2021年7月末時点世界時価総額ランキングにて、上位10社のうち7社が米国企業となっています。(米国企業以外の銘柄は、サウジアラムコ、テンセント、TSMC)このように、米国企業の存在感は株式マーケットの中で非常に大きく、米株式市場の動向について理解することは、日本株式市場や世界の株式市場に投資するにあたって欠かせないものとなります。
また、米国経済は先進国の中では長期的に成長しており、米国株式を投資対象として検討している方は多いのではないでしょうか。近年、日本株を対象としたものより米国株を含むグローバル株を対象としている投資信託への資金流入が増えているのも、個人投資家の間で米国株への人気に火がついている証といえるでしょう。
今回のコラムでは、その米株式投資をするにあたって、2021年後半に注意するポイントについて解説します。
- 米株式市場について
- 米株式投資にあたって注目すべきイベント
2-1.新型コロナウイルスの感染状況
2-2.金融緩和の縮小(テーパリング)に対するFRBのスタンス
2-3.米国企業決算
2-4.ミーム株 - まとめ
1.米株式市場について
米国株式市場の銘柄はニューヨーク証券取引所(NYSE)とナスダック(NASDAQ)という2大米国証券取引所に上場していますが、時価総額はニューヨーク証券取引所が3,000兆円、ナスダックが2,000兆円となっています。
東京証券取引所に上場している銘柄全体の時価総額は700兆円ほどであり、その他取引所と比較しても群を抜いて全体の規模は大きくなっています(2021年8月時点)。
このように、米国株式市場は世界で最も大きな市場であり、経済的規模の大きさから米国マーケットの動きそのものが、その他地域の株価の変動のきっかけになることもあるため、米国市場に対する理解は必要不可欠となります。また、これまでの持続的な経済成長や政治のスタンスを考えると、米国株式への投資をするメリットがあると言えるでしょう。
2.米株式投資にあたって注目すべきイベント
下記に米株式投資にあたって、株価に大きな影響を及ぼす可能性のある注目すべきことについて紹介します。
- 新型コロナウイルスの感染状況
- 金融緩和の縮小(テーパリング)に対するFRBのスタンス
- 米国企業決算
- ミーム株
それぞれのイベントについて詳しく見ていきましょう。
2-1. 新型コロナウイルスの感染状況
2020年初頭より新型コロナウイルス感染症が拡大し、2020年3月にはコロナショックにより全世界株式市場に大きな傷跡が残りました。そこから1年半経過した2021年8月現在も、いまだに新型コロナウイルスの感染状況は株式市場変動の大きな要因となっています。
新型コロナウイルス感染症による感染者数・死者数のヘッドラインにより、直接的に株式市場に影響を及ぼすこともありますが、新型コロナウイルスによる経済活動、旅行・レジャー関連企業などの業績、各国政府の金融政策のスタンスなどにインパクトを与え、間接的に株式市場の株価変動要因になることも考えられます。
米国において、2021年7月時点において一回目のワクチン接種率が55%を超えており、順調にワクチン接種は進んでいますが、より感染力の強いデルタ株等のコロナウイルスの変異種が感染拡大しており、米国では6月に2,000人台まで低下した一日当たりの感染者数が、7月時点において60,000人まで増加しています。そのような中で、今後、米国企業・米株式市場はコロナウイルスの感染状況にある程度左右されることを考慮しておきましょう。
2-2. 金融緩和の縮小(テーパリング)に対するFRBのスタンス
株式市場では、基本的にフォワードルッキングとなり、全てのイベントが株価に織り込まれます。FRBの金融緩和縮小に対するスタンスこそが正にその最たるものであり、実際に米国中央銀行の利上げに係る噂のような情報や決定権のない関係者の発言が米国株式・その他地域の株式市場の価格を大きくスイングさせることがあります。
米国株式市場は、2021年に入ってから、数パーセントの下落が数回ありましたが、その多くがFRBの利上げスタンスに関連するものでした。現在、FRBパウエル議長による巧みな市場とのコミュニケーションにより、そのようなフラッシュクラッシュが起きても株式市場は素早くリバウンドしていましたが、FOMCは2021年後半には7月・9月・10月・12月の4回、開催される予定であり、その他にもFRBの利上げスタンスに大きな影響を及ぼす消費者物価指数(CPI)の発表や、米国金融政策の判断材料として使用される地区連銀経済報告(ベージュブック)にも注視していく必要があるでしょう。
現在、FRBのパウエル議長は高い物価上昇率は一時的な需給ギャップによって生じており、失業率が十分に下がりきっていない中で、積極的な利上げ姿勢を見せてはいません。しかし、コロナウイルスの感染拡大が落ち着き、各企業の業績や雇用方針が改善する可能性を考えれば、スタンスの変更による米国株式市場が内包するリスクを念頭に置いておく必要があるでしょう。
2-3.米国企業決算
米国企業決算による結果が、直接的に個別銘柄の株価を左右することがありますので、各四半期ごとの決算にも注意しておく必要があります。特に現在のマーケットは、新型コロナウイルスという特殊要因もあり、各個別企業の決算にはっきりと明暗が分かれているような印象を受けます。
企業決算における売上高や純利益なども重要な数値を見るにあたって、市場予想の数値と比較することが重要になってきます。市場予想よりも良好な数値でポジティブサプライズとなり株価が急騰するケースもあれば、市場予想よりも低い決算によってネガティブサプライズとなり、株価が数十パーセント急落するケースもあります。
特に注目すべきセクターとして、最も新型コロナウイルスの影響を受けている旅行関連企業(エクスペディア、ロイヤル・カリビアン・クルーズ等)・航空関連企業(ユナイテッド航空、デルタ航空等)になりますが、新型コロナウイルスの影響を前面に受けており株価がまだコロナ禍前の水準に回復していない銘柄も多数あるため企業決算を契機に急騰する可能性もあるではないかと考えています。
2-4.ミーム株
ミーム株とは、アメリカで生まれたスラングであり、一部のSNSなどで注目を集めた銘柄です。バリュエーションを無視して需給バランスの崩壊により急激な株価変動を形成している株のことを指します。直近では、2021年に高騰したゲームストップがミーム株に該当します。
当該銘柄は、ネット交流サービスである“レディット”において個人投資家たちが結託し、空売りしているヘッジファンドに対抗するために意図的に買い支え、ヘッジファンド勢のショートスクイーズ(追加証拠金を差し出すことができず、強制的な買い戻しさせらること)により昨年から20倍以上の株価になるまで急騰しました。結果的に2021年8月下旬にはこのような投機的なミーム株の売買に嫌気がなされ、米国株式市場全体のパフォーマンスを示すS&P500種指数も数パーセント下落しています。
ゲームストップのようなミーム銘柄の特徴として、空売り比率が大きい(15%以上)ことが挙げられますが、このような銘柄はS&P500種指数のパフォーマンスよりも短期的には良好なケースが多く、またゲームストップのようにあまりにも急騰しすぎると米国株式市場全体の調整の要因となりうるため、注視しておくべき銘柄となります。
3.まとめ
米国株式投資をするにあたって、日本株銘柄と異なり情報の取得が容易でないことが、気を付けなければいけないポイントとなります。自分で米国企業の英語の決算書類やプレスリリースを読むことができる人でないのならば、日本語に翻訳されたもので情報を取得するしかなく、その中で手さぐりに良質な米国株を見つけ出すのは簡単ではないでしょう。
今回のコラムで述べさせていただいた注目すべきポイントを基に情報の取捨選択をしていただき、今後の投資に役立ててみてください。
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HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チーム
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