経済成長が著しい「ASEAN」の東南アジア諸国は、株の投資先としても期待されています。そこで今回は、ASEAN株式に投資をするメリットとデメリットについて解説します。また、ASEAN株式を購入できる証券会社も紹介しますのでチェックしてみてください。
目次
- ASEAN株式とは?
- ASEAN株式に投資をするメリット
2-1.新興国が多く成長性を期待できる
2-2.人口増加による経済成長が期待できる
2-3.割安で配当利回りが高い - ASEAN株式に投資をするデメリット
3-1.手数料が高い
3-2.株式に関する情報が少ない
3-3.為替リスクがある
3-4.カントリーリスクがある - ASEAN株式を購入できる証券会社
4-1.SBI証券
4-2.楽天証券
4-3.アイザワ証券 - まとめ
1.ASEAN株式とは?
ASEAN株式とはASEAN(東南アジア諸国連合)に加盟している国々の株式のことをいいます。
2020年現在、ASEANには以下の10ヶ国が加盟しています。
- インドネシア
- シンガポール
- タイ
- フィリピン
- マレーシア
- ブルネイ
- ベトナム
- ミャンマー
- ラオス
- カンボジア
これらの国々は、近年目覚ましい経済成長を遂げており、2008年からの10年間で名目GDPは約2倍になっています(参照:世界銀行)。また、アジア大洋州局地域政策参事官室の発表によれば、2018年時点での人口は約6億5,000万人(世界銀行統計に基づく)となっており、これは日本の人口の約5倍、アメリカの人口の約2倍となる多さです。
さらに、生産年齢人口が増加していることや、人口増加率も上昇していることから、将来的にも活発な消費活動が行われることが見込まれています。そのため、ASEAN諸国の株価も成長することが期待されています。
2.ASEAN株式に投資をするメリット
ASEAN株式に投資するメリットには、以下のようなものがあります。
- 新興国が多く成長性を期待できる
- 人口増加による経済成長が期待できる
- 配当利回りが高い
それぞれ詳しく見ていきましょう。
2-1.新興国が多く成長性を期待できる
ASEAN株式に投資をするメリットの一つが、経済成長を期待できるということです。現在、先進国といわれる多くの国では、経済が成熟状態にあります。日本のように超低金利で推移しているケースも多いため、これらの国々が今後大幅に成長することは見込みにくいというのが現状といえます。
一方、中国を中心としたアジア経済は、20世紀の後半から現在にかけて経済成長が加速しています。ASEANに加入している新興国の多くも同様に成長している段階であり、ASEANの経済規模や生活水準も相応に高くなりつつあることから、インフラの整備や今後の所得水準向上にニーズが高まると見込まれています。
2-2.人口増加による経済成長が期待できる
ASEAN株式に投資をするもう1つのメリットが、人口が順調に増加しているということです。
ASEANが今後も経済成長していくと見込まれている要因の1つが、人口の増加です。現在、ASEAN全体の人口は約6億5,000万人といわれていますが、2030年には7億人に到達すると考えられています(国連統計)。
また、15歳~64歳の生産年齢人口が増加傾向にあるため、他の先進国と比較して労働力を豊富に抱えています。さらに、ASEANの人々の生活水準も比例して向上しています。
そのため、消費活動に合わせた消費市場が拡大していることに加え、自動車や家電製品などの耐久財、外食・レジャーなどの嗜好品やサービスへの支出が増加すると見込まれています。
このように人口増加と経済成長の相関関係によって、今後の成長が大いに期待できるというわけです。
2-3.割安で配当利回りが高い
ASEAN株式は割安であることに加え配当利回りが高いというメリットもあります。
例えば、マレーシア株の「マラヤン・バンキング」を見てみましょう。マラヤン・バンキングはマレーシア最大の銀行で、ASEAN諸国のブルネイやシンガポール、フィリピン国内でも主要銀行となっています。
マラヤン・バンキングの株価は2020年10月14日現在7.28MYR(マレーシアリンギット)です。日本円とマレーシアリンギットの為替相場は1MYR約25円程度ですので、株式を100株購入しても1万8,200円となります。さらに、直近の配当利回りは約5.3%と、日本株の平均と比べて高い配当利回りとなっています。
3.ASEAN株式に投資をするデメリット
一方で、ASEAN株式に投資をするデメリットもいくつか存在します。
- 手数料が高い
- 株式に関する情報が少ない
- 為替リスクがある
- カントリーリスクがある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
3-1.手数料が高い
ASEAN株への投資では取引手数料が高いというデメリットがあります。たとえば、楽天証券の米国株とASEAN株それぞれの取引手数料は以下の通りです。
項目 | 米国株 | ASEAN株 |
---|---|---|
取引手数料 | 約定代金の0.495%(税込) | 約定代金の1.1%(税込) |
最低手数料 | 0円(約定代金2.22米ドル以下の場合) | 550円(税込) |
このように、大きな違いがあることがわかります。他の証券会社でも同じような傾向にあるため、手数料コストはかかりやすいといえます。
それに加え、外国株取引になると為替手数料も発生します。場合によっては手数料だけで約定代金の10%程度になることもあるため、注意が必要です。
3-2.株式に関する情報が少ない
ASEAN株式に対する情報が少ないというのもデメリットといえます。私たちが普段生活をしていて、ASEANの株式市場のニュースを耳にすることは少ないでしょう。そのため、各証券会社のレポートなどを参考に、自ら積極的に情報収集を行う必要があります。
株式を購入するタイミングや成長が期待できる業界・銘柄などを選定するためには、情報収集は欠かせません。その点で、ASEAN株式の情報が得づらいという部分は無視できないデメリットといえます。
3-3.為替リスクがある
外国株投資では為替リスクが常に存在するというのもデメリットとなります。日本円とASEAN各国通貨の為替相場は常に変動しています。そのため、せっかく得た利益が目減りしてしまったり、利益が損失に変わってしまったりする可能性もあります。
特に、新興国ではインフレ(物価上昇)が起こりやすく、通貨価値は長期で下落しやすい傾向にありますので、為替リスクをしっかりと認識した上で投資に臨むことが大切です。
3-4.カントリーリスクがある
外国株取引では、カントリーリスクがあるということもデメリットとなります。特にASEAN株式取引の対象となる国には新興国が多く、国の統治方法や国内情勢も日本とは大きく異なることがあります。
場合によっては、国の政策や方針転換などが株価に大きく影響を与える可能性があり、損失が発生するケースもあるでしょう。ASEAN株式を取引するのではあれば、各国の政治・経済に動向についてくまなくチェックする必要があることを覚えておきましょう。
4.ASEAN株式を購入できる証券会社
それでは、実際にASEAN株式を購入できる主な証券会社を紹介したいと思います。具体的には、以下の証券会社でASEAN株式を購入可能です。
- 楽天証券
- SBI証券
- アイザワ証券
それでは、それぞれ詳しく見ていきましょう。
少額取引でかつ取引の頻度が低いという方には向いている証券会社です。
4-1.SBI証券
SBI証券では、ベトナム、インドネシア、シンガポール、タイ、マレーシア各市場の上場株式を購入可能です。
取扱銘柄数は以下の通りです。
- ベトナム株式322銘柄
- インドネシア株式73銘柄
- シンガポール株式38銘柄
- タイ株式76銘柄
- マレーシア株式44銘柄
また、取引手数料は以下の通りです。
国内手数料(ネット注文) | ベトナム株式 | 約定金額の2%(税込2.2%) |
※最低手数料:1,200,000ベトナムドン(税込1,320,000ドン) | ||
※電話注文の場合 | ||
約定代金の2.66%(税込2.926%) | ||
最低手数料:1,200,000ベトナムドン(税込1,320,000ドン) | ||
インドネシア株式 | 約定代金の1%(税込1.1%) | |
※最低手数料:238,000インドネシアルピー(税込261,800インドネシアルピー) | ||
シンガポール株式 | 約定代金の1%(税込1.1%) | |
※最低手数料:28シンガポールドル(税込30.8シンガポールドル) | ||
タイ株式 | 約定代金の1%(税込1.1%) | |
※最低手数料:761タイバーツ(税込837.1タイバーツ) | ||
マレーシア株式 | 約定代金の1%(税込1.1%) | |
※最低手数料:76マレーシアリンギット(税込83.6マレーシアリンギット) | ||
現地手数料 | なし | |
現地諸費用 | なし |
※ベトナム株式、インドネシア株式の取引の場合、売却時に売却代金の0.1%がキャピタルゲイン税または売却税として徴収される。
※ベトナム株式、インドネシア株式、シンガポール株式、タイ株式、マレーシア株式の取引の場合、売却代金が最低手数料に満たない場合は、約定代金の50%(税込55.0%)が手数料になる。
※ベトナム株式ではベトナムドンでの決済のため、取引ごとの為替手数料は不要。ただし、必要資金は事前に円⇒ベトナムドンへの為替取引が必要。
※インドネシア株式、シンガポール株式、タイ株式、マレーシア株式では、外貨での決済、残高保有が可能。そのため取引ごとに為替スプレッドは不要。
SBI証券では、豊富なベトナム株式銘柄を含めた5ヶ国の株式を取引可能です。また、外貨決済もしくは外貨・円貨での決済を選択可能となっているので、取引のたびに為替手数料が発生するのを抑えることができます。
一方で、楽天証券と比較して最低手数料がやや高く設定されているのがデメリットとなります。国別の最低手数料についてしっかり比較・検討したほうがいいでしょう。
ある程度まとまった資金をもとに、頻繁に売買を行なう場合は、SBI証券の方が使いやすいといえます。
4-2.楽天証券
楽天証券では、ASEAN内のシンガポール、タイ、マレーシア、インドネシア各市場に上場している株式を購入することができます。
取扱銘柄数は以下の通りです。
- シンガポール株式:70銘柄
- インドネシア株式:72銘柄
- タイ株式:73銘柄
- マレーシア株式:43銘柄
また、取引手数料は以下の通りです。
国内手数料 | 約定代金の1.1%(税込) ※最低手数料550円(税込) ※4市場共通 |
現地手数料 | なし |
現地諸費用 | なし(楽天証券が負担) |
※電話取引の場合、インターネット取引料金に加え、別途2,200円(税込)が必要。
楽天証券では、各市場での取引手数料が一律1.1%と低く設定してあるため、取引しやすくコストもかかりにくいというメリットがあります。また、特定口座やNISA口座での取引にも対応しているという強みがあります。
一方で、円貨決済のみの対応となっているため、取引のたびに為替手数料が発生するというデメリットがあります。
4-3.アイザワ証券
アイザワ証券では、シンガポール、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナムの各市場に上場されている株式を購入可能です。
取扱銘柄数は以下の通りです。
- シンガポール株式69銘柄
- タイ株式194銘柄
- マレーシア株式110銘柄
- インドネシア株式33銘柄
- フィリピン株式77銘柄
- ベトナム株式277銘柄
また、取扱手数料は以下の通りです(いずれも税込)。
シンガポール株式 | 対面取引手数料 | 売買代金の2.20% | |
---|---|---|---|
ブルー | インターネット・モバイル発注 | 売買代金の1.65% | |
トレード | コールセンター発注 | 売買代金の1.98% | |
手数料 | コンサルネット発注 | 売買代金の2.20% | |
為替スプレッド | 83銭 | ||
タイ株式 | 対面取引手数料 | 売買代金の2.20% | |
ブルー | インターネット・モバイル発注 | 売買代金の1.65% | |
トレード | コールセンター発注 | 売買代金の1.98% | |
手数料 | コンサルネット発注 | 売買代金の2.20% | |
為替スプレッド | 8銭 | ||
マレーシア株式 | 対面取引手数料 | 売買代金の2.20% | |
ブルー | インターネット・モバイル発注 | 売買代金の1.65% | |
トレード | コールセンター発注 | 売買代金の1.98% | |
手数料 | コンサルネット発注 | 売買代金の2.20% | |
為替スプレッド | 43銭 | ||
インドネシア株式 | 対面取引手数料 | 売買代金の2.20% | |
ブルー | インターネット・モバイル発注 | 売買代金の1.65% | |
トレード | コールセンター発注 | 売買代金の1.98% | |
手数料 | コンサルネット発注 | 売買代金の2.20% | |
為替スプレッド | (100ルピアに対して)3銭 | ||
フィリピン株式 | 対面取引手数料 | 売買代金の2.20% | |
ブルー | インターネット・モバイル発注 | 売買代金の1.65% | |
トレード | コールセンター発注 | 売買代金の1.98% | |
手数料 | コンサルネット発注 | 売買代金の2.20% | |
為替スプレッド | 7銭 | ||
ベトナム株式 | 対面取引手数料 | 売買代金の2.20% | |
ブルー | インターネット・モバイル発注 | 売買代金の1.65% | |
トレード | コールセンター発注 | 売買代金の1.98% | |
手数料 | コンサルネット発注 | 売買代金の2.20% | |
為替スプレッド | (1,000ドンに対して)20銭 |
※買いの場合のみ、最低手数料は5,500円。
※売買代金は、現地における約定代金。
※現地諸費用等は上記手数料に含まれている。
アイザワ証券は、ASEAN6ヶ国の株式を取引可能で、国内の証券会社のなかでは最多の国数となります。また、それぞれの国の豊富な銘柄を取り扱っているため、幅広い選択肢から銘柄を選びたい方に適した証券会社です。
一方で、楽天証券やSBI証券と比較して、取引手数料が高いというデメリットがあります。発注方法によっても手数料が異なるため、自分がどのようなスタイルで売買をして、それにかかる手数料が納得できるものなのか、見極める必要があります。
まとめ
今回は、ASEAN株に投資をするメリットとデメリット、実際にASEAN株を購入できる証券会社について紹介しました。
今後の成長が見込まれているASEANの株式は、キャピタルゲインが狙える反面、為替リスクやカントリーリスクなどのリスク要因があり、日本株よりもリスクが非常に大きい点に注意が必要です。
ASEAN株式に興味のある方は、事前に情報収集を行ったうえで投資を検討してみてください。
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山本 将弘
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