投信セミナー講師が教える、投資初心者のファンド選びの7つのポイント

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誰でも最初は投資の初心者です。しかし、投資に興味を持ち、少しずつ成功体験を積めば、自然と喜びも大きくなり、投資を長く続けることができます。

ファンド投資は始める時期によって、多少の運・不運はあります。そこで、初心者が投資で成功する確率を高めるためには、ファンド投資をする前に考えるべきこと、ファンド投資を続けるなかで考慮すべきことなどをあらかじめ整理して頭に入れておくことが必要です。ここでは、私の運用実務経験をふまえて、投資初心者がやってはいけないことや、避けた方がよいことも含めて解説します。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. アセットクラスを意識する
    1-1.狭いアセットクラスを避ける
    1-2.はやりものや新規ファンドに飛びつかない
  2. 組合せで考える
  3. 税効果に留意する
  4. ファンド比較は多角的・総合的に
    4-1.ファンドの資産規模
    4-2.過去の運用成績
    4-3.ファンドのレーティング・格付け
    4-4.手数料
    4-5.分配金
  5. 月次レポートを読む
  6. 積立投資は重要な選択肢
  7. リバランスは重要
  8. まとめ

1.アセットクラスを意識する

アセットクラスとは、投資対象のことです。大きなところでは、国内株、国内債券、外国株、外国債券の伝統的4資産の他に、最近ではリート(不動産投資信託)やヘッジファンド、金などのコモディティ(商品)への投資も手軽にできるようになりました。アセットクラスによって、リスクが大きく異なることを知っておくというのがポイントです。

1-1.狭いアセットクラスを避ける

小さな市場に投資するファンドを購入すると、思わぬリスクがあったりします。例えば、観光で行った小国の印象が良かったからといって、その国の株式投資を始めてしまうと、あとで自分がどのようなリスクをどれだけ取っているか、自分で把握することが難しくなります。

最初に投資するファンドは、なるべく広い投資対象のもの、言い換えれば、大きな分類に投資するファンドを選びましょう。株式で言えば、世界株式、先進国株式、米国株式といったキーワードで、まずは検索してみましょう。

1-2.はやりものや新規ファンドに飛びつかない

AIだとか、ロボットのように、最近流行のキーワードが付いているようなファンドも初心者の方は注意したほうが良いでしょう。そもそも、そのような流行語を冠するのは、募集の際に売れやすくするためというファンドもあります。

このようなファンドは将来予測がつきにくく、すでに市場で人気化していて、将来下落するリスクが高くなっていることも考えられます。

2.組合せで考える

投資初心者の方の中には、最初どれかひとつの投資信託だけに集中して投資される方もいますが、これも注意が必要です。

投資信託は、集中投資よりも分散投資が重要です。リスクを分散して、運用収益をなだらかに平準化するためにも、投資信託は、複数のファンドに分散して購入することが大切です。金額は少なくてもいいので、3つくらいのファンド購入から始めてみるのが良いでしょう。

複数のファンドと言っても、同じようなファンドをいくつ購入しても意味がありません。株式と債券、投資対象とする地域が分かれているなど、必ず性格が異なるファンドを組み合わせることがポイントです。

投資を長期で安定させるために、中級者・上級者のレベルでは、さらにファンドの数が増えて行きます。性格が異なるおよそ10種類の投資信託を保有することを大きな目標にすると、運用収益が安定し、分散投資の効果を実感できるようになります。

3.税効果に留意する

見落としがちなのですが、通常、株式や投資信託などの金融商品に投資をした場合、これらを売却して得た利益や受け取った配当に対して約20%の税金がかかります。運用収益から税金が差し引かれるため、長期では大きな金額となる可能性もあります。

そこで、政府は「貯蓄から投資へ」の流れを支援するため、毎年一定金額の範囲内で購入したこれらの金融商品から得られる利益が非課税になる、つまり、税金がかからなくなる制度を用意しています。NISA、つみたてNISAなどがこれに相当します。

NISAを利用するには、銀行や証券会社などに専用の口座を開設する必要があります。ポイントは、メリットを受けるためには、投資する前にあらかじめ準備が必要ということです。途中から変更するのは面倒です。

4.ファンド比較は多角的・総合的に

さて、注意したいのがファンド比較ですが、具体的な着眼点を5点にまとめてみました。

  • ファンドの資産規模
  • 過去の運用成績
  • ファンドのレーティング・格付け
  • 手数料
  • 分配金

それぞれの着眼点について詳しく見ていきましょう。

4-1.ファンドの資産規模

ファンドが30億円未満の少額で運用されている場合、運用会社が十分なサービスを提供できず、ファンドが期限前に償還されてしまう可能性があります。

逆に、例えば、中小型株式ファンドでファンドが数千億円を超えるような大きな規模で運用されている場合、良い中小型銘柄をファンドで十分な量を買付けることが難しくなっている可能性があります。また、ファンドが大きいと相場急変時の流動性確保が難しくなります。私が、ファンドを運用していた際には、1週間で8割以上の銘柄を売却できるような流動性を確保することを一応の目安としていました。

4-2.過去の運用成績

今は過去の運用成績を比較的簡単にネット上で見られるようになりました。各証券会社のサイトや投資信託協会HPの中にある投信検索総合ライブラリーなどで手軽に見ることができます。過去の値動きやチャートについては、同種のファンドと短期・長期で比較するのが良いでしょう。

注目点としては、グラフの形状です。直近の状況よりも、相場全体が不調なとき、好調なときの基準価額の動きをグラフで追ってみます。運用成績と照らし合わせれば、ファンド固有のリスクをある程度推量できます。

最近では、2020年の3月に、世界的な新型コロナウィルス感染拡大で市場が大きく混乱しました。投資を検討するファンドについては、この前後に基準価額などがどう変化したのか確認したいものです。また、逆境のときの動きを確認ができないような運用期間が短いファンドは不確実性が高いので、最初は避けましょう。

4-3.ファンドのレーティング・格付け

モーニング・スターなど数社がファンドのレーティングや格付けの情報提供を行っています。
ファンドが最上級の評価を受けていても、そのファンドが将来にわたってずっと良いとは限りません。慣れてくると、最上級でなくても、いわゆる格上げ狙いで少し下のランクのファンドに長期で投資する楽しみも出てきます。

ただし、最下位やその周辺ランクにあるファンドは、何らかの懸念点を内包している可能性がありますので、最初は見送った方がいいでしょう。

4-4.手数料

購入時については、手数料のかからない「ノーロード」のファンドを、ネット証券を通じて買うか、または、運用会社から直接買うのが、手数料の面からは良いと言えます。

運用に関わる費用については、信託報酬が安いファンドを選ぶなら、参照指数に連動するインデックス・ファンド、ETFなどが対象になります。アクティブに運用するファンドは、信託報酬が個別に設定されています。

注意点として、購入時には必ず交付目論見書を読んで下さい。見て読んで、内容が良く分からない図表や、理解ができない記述が多いファンドは、見送る方が良いでしょう。中身が複雑なファンドは、長く運用を続けている間に、結局高コストになる可能性があります。

4-5.分配金

最近は、毎月分配型、隔月分配型、四半期分配型、半期分配型、無分配型など、いろいろなパターンがあります。

運用やお金を殖やす目的なら、先ほど述べた税効果の観点からも、毎月分配型は不適当です。ただ、配当がある株式や利払いのある債券に投資するファンドで、その配当や利払い程度はファンドの分配金として受取りたいという投資家の方の気持ちも理解できます。分配パターンは商品設計の段階で運用会社がそのファンドの分配パターンを設定してしまうのが実情です。ファンド選定の際には分配金にはこだわらず、無理な分配金を継続して支払っているファンドは避けることを意識しましょう。

上記の5点を参考に、ファンドの絞り込みをしましょう。ファンドの選択は、思い込みや流行などを排除して柔軟に行います。最後の決断は、全ての要素を加味して、あくまでも総合評価で決めるようにしましょう。

5.月次レポートを読む

ファンドの月次レポートは、ファンドを購入する前にも読めますし、ファンド選択の重要な手掛かりになります。投資環境分析や、保有上位10銘柄、今後の運用方針などを読んでみて、違和感のないことを確認しておきましょう。

また、ファンド購入後も月次レポートを読む習慣を身に付けましょう。投資環境の変化や運用状況の変化を含めて、ファンドへの理解が深まります。一方で、運用担当者のコメントが少なかったり、毎月記述が変わらなかったりするファンドがあれば、信頼性や運用の真剣さへの疑念が生じます。

いずれにしても、投資の知識・経験は一日にして得られるものではないでしょう。機会をみて市場環境やファンドの運用結果など、知識を幅広く得ることによって、投資上級者を目指しましょう。要は、投資したまま放置しないことです。

6.積立投資は重要な選択肢

投資を始めたあと、市場や基準価額が順調に上がって行けばいいのですが、下がるのが怖いという心理も働きます。このとき、二つのことを考えてみましょう。

ひとつは、株式でも債券でも、過去、ほとんどの金融資産で長期投資をしていれば、実はプラスの運用収益を得られたという実績があることを思い出しましょう。あまり、慌てないことです。

もう一つは、積立投資をしていれば、多少の相場の下落は怖くないということです。つまり少額でも毎月新たに買い増しをしていれば、相場が下落したときに、その投資信託を安く追加購入できます。金額が一定であれば、投資信託を多く購入できることになります。いずれ市況が回復して、投資信託の基準価額が上昇していけば、運用の効率が結果的に高まる恩恵を受けることができます。

メリットが多い積立投資は、選択肢の中に常に入れておくと良いでしょう。

7.リバランスは重要

投資を始めた後、少し時間をおいてから、見直しをかけることを念頭に置いておきましょう。分散投資が重要なのですが、時間の経過とともに分散の状況が変化することもあるからです。保有している投資信託商品の割合を見直すことをリバランスと呼んでいます。

リバランスは、最初に決めた割合に戻すのが基本です。具体的には、値下がった投資信託商品の割合(全体に占めるパーセンテージ)が下がっていますので、これの買い増しを行うことになります。場合によっては、売却も選択肢の一つです。値下がった投資信託を放置しないことがポイントです。

とはいえ、リバランスは多少の勇気と手間が必要になります。このとき、ネットやセミナーの情報を利用したりすることも出来るでしょう。また、意見を聞ける友人や相談できる人がいると安心です。

8.まとめ

投資信託選びの原則は、長期・分散投資です。投資信託は複数の銘柄やさまざまな資産に分散投資していますが、さらに複数の異なった性格の投資信託に分散して長期で投資すれば、結果的にリスクが低く高いリターンが狙えることになります。

分散投資を行う場合、投資の結果が出るのは最低でも3年程度の時間を要します。時間を味方につけて、その間に少しずつ成功体験を積み重ねていくことが重要と言えるでしょう。

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ファイナンシャルスタンダード株式会社 ポートフォリオマネージャー 松田 広

大手保険会社、投資顧問会社などを経て、現在は、ファイナンシャルスタンダード株式会社ポートフォリオマネージャー。海外勤務も長く、あらゆる資産運用業務に精通している経験を生かして、投資家目線での解説を心掛けています。慶応義塾大学経済学部卒、米国カリフォルニア大学バークレー校MBA修了。

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