22年に入り急激な円安が進行していますが、この円安に起因する「円安メリット」によって株価が上昇している銘柄がいくつかあります。
円安メリットは一般的に輸出企業において顕著に表れるとされており、これらを見極め、うまく利用することでリターンにつなげることができます。
そこで今回は、2022年11月における円安メリットのある各業界の主要銘柄について、その株価推移や今後の展開などを詳しく解説していきます。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※2022年11月24日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。
目次
- 円安メリットとは
1-1.円安メリットの概要
1-2.円安の現状
1-3.円安メリットのある業界 - 円安メリットのある業界の銘柄例
2-1.SUBARU
2-2.日本郵船 - まとめ
1.円安メリットとは
まず、円安メリットとは具体的にどういうことなのかを解説します。
1-1.円安メリットの概要
自動車産業をはじめとする輸出企業においては、円安になると業績に良い影響が生まれ、その結果株価が上昇する可能性が大きくなります。
業界ではこの現象を「円安メリット」と呼び、輸出企業にとっての収益拡大要因として判断されています。
具体的には、「1ドル=100円」という状態から「1ドル=110円」へと対ドル価格で10円分の円安・ドル高が進行したケースでは、これまで海外へ向けて1つ1ドル(100円)で販売していた商品を1ドル(110円)で販売することができるようになるため、これを円換算することによって、売上高および利益の手取りが増加し、その結果として利益水準が上昇するというわけです。
このように、輸出企業では円安によって業績に好影響が及ぼされ、その結果として株価の上昇が期待できるほか、多くの輸出企業が含まれている「日経平均株価」などに対しても、良い影響を与えるとされています。
1-2.円安の現状
22年に入り、急激な円安が進行しており、22年1月時点において1ドル115円を付けていたドル円相場はその後の22年10月21日には一時1ドル151円後半まで到達するなど、実に32年ぶりの円安水準を記録することとなりました。
その後は2度の為替介入と見られる変動を経て、一時的に円高方向に推移する場面もみられたものの、アメリカの金融政策次第で今後もさらに円安が進行するのではないかとの見方が広がっています。
なお、直近では、22年11月22日から23日の朝にかけて、米長期金利の低下などを理由としたドル売り円買いの動きが活発化した後、ドル円相場は一時141円台半ばあたりまで持ち直しましたが、その後、23日深夜から24日未明にかけて「FOMC議事録」の公表やアメリカの指標発表などが行われたことを受けて、138円台まで下落する展開となっています。
1-3.円安メリットのある業界
前述した通り、円安メリットを享受することができるのは主に輸出企業となっており、下記のような業界がその対象として挙げられます。
- 自動車
- 海運
- 電機
- 精密機器
- 機械
2.円安メリットのある各業界の主要銘柄
では、上述した業界における、円安メリットを享受している主な銘柄を紹介します。
2-1.SUBARU
SUBARUとは、「自動車」と「航空宇宙」という2つの事業を展開するグローバルな輸送機器メーカーのことを指し、国内生産が比較的多いうえ海外売上高比率が高いため、円安の恩恵を受けやすいことで知られています。
SUBARUは22年11月2日に同年の4月から9月期の連結決算を発表しており、それによると売上収益が前年同期比30%増の1兆7508億円、純利益が74%増の778億円を記録したということです。
平均為替レートは1ドル=約130円となっており、円安が1,027億円の営業増益要因となったと見られています。
ここからは、実際の株価推移を見ていきます。
SUBARUは6月につけた2,611円の年初来高値を9月8日に更新し、その後の12日には今年最高値となる2,684円を記録しました。
しかし、米欧を中心とした世界的な金利上昇を原因として今後の新車販売にブレーキがかかるのではという見方から、内外の機関投資家や個人投資家らの手じまい売りの動きが活発化し、9月末には株価が大幅に下落することとなりました。
9月29日のニューヨーク市場においては、中古車販売の「カーマックス」が6月から8月期の決算発表を受けて前日比24.6%安と急落し、他の中古車販売会社も大幅な下落を見せたほか、自動車株にも大きな影響を及ぼし、これらの動きが東京市場にも波及する形となりました。
その後は前述した11月2日の4月から9月期の連結決算発表を受けて再び上昇を見せ、11月17日に一時下落を見せたものの、24日には2,366円まで価格を持ち直しています。
今後の展開については、円安の影響や好調な世界販売によって、株価にもいい影響を与える可能性が高いと見られます。
実際、22年10月の米国販売台数は、前年同月に比べて30%以上増加したことも報告されており、今後さらに増加していくことが期待されています。
また、SUBARUは新モデルの投入時期に合わせる形で、今年米国において車両の値上げを2回実施しており、22年度通期では値上げは951億円の増益要因になる見通しとなっています。
さらに、同通期の売上高と営業利益についても、22年8月に発表された前回計画を上方修正しており、円安の継続とともに株価も上昇していくのではと考えられます。
2-2.日本郵船
日本郵船とは、1885年9月29日に創立された大手海運会社で、国際的な海上運送業を中心とした総合物流事業のほか、客船事業などの運営を行っています。
日本郵船などの大手海運株は、運賃収入が原則ドル建てであることから円安が追い風になると見られており、実際に日本郵船は円安メリットを受けて過去最高の業績を記録しています。
具体的には、第2四半期の連結業績は累計で、売上高1兆3,658億円、営業利益1,633億円、経常利益7,653億円、親会社に帰属する当期純利益7,060億円を達成しており、同期の業績としては過去最高の純利益を計上しました。
ここからは、実際の株価推移を見ていきます。
日本郵船は3月18日に今年の最高値となる4,163.5円を記録しましたが、その後は4,000円台を突破することなく3,000円台で推移し、9月30日には2,538円まで下落する格好となりました。
この下落の要因としては、米欧など世界の主要中央銀行による大幅な利上げ継続を原因として、世界景気が冷え込むのではというリスクが警戒されており、その影響が特に大きい海運市況の先安観の広がりが、海外の投資家などの手じまい売りを誘発したことが挙げられます。
しかしその後は、夏場以降に急落を見せていたコンテナ船の運賃市況に下げ止まり感が出てきたことが見直し買いを誘発し、再び上昇する展開となりました。
また、想定以上の為替の円安ドル高によって、海運業の当面の収益が下支えされるのではという見方も多く、自己株買いをはじめとする株主還元への期待感も押し目買いを誘う要因となっています。
今後の展開については、円安の継続やコンテナ船の運賃市況などを受けて株価にもいい影響を与えるのではと予想されています。
ただ、日本郵船の長澤仁志社長が「2022年末に向けてリセッション(景気後退)は避けられず、コンテナ船の狂乱も今年いっぱいで平時に戻る」と語ったことも報じられており、今後の業績悪化への警戒感が強まっていることにも注意が必要です。
まとめ
現在急激な円安が進行している中、今回は特に円安メリットの大きい各業界の主要銘柄について紹介しました。
株式投資を行う際には、前述したような円安メリットのある銘柄をしっかりと把握し、動向をチェックしておくことで、投資機会を逃さないようにできるでしょう。
なお、円安は今後もしばらく続いていくと見られているため、今回紹介した主要銘柄を中心に輸出企業の株価にも注目しつつ、投資先を選定してみてはいかがでしょうか。
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中島 翔
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