ESG(環境、社会、ガバナンス)データの収集スタートアップESG Floは10月31日、シード期(創業前または創業後間もない企業が行う資金調達)に525万ドル(約7.9億円)を調達したと発表した(*1)。調達した資金を元手に、欧米当局が求める要件に準拠した報告書作成支援を強化する。
今回の資金調達ラウンドは、米ベンチャーキャピタルRho Capital Partners傘下にてアーリーステージ(起業前後の段階)の投資に特化したRho Ignitionと米ベンチャーキャピタルTola Capitalが主導し、米コンサルティング大手ベイン・アンド・カンパニーなども参加した。
ESG Floは、人工知能(AI)を活用したESGデータの収集・開示をするプラットフォームを提供する。2022年に、B2BのSaaSソリューションをインキュベートするべインのファウンダーズ・スタジオから生まれた。
ESG Floは、ステークホルダーからの要求やESGへの影響度を踏まえ、サステナビリティデータの一元管理を必要とする工業、製造、インフラ業界の顧客を対象とする。
各企業においてサステナビリティ領域を担当するチームは現在、ほとんどの時間を手作業でのデータ収集に費やしており、非効率なプロセスの改善が求められている状況だ。そのような中、ESG Floは各社が堅牢で各規制に準拠したESGデータインフラを構築するのを支援する。
同社のテクノロジーは、AIの自動化とディープラーニングを活用することで、組織全体に広がるデータを収集し、欧州連合(EU)の企業持続可能性報告指令(CSRD)と米証券取引委員会(SEC)の非財務情報開示要件に準拠した報告書を作成できる。
CSRDはEUの企業サステナビリティ情報開示の新たな指令であり、23年1月に発行された(*2)。EUは50年までのネットゼロ達成を目指す中、サステナビリティに関する情報開示の強化を目的としてCSRDを導入した。
従来、EUでは非財務情報開示指令(NFRD)により非財務情報の開示を規制していたが、開示企業数や情報量などが不十分であったため、より信頼性の高い規制策の導入が進められていた。
CSRDはEU域内で売上高や総資産等の要件を満たす全ての大企業や上場企業に加え、EU域内の売上高が大きいEU域外の企業も規制の対象となり、規制対象になり得る日本企業にも対応が求められることになった(*3)。
CSRDの適用時期は4段階となる。まずは、NFRD適用企業を対象に24会計年度から開始し、その報告を25年から行う。
EUのCSRDを始め、世界各国でESG開示規制が強化する中、ESG規制に準拠し、効率的にESG関連データを収集・開示できるプラットフォームの活用が進む見込みである。
ESG Floは新たに調達した資金を活用し、CSRDやSEC対応のソリューションを拡大させるほか、AIエンジンを進化させるためのトップクラスのエンジニアを採用すると共に、マーケティングチームを強化する方針だ。
【参照記事】*1 PR Newswire「ESG Flo, an AI-Powered Data Infrastructure Platform, Raises $5.25 Million in Seed」
【参照記事】*2 欧州委員会「Corporate sustainability reporting」
【参照記事】*3 欧州理事会「Council gives final green light to corporate sustainability reporting directive」
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