2021年3月期のクラウドバンク決算の結果は?注視したい9つの指標も

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日本クラウド証券が運営するソーシャルレンディングの「クラウドバンク」は、累計取扱金額1,500億円を突破し、国内のソーシャルレンディングとしてはトップクラスの実績があります。

その日本クラウド証券が2021年3月期の決算を発表しました。本記事では決算内容を詳しく確認し、重要なポイントをまとめてご紹介していきます。

目次

  1. クラウドバンク2021年3月期決算の内容
    1-1.営業収益、経常損益は前期比減も当期純損益は増加
    1-2.営業利益率は低下、当期純利益率は改善
    1-3.自己資本規制比率は300%以上を維持
    1-4.自己資本比率は前期比約3%上昇
    1-5.利益剰余金は約8億8,000万円
    1-6.流動比率
    1-7.固定比率
    1-8.有利子負債、D/Eレシオ
    1-9.ROE
  2. 親会社クラウドバンク株式会社の資料からわかる課題とリスク
    2-1.法規制によるリスク
    2-2.資金調達に関するリスク
  3. まとめ

1.クラウドバンク2021年3月期決算の内容

ソーシャルレンディングの「クラウドバンク」を運営する日本クラウド証券は、「業務及び財産の状況に関する説明書【令和3年3月期】」と「第24期決算公告(令和3年3月31日)」を開示しています。これらの資料を見ることで、クラウドバンク運営会社の売上や利益、財務状況を把握することが可能です。

決算内容を見てみると、クラウドバンクを軸とするクラウドファンディング事業は順調な伸びとなっており計画値を達成しています。一方、投資コンサルティング部門は案件の減少によって収益は減少しています。グループ全体での営業損益ベースでは1,500万円の黒字という結果になっています。それぞれの内容を詳しくみて行きましょう。

1-1.営業収益、経常損益は前期比減も当期純損益は増加

以下は、「業務及び財産の状況に関する説明書【令和3年3月期】」に記載されている、平成31年3月期〜令和3年3月期の経営成績等の推移です。

経営成績等の推移

※引用:日本クラウド証券株式会社
業務及び財産の状況に関する説明書【令和3年3月期】

以下は、主な数字をピックアップしたものです。

令和2年3月期 令和3年3月期 増減 対前年同期比増減率
営業収益 8億5,300万円 7億6,900万円 ▲8,400万円 ▲9.9%
経常損益 3億1,500万円 2億8,400万円 ▲3,100万円 ▲9.9%
当期純損益 3,300万円 2億400万円 1億7,100万円 618%

この数字を見ると、営業収益は前期比▲8,400万円となっています。平成31年3月期から令和2年3月期では5,700万円(7%)増加していますが、令和3年3月期は前期比で10%近い減収です。経常損益については減少が続いています。

一方、当期純損益については、平成31年3月期が5億400万円で令和2年月期に3,300万円(▲4億7,100万円、前期比▲93.5%)まで減少しますが、令和3年3月期には2億400万円まで回復しています。

1-2.営業利益率は低下、当期純利益率は改善

日本クラウド証券株式会社の令和2年3月期の営業収益は853,773千円、営業利益は320,871千円、経常利益315,878千円、当期純利益33,054千円でした。

また、令和3年3月期の営業収益は769,359千円、営業利益263,661千円、経常利益284,156千円、当期純利益204,510千円です。各利益率は、以下のとおりです。

令和2年3月期 令和3年3月期
営業利益率 37.5% 34%
経常利益率 36.9% 37%
当期純利益率 3.8% 26.5%

営業利益率は下がり経常利益率は横ばい、当期純利益率は改善しています。

1-3.自己資本規制比率は300%以上を維持

自己資本規制比率とは、固定化されていない自己資本の額をリスク相当額(市場リスク、取引先リスク、基礎的リスク)で割って算出した数値で、金融商品取引業者の経営の健全性を測るための指標です。

自己資本規制比率が140%を下回った場合は金融庁に届出が必要になるなど、金融商品取引法で定められています。以下は、日本クラウド証券株式会社の自己資本規制比率の状況です。

自己資本規制比率の状況

※引用:日本クラウド証券株式会社
業務及び財産の状況に関する説明書【令和3年3月期】

上記のとおり、自己資本規制比率は令和2年3月期と比べて高くなっており、300%以上を維持しています。

1-4.自己資本比率は前期比約3%上昇

「業務及び財産の状況に関する説明書【令和3年3月期】」によると、令和3年3月期の自己資本比率は25.3%(自己資本12億300万円、総資本47億5,300万円)です。

令和2年2月期の自己資本比率は22.4%(自己資本10億、総資本44億5,200万円)となります。自己資本比率は、前期から約3%上昇しています。

1-5.利益剰余金は約8億8,000万円

利益剰余金は、令和2年3月期が682,274千円だったのに対し、令和3年3月期は886,785千円で、約2億400万円増えています。

これは、令和3年3月期の当期純利益が上乗せされたためです。日本クラウド証券株式会社は、これまでも利益が出続けていますので、約8億8,000万円の利益剰余金となっています。

1-6. 流動比率

日本クラウド証券株式会社の令和2年3月期と令和3年3月期の、流動比率は次のとおりです。

令和2年3月期

  • 流動比率:130%
  • 流動資産:4,396,815千円
  • 流動負債:3,382,128千円

令和3年3月期

  • 流動比率:136%
  • 流動資産:4,729,150千円
  • 流動負債:3,480,524千円

令和2年3月期から令和3年3月期で流動負債が約1億円増えていますが、流動資産は約3億3,000万円増えていることから、流動比率は136%に上昇しています。

1-7. 固定比率

固定比率は、令和2年3月期は5.5%、令和3年3月期が2.0%です。日本クラウド証券株式会社は固定資産が少ないため(令和3年3月期は約2,400万円)、固定比率も低い水準です。固定資産は自己資本の範囲内に収まっています。

1-8. 有利子負債、D/Eレシオ

以下は、令和2年3月期と令和3年3月期の負債状況です。

令和2年3月期と令和3年3月期の負債状況

※引用:日本クラウド証券株式会社
業務及び財産の状況に関する説明書【令和3年3月期】

令和2年3月期、令和3年3月期どちらも短期借入金が3億円、長期借入金が7,000万円となっており、有利子負債は3億7,000万円です。有利子負債が自己資本の何倍あるかを示すD/Eレシオ(負債資本倍率)は、令和2年3月期が0.37倍、令和3年3月期が0.30倍となり、おおよその目安となる1を下回っています。

令和3年3月期では自己資本が約2億300万円大きくなるため、D/Eレシオも低くなり、財務健全性は高くなっています。

なお、レバレッジ比率は自己資本に対する他人資本の割合を示す数値です。日本クラウド証券株式会社の令和2年3月期のレバレッジ比率は約346%、令和3年3月期は約295%です。

令和2年3月期から令和3年3月期で負債は約1億円増えていますが、自己資本が2億円以上増えたことで、レバレッジ比率は約50%低下しています。

1-9. ROE

日本クラウド証券株式会社のROE(自己資本利益率)は、令和2年3月期が3.3%で、令和3年3月期が16.9%です。令和2年3月期の当期純利益は約3,300万円でしたが、令和3年3月期には約2億400万円まで増えており、ROEも大幅に上がっています。

2. 親会社クラウドバンク株式会社の資料からわかる課題とリスク

日本クラウド証券株式会社の親会社であるクラウドバンク株式会社の「財務報告書(平成31年4月1日-令和2年3月31日)」からわかる、ソーシャルレンディング事業クラウドバンクが抱える主な課題とリスクについて見ていきましょう。

2-1.法規制によるリスク

ソーシャルレンディング及び貸金に関する法規制が行われると、クラウドバンクにとってリスクとなる可能性があります。各種規制が強化された場合は、利益の減少やコスト増加などの影響を受ける恐れがあります。

2-2.資金調達に関するリスク

債権未回収などが頻発すれば、クラウドバンクの信用が低下し、投資家が減り、資金が集まらなくなります。その結果、収益や利益が低下し、業績が悪化してしまいます。

まとめ

ソーシャルレンディング「クラウドバンク」を運営する日本クラウド証券株式会社の令和3年3月期の決算は、売上や営業利益は前期比減となっていますが、当期純利益は1億7,100万円増加と改善されています。

自己資本比率や流動比率、D/Eレシオなど、財務面は目立った悪い数値はありません。そしてコンサルティング事業が足踏み状態にある中、クラウドファンディング事業は成長傾向にあると言えるでしょう。

このように、決算情報からは運営会社の経営状況に加えて今後の課題やリスクについても詳しく読み解くことが可能です。クラウドバンクのようなソーシャルレンディング投資をする際は、案件情報だけでなく、運営会社の決算情報についても確認し、事業者リスクを避けることも検討してみましょう。

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