不動産投資型クラウドファンディングサイトは、貸付型クラウドファンディングであるソーシャルレンディングサイトを上回る勢いで増えています。なぜ、不動産投資型クラウドファンディングサイトがこれほどまでに増えているのか、その理由を探ってみました。
目次
- ソーシャルレンディングよりも事業登録が少なく、参入しやすい
- 投資家への情報開示が進んでいる
2-1.不動産投資型クラウドファンディングでは物件の状態を確認しやすい
2-2.物件情報が公開されているので、募集額の妥当性を判断できる - ソーシャルレンディングの利回りと差がほとんどない
- 優先劣後出資方式により、リスクが少ない
- 不動産会社の大規模な参入が進んでいる
- まとめ
1.ソーシャルレンディングよりも事業登録が少なく、参入しやすい
不動産投資型クラウドファンディングが拡大している一つ目の理由として、不動産投資型クラウドファンディングは、ある程度の運営実績と規模を有する不動産会社であれば、参入しやすいビジネスである点が挙げられます。
ソーシャルレンディング事業に参入する場合、その事業者は第二種金融商品取扱事業者の登録が必要です。登録には金融庁の審査を受ける必要があり、会社によっても異なりますが、登録完了までには半年から1年以上かかると言われています。また、第二種金融商品取扱事業者登録だけでは、ソーシャルレンディング事業は開始できません。実際に資金を必要とする会社に融資するには貸金業登録も必要です。
従って、ソーシャルレンディング会社が単独で、もしくは、同社が属するグループ内で、上記2種類の免許を取得しなければいけないのです。そのため、参入の障壁は決して低いものではなく、サービス開始までには時間を要します。
一方で、不動産投資型クラウドファンディングへの参入の条件はそれよりも緩和されています。2019年4月15日から、不動産投資型クラウドファンディングを検討する新規法人の参入に関わる条件の緩和が行われました。その内容は以下のようになっています。国土交通省の発表資料から引用します。
設立後3年未満の法人
(第1号~第4号事業いずれも可)
①資本金1億円以上の不特事業者を親法人(総議決権の1/2以上を保有)とする会社であって、
②不特事業のみを営み、
③当該不特事業に関して親法人が連帯して債務を負担する場合
には、直前3期分の計算書類がなくても、親法人の直前3期分の監査済み計算書類等により財産的基礎を判断することを可能とする。今回新たに明確化する例
設立後3年未満であって、クラウドファンディングを運営しようとする法人
①不特事業者を親法人(総議決権の2/3以上を保有)とする法人であって、
②第2号又は第4号事業のみ、かつ、電子取引業務を行おうとし、
③申請者自身に十分な資本金(原則1億円以上)がある場合
には、金銭信託を利用した分別管理が義務付けられていることや十分な財産的基礎があると考えられることから、始期からの計算書類を確認することにより、許可の取得を可能とする。
参入条件の明確化に伴い、不動産会社に運営実績や監査済み計算書類があれば、不動産特定共同事業法に則って不動産投資型クラウドファンディングを運営できるようになりました。スピーディーな参入が可能になったことから、不動産投資型クラウドファンディングに参入する事業者が増えているのです。
2.投資家への情報開示が進んでいる
また、ソーシャルレンディングと比べて投資家への情報開示が進んでいる点は、不動産投資型クラウドファンディングを利用する側にとって大きなメリットになります。
大半の案件において情報の開示が行われ、投資対象としての妥当性が判断できることから、不動産投資型クラウドファンディングは投資家からの支持を集めつつあります。そのため、不動産会社も同事業に注目して参入を決めているのだと考えられます。
2-1.不動産投資型クラウドファンディングでは物件の状態を確認しやすい
不動産投資型クラウドファンディングでは、案件内で投資対象である物件の住所や築年数等の情報を公開しています。以前のソーシャルレンディングでは、運営事業や物件情報の虚偽が多く、実態がない事業をあげつらって資金を募集するケースが複数ありました。
しかし、不動産投資型クラウドファンディングでは、投資対象の所在地が明らかにされています。そのため、どのような物件が運用されているのか、実際に自分の目で確認することができます。
2-2.物件情報が公開されているので、募集額の妥当性を判断できる
不動産投資型クラウドファンディングでは物件情報が公開されているので、物件を運用した際の収益の試算も可能です。例えば東京都心のワンルームマンションの購入用資金を募集する案件であれば、東京都心のワンルームマンションの相場と照らし合わせた上で、
- 募集金額が多かったり、少なすぎたりしないか
- 投資家への配当利回りが、相場よりも乖離していないか
などを判断することができます。
東京都心における新築ワンルームマンションの相場価格は、2019年11月時点では2,000万円から3,000万円、利回りは3%~5%程度といったところです。そのため、新築ワンルームマンションを取り扱う利回り8%の案件などは、少なくとも利回りの根拠を疑っても良いでしょう。
このように投資家が案件で提示された利回りの根拠を推し量ることができれば、投資の可否の判断がつくはずです。結果として、不動産投資型クラウドファンディングを利用する投資家が増え、同時に参入を決める不動産会社が増えているのではないでしょうか。
3.ソーシャルレンディングの利回りと差がほとんどない
ソーシャルレンディングと不動産投資型クラウドファンディングの利回りの差がなくなってきたことも、不動産投資型クラウドファンディングに関係するサイトが増えている要因の1つだと考えられます。
以前のソーシャルレンディングでは、10%を超える高い利回りの案件が複数存在しました。しかし現在では、そのような案件を中心に提供していたソーシャルレンディング会社のほとんどが、営業を停止する状況に陥っています。ソーシャルレンディングにおいて、2019年時点の利回りの幅は5%から7%前後といったところです。
対して、不動産投資型クラウドファンディングの利回りは4%から6%が目安です。平均して利回りの差はゼロに近づきつつあります。それほど収益率が変わらないのであれば、比較的安全な不動産投資型クラウドファンディングを選択する投資家が増えるのも自然な流れです。
4.優先劣後出資方式により、リスクが少ない
不動産投資型クラウドファンディングを提供する会社のほとんどは、優先劣後出資方式を採用しています。優先劣後出資方式とは、投資家が物件の購入資金を優先的に出資した後に、不動産投資型クラウドファンディングを運営する会社が残額を出資することを指します。
不動産投資型クラウドファンディングでは、最終的には事業者が運用した物件を売却して得た利益を投資家に分配します。売却時に相場が下がって損失が発生した場合は、劣後出資をした不動産投資型クラウドファンディング会社が先に損失を負います。
仮に投資家が7,500万円、不動産投資型クラウドファンディング会社が2,500万円を出資し、1億円の物件を購入したとします。もし、売却時の価格が8,000万円にしかならなかった場合であっても、不動産投資型クラウドファンディング会社が2,000万円分の損失を負い、投資家は1円も損をしません。それまでの運用で定期的に分配金が入っていれば、投資家が利益を得られる可能性は高いのです。
ソーシャルレンディングでも、融資の際の保証として不動産担保が設定されている案件が多くあります。しかし、担保を売却して満額で返済された事例は、2019年11月現在ではほぼありません。
ソーシャルレンディングに比べれば、不動産投資型クラウドファンディングの優先劣後出資の方が安全だと言えます。それだけに、多くの投資家が期待を寄せているのです。
5.不動産会社の大規模な参入が進んでいる
また最近では、一部上場企業による不動産投資型クラウドファンディングへの参入が進んでいます。例えば、東証プライム上場企業の穴吹興産は『ジョイントアルファ』という不動産投資型クラウドファンディングサイトで、また、東証マザーズ上場企業のインテリックスは『不動産投資型クラウドファンディング「X-Crowd」』という不動産投資型クラウドファンディングサイトで、同市場に参入しました。
一定の年数以上の運営歴に加え、規模が大きくて実績を多数持つ不動産会社が参入することで、投資家の保護がさらに進むことにも繋がるでしょう。以上の理由から考えられることは、不動産投資型クラウドファンディング業界が活性化すること、今後も参入者が増えることの2点です。
まとめ
不動産投資型クラウドファンディングサイトが増えている直接の理由として、事業への参入条件の緩和が考えられます。同時に、ソーシャルレンディングと比べると情報開示が進んでいたり、優先劣後出資が多く採用されていることで安全性が高いと考えられることから、投資家から多くの支持を得ています。
それでも、ソーシャルレンディングに比べれば、サイトを運営する会社の数も募集金額も、まだまだ小規模です。今後も不動産投資型クラウドファンディングサイトに参入する企業の動向をよく観察し、サービスの内容をチェックしていきましょう。
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HEDGE GUIDE 編集部 ソーシャルレンディングチーム
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