環境問題や社会課題に関する報道を目にする機会が増え、世界でもESGやサステナビリティへの取り組みが加速しています。通信事業を手掛けるNTTでも、カーボンニュートラルや新たな通信技術、社会分野など多様な取り組みを行っています。
この記事では、NTTのESGやサステナビリティの取り組みについて紹介します。株価や配当情報などに興味のある方も参考にしてください。
※2022年11月14日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定のサービス・金融商品への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- NTTの概要
- NTTのESGに関する取り組み
2-1.カーボンニュートラル
2-2.ダイバーシティ&インクルージョン - NTTの10年間の株価推移と業績
3-1.10年間の株価推移
3-2.業績 - NTTの将来性
- NTTの配当・優待情報
- まとめ
1.NTTの概要
銘柄 | 日本電信電話 |
証券コード | 9432 |
株価 | 3,780円 |
PER(会社予想) | 11.23倍 |
PBR | 1.54倍 |
配当利回り(会社予想) | 3.17% |
※2022年11月14日のデータ
NTTの2021年度の営業収益を見ると、事業セグメント構成比は下記のとおりです。
- 総合ICT事業:41.7%
- 地域通信事業:22.8%
- グローバル・ソリューション事業:25.6%
- その他(不動産、エネルギー等):9.9%
最大の収益源である総合ICT事業は、携帯電話、国内における県間通信サービス、国際通信事業、システム開発事業などを展開しています。NTTドコモ、NTTコミュニケーションズ、NTTコムウェアの各社が事業を担っています。
地域通信事業を担当しているのはNTT東日本やNTT西日本で、具体的なサービスはフレッツ光です。NTT東日本はDXコンサルティングを中心とした事業改革支援にも取り組んでおり、新会社のNTT DXパートナーを2022年1月に設立しました。
2番目に営業収益の多いグローバル・ソリューション事業は、システムインテグレーション、ネットワークシステム、クラウドサービス、グローバルデータセンターなどを主な事業内容としています。NTTデータが主に担っている事業であり、データセンター事業では更なる事業拡大を目指し、さまざまなパートナー企業との協業や投資効率化を行っています。
NTTグループでは不動産事業やエネルギー事業などにも取り組んでおり、NTTアーバンソリューションズやNTTアノードエナジーが担っています。NTTアノードエナジーは再生可能エネルギーの推進を手掛けている企業であり、NTTにおけるESGの「E.環境部門」を推進する役割です。
2.NTTのESGに関する取り組み
NTTはサステナビリティ・ESGに注力している企業でもあり、外部からも一定の評価を受けています。
2-1.カーボンニュートラル
「NTT Green Innovation toward 2040」において、2040年度のNTTグループ全体のカーボンニュートラルの目標を定めました。2030年時点では、グループ全体に先駆けてモバイル(NTTドコモ)、データセンターのカーボンニュートラルを実現。NTTグループ全体で、温室効果ガス排出量を2013年度比で 80%削減することを目標に設定しました。
温室効果ガスの排出量削減のための取り組みは2点あります。まず1つ目は再生可能エネルギーの利用拡大で、NTTアノードエナジー社が推進しています。NTTグループの持つ技術や資産を活用し、グリーン発電事業などを手掛ける企業です。さまざまなパートナー企業と連携し、太陽光、風力、地熱、バイオマス、水力といった再生可能エネルギー発電所の開発を行っています。
2つ目はIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)の導入で、革新的なネットワーク・情報基盤を意味します。IOWNは最先端の光技術を最大限に利用し、電力効率を100倍にすることを目標としています。またIOWNの強大な情報処理能力を活用し、社会全体の持続的な幸福を追求するとしています。
なお2022年11月15日に、IOWNを2023年3月に一部実用化するとの報道が出ました。来年3月から通信の遅れを従来の200分の1に低減した専用回線のサービスをスタートし、ロボットを使った遠隔医療などでの活用を見込んでいるとのことです。
2-2.ダイバーシティ&インクルージョン
NTTグループは人材の多様性を生かすことでイノベーションの創出につながると考え、ダイバーシティ&インクルージョンを重要な経営戦略に位置付けています。主に下記の取り組みを推進しています。
- 育児・介護
- 障がい者
- LGBTQ
- グローバル
- 多様な働き方
育児・介護では、企業主導型保育園や事業所内の託児所を設置。介護制度として、最大1年6カ月の介護求職があり、これは法定の93日以内を大きく上回る水準です。
障がいのある方の積極的な採用を推進するため、特例子会社を設立。3,900名以上の障がい者の方が勤務しています。
LGBTQに関しては性的嗜好や性自認に関係なく、誰もが自分らしく生きて働ける組織や社会の実現を目指しています。具体的な施策として、単身赴任手当や看護休暇などの制度を、同性パートナー等にも拡大しています。
2-3.サステナビリティ関連の指標に採用されている
Dow Jones Sustainability Index(DJSI)において、NTTは3年連続でWorld Indexに、7年連続でAsia Pacificに選定されています。この指標は、米国のS&P Dow Jones Indices社とスイスのRobecoSAM社が共同開発したものです。毎年ESGの側面から企業のサステナビリティを評価し、時価総額を加味して総合的に優れた企業を選定する指標です。
「S&P Global Sustainability Awards 2021」においては、通信セクターにて2019年から3年連続で「ブロンズクラス」に認定されています。
また「FTSE4Good Index」は、ロンドン証券取引所の子会社が設定しているESGインデックスで、NTTは2019年から4年連続でインデックスに採用されています。
3.NTTの10年間の株価推移と業績
ここからはNTTの株価の長期トレンド、近年の業績について見ていきましょう。
3-1.10年間の株価推移
直近10年の株価は、ほぼ右肩上がりで推移してきました。2013年1月は900円台であった同社の株価は、現在は3,700円程度と約4倍に成長しています。2020年は新型コロナの影響で伸び悩み一時期2,000円近くまで下げましたが、2021年から上昇して過去最高を更新しています。
3-2.業績
近年の業績推移は以下のとおりです。
年度 | 営業収益 | 営業利益 | 当期純利益 |
---|---|---|---|
2016 | 113,910 | 15,398 | 8,001 |
2017 | 117,821 | 16,411 | 8,979 |
2018 | 118,798 | 16,938 | 8,546 |
2019 | 118,994 | 15,622 | 8,553 |
2020 | 119,440 | 16,714 | 9,162 |
2021 | 121,564 | 17,686 | 11,811 |
※単位:億円
営業収益は毎年11~12兆円前後、営業利益は1兆6千億円程度、当期純利益は8,500億~9,000億円程度で推移しています。いずれも徐々に増加しており、2021年度は過去最高の業績となりました。直近の2022年度第2四半期では、営業収益は対前年で6.8%の増収、営業利益は1.3%の減収、当期利益は3.1%の増収となりました。
2022年度の業績予想は、営業収益・営業利益・当期利益いずれも過去最高を見込んでいます。総合ICT事業とグローバル・ソリューション事業での大きな伸びが予想されています。
4.NTTの将来性
NTTグループの将来性について、業績とESGの両面から考えていきます。まず業績に関して、近年は堅調な数字で推移しています。なだらかではありますが徐々に営業収益や当期純利益が増加しており、2021年度は過去最高となりました。2022年度も過去最高になるとの予想を出しており、順調な状況と言えます。
NTTのビジネス領域のメインは通信インフラであり、短期・中期で収益が急激に減るリスクは少ないと言えます。通信事業は参入障壁が非常に高く、国内で利益を生み出す構造は簡単には崩れないでしょう。その一方で今後も大きく成長できるかどうかは、グローバル・ソリューション事業や、国内のDXコンサル事業などにかかっているのではないでしょうか。
サステナビリティの観点から見ると、カーボンニュートラルの領域で先端的な取り組みを複数行っています。次世代通信ネットワーク「IONW」など未来の技術が商用され、社会に普及させることができれば、社会全体のサステナビリティへの貢献と業績拡大につながるのではないでしょうか。2023年からはIOWNのサービス開始も予定され、今後の発展が期待されます。
またESGの「S.ソーシャル」の分野においても、育児・介護に関する制度、障がい者の積極的な採用、LGBTQに対する理解などに関する具体的な取り組みを実施しています。
NTTグループのESG関連に関する取り組みは外部からも評価され、DJSIなどサステナビリティ関連の指数にも採用されています。ESGを重視する欧米の基準もクリアしており、同社のサステナビリティのレベルは高いことが分かります。
5.NTTの配当・優待情報
1株あたり年間配当 | 2020年度実績:110円 2021年度実績:115円 2022年度予定:120円 |
主な株主優待 | dポイント進呈 |
1株あたり配当は近年やや増加傾向であり、2022年度も前年より5円高い120円を予定しています。配当利回りは3%程度であり、国内企業ではやや高い水準です。
株主優待では、全国共通ポイントであるdポイントを進呈しています。必要な保有期間と進呈されるポイント数は下記のとおりです。
- 2年以上3年未満:1,500ポイント
- 5年以上6年未満:3,000ポイント
まとめ
NTTグループはESG・サステナビリティにも取り組んでいます。カーボンニュートラルやIONWなどの環境分野だけでなく、社会分野でも多数の取り組みを行っています。このような姿勢が評価され、海外のさまざまなESG関連の指数にも組み込まれています。
NTTグループはESG投資に関心のある方にも適した企業の1つと言えます。ただし株式投資には価格変動のリスクがあるため、慎重に判断することが大切です。
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