証券取引所に上場していない企業が発行する株式を未公開株と言います。未公開株投資は非上場企業の成長性や将来性を期待して投資を行うもので、上場企業以上のリターンを期待できる一方、事業規模や経営基盤に不安があるためハイリスク・ハイリターンな投資であり、特に個人が行う場合には注意を要します。
そこでこの記事では、未公開株について詳しく知りたい方のために、未公開株の特徴や購入方法、投資する際の注意点を解説するので、ご参考ください。
目次
- 未公開株とは
- 未公開株投資のメリット
2-1.通常の株式投資以上のリターンが狙える
2-2.運用の手間がかからない
2-3.企業の成長を応援できる - 未公開株投資のデメリット
3-1.様々な面でリスクが大きい
3-2.流動性・換金性に劣る
3-3.投資詐欺のリスクがある - 未公開株の購入方法
4-1.未公開株の発行企業から直接購入する
4-2.発行企業の委託を受けた証券会社から購入する
4-3.株式投資型クラウドファンディングで購入する - 未公開株投資での注意点
5-1.未公開株を評価する知識が必要
5-2.悪徳業者の勧誘に乗らない
5-3.余裕資金で投資する - まとめ
1 未公開株とは
未公開株とは、非公開株やプライベートエクイティーとも呼ばれる証券取引所に上場していない企業の株式のことです。
通常の株式投資は、証券取引所に上場されている株式を対象とした投資になりますが、未公開株へ投資することはできません。以前までは日本証券業協会がグリーンシート市場を開設し、非上場企業株式等の売買が可能でしたが、2018年3月末に廃止され、取引所等の市場を介した未公開株への投資はできなくなっています。
未公開株を購入するには、非上場の企業から直接購入(当事者間売買)したり、その企業から販売の委託を受けた証券会社などから未公開株を購入したり、クラウドファンディングを通じて投資するなどの方法があります。
購入した未公開株の企業が新規株式公開(IPO=証券取引所への上場)したり、M&Aで事業譲渡したりする場合、購入価額よりもずっと高い価格で売却できる可能性があるため、未公開株投資に興味を持つ方が多く、株式投資型クラウドファンディングの普及も追い風となって最近あらためて注目されるようになっています。
しかし、未公開株投資は、証券取引所の厳しい審査に合格した上場企業の株式への投資と違って、経営基盤や信頼性、流動性などの面で大きなリスクを伴います。また、未公開株の取り扱いを許されていない違法業者からの勧誘・詐欺などに遭う可能性もゼロではありません。
そのため、未公開株への投資を行う際にはメリットだけでなく、デメリットやリスク、購入の方法、注意点についてしっかりと把握しておくことがとても重要です。
2 未公開株投資のメリット
まず未公開株への投資でどのようなメリットを期待できるのかを確認しましょう。
2-1 通常の株式投資以上のリターンが狙える
未公開株投資における最大の特徴は、売却や譲渡などによるリターンが通常の株式投資以上に大きくなる可能性があることです。
未公開株は証券取引所で取引できないため、現金化できるタイミングは、その発行企業が上場する場合(IPO)や事業譲渡する場合などに限られます。発行企業が上場すれば、その株式は証券会社を通じて市場で売却できるようになり、事業譲渡などの場合、発行会社や売却先などへその株式を売却できる可能性が出てきます。
例えば、非上場企業が上場する際には、上場後の最初の取引価格(初値)が募集価格を上回るケースがほとんどです。未公開株の購入価格はその会社によって様々ですが、一般的には市場価格と比べて安く買えることが多く、購入した未公開株のIPO(新規株式公開)が実現すれば、募集価格の数倍以上にもなる可能性があります。
事業譲渡の場合、企業側が提示する買取価格がいくらになるかはその企業次第ですが、購入価格以上の高い買取価格になる可能性もあります。さらに未公開株であっても発行企業に業績等での問題がなければ、配当金も受け取れます。
2-2 運用の手間がかからない
未公開株は上場株式と比べて流動性が低いため、売却できるタイミングが限られますが、そのぶん上場株式のように時価の変動を監視したり、企業の業績・経済動向の分析・評価などをしたりする手間はほとんどかかりません。
通常の株式投資の場合、その保有後は株価を常に把握して事業内容や業界の状況などを確認の上、売却・買増しなどのタイミングを計るといった運用スタイルが求められます。そのためには投資や社会情勢に関する一定以上の知識が必要になるとともに、株価の監視や評価などに時間を割かなければなりません。
2-3 企業の成長を応援できる
未公開株投資を通じて世の中に役立つ製品・サービスを提供する企業、社会貢献性の高い事業を営む企業などを応援することができます。
一般的に株式投資には、株式を購入することにより資金面でその企業を応援するという側面がありますが、非上場企業は証券市場から直接資金調達することができません。そのため、非上場企業は資金の工面に苦慮するケースが多く、未公開株への投資は資金繰りの難しい企業を助け、その発展や事業の成長により貢献することになります。
3 未公開株投資のデメリット
ハイリターンが狙えると同時にハイリスクなのも未公開株投資の特徴です。具体的に見ていきましょう。
3-1 様々な面でリスクが大きい
配当金を除いて、未公開株投資で利益を得る方法は売却・譲渡(イグジットとも呼ぶ)等になりますが、イグジットの実現可能性は高いとは言えません。
特にIPOにおいては事業の継続性や収益性の観点などで取引所による厳しい審査があるため、証券取引所に上場するのは容易でなく、また事業譲渡の可能性については、事業の成長を実現したとしても買い手が現れるとは限らないなど、不確実性が大きいからです。
加えて取引所や監査法人等の審査やチェックが入らない未公開株の場合、その企業や事業の信頼性が不透明になりやすいため、資金の回収が不能になるなどの投資リスクも懸念されます。未公開株を購入したものの、業績が低迷したため配当金が出ない、事業が成長せずM&Aが期待できない、業績不振で倒産する、などの事態に直面する可能性があります。
3-2 流動性・換金性に劣る
未公開株は売却のタイミングの不確実性が高く、現金化の自由度は低いのが特徴です。現金化のタイミングはIPO等などに限定されるため、上場株式と違って好きな時に売却して資金を回収するということが困難です。また、譲渡制限のある株式の場合、第三者に譲渡したくてもできないのもデメリットです。
3-3 投資詐欺のリスクがある
未公開株投資で気をつけなければならないのが、投資詐欺の被害に遭うケースです。
例えば、金融商品取引業の登録がない企業が、「この企業は近いうちに株式公開する可能性が高いから、今のうちに購入すると大きな売却益が得られますよ」などと騙して、出資させようとする詐欺案件などがあります。
この点については、金融庁でも注意喚起がされており、金融サービス利用者相談室に寄せられたトラブル等の相談として以下のような事例があったとしています。
業者から上場間近で大儲けが出来ると言われ、未公開株を購入。業者からは株券の代わりに「預り証」を渡されたが、株券は手元に届かなかった。不審に思い発行会社に確認したら上場予定は全くないと言われた。
業者から未公開株を買わないかと話を持ちかけられ買付代金を渡した。その後、何の連絡もないので業者に電話をしてみるとつながらなくなっていた。
業者から今年の秋に上場すると未公開株を勧められ購入した。株券の名義書換えを要求したところ「待って欲しい」として引き延ばされるだけで一向に名義書換えに応じてもらえず、不審に思い、発行会社に問い合わせたら「上場の予定はない」、「当社の株式は譲渡制限がついているので名義の書換えは出来ない」と言われた。
金融庁「未公開株購入の勧誘にご注意!~一般投資家への注意喚起~」より引用
未公開株を購入する際は、「どの企業の株を買うか」だけではなく「誰から買うか」にも十分に注意し、少しでも不審に思った場合には取引を見合わせることが大切です。
4 未公開株の購入方法
未公開株を購入する方法はいくつかありますが、ここでは個人でも利用できる主な3つの方法をご紹介します。
4-1 未公開株の発行企業から直接購入する
未公開株の発行者との直接交渉によりその株式を購入する方法です。未公開株は市場で流通していないため、その売買は相対取引(相手と一対一で取引)が基本であり、発行企業と交渉することで購入できます。ただし、発行者から直接投資家に販売を連絡するケースは少ないでしょう。
現実的には、発行企業の設立時や増資時にその関係者や投資家、親戚・知人等に紹介される場合などが最もポピュラーな購入機会になるでしょう。それ以外ではベンチャーキャピタル(ベンチャー企業等に出資する投資会社)のように、投資家から将来性の高い非上場企業への出資について提案することで、未公開株の購入機会が得られる場合もあります。
4-2 発行企業の委託を受けた証券会社から購入する
未公開株の発行者の委託を受けた証券会社等から購入することも可能です。なお、未公開株を販売できるのは、第一種金融商品取引業者の登録を有する発行者の依頼を受けた金融商品取引業者(証券会社)に限定されます。上場株式と異なり、特定の証券会社のみが有資格者となるため、通常の株式投資のように購入できる機会は多くありません。
4-3 株式投資型クラウドファンディングで購入する
クラウドファンディングはインターネット上で広く資金を集めて個人や事業者などに投資や融資するサービスのことです。中でも株式投資型のクラウドファンディングでは、未公開株に投資することができるサービスもあります。
購入方法は、そのサービスを提供する運営会社に入会(会員登録)し、一定の資金を入金後、募集案件に応募することで購入できるようになります。
募集案件は応募の先着順や抽選などにより購入の可否が決定されるため、応募案件のすべてにおいて株式を購入できるとは限りません。案件にもよりますが、早めに応募すると購入できる場合もあります。
株式投資型クラウドファンディングでは、1社に対する年間投資額が制限されている場合がほとんどですが、投資先企業・事業の成長性や財務基盤等に関する一定の情報提供を受けることができるので、投資判断の参考資料として役立てることができます。
代表的なサービスとしては、株式会社FUNDINNOが運営するファンディーノがあります。これまでに350件超の成約実績があり、108億円超の豊富な募集実績(2024年1月時点)があります。
株式投資型クラウドファンディング「ファンディーノ(FUNDINNO)」
ファンディーノは日本初の株式投資型クラウドファンディングサービスです。個人投資家でもベンチャー企業に手軽に投資できる方法として注目されています。
ファンディーノで募集した企業の中には、すでにイグジットを実現した企業もあります。第一号のイグジット案件は2019年7月で、株式会社漢方生薬研究所というベンチャー企業です。この案件ではファンドと一部の株主の間で相対取引が行われ、ファンディーノの投資家が保有していた募集価格1株500円の株式について、1.5倍となる1株750円で買い付けが行われました。
また、2020年4月にはファンディーノで資金調達を行った株式会社nommocで、一部株式の相対取引によりイグジットが実現しました。株式会社nommocは広告サービスを利用して電車やクルマなどの移動無料化に取り組むベンチャー企業であり、この企業に投資した一部の投資家が、数社に対して1株50円の株を75円で売却したことでイグジット達成となっています。この他2社が相対取引でのイグジットを実現しています。
2021年3月には、ファンディーノで資金調達を行った琉球アスティーダスポーツクラブ株式会社が株式会社東京証券取引所「TOKYO PRO Market」へ上場が承認されました。株式投資型クラウドファンディングで資金調達を行った企業で初めての新規株式公開事例となりました。
また、ファンディーノでは、2021年12月8日に未上場株をオンラインで売買できる「ファンディーノマーケット」のサービスを開始しています。
未上場株はこれまで何かしらのイグジットをしないと株を手放すことができないという流動性の低さが大きな課題でしたが、ファンディーノでは日本証券業協会が提供する「株主コミュニティ」という制度を活用して、未上場株式を売買できるようになりました。株式投資型クラウドファンディングにおいて、上場やM&Aなど以外の出口ができたことは非常に大きな意義があります。
2022年1月末にはサービス開始後初となるマッチング期間が終了し、取引事例の中には7.8倍の値上がりが見られた銘柄もあります。(2022年1月末時点での取引は銘柄数4、約定取引数37、約定金額612万5千円、値上がり幅1倍~7.8倍)今後も月に1回マッチングが行われるとともに、取引可能な企業も増えていく予定です。
ファンディーノに関するニュース
5 未公開株投資での注意点
未公開株への投資において、改めてどのようなポイントに注意するべきかを確認しましょう。
5-1 未公開株を評価する知識が必要
未公開株投資では株価を適正に評価することが重要です。個人が未公開株の評価を行うには一定以上の知識が必要であり、計算をするのにも手間がかかります。計算方法は、類似業種比準方式、純資産価額方式及びこれらの併用方式、配当還元方式など様々ありますが、難しい場合は顧問の税理士等に相談するのもおすすめです。
上記の計算方法以外にも事業の新規性・独自性、市場の将来や競争優位性の持続などをどう評価するかで企業価値は異なってくるため、投資額が多くなる場合などは、専門家に評価を依頼することも必要です。
さらに、未公開株では第三者に譲渡できない譲渡制限株式が多いため、その点を認識した上で購入するか否かを判断しましょう。
5-2 悪徳業者の勧誘に乗らない
未公開株を売りつけようとする悪徳業者が存在するため、業者からの勧誘には乗らないようにしましょう。販売可能な業者は第一種金融商品取引業者の登録者と決まっているため、業者からの勧誘があっても発行企業に確認するなどしっかり裏取りしましょう。
基本的に、証券会社が個人に未公開株を直接売りつけようとするケースは少ないため、業者からの勧誘があれば詐欺の可能性があると考え、慎重に対処するのがいいでしょう。
なお、株式投資型クラウドファンディングを通じて未公開株へ投資する場合は、複数の運営事業者を比較・評価して検討しましょう。例えば、経営陣、出資者や親会社の確認のほか、運営期間、案件の実績累計数・年間の案件数、IPOなどのイグジットの実績、倒産案件の実績、審査体制、第一種少額電子募集取扱業者の有無などについて調査することが重要です。
5-3 余裕資金で投資する
未公開株への投資では資金回収に時間がかかる場合もあるので、日常生活に影響しない余裕資金で行うのがおすすめです。
非上場企業は未公開株の発行で得た資金で事業を成長させて、その結果によりIPOなどが可能となるわけですが、実現するまでには数年以上かかることもあります。未公開株は現金化が困難なので、一度購入すればイグジットの実現まで保有を余儀なくされます。
しばらく現金化できなくても困らないように、未公開株投資に充てる資金は余裕資金にしましょう。
まとめ
未公開株の購入は、換金性や流動性で劣ったり、回収不能になったりするリスクがある一方、株式上場やM&Aなどのイグジットによるリターンを狙うことができます。
未公開株の購入方法については、従来、発行企業やその委託を受けた証券会社との取引など、個人投資家が手にする機会は限られていましたが、最近は株式投資型クラウドファンディングの普及により個人でも気軽に投資することができます。
ただ、未公開株投資はハイリスク・ハイリターンの投資方法になるため、投資上の注意点をしっかりと把握して検討するようにしましょう。
- 外国株(米国株など)が買えるネット証券会社
- IPO投資に強い証券会社、少額からIPOに参加できるサービス
- 25歳以下の現物株式の取引手数料が実質0円の証券会社
- 大手証券会社が提供している株式投資サービス
- 少額で株式投資ができるサービス
HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チーム
最新記事 by HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チーム (全て見る)
- 見守り市場に変革を。介護テックベンチャーがFUNDINNOで9/25募集開始 - 2024年9月20日
- 高速硬化性樹脂で日本の強靭化に貢献。日本総代理店がFUNDINNOで資金調達 - 2024年9月13日
- 子どもが安心安全に利用できるSNSアプリで事業拡大。運営ベンチャーがFUNDINNNOで8/31CF開始 - 2024年8月30日
- DMM株の評判は?メリット・デメリットやアカウント登録手順も - 2024年8月30日
- 採用のミスマッチ・入社後ギャップを解消するテックベンチャーがFUNDINNOで3度目のCF - 2024年8月29日