日銀政策決定会合でドル円は更に上昇?植田総裁の会見やアノマリーを解説【2023年11月】

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2023年10月30・31日に日銀政策決定会合が行われました。金融緩和を維持するかどうかに、世界中の投資家の注目が集まりました。

本記事では、プロトレーダーの筆者が、日銀政策決定会合のポイントと、日本株やドル円への影響、11月のアノマリーを解説します。参考にしてみてください。

※本記事は2023年11月2日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。


目次

  1. 日銀政策決定会合の結果
    1-1.日銀政策決定会合の結果
    1-2.植田総裁の会見のポイント
  2. 日本株とドル円の動向
  3. アノマリーから見た11月の日本株
  4. まとめ

1.日銀政策決定会合の結果

1-1.日銀政策決定会合の結果

日銀政策決定会合の結果を解説します。政策金利は-0.1%と据え置きとなり、市場の予想通りとなりました。

イールドカーブコントロールの枠組みを維持したまま、10年国債金利の形式上の上限を、+0.5%から+1.0に変更しました。また、事実上の上限であった1.0%を「1.0%程度」と修正し、1.0%を上回る水準を容認することが決定されました。

指値オペは、適時決定するとし、毎営業日実施するとの文言は削除されました。

2023年10月30日の夜には、日経新聞から、イールドカーブコントロールの上限金利の見直しに関するリーク記事が出ました。リーク記事によって、日銀からの発表を前に、市場では大きな修正を織り込んだため、実際には微修正に留まったことが、逆にサプライズとなりました。

2024年の年末の物価を2.8%と大きく上方修正したものの、物価見通しの上方修正は市場で予想されていたため、サプライズとはなりませんでした。

2025年の年末の物価見通しは1.7%となっており、前回の1.6%から小幅に上昇しています。日銀が目標とする2.0%を下回っていることから、日銀のハト派的なスタンスと整合性があると考えられるでしょう。

つまり今回の数字を見ると、タカ派的とも捉えられる数字や内容が出ていたものの、事前にある程度市場に織り込ませたことによって、逆効果となった可能性があるとプロトレーダーの筆者は考えています。

1-2.植田総裁の会見のポイント

次に植田総裁の会見のポイントについて解説します。

植田総裁の会見は平素と変わらず、終始淡々と口を滑らせず、サプライズなしの回答が続きました。ポイントを確認しましょう。

  • 物価目標達成の見通しがつくまでは、イールドカーブコントロール・マイナス金利を維持
  • 春闘における賃金上昇は、重要なポイント
  • 円安の要因は、海外金利の上昇が変動要因だったように思う
  • 輸入物価の上昇(第一の力)は、短期的に家計負担増加に影響するが、その後賃金・物価上昇がマイナスの影響を上回る(第二の力)
  • 為替レートの変動が大きくなると経済物価への影響を及ぼすため、政府と緊密に連携し、物価見通しに影響が出れば、政策変更に結び付きうる
  • 10年金利が1%を大きく超えることは、予想していない
  • YCCの柔軟性に耐えることが適当であり、指値オペは緩和策としては効果があるが、一方で副作用も強くなる
  • 円安が物価見通しに影響する場合は、政策変更に結びつきうる。為替を含めた将来のボラティリティ増大を防ぐ面もある

為替に関しては、物価見通しに影響が出る場合は、政策を変更する可能性について示唆した程度でした。

プロトレーダーの筆者としては、足元の円安は日本側の要因ではなく、海外金利の上昇が影響しているとの発言に驚きました。日本円に対する信頼がなくなってきているという、長期的な視点が欠けている可能性があり、市場の認識ともギャップがあると言えるでしょう。

2.日本株とドル円の動向

日本株とドル円について解説します。

日銀政策決定会合を受けて、日本国債の金利は0.95%を挟んで高止まりする中、日経平均先物は上昇しています。市場ではタカ派警戒感が強かったことから、その反動が出た動きとなっています。

ドル円も、タカ派警戒感が完全に払拭されたことによって、一気に円安が進行し、150円を一気に突破しました。
ドル円チャート
※図はTradingView[PR]より筆者作成

上記はドル円と日経平均先物のチャートです。政策金利発表後、大きなサプライズがなかったことから、ドル円と日経平均株価は共に上昇する動きとなりました。

その後、植田総裁の会見でもサプライズがなく、淡々と無難な回答に終始したことによって、相場の上昇が継続しています。

ドル円チャート長期
※図はTradingView[PR]より筆者作成

長期間のチャートでドル円を見ると、2022年10月17日につけた高値が、視野に入ってきていると分かります。残り1円程度の水準まで、上昇しています。

政府次第ではあるものの、何もしない場合のリスクが大きくなってきているため、為替介入の可能性が十分にある水準と値幅になってきたと言えるでしょう。

ドル円は152円台も視野に入ってくるものの、大幅な上昇は狙いにくく、この水準でロング(買い)ポジションは取りにくいでしょう。一方で、上昇トレンドの中で逆張りし、ショート(売り)ポジションを構築することを躊躇している人は、多いのではないでしょうか。

プロトレーダーの筆者としては、リスクリワードを考えた場合に、ドル円は150円近辺にてロングでエントリーして取れる値幅と、万が一為替介入が発生した場合における、損失の幅を考えると、ショートの方が利幅としては大きいと予想しています。リスクコントロールを行いながら、ショートポジションを積んでいく戦略は、選択肢の一つでしょう。

3.アノマリーから見た11月の日本株

11月のアノマリーも含めて、日本株を考えてみましょう。

日本株に限らず11月は、1年を通して株式市場のパフォーマンスがいい年として知られています。実際のデータでも、好調なパフォーマンスを確認できます。

日経平均株価の月間騰落率
出典:三井住友DSアセットマネジメント「日経平均株価のアノマリー

上記は、日経平均株価の月間騰落率です。11月・12月・1月には、パフォーマンスが好調になる傾向が確認できます。

そのため、年末ラリーと呼ばれる動きが毎年意識され、9月あたりに仕込み、11月末あたりに利益確定し、12月は一旦休憩する投資家が多い傾向があります。

ただし、あくまでアノマリーであり、必ず高パフォーマンスになるわけではないため、注意してください。特に2024年は、アメリカの大統領選挙などイベントが控えており、相場が上下しやすい展開が予想されます。

アノマリーを活用する際には、あくまで参考程度に留めましょう。

4.まとめ

本記事では、日銀政策決定会合の結果や植田総裁の発言のポイントや、ドル円や日経平均株価などの動きを解説しました。

情報量が多く、何を見て判断すべきかを迷った際には、まずは市場の注目点を探し、分析してみましょう。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12