ソーシャルレンディングのそれぞれの投資案件には、運用期間が設定されています。短いものでは数ヶ月から6ヶ月以内というものがありますし、案件の中には1年間以上、場合によっては2~3年といった長期案件もあります。
そこで、投資初心者の方がソーシャルレンディング投資を始めるときに、長期運用の案件を選ぶほうが良いのか、それとも、短期運用の案件を選ぶべきかを考えるため、それぞれのメリットとデメリットを見ていきましょう。
目次
- 長期運用案件のメリット
1-1.安定した収入が得られる
1-2.投資に伴う時間、コストが不要 - 短期運用案件のメリット
2-1.各種のリスクが減る
2-2.良い案件があるときに、投資先を変えやすい - 長期運用の案件のデメリット
3-1.市況の変化に伴うリスクに巻き込まれやすい
3-2.他の投資対象に資金を移しにくい
3-3.投資以外で資金が必要になっても、解約ができない - 短期運用案件のデメリット
4-1.投資効率が悪くなる
4-2.常に最適な投資案件があるとは限らない - まとめ
1.長期運用案件のメリット
まずは1年以上など、長期の運用が行われるソーシャルレンディング案件のメリットを以下に記します。
1-1.安定した収入が得られる
ソーシャルレンディングでは、運用期間中は分配金が毎月支払われます(一部のソーシャルレンディング会社を除く)。そのため長期運用の案件の場合、貸し倒れなど問題が発生しない限りは長期間安定収入を確保できます。
例えば120万円を運用期間24ヶ月、年利6%の案件に投資したとします。その場合、24ヶ月にわたって120万円×6%=6,000円。つまり、毎月6,000円の分配金が自分の口座に振り込まれます(税引前、貸し倒れがおこらなかた)。運用期間が長ければ長いほど分配金を得る期間も長くなるため、長期運用の案件は安定収入の確保に寄与します。
1-2.投資に伴う時間、コストが不要
長期運用の案件のメリットは、投資に伴う労力と時間、コストを削減できる点が挙げられます。長期運用の案件を中心にした投資では、運用期間中は新しい案件を探す必要がなく、投資にかかる時間を減らすことが可能です。ソーシャルレンディング案件の情報を探す時間が捻出できない人にとって、長期運用の案件は手間を取られない点でメリットがあります。
また、ソーシャルレンディング投資の場合、あらかじめソーシャルレンディング会社内の自分の口座に入金を行わなければいけません。そのため、投資案件が多ければ多いほど、振込にかかる手数料は増えていきます。しかし、長期運用の案件に投資すれば入金回数が減り、手数料も削減できます。
2.短期運用案件のメリット
次に短期運用案件のメリットを見ていきましょう。
2-1.各種のリスクが減る
短期運用の案件では、様々なリスク軽減の効果が大きいと言えます。ソーシャルレンディング投資に伴うリスクの一つとして、運用期間中は資金を自由に引き出せない点が挙げられます。
例えば運用しているソーシャルレンディング会社が倒産した、市況日の変化により融資先の経営が悪化した、などのリスクも考えなければいけません。特に中小企業を中心に構成された案件の場合、そういったリスクに巻き込まれる可能性が高くなってしまいます。
しかし、融資の直後に倒産する事態などが起きない限り、短期運用の案件では事業者リスクや市況リスクに巻き込まれる可能性は低くなります。それでも資金が返ってこないリスクはあるため、融資先の審査を厳正に行うソーシャルレンディング会社を選ぶ必要はあります。
また長期での運用かつ不動産関係の案件に投資する場合、1年後や2年後の不動産市況の変化を想定しながら投資対象を選ばなくてはいけません。1年後や2年後に不動産相場が暴落するほどに市況が悪化すれば、ソーシャルレンディング案件に設定された担保の価値が落ちたり、融資先の不動産会社が返済できなくなったりするリスクが生じます。
3ヶ月や半年などの運用案件だからといってそういったリスクがゼロになるわけではありませんが、それでも劇的な形で市況の変動が発生する可能性は低くなります。短期運用の案件であればリスク対策が行いやすくなる、そう言えるでしょう。
2-2.良い案件があるときに、投資先を変えやすい
短期運用の案件では、投資金が戻ってくるまでの時間が短くなります。そのため、「今は年利6%の案件に投資しているが、もっと利回りの高い案件に投資したい」と考えたときに、償還された投資金をより年利の高い案件に投資しやすくなります。
また、ソーシャルレンディングに限らず、株投資やFX投資を行いたい、投資信託への投資に資金を集中させたい、といった場合でも比較的短期間で投資対象を変えることが可能です。資金の拘束期間が短いぶん、フレキシブルな資金運用が可能になります。
3.長期運用の案件のデメリット
それでは、以下で長期運用の案件のデメリットを確認しておきましょう。
3-1.市況の変化に伴うリスクに巻き込まれやすい
短期運用の案件のメリットで挙げた市況リスクに巻き込まれにくい点は、そのまま長期運用の案件のデメリットにつながります。特に2年や3年といった非常に長い運用期間の案件では、2年後や3年後の経済状況までも考えなくてはいけませんが、それは非常に難しいことです。
店舗運営などの案件に投資したとしても、短期間であればすぐに閉店してしまう可能性は低いですが、1・2年後には事業がうまくいかずに閉店している可能性があります。その場合は貸倒れが起きたり、資金の回収に時間がかかったりすることもあるでしょう。
そういった先行きまで考えなくてはいけない点は、長期運用案件のデメリットになります。
3-2.他の投資対象に資金を移しにくい
こちらも短期運用の案件に挙げたメリットの裏返しになりますが、長期運用の案件は資金が戻ってくるまでに一定の期間を要します。そのため、長期運用の案件に資金を一旦投下した以上、他の投資対象に資金を簡単に移せなくなるのです。
長期運用の案件ばかりに投資を集中させていると、資金が長期間拘束されるおそれが出てくるため、投資上のリスク対策としては複数の投資対象に分散して投資することが鉄則と言えます。
3-3.投資以外で資金が必要になっても、解約ができない
また、資金を拘束されることは、すなわち投資対象が自由に選べないことを言い得ているだけではありません。人生のステージにおいては、結婚や住宅の購入、出産や子供の進学などまとまったお金が必要になる様々なイベントがあります。
そんなとき、「自己資金がせっかくあったのに、ソーシャルレンディングに投資していて引き出せなかった。おかげで思ったような住宅が購入できなかった」「子供の進学のための資金が捻出できなかった」となっては、あまりにももったいない話です。
運用期間中は資金を自由に引き出すことができない点は、ソーシャルレンディングのリスクの一つです。よく考えてから投資する必要があります。
4.短期運用案件のデメリット
次に短期運用案件のデメリットも確認しておきましょう。
4-1.投資効率が悪くなる
短期運用の案件は運用期間が短いため、どうしても投資効率が悪くなります。
例えば長期運用の案件で資金を1年間運用するとしましょう。投資先への入金から実際の運用開始までにかかる日数が2週間、そして、運用の終了から自分の投資用口座に資金が戻ってくるまでに2週間かかった場合、資金の拘束期間は13ヶ月になります。しかし、実際に資金が運用された期間は12ヶ月にすぎません。
3ヶ月の短期運用の案件に投資した場合、資金の入金から2週間、そして、3ヶ月後に資金が戻ってくるまでに2週間かかるとしたら、3ヶ月の運用期間に対してやはり1ヶ月のタイムロスになります。つまり、1年のうち4ヶ月の間は資金を別に運用できないことになるのです。
したがって、長期運用の案件のタイムロスが1年と1ヶ月なのに対し、短期運用の案件ではそれよりも短い期間で1ヶ月のロスが出てしまう懸念があります。収益性を求める方にとって、年間を通じてタイムロスの回数が必要以上に増えてしまうため、短期運用の案件は扱いにくいとみなされてしまう部分があります。
4-2.常に最適な投資案件があるとは限らない
また、短期運用の案件を中心に投資する場合には、効率良く投資するためには頻繁に新しい投資対象を探す必要が出てきます。それまでの案件の運用期間が終了したときに新しい案件を探したとしても、自分にとって最適な案件がソーシャルレンディング会社から提供されているとは限りません。
長期案件に比べて運用効率はあまり良くないにもかかわらず、「収益性の高い案件を探していたら、1ヶ月も資金を遊ばせてしまった」ということもあり得ます。常に資産運用をして資産を積極的に殖やしていきたいという方にとっては、短期運用の案件のみに絞ると効率の悪さがネックになると言えます。
まとめ
長期運用の案件のメリットとデメリット、また、短期運用の案件のメリットとデメリット、それぞれを解説しました。長期運用の案件は収益性には優れていますが、そのぶんリスクが高くなります。短期運用の案件はリスク対策が可能ですが、代わりに投資効率が悪くなります。
つまり、リターンとリスクはいずれも長期運用の案件のほうが高く、短期運用の案件は低いと言えます。極力安全に投資できそうな対象を見つけたら、長期運用の案件に投資しても良いでしょう。
しかし、投資初心者の方では安全な案件かどうかをまだ見極めにくいでしょう。ソーシャルレンディング業界や経済動向、ビジネスのことをよく知らない方は、短期運用の案件を中心に投資に参加しながら、どのような案件が安全なのかを見定めていくほうが良いと言えます。
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