日本クラウド証券株式会社が運営しているソーシャルレンディングサイト、クラウドバンク。そのクラウドバンクでは、3月20日に神奈川県横浜市と協定を結び、クラウドファンディング業者としてサービスの提供を行っていくことを発表しました。
その協定の内容をクラウドバンクに確認し、ソーシャルレンディング投資に与える影響を考えてみました。
目次
- クラウドバンクと横浜市の協定内容
1-1.横浜市のまちづくり団体への融資案件を用意
1-2.以前にも横浜市との取り組みはあった
1-3.今後、より密に案件を組成 - クラウドバンクに協定締結の狙いを聞く
- 投資家から見たメリットは
3-1.融資先のまちづくり団体名が明らかになる
3-2.事業内容が確認できる
3-3.金利に関してはあまり高い数字は望めない?
3-4.貸し倒れが起きたときのリスク - まとめ
1.クラウドバンクと横浜市の協定内容
2019年3月、クラウドバンクと横浜市では、「地域まちづくり活動を対象としたクラウドファンディング活用支援事業の試行実施」に関する協定を結んだことを発表しています。
横浜市のまちづくりに関し、まちづくりに取り組むまちづくり団体への資金の融資手段の一つとして、クラウドバンクを通じた資金提供を募っていく内容となっています。
1-1.横浜市のまちづくり団体への融資案件を用意
このクラウドファンディング活用支援事業の内容については、横浜市のホームページにも記載されています。(参照:地域まちづくり活動を対象としたクラウドファンディング活用支援事業試行>)
試行とあるように、ある程度テストを重ねながら、支援事業による資金調達が順調に進むのか、また、資金調達を受けたまちづくり団体が横浜市のまちづくりに貢献していけるのか、進捗の具合を測っていくものと思われます。
もう一因としては、横浜市の街としての魅力を高めるため、横浜市のまちづくり団体の資金調達の手段として、協定締結したクラウドファンディング企業を横浜市でも紹介することが挙げられます。
横浜市のホームページを見ると、いま、クラウドファンディング企業として協定を結んでいるのは6社になっています。購入型のクラウドファンディングがそのうちの5社を占め、融資型のクラウドファンディングはクラウドバンク一社のみとなっています。
購入型のクラウドファンディングと言うと、サービスを購入し、その購入資金をもとに、まちづくりを行う企業等が何らかのサービス、施設開発などを行っていくものと考えられます。それに対して、融資型のクラウドファンディングでは、融資を受けた企業等がその資金をもとに事業開発、店舗開発などに取り組んでいくものと予想されます。
購入型の場合、物品やサービスで投資家がリターンを得るようになっています。対して、融資型の場合、従来のソーシャルレンディングと同じように、貸付金に対する金利収入が投資家たちのリターンになります。
横浜市のまちづくり団体が、このクラウドファンディングを使って資金を調達する可能性があり、今後は金融機関の代替手段として、クラウドファンディングが利用されることが期待されます。
1-2.以前にも横浜市との取り組みはあった
クラウドバンクの横浜市との協定締結は、実は前からありました。2014年の時点で横浜市に協力する旨のプレスリリースが発表されていて、前々からクラウドバンクは横浜市との繋がりを持っていたと考えられます。実際に横浜市内の企業等に対する融資も、何度か行っていたことが推測されます。
ただし、融資先の名前は公開されなかったため、これまでクラウドバンクが融資した企業等の中に横浜市関連の企業等があったのかどうか、確定できるものではありません。
1-3.今後、より密に案件を組成
今回の横浜市とクラウドファンディング企業とのフローは、以下の図のようになっています。
※引用:横浜市「地域まちづくり活動を対象としたクラウドファンディング活用支援事業<試行>」
まず、まちづくり団体が横浜市に書類を提出した後に、横浜市の紹介によりクラウドファンディング経由で資金を調達する流れになっています。やみくもに資金を調達したいだけの企業等が利用するのではなく、クラウドバンクの審査のもとで横浜市まちづくり団体に資金を融資していきます。
横浜市とクラウドバンクの関係がより密になり、バラエティに富んだ案件が増える可能性がありますが、クラウドバンクの扱う案件が、中小企業を中心とした小規模なものになる可能性も否めないでしょう。
2.クラウドバンクに協定締結の狙いを聞く
そこで、実際にクラウドバンクに対し、今回の取り組みについてのアンケートを行いました。
①協定締結のきっかけについて
横浜市が「クラウドファンディングを活用した地域まちづくりの支援」というテーマで協定締結事業者の募集を行っており、当社としてこれに応募し、審査の上で事業者の一つとして選定されたものです。なお、融資型クラウドファンディング事業者として協定締結に至ったのは当社のみです。
②貸付先の情報や業務内容の公開は行われる予定ですか
貸付先との協議の上、原則的に公開を行う予定です。
③貸付金利、投資家への配分金利は通常の案件に比べるとどうなりますか
案件ごとに審査を行っていることから、一概には申し上げられないものの、経済性に加えて「地域まちづくり」に貢献するプロジェクトを対象としているため、投資家への経済的リターンは当社がこれまでに提供しているファンドと比較して、相対的に低くなる可能性があると想定しております。
④担保はどのように設定されるか、クラウドバンクの通常案件との差は出てきますか
審査という意味で、担保の評価方法、厳格さなどに差をつける予定はありません。ただし、提供可能な担保が存在しない、または、融資額に対して過少となるプロジェクトであっても、「地域まちづくり」に対する貢献が強く認められるプロジェクトについては、当社グループの連帯保証なども検討しながら、投資家の方の資金保全をカバーしていきたいと思っております。
⑤ 今後は他の自治体とも同様の提携を行う予定はありますか
積極的に考えております。
⑥ 貸付先の審査は横浜市やクラウドバンクで行いますか
審査についてはクラウドバンクが行いますが、横浜市側でその審査の適正度や妥当性について保証、または、責任を負うものではありません。基本的に融資先の名前は公開し、審査はクラウドバンクが行うものとなっています。
3.投資家から見たメリットは
では、今回のクラウドバンクと横浜市の連携について、投資家から見たメリットや注意点などをピックアップしてみます。
3-1.融資先のまちづくり団体名が明らかになる
まず、大きなメリットとしては、融資先のまちづくり団体名が原則として明らかになる点です。クラウドバンクは金融庁からの公表を受け、3月19日に早速、今後は原則として企業名等を開示していくとの方針を明らかにしています(参照:融資先の情報開示等に関する方針につきまして)。
3-2.事業内容が確認できる
まちづくり団体名だけではなく、事業内容がより詳しく確認できることが期待されています。横浜市の紹介を受けた事業であり、その内容の公開についても投資家の求めるものと言えるでしょう。
ソーシャルレンディング案件の詳細情報の中にも、融資先のまちづくり団体名、そして、まちづくり団体がどのような事業に取り組むことで収益を上げていくのか、収益のモデルまで詳しく記載することが望まれています。
現状、ソーシャルレンディングにおいてはまだ投資先の情報開示が行われないことがほとんどであり、その不透明さが投資におけるリスクとなっている状態です。従来の案件でも、事業内容の一部は確認できていましたが、事業内容とまちづくり団体名の両方が確認できれば、投資家にとっては大きなメリットだと言えます。
3-3.金利に関してはあまり高い数字は望めない
アンケートで回答を頂いたように、金利収入面に関しては、あまり高い数字は望めないかもしれません。 自治体が紹介するということは、民間企業等の営利を目的とするものではなく、むしろ、地域貢献的な意味合いが強いはずです。
横浜市との連携による案件では、金融機関から融資を受けにくい中小企業等が中心となることが推測されます。ソーシャルレンディングは例えば金利10%など高い利率で融資を行うスキームのため、貸し倒れの可能性は高くなります。
また、利益が薄い一方で公益性の高さにより案件化されている企業も出てくると思われますので、その場合は高金利での融資は難しく、投資家の利回りが2%や3%程度になる可能性もあります。
3-4.貸し倒れが起きたときのリスク
自治体が絡んでいる案件ということで、「貸し倒れの可能性は低いだろう」と信頼を寄せる方もいるかもしれません。しかし、基本的に横浜市は事業の妥当性などを判断しないとしているため、事業の成功、ひいては投資の成功を市が保証するというわけではないのです。
貸付利率が低ければ、貸し倒れ自体の可能性は低くなります。しかし、一般の金融機関から資金を調達できない中小企業等の場合、一度事業が失敗してしまうだけでも、倒産のリスクがあることを常に考えておかなければいけないのです。
公共事業関係の案件だと思って安易に投資するのではなく、投資先を選ぶときは投資家の目線で厳しく見なくてはいけません。事業が成功する可能性はどの程度あるのか、また、担保にはどういったものが設定されているのかなど、細かくチェックします。これまで以上に情報収集を十分に行った上で、投資先を判断していく必要があります。
まとめ
今回の横浜市とクラウドバンクの連携については、大きな意味合いが含まれます。この連携を通じて、ソーシャルレンディングが一般の自治体に認められ、企業等の資金調達手段として社会的に大きな役割を果たすきっかけになるかもしれません。
まだまだ知名度が低いこと、業界の正常化など、多くの問題を抱えるソーシャルレンディングですが、まずは事業各社の経営体制の健全化が急がれます。クラウドファンディングによる企業の資金調達モデルケースとして、クラウドバンクの取り組みの成功を期待したいところです。
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