不動産特化型のソーシャルレンディング(クラウドファンディング)事業を展開しているオーナーズブックは、不動産・金融分野の専門家による厳しい審査や、募集案件すべてに担保を設定するなど、その堅実な運営が評価されてきています。しかし、投資家の方にとっては、これまでの貸し倒れ件数や返済遅延の有無なども関心の高い要素でしょう。
そこで今回は、オーナーズブックでの投資リスクから貸し倒れ・返済遅延の履歴のほか、他のソーシャルレンディング事業者の貸し倒れ事例、貸し倒れ案件を回避するポイントについて詳しくご紹介します。オーナーズブックを検討している方は参考にしてみてください。
目次
- オーナーズブックとは
- オーナーズブックでの投資リスク
2-1.貸付先の債務不履行リスク
2-2.担保割れリスク
2-3.不動産市況の変化リスク
2-4.自社の債務不履行リスク - オーナーズブックの貸し倒れ・返済遅延状況
3-1.貸し倒れとは
3-2.オーナーズブックの貸し倒れ・返済遅延状況
3-3.その他ソーシャルレンディングの貸し倒れ事例
3-4.貸し倒れ案件を回避するポイント - まとめ
1 オーナーズブックとは
オーナーズブックは、東証プライム上場企業100%子会社のロードスターインベストメンツ株式会社が運営する不動産特化型のソーシャルレンディング(クラウドファンディング)サービスです。
ソーシャルレンディングは投資家が運営会社を通じて企業に融資できる仕組みを提供するサービスです。運営会社はプロジェクト案件を有する企業に投資家から集めた資金をまとめて融資し、手数料を引いた残りの利息を投資家に分配するという仕組みになります。
運営会社の親会社であるロードスターキャピタル株式会社は、不動産投資・仲介・運用・管理をはじめ総合的な不動産事業を行う企業ですが、その不動産事業の一環としてソーシャルレンディングサービスも行っています。
ロードスターキャピタル株式会社の概要
設立 | 2012年3月 |
所在地 | 東京都中央区銀座1丁目9番13号 プライム銀座柳通りビル7階 |
資本金 | 13億8,800万円 |
上場 | 東証マザーズ |
オーナーズブックは、不動産投資のプロジェクト案件を有する企業に、投資家から集めた資金を融資し、貸付期間終了後は配当分を含めた元本を回収して投資家に分配します。
最低投資額は1万円からと少額に設定されており、投資家のリスク許容度に応じて投資案件のタイプ(貸付型、エクイティ型など)を選択できます。運用期間は12~24か月のものが中心です。
2 オーナーズブックでの投資リスク
次に、オーナーズブックやソーシャルレンディングのリスクについて確認しておきましょう。
2-1 貸付先の債務不履行リスク
オーナーズブックは、プロジェクト案件について厳しい審査を行い、それを通過した案件のみ募集を行っています。しかし、貸付先の企業が何かの理由で経営不振や破綻するなどのトラブルが起きない保証はありません。
貸付先企業の経営不振・破綻により、貸付金が回収できなくなる債務不履行のリスクがあることは認識しておく必要があります。
2-2 担保割れリスク
オーナーズブックでは、貸付を行うすべての案件について担保を設定しています。担保価値については、不動産投資や金融の分野に精通した専門家が厳しい査定を行っており、貸し倒れが発生した場合は、担保の売却などにより元本を回収する予定です。
しかし、経済状況や不動産市況の急激な変動などにより、想定の範囲を超えて担保価値が下落してしまった場合は、担保割れにより貸付金のすべてを回収できない可能性もあります。
2-3 不動産市況の変化リスク
オーナーズブックの案件は不動産投資が中心です。貸付先企業は不動産を安く買ってリフォームを行い、高く売るなどの投資を行うので、不動産が高く売れた売却益は配当原資となって投資家に分配されます。
しかし、不動産市況が悪化すれば、買い手が現れず売れなくなったり、売却できても売却損が生じたりする可能性もあります。損失の程度にもよりますが、貸し倒れや返済遅延に繋がるケースもあります。
2-4 自社の債務不履行リスク
運営事業者であるオーナーズブックが債務不履行を起こし、投資家への返済資金が滞る可能性もあります。
このようにソーシャルレンディングでは、貸付先企業の経営状況だけでなく、サービスの運営事業者自体もリスクの一つになり得ます。
3 オーナーズブックの貸し倒れ・返済遅延状況
それでは、これまでオーナーズブックに貸し倒れや返済遅延があったかどうかについて見ていきましょう。
3-1 貸し倒れとは
「貸し倒れ」とは、貸付先の企業が経営破綻するなどの理由により、貸付金が回収できなくなり、損失が生じる場合を指します。
一方、貸付先企業の経営悪化により、返済期日までに返済ができない場合は「返済遅延」といいます。
3-2 オーナーズブックの貸し倒れ・返済遅延状況
オーナーズブックでは、創業以来、貸し倒れや返済遅延の案件は発生していませんでしたが、2019年7月に貸付先企業の自己破産が発表されました。
貸し倒れ案件の概要
ファンド名 | 江東区商業ビル第一号ファンド |
募集総額 | 8,010万円 |
予定利回り | 5.0% |
予定運用期間 | 20か月 |
投資実行日 | 2019年3月7日 |
償還予定日 | 2020年10月20日 |
2019年12月時点ではまだ貸付金の返済期限は到来していませんが、貸付先企業が倒産したことで、今後は担保不動産の売却により貸付金を回収することになります。
担保不動産の価値は約12億6,000万円であり、銀行などの優先順位上位の担保分を差し引いて約3億円程度の価値は残るとされています。
当案件についてはオーナーズブックがどのような対応をするかも含めて、今後の進展を注視しておくと良いでしょう。
3-3 その他ソーシャルレンディングの貸し倒れ事例
次に、オーナーズブック以外のソーシャルレンディング事業者における貸し倒れ事例について見ていきましょう。
トラストレンディングの事例
ソーシャルレンディング事業者であるトラストレンディングは、2019年3月、関東財務局から第二種金融商品取引業者の登録取消処分を受けました。
投資家から集めた資金の適切な管理・運用ができておらず、投資案件の事業内容に架空のものが含まれていたり、投資家から集めた資金が流出したりするなど、投資家に損害を与えたことが主な原因です。
トラストレンディングに対しては、現在、投資家から集団訴訟が起こされています。
ラッキーバンクの事例
2019年1月、ソーシャルレンディング事業者のラッキーバンクが、投資家たちから訴訟を提起されました。
資金の貸付先がラッキーバンク代表者の親族の企業だったこと、案件の貸付審査を甘くして通過させたこと、担保物件の査定が適正に行われなかったことなど、投資家から集めた資金を不正に貸し付け、投資家に損害を与えたのが主な原因です。
その他にも、投資家から集めた資金を流用して損害を発生させた「グリーンインフラレンディング」や、不適切な貸付先への融資で元本割れを起こした「みんなのクレジット」などの複数の貸し倒れ事例があります。
3-4 貸し倒れ案件を回避するポイント
貸し倒れ案件を回避するためには、以下のようなポイントを基準に投資判断をすることが大切です。
運営企業の安定性・信頼性
ソーシャルレンディング運営企業に安定性・信頼性が認められるかについては、以下のポイントが参考になります。
- 大手企業グループに所属しているか
- 上場企業か
- 経営状況に問題はないか
- 良くない噂や評判がないか
運営企業のバックボーンに大手企業グループが付いていれば資金的な余力が大きく、また、上場企業であれば信用度が上がる要素にもなります。さらに、最近の経営状況が順調か、良くない噂や評判がないかなどに注意を配ることもリスク回避に繋がります。
事業実績
運営企業に安定性・信頼性が認められても、業績不振であれば不安要素になり得るため、運営企業の事業実績を調べることも重要です。
- 口座数や会員数が増えているか
- 売上や利益は上がっているか
- 返済が完了したプロジェクト案件の件数や償還実績はどうか
オーナーズブックのようにソーシャルレンディング事業以外に不動産投資や仲介事業を手掛けている場合もあるため、可能であればソーシャルレンディング事業を含めた事業全体の業績を確認しましょう。不振続きの場合は、安全のためにしばらく様子を見たほうが無難といえるでしょう。
積極的に情報発信をしているか
情報公開への姿勢は、各ソーシャルレンディング運営企業で異なります。開示する情報は、運営企業の経営方針や財務状況など運営企業自体にかかる情報と、募集しているプロジェクト案件にかかる情報とに分かれますが、投資家にとってはどちらも重要な情報です。
投資家からすると、運営企業の情報を積極的に開示してもらえればそれだけ信頼して投資ができ、また、プロジェクト案件について豊富な情報を掲載してもらえれば、投資判断の参考になります。
これらの情報を投資家に対して積極的に公開する姿勢が認められるかどうかも、重要な評価ポイントの一つと言えるでしょう。
貸し倒れ等発生時の対応力
貸し倒れや返済遅延など問題発生時の対応能力は、運営企業の良し悪しを見分ける重要なポイントとなります。
- 過去に貸し倒れや返済遅延、その他のトラブルがあったか
- トラブルがあった場合、その結末はどうなったか
- 元本はすべて回収できたか
- 元本回収に向けて運営事業者はどのように動いたか
- トラブルの経緯を公式サイトなどで公表しているか
- 投資家に対してどのように説明したか
貸し倒れや返済遅延など問題発生時には、運営企業の素早い対応や投資家への真摯な説明がされていたかが重要です。貸し倒れ等が発生しても、元本回収に向け迅速な対応がなされ、投資家に問題解決への進捗状況について丁寧な説明がされていれば、対応能力が高く、問題解決に誠実な企業と言えるでしょう。
案件の内容
運営会社が信頼できる企業でも、案件はどれでも良いというわけではありません。自分が投資するプロジェクトの内容をしっかり把握することがリスク回避にも繋がります。
例えば、プロジェクト案件の概要から募集金額、予定運用期間、予定利回り、配当スケジュール、貸付先への貸付条件、担保物件の内容などについてチェックし、元本の回収やリターンが見込める案件を見極める必要があります。
2019年3月には、金融庁が投資家保護の観点から貸付先に関する情報(貸付先の名称や所在地、事業内容)を開示するよう指導しています。ソーシャルレンディングでは利回りなどのリターンも大切ですが、返済遅延や貸し倒れなどのリスクが伴うことを認識して、適切に投資判断をするようにしましょう。
4 まとめ
ソーシャルレンディング事業者のオーナーズブックでは、不動産・金融分野の専門家による厳しい審査を行い、すべての募集案件に担保を設定していますが、元本が保証されるものではありません。
また、ソーシャルレンディング事業者は、金融庁の指定する「第二種金融商品取引業」の登録を受ける必要はありますが、登録を受けたからといって信用力が保証されるわけでもありません。
ソーシャルレンディングの投資では、投資家自身が運営企業の安定性や信頼性、事業実績、情報開示の姿勢、問題発生時の対応力などについてチェックするとともに、利回りや元本の回収可能性について判断することが大切です。
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