【インタビュー】投資は「増やす」より「貯めていく」もの。元マニュライフ生命代表に聞く、投資のはじめかた

ノースアイランド常任顧問 森田均氏

投資を始めるにあたって、リスクや用語の難しさなど、ハードルはいくつもあります。興味はあるけれど、何から始めればいいか分からないという方も多いはず。今回は長年保険業界の最前線におられたマニュライフ生命の元代表で現在ノースアイランド常任顧問の森田さんに、投資初心者の投資のはじめ方についてお伺いしてきました。

話し手:株式会社ノースアイランド 常任顧問 森田 均氏(もりた ひとし)

    ノースアイランド常任顧問。1978年東邦生命保険相互会社(現ジブラルタル生命)に入社し、その後30年を超えるキャリアにおいてカナダならびにスイスでの勤務も含めて、数理・商品、経営企画、マーケティング、事業開発などの様々な業務を担当。1997年から2018年までスイスリーの生命・医療保険部門のヘッドを務めるとともに、PCA生命においては社長兼CEO、マニュライフ生命においては代表執行役も務める。また、日本アクチュアリー会ならびに米国LOMAの正会員であり、国際アクチュアリー会のメンバー。経済同友会のメンバーとしても活動。

インタビュー概要

  1. お客様のライフプランに合わせた投資形態をご提案
  2. 投資の第一歩は自分の目標の設定から
  3. 目的に向かって少しずつ貯めていく
  4. 「投資するリスク」と「投資しないリスク」
  5. 編集後記

1.お客様のライフプランに合わせた投資形態をご提案

Q.ノースアイランドさんの業務内容を教えてください。

貯蓄から投資へと国として資産運用の必要性が訴えられています。私たちはそのお手伝いとして、金融機関様への研修を通してお客様のライフプラン立案をサポートし、投資への一歩を後押ししています。

現在ファイナンシャルプランナーと呼ばれる方々は、資格試験制度に合格され社会保障制度や金融商品について豊富な知識を持っています。一方、具体的にどのようにお客様のライフプランを伺い、一緒にファイナンシャルプランを考えるかについては、必ずしも強くない部分もあると思います。働き方も多様化している時代において、お客様も気づかれていない資産形成のニーズを引き出すことが重要なのです。私たちはお客様の予想されるライフイベント、その時に必要になる資産についてタブレットを用いてグラフで可視化し、金融機関様の窓口の方がお客様と円滑なコミュニケーションを図れるように研修を行っています。

ノースアイランドコンサルティング営業支援ツール

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Q.森田様のご経歴を教えてください。

大学卒業後、日本の保険会社に就職してアクチュアリーの資格を取得しました。営業をやったり、営業所長も経験し、その後は営業企画や経営企画の部署にいました。若いころは先輩方のカバン持ちをしながら金融業界の方や当時の大蔵省(現財務省、金融庁)の方々と接する機会を多く持てたことから、当時の最新情報も自然と耳に入ってきました。また、その会社では3年間カナダに家族ぐるみで駐在する機会がありました。それは現地の生活習慣に浸ることで良いこと、悪いことすべてを経験して来いという上司の考えでした。

この経験は私の中でとても大きな意味を持ったと思います。日本のようなヒエラルキーのある雰囲気とはかけ離れ、とても自由に仕事をさせてもらいました。今では当たり前にあるインターネットやメールも普及しつつある環境だったことにも大きな刺激を受けました。

その後スイスの再保険会社「スイスリー」に、チューリッヒでの駐在を条件に転職しました。そこには7年くらいおり、日本での生命保険部門の責任者も務めました。スイスリーは再保険会社という保険会社のリスクを背負う会社です。再保険を使った合併や買収など当時の日本ではできない経験をさせてもらいました。結果的には、リテールの仕事に戻りたいと思い、「ピー・シー・エー生命保険会社(現SBI生命)」に転職しました。

日本では生保レディと呼ばれる人が近いことをやっていましたが、ファイナンシャルプランニングという考えが十分に根付いていませんでした。極論を言うと営業マンが薦めた商品にお客様が本当に納得しているか分かりませんでした。お客様の本当のニーズを引き出したい、ファイナンシャルプランニングの普及を図りたいとノースアイランド代表取締役の嶋が昔から推進していました。私自身も海外での経験からこの重要性を感じて今に至ります。

Q.海外でのご経歴では、何が印象的でしたか。

海外では保険会社が抱える営業マンって少ないんですね。社内で「この商品を売りましょう」と決めて売るのではなく、何社かにまたがった営業として、「あなたのニーズにはこの会社の商品があっています」というような営業の仕方をするんですよね。日本もそうならないといけないんだろうなと思いました。

日本の証券会社や銀行等金融機関にはそれぞれライセンスがあり、規制上、売ることができる金融商品は業態別になっています。お客様としては法律やそういった規制を知っているわけではないので、今のご自分の状況や将来やりたいことに対して本当にそのような業態別の商品提供が合っているか分からないんですよね。お客様の目指すライフプランや年収によって保険なのか投資なのか、またはどの割合で何を運用するかはそれぞれです。縦割りでそれぞれライセンスを持つのではお客様のためにはなりません。総合的に扱えるライセンスという仕組みが必要だと思います。

ノースアイランド常任顧問 森田均氏

ノースアイランド常任顧問 森田均氏

2.投資の第一歩は自分の目標の設定から

Q.投資初心者は何から投資を始めていくのがいいでしょうか

自分の目標を設定することが大事だと思います。標準世帯では夫婦合わせて公的年金が23~24万円で、もし家賃がかからなかったとしても、光熱費等で2~3万円を引くと月約20万円で過ごさないといけません。1日1万円にも満たない中で、飲食や洋服、交際費も支出があると考えるときついかもしれません。老後の理想的な収入が30~40万円程度と言われており、70歳まで公的年金の開始を後らせたとして、もし90歳まで生きたら年100万円以上×20年=2000万円以上というギャップがあるんですね。この金額をどう揃えるのか、さらに老人ホームや介護施設に入るとしたらどうするか、といった正しく現状理解をすることが重要なのです。

一般の人がそういったライフプランについて考えるツールって、今はなかなかないんですよね。数字を置いて、何のためにお金を貯めるのか、結婚資金なのか、車や家か、老後資金かといった、自分の目標に合った貯め方は何かを考えた方がいいですね。

私は新しい金融商品が出ると、自ら購入し手続きや仕組みを試してみます。自ら経験することでより理解を深めるわけです。今はいろいろな投資の方法がありますが、積立NISAは少額での長期投資で使える手法だと思います。ですが手続きが面倒くさく、品ぞろえも限られているという課題もあります。積立NISAに関する情報を扱った金融・投資関連のサイトやブログを読んで情報を集めながら始めるといいと思います。

バランス型やインデックス投資を長期の視点から行うという選択肢もあります。テーマ型の株投資に関しては、日本のファンドはアメリカと比べるとファンドの寿命が短い印象なので、少額をコツコツ投資するのには向いていないのかもしれません。

iDeCo(個人型確定拠出年金)については、個人的にはSBI証券は比較的使い勝手が良いかと思います。確定拠出年金のポータビリティ(年金原資の持ち運び)は良くなったものの、制度として個人のインセンティブを上げてくれないと使いづらいと思っています。

こういった投資をすることで、経済に関する知見が広がっていきます。毎日見ろとは言いませんがたまにレポートを見たり、ブログやSNSをフォローして調べたりしてみてください。レポートに書かれている用語は難しいと思いますが、そういった情報に触れるうちに自分には関係ないと思いがちな経済や社会の仕組み、社会保障制度に対して理解が進んで、海外の経済動向にも目線を移せるようになるでしょう。

ノースアイランド常任顧問 森田均氏

ノースアイランド常任顧問 森田均氏

3.目的に向かって少しずつ貯めていく

Q.インデックスファンドも何を選べばいいか悩みます。

銀行に行くといくつかパンフレットをくれますが、何がいいのか分からないし、銀行が売りたがっている商品な気がして買いづらいですよね。解説サイトもそうですが、気軽に情報交換ができるコミュニティのようなものを持てるといいですね。すべて言う通りにする必要はないですが、身近で経験ある人に聞くだとか。正確ではなくても、普通に話をする中で情報を集めたらいいと思います。

郵便局や金融機関もそういった場を作ろうと血圧を測れるスペースやフリーWi-Fiを設置したりしていますが、なかなか聞きにくいですよね。若い方は一般の方でもSNSで発信ができるのであまり悲観視していないですが、金融の売り手も買い手も成熟してほしいなと思っています。「お金を増やす」ではなく、「将来の目的に向かって少しずつ貯めていく」という概念が大切です。

Q.日本の経済について、森田さんの見通しを教えて下さい。

日本経済に対して私はそんなに悲観していません。私が見てきたのは団塊世代が日本をナンバーワンにしていたころですが、若い方は平成30年間の中に、そんなにいい時を見ていないですよね。なので世代間の日本経済への見方にギャップがあると思います。若い方はバブルを見ていない代わりに着実に景気は回復していて、こんなもんだと思っているのでしょう。今の日本経済を悲観している人は景気のいい時代を見ているからそう思うのだと思います。海外に目を向けると、先進国は経済成長のピークをある意味では通り過ぎています。日本も今はただその一員になっただけだと思うんです。

一番気にしているのが、人口減少。人口が減っていて、経済規模が上がっている国は歴史上ほとんどないのではないでしょうか。これからどういった世界を目指すのかを考える時に国民全体の底上げをする北欧型なのか、格差をある程度容認しつつも経済のダイナミズムを求めるアメリカ型なのか、どちらにしても人が減ったときのお金の流れについて考える必要があります。今後洋服や車といった消費に対してシェアリングエコノミーという流れがあり、モノを買う必要がなくなっていますね。その中で、高度成長期などの過去の成功体験はあまり当てはまらないように思います。

単一民族の日本は経済規模が伸びる時に大きな力を発揮しますが、人口減少の時代ではどうなのでしょう。ダイバーシティ、女性の社会進出をさらに推進し、年齢、国籍も関係なく、外国人労働ももっと入れればいいのにと思います。まだ海外の人に対する隔たりがあるのは分かっていますが、日本に来た人に日本の文化をリスペクトしてほしいというコミュニケーションが自然にできるようなれば、外国人労働の問題もそんなに問題ではないと思います。彼らは日本が好きで、日本人よりも日本に対する造詣は深いです。血統に基づく「日本人」ではなく、ものの考え方や風習をベースにして、様々な考えが集まった新しい文化を作るような動きがあってもいいと思うんです。

4.「投資するリスク」と「投資しないリスク」

Q.投資初心者にアドバイスをお願いします。

まずはやってみたら、ということです。妻にも言っていますが、なにもしないと物価が上がったときに、買えていたものが買えなくなってしまいます。大きいお金を動かさなくても、1万円程度で少しやってみるのでもいいんです。

「投資するリスク」もありますが「投資しないリスク」もあります。友達に聞きながらちょっとずつやってみるとか、金融・投資関連のサイトやブログをのぞいたり金融機関はタダでセミナーをやったりしているので顔を出してみてください。ネット上に出ている多くの方が興味を持っている投資形態をやってみるのもはじめの一歩ですね。

5. 編集後記

「投資」と一言で言っても、株や不動産など、それぞれ種類もたくさんあるので、なんだか難しそう、と敬遠してしまいます。ですが今回のインタビューにより、自分のライフプランに合わせて何が必要なのかを考え、経済に対して知見を広げる機会になると知り、友達との情報交換といった小さな一歩を踏み出すことが大事であると感じました。

自分のライフプランと、見ないふりをしがちな「投資しないリスク」を考えながら、あなたも一歩を踏み出してはいかがでしょうか?

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HEDGE GUIDE 編集部 ロボアドバイザー・少額株式投資チーム

HEDGE GUIDE 編集部 ロボアドバイザー・少額株式投資チーム

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