株式会社日立製作所は、「J-クレジット」の認証・発行といったプロセスのデジタル化に向け、11月から本格的に実証を開始する。J-クレジットは、再生可能エネルギーの活用などによる温室効果ガスの排出削減・吸収量をカーボン・クレジットとして国が認証するもので、市場での取引や報告書に活用できる。
実証では、太陽光発電を対象に、日立のサステナブルファイナンスプラットフォームの一部を適用し、IoTセンサーなどを使ったデータ収集から、ブロックチェーンを使ったデータの検証、J-クレジットの認証・発行まで、一連のプロセスのデジタル化に関する効果検証を行う。
13年度から経済産業省・環境省・農林水産省は2013年度から、連携して温室効果ガスの排出削減・吸収量をカーボン・クレジットとしてJ-クレジット制度を運営している。しかし、クレジットの認証・発行に必要な温室効果ガスの排出削減・吸収量の計測や算定、検証は人手で行っており、中小企業や一般家庭での活用にはハードルがある。そのため、IoTやブロックチェーンなどデジタル技術を活用した、認証・発行の簡易化が求められていた。
同社は、環境省の「令和5年度J-クレジット制度に係るデジタル技術活用に向け調査検討委託業務」の委託事業者であるデロイトトーマツコンサルティング合同会社の協力事業者に採択された。今年6月から実証計画を策定し、今月から実証を行い、24年3月までに実証効果の整理と実運用に向けた計画の検討を行う予定。
同社は22年4月に日本取引所グループはじめ3社と協業し、同年6月に国内初のデジタル環境債を発行した際、デジタル環境債のシステムの一部を開発。グリーン性指標をタイムリーに可視化するウェブサイト「グリーン・トラッキング・ハブ」を適用することで、投資家のグリーン投資をもとに建設した再生可能エネルギー発電設備のCO2削減に関するデータを記録・管理している。
今月までにハブの稼働実績をもとに、J-クレジットの認証・発行のデジタル化に向け、対象設備のデータ収集・検証・報告を簡易化する基盤(簡易創出基盤)を構築した。具体的には、IoTセンサーで計測した発電量をもとにCO2削減量の測定・算定するほか、ブロックチェーン上への記録や、J-クレジット登録簿システムへのデータ連携まで自動的に行う。これにより、クレジットの認証・発行にかかる手間を削減し、供給量の拡大に繋げる狙い。
また、同社は22年9月~23年1月に東京証券取引所が実施したカーボン・クレジット市場の実証事業(試行取引)における取引システムを、日本取引所グループ傘下の株式会社JPX総研とともに共同開発している。東京証券取引所は今年10月に常設でカーボン・クレジット市場を開設しており、引き続きこの取引システムが利用されている。
同社はシステム構築で培った実績とノウハウを活用していくほか、プロジェクトの実施場所・温室効果ガスの排出削減・吸収量のモニタリング情報など、さまざまな属性情報を需要者が確認できるようにし、カーボン・クレジットの透明性をさらに向上させ、利便性の向上に貢献していきたいとしている。

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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