から株価の割安感を測る方法を紹介します。キャッシュフロー計算書からあるべき値を知ることができれば、現在の株価が割安かどうかわかるからです。今回は、「CFPS」という指標を用います。
「CFPS」は”Cash Flow Per Share”の略で、1株当たりどれだけのキャッシュフローが生み出されたかを示しています。キャッシュフローに裏打ちされた利益を生み出すことができる企業かどうかを見る指標で、数値が大きいほど良いと判断します。
CFPSは、当期純利益に減価償却費を加えた営業キャッシュフローを発行済株式数で割って算出します。計算式は、以下の通りです。
- CFPS=「営業キャッシュフロー」÷「発行済株式数」
たとえば、営業キャッシュフローが150億円で、発行済株式数が3億株であれば、CFPSは50円です。
ここで注意しなければならないのは、CFPSの基礎となる営業キャッシュフローには、過去1年間の実績しか反映されていないということです。従って、CFPSと株価の単純比較は意味がありません。
このCFPSと株価を比較する指標をPCFR(Price Cash Flow Ratio)といいます。PCFRの計算式は以下の通りです。
- PCFR=株価÷CFPS
PCFRは、株価がCFPS(1株当たり営業キャッシュフロー)の何倍を基準にしているかを示す指標になります。株価は今後10年間のキャッシュフローの予測に基づいて決まるので、PCFRが10倍を下回ることは、株価が割安であることを示すシグナルになるのです。
ただし、10倍という数値は全業種の平均であり、PCFRは業種によって異なることには注意が必要です。比較は同業種の中で行うようにしてください。
まとめ
企業の状況を見極めるためには、貸借対照表や損益計算書だけでなく、キャッシュフロー計算書も確認する必要があります。キャッシュフロー計算書は、1年間の会社のお金の流れ、つまり、どのようにお金が入ってきて、どのようにお金が出ていったかを表しているからです。
投資する企業を見極めるためにもキャッシュフロー計算書は必要なので、ぜひ見方を覚えるようにしてください。
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山下耕太郎
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