今回は、チェーンリンク(LINK)のアップデートについて、大手仮想通貨取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では仮想通貨コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。
目次
- DMM Bitcoinとは
1-1.DMM Bitcoinの概要
1-2.DMM Bitcoinの特徴 - チェーンリンク(LINK)とは
2-1.チェーンリンク(LINK)の概要
2-2.仮想通貨としてのスペック - チェーンリンク(LINK)の特徴
3-1.ブロックチェーンと外部サービスをつなぐ役割
3-2.異なるブロックチェーン同士をつなぐ役割
3-3.多岐にわたるユースケース - チェーンリンク(LINK)のアップデート状況
4-1.Chainlink2.0
4-2.Economics 2.0(ステーキングの実装) - まとめ
22年11月9日より、国内の暗号資産(仮想通貨)取引所DMM Bitcoinが、新たに仮想通貨「チェーンリンク(LINK)」の取り扱いをスタートしました。
チェーンリンク(LINK)はDMM Bitcoinが展開する現物取引およびレバレッジ取引において対応が開始されたということで、国内の投資家の間で大きな話題となっています。
そこで今回は、DMM Bitcoinへ新たに上場されたチェーンリンク(LINK)について、その概要や特徴、現在のアップデート状況などを詳しく解説していきます。
①DMM Bitcoinとは
1-1.DMM Bitcoinの概要
「DMM Bitcoin」は株式会社DMM.comのグループ会社であるDMM Bitcoinが運営する暗号資産取引所です。DMMグループが培ってきた金融サービスのノウハウを活用し、株式などの金融商品取引経験のある投資家が利用しやすい取引サービスを提供している特徴があります。
DMM Bitcoinは2Wayプライス方式の「販売所」に特化しており、現物取引とレバレッジ取引を提供しています。同社は規制準拠と顧客への安全なサービス提供を重視しており、現物資産を追加するよりも、トレーディング機能開発にリソースを注いでいます。新たな注文方式の導入により販売所のスプレッドの課題を緩和するなど、金融ノウハウを活かした事業展開が魅力となっています。
1-2.DMM Bitcoinの特徴
①取り扱い銘柄が豊富
DMM Bitcoinは取り扱い銘柄数が多く、下記の通りとなっています。
DMM Bitcoin 現物取引取扱い銘柄 | 28種類:ビットコイン、イーサリアム、リップル、ライトコイン、ビットコインキャッシュ、ベーシックアテンショントークン、ステラルーメン、モナコイン、オーエムジー、チェーンリンク、イーサリアムクラシック、エンジンコイン、トロン、メイカー、ポリゴン、アバランチ、ジパングコイン、チリーズ、フレア、ニッポンアイドルトークン、アクシーインフィニティ、ザ・サンドボックス、Algorand、エイプコイン、FCRコイン、へデラハッシュグラフ、オアシス、シバイヌ |
DMM Bitcoin レバレッジ取引取扱い銘柄 | 34種類:ビットコイン、イーサリアム、リップル、ライトコイン、ビットコインキャッシュ、ベーシックアテンショントークン、ステラルーメン、モナコイン、ネム、クアンタム、オーエムジー、イーサリアムクラシック、エンジンコイン、シンボル、テゾス、ポルカドット、IOST、トロン、エイダ、ジパングコイン、アバランチ、チリーズ、チェーンリンク、メイカー、ポリゴン、ソラナ、コスモス、ドージ、アクシーインフィニティ、ザ・サンドボックス、Algorand、エイプコイン、へデラハッシュグラフ、シバイヌ |
②各種手数料が無料となっている
DMM Bitcoinでは、取引手数料、口座開設手数料、口座維持手数料、出金手数料、ロスカット手数料、クイック入金サービスなど様々な手数料が無料です。但し、BitMatch手数料やスプレッド、ポジション管理手数料は別途発生します。
特に仮想通貨の送金手数料がかからないという点は他の取引所との仮想通貨のやり取りもし易くなるため、DMM Bitcoinで取り扱いのない銘柄や、取引所外のウォレットへの転送などを考えても非常に使い勝手の良いサービスです。
③サポート体制が充実している
DMM Bitcoinでは、土日祝を含めた365日体制での充実したサポートを提供しているため、ユーザーはお問い合わせフォームまたはLINEから、いつでもサポートを受けることが可能です。
④高いセキュリティ環境を実現している
前項においても少し触れましたが、DMM Bitcoinはその強固なセキュリティが業界から高く評価されています。、ユーザー資産の分別管理を行っているほか、それらの資産の95%以上をインターネットから切り離された「コールドウォレット」で保管するなど、徹底的なハッキング対策を講じています。
⑤便利な取引ツールが提供されている
DMM Bitcoinでは、シンプルな「STモード」と本格的な取引が可能な「EXモード」が選択できるスマートフォン向けの取引アプリのほか、ダウンロードせずに利用が可能なブラウザタイプのPC版取引ツールが提供されています。
②チェーンリンク(LINK)とは
1-2.チェーンリンク(LINK)の概要
「チェーンリンク(LINK)」とは、アメリカの「スマートコントラクト社」によって開発されたプロジェクトで、17年の公開後、19年5月にメインネットがローンチされました。チェーンリンクはその名の通り、ブロックチェーン・テクノロジーを別のブロックチェーンまたは外部のシステムなどにリンク(接続)することを目的として生み出されました。
通常、ブロックチェーンネットワークが直接外部のデータにアクセスすることは、仕様上不可能となっています。しかし、チェーンリンクはそんなブロックチェーンが抱える課題を解決するため、ブロックチェーンネットワークと外部システム、つまり「オフチェーン」とをつなぐ「ミドルウェア(中間処理役)」の機能を有しており、ブロックチェーン上のデータと現実世界のデータをリンクさせることが可能となっています。
なお、「LINK」はチェーンリンク上において流通しているネイティブトークンのことを指し、チェーンリンクにおけるさまざまなやりとりに利用されています。
2-2.仮想通貨としてのスペック
チェーンリンク(LINK)の仮想通貨としてのスペックは下記の通りです。
ティッカーシンボル | LINK |
価格(22年12月13日現在) | 6.38ドル(886.52円) |
時価総額 | 約31.3億ドル(約4357.7億円) |
時価総額ランキング | 22位 |
循環サプライ | 4.9億LINK |
発行上限 | 10億LINK |
③チェーンリンク(LINK)の特徴
3-1.ブロックチェーンと外部サービスをつなぐ役割
前述の通り、チェーンリンクの最大の特徴はブロックチェーンと外部サービスをつなぐことができるという点にあります。
仮想通貨において利用されているブロックチェーン・テクノロジーは、高度なセキュリティ性能や高速な送金スピードなどから、これまでの金融サービスよりも大幅に優れた機能性を持っています。しかしその一方で、「インターオペラビリティ(相互接続性)」を有していないという課題が残っていました。
そんな中、チェーンリンクは上の図のように、「分散型オラクル」のミドルウェアとしての機能を持っているため、チェーンリンクを経由することによって、外部データとブロックチェーンを相互接続することが可能となりました。そしてこれにより、外部データをブロックチェーンに取り込むだけでなく、その反対にブロックチェーンの高度なテクノロジーやデータを、電子決済や銀行決済といった既存の金融サービスに活用することができるようになったというわけです。
なお、「オラクル」とはオンチェーンであるスマートコントラクトと、オフチェーンである外部のデータソースを接続するサービスのことを指し、中央集権型と分散型に分けられます。
チェーンリンクは単一障害点のない「分散型オラクルネットワーク」を構築しており、連結された複数のオラクルを用いて取り込みたい外部データの検証を行うことで、中央管理者やそのシステムの脆弱性を克服するとともに、データの信頼性の向上を実現しています。また、これら複数のオラクルを運営しているそれぞれのオペレーターに対して、報酬としてネイティブトークン「LINK」が支払われる仕組みとなっています。
3-2.異なるブロックチェーン同士をつなぐ役割
チェーンリンクはブロックチェーンと外部データを接続することができるだけでなく、異なるブロックチェーン同士をつなぐことも可能となっています。
前述の通り、ほとんどのブロックチェーンはインターオペラビリティを有していないため、異なるブロックチェーン同士をそのまま相互接続することが不可能でした。しかし、間にチェーンリンクを挟み、チェーンリンクが持つ「クロスチェーン技術」を活用することによって、異なるブロックチェーン間において送金をはじめとするデータのやり取りが可能となります。
クロスチェーンは、それぞれの仮想通貨銘柄におけるデメリットを互いに補うことができるだけでなく、互いのメリットを相互利用できるという利点もあるため、仮想通貨全体のクオリティを高めるためにも必要不可欠な要素となっています。
3-3.多岐にわたるユースケース
チェーンリンクは外部のデータソースや異なるブロックチェーンとの相互接続ができるという点から、PayPalの決済サービスや国際送金など、さまざまなシーンにおいてそのユースケースを拡大しています。
19年には、「Google Cloud」とパートナーシップを締結し、その後21年8月にはチェーンリンクのネットワーク上において、Google Cloudが提供する天気データが利用可能となりました。このほかにも、日本発のパブリックブロックチェーン「Astar Network(アスターネットワーク)」の開発を手がける「Stake Technologies(ステイクテクノロジーズ)」と技術的連携を行なったほか、中国の国家ブロックチェーン・プラットフォームとして知られる「BSN(ブロックチェーン・サービス・ネットワーク)」がチェーンリンクのオラクルを導入したことも発表されています。また、22年9月には、銀行間メッセージングサービスの「SWIFT」と、クロスチェーンのインターオペラビリティに関する実証実験プロジェクトで連携していくことを発表しています。
このように、チェーンリンクはその利便性の高さから、国内外で多くの企業との提携を進めており、DeFi分野を中心としてそのユースケースをますます拡大しています。
④チェーンリンク(LINK)のアップデート状況
4-1.Chainlink2.0
チェーンリンクは21年4月15日に「Chainlink2.0」と題されたホワイトペーパーを公開しており、システムのさらなる拡張を進めるとともに、スケーラビリティの改善およびプライバシーの保護を強化したDAppsの構築を可能にすることを目指すと説明しています。
また、特に注力する分野としては、下記のようなものが挙げられています。
- ハイブリッドスマートコントラクト
- スケーリング
- 複雑さの排除
- 秘匿性
- トランザクションの順序の公平性
- 信頼性の最小化
- インセンティブベースのセキュリティ
なお、「ハイブリッド・スマートコントラクト」とは、オンチェーンとオフチェーンのハイブリッドのことを指し、これまでのスマートコントラクトを遥かに超えた、幅広いユースケースに対応することが可能なスマートコントラクトとなっています。
現在は、このホワイトペーパーをもとに開発が進められており、22年9月末には、次に解説する「ステーキングの実装」が発表されました。
4-2.Economics 2.0(ステーキングの実装)
チェーンリンクは22年6月、Chainlink2.0の一環として進めていた「ステーキング」に関する長期的な目標を公開しました。公開された目標は、大きく下記の4つに分けられています。
①チェーンリンクサービスにおけるインセンティブベースのセキュリティとユーザー保証を向上させる②チェーンリンクネットワークへのコミュニティ参加を有効にする
より多くのコミュニティメンバーがLINKトークンをステーキングしてオラクルネットワークのパフォーマンスをサポートできるようにすることで、メンバーがチェーンリンクネットワークに直接参加できる環境を整えるということです。
③継続的な報酬の創出
チェーンリンクは、長期間ステーキングを行っているステーカーに対して、その時間の経過とともに、より多くの継続的な報酬を付与していきたいということです。
具体的な報酬源としては、ユーザーがチェーンリンクのオラクルサービスに支払う使用料や、「パートナー成長プログラム(PGP)」で得られる利益などが挙げられています。
④ノードオペレーターがより価値の高い仕事にアクセスできるようにする
チェーンリンクはステーキングの最終的な目標として、分散型オラクルネットワークに参加するノードの選択方法に関して、堅牢な評価の枠組みを確立することを挙げています。そして、その後の22年9月末、実際にステーキングが導入される拡大計画である「Economics 2.0」が発表されました。
Economics 2.0はその目的として、オラクルサービスを提供する範囲を拡大すること、そしてデータプロバイダーに支払われる報酬を拡大することを掲げています。また、ステーキングされたLINKトークンをデータプロバイダーの担保に追加することが可能となるほか、データプロバイダーはLINKトークンを所有すればするほど、さらに高額なコントラクトに対処することが可能となり、受け取った報酬はステーキング参加者にも分配されるということです。
なお、今回はまず、「SCALE」と「BUILD」と呼ばれる2種類のプログラムが始動したことが発表されています。
9月28日に始動した「Chainlink SCALE」プログラムでは、クロスチェーン拡大を強化する取り組みを進めていくとしており、dAppが支払わなければならないオラクルサービスに対する使用料を負担することで、新機能の研究開発をさらに促進していくということです。なお、Chainlink SCALEには「Avalanche(アバランチ)」、「Metis(メティス)」、「Moonbeam(ムーンビーム)」、「Moonriver(ムーンリバー)」が参画していることが報告されています。
また、同じく9月28日に始動したもう一つのプログラム「Chainlink BUILD」は、dAppプロジェクトを対象とした「アクセラレーター」のような位置付けであると発表されています。具体的には、BUILDの参加者はLINKトークンを一定数ステーキングすることによって、プロジェクトの初期段階からオラクルサービスを統合することができ、技術サポートやコミュニティへのアクセス権などを得ることが可能だということです。
このように、Economics 2.0は一般投資家のステーキングへの参入など、より多くのサービスプロバイダーがエコシステムに参加可能となることを目指しています。チェーンリンクの共同創設者として知られるSergey Nazarov氏によると、ステーキングサービスは年内にも開始される予定となっていますが、その前に限定的な先行リリースも予定されているということで、業界からは注目が集まっています。
⑤まとめ
チェーンリンクはブロックチェーン技術を別のブロックチェーンまたは外部のシステムなどに接続することを目的としたプロジェクトで、分散型オラクルのミドルウェアとしての機能を持っていることから、さまざまなプロダクトや既存の金融サービスにおいて活用が進んでいます。
22年9月末には、「Economics 2.0」と呼ばれるステーキング導入に関する拡大計画が発表されており、今後はより多くのサービスプロバイダーがチェーンリンクのエコシステムに参加できるようになるということで、ネイティブトークンであるLINKの価格にもいい影響を与えるのではと期待されています。
今回、新たにDMM Bitcoinにおいて取り扱いがスタートされることが明らかとなったため、興味のある方はこの機会にDMM Bitcoinで口座を開設し、LINKの取引を行ってみることをおすすめします。
中島 翔
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