2022年は世界的にインフレが進行する中、世界的な利上げムードとなっています。
各国がインフレ抑制のため政策金利を急ピッチで引き上げていくことが影響し、世界的に株安が進行する中、今後の動向に不安を覚える個人投資家の方も多いでしょう。ここでは現在の株安のトレンドがどこまで継続し、また今後どのような展開となり得るのか、テクニカル的な側面からチャートを見つつ解説していきたいと思います。
※2022年6月26日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。
目次
- 現在のマーケット環境
1-1.急速に進む世界的なインフレ進行
1-2.テクニカル指標で見た現在の環境 - テクニカルから判断する今後の動き
2-1.米国株の今後の動き
2-2.日本株の今後の動き - まとめ
1.現在のマーケット環境
まずは現在のマーケットがどのような状況であるかを見ていきましょう。
1-1.急速に進む世界的なインフレ進行
最初に押さえておくべきマーケット環境のポイントは「世界で進んでいるインフレ」です。
昨年からインフレの兆候がありましたが、今年に入って急速に進行しました。その環境下、ロシアがウクライナに侵攻し、サプライチェーンが混乱したことによるコモディティ高を背景にインフレが止まらない状況となっています。
このコストプッシュ型のインフレ対策のために世界各国の中銀は政策金利の引き上げを行っており、「悪い利上げ」でもあるため、株価は年初から下落トレンドが継続しています。
S&P500指数で最高値から20%ほどの下落を見せており、加えて金利上昇に敏感なNASDAQに関しては30%近くの下落幅を見せています(2022年6月24日終値)。これまで続いていた緩和相場から一気に金融引き締めに転換しているため、逆回転が起こっているというのが足元の状況です。
1-2.テクニカル指標で見た現在の環境
次に現在の状況をテクニカル指標を見ながら考えてみたいと思います。まずS&P500指数を例に、現在の状況をテクニカル指標で確認してみましょう。
S&P500(月足)
上記はS&P500指数の月足チャートです。
テクニカル指標は「RSI」、「ストキャスティクス」、「パラボリック」、「フィボナッチリトレースメント」の4つを表示させています。
まずRSIはちょうど50を下回る位置で推移しており、これまで上昇トレンドだったこともあると大分調整が終わっていると言えますが、まだ調整する幅を残しているかもしれません。
次にストキャスティクスではヒストリカルローの水準まで低下しており、割安感が出ていると言えます。
フィボナッチリトレースメントは3分の1戻しを達成し、半値戻し付近まで一瞬下落していますが、3分の1戻しと半値戻しの位置の間で一旦下落はストップしたような動きになりました。押し目と考えると、いい水準で止まっていると言えるでしょう。
最後にパラボリックは下落基調がスタートするようなタイミングであり、このパラボリックが遅れて反転する前に、相場は反転する可能性があるかもしれません。
日経平均株価(月足)
続いて日経平均株価をチェックします。
日経平均株価ではRSIは50以上の水準で維持しており、ストキャスティクスも一度売られ過ぎの水準に到達してから、再度反発してきているという状態です。
フィボナッチリトレースメントを見ると半値戻しを綺麗に達成して底堅く推移しており、パラボリックも反転間近というところで位置しているため、日経平均株価は反転の可能性も出てきそうなチャートです。
では次に週足で見ていきたいと思います。
S&P500(週足)
週足のRSIは売られ過ぎの水準にまでは到達していませんが、ある程度調整が進んでいる状況です。もう少し下落したタイミングがいい押し目となりそうなため、調整する余地はまだあると言えるでしょう。
ストキャスティクスは売られ過ぎの水準まで低下しており、底固めをしているようにも見える動きとなっています。ストキャスティクスでは調整は完了している水準と判断できるでしょう。
パラボリックを見ても下落トレンドに入っており、現在はトレンド継続と判断しておくのが懸命かもしれません。
日経平均株価(週足)
次に日経平均株価の週足チャートです。
日経平均株価の週足を見るとRSIも横ばいとなっており、ストキャスティクスも中心あたりで推移しているため、オシレーターを見る限りは買いの水準かどうかを判断するのは難しい位置です。
しかし、価格が下落してくる中でオシレーターが低下しているというのは「時間調整」という動きであり、今後上昇する一つの参考となるものとなっています。
またフィボナッチリトレースメントも半値戻しを達成している状況なので、一旦の下押し圧力は低下していると言えるでしょう。
しかしここから下落するということも往々にしてあるため、調整余地はまだ残していると捉えて、強気になる場面ではないと理解しておいた方がいいかもしれません。
パラボリックも下落に転じており、上値の重さは継続しそうな状況です。
最後に日足チャートでの移動平均線の位置を確認しておきたいと思います。
S&P500(日足)
50日単純移動平均線と200日単純移動平均線を表示させています。
コロナショックが起きた2020年3月以降の緩和相場により、移動平均線はゴールデンクロスを維持しながら上昇基調が継続していました。しかし今年に入って頭打ちとなり下落する中、移動平均線もデッドクロスしているという状況です。
そのため、50日移動平均線や200日移動平均線あたりまで反発すると上値が重くなるという動きが今後出てくるでしょう。
日経平均株価(日足)
次に日本株ですが、S&P500指数と同様にデッドクロスはしているものの、下落圧力は米国と比較して強い動きにはなっていません。元々日本株自体の上昇幅が米国と比較して弱かったという面もあり、上昇幅が元々小さかった分、下落幅も小さいという考え方もできるでしょう。
また現在、日銀は緩和路線を継続しており、世界のトレンドとは真逆の金融政策を行っていることも株価の下支え要因となっています。そのため、ここからの日銀の政策変更の可能性は頭で考えつつ、テクニカル分析の面でも下落余地は残していることから、まだ強気に上方向で攻めるということは難しいかもしれません。
2.テクニカルから判断する今後の動き
上記でまとめたテクニカル指標から総合的に考え、今後の動きについて米国と日本で分けてまとめていきたいと思います。
2-1.米国株の今後の動き
米国株は長期的に見た場合にはある程度価格の調整が進んでおり、底固めの時期が近づいていると判断できるものの、まだ下落余地は残していると考えられます。
今後の展開としては、アメリカのインフレ見通しと利上げスピードが加速するかどうかで株式市場も影響を受ける状況になります。利上げスピードが加速しない場合は、現在既にある程度の年内の利上げは織り込まれているため、株価の下落は限定的となり得るでしょう。
年内では反発する過程で移動平均線がデッドクロスしている以上、上値が重くなりやすい場面が何度か訪れると考えられるため、ゆっくりとしたポジションの積み上げとリスク管理が必要になると思われます。
今年はアメリカで中間選挙があり、株価は下落しにくい地合いになりやすいため、今年から来年にかけて考えた場合に、現在の水準でゆっくりポジションを増加させるという戦略も有効かもしれません。
2-2.日本株の今後の動き
日本株は下落幅が限定的となっており、テクニカルで見ると下落余地はまだ残していると言えるでしょう。
また、日本は緩和路線をまだ継続している国であり、ここから政策変更で利上げ方針を示した場合は、テクニカルでも示している下落余地を埋めていくような展開になると想定されます。
日銀が政策変更をした場合は、日経平均株価もまだ下落基調が継続すると考えられるため、この点を視野に入れつつ、アメリカと日本の金融政策の違いを理解しながら両者を取引する必要があるでしょう。
まとめ
アメリカと日本の株式市場は、主に対照的な金融政策の影響によってそれぞれ異なる動きをしており、テクニカル分析の観点からも異なる傾向が見て取れます。
戦争に伴う世界的なインフレや金融政策の変動リスクなどにより、市場は不安定な状況が続くと思われます。冷静に状況を見極めながらポジションを考えましょう。
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中島 翔
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