これから投資信託を始めるにあたっては、ファンド選びの際にコストも併せて確認する必要があります。また、現物の株式投資などと違い、投資信託のコストは購入・運用・売却それぞれの場面でかかります。そのため初心者の方にとっては、最初は投資信託のコストだけでも難しい内容に感じるかと思います。
そこで今回は、投資信託にかかる購入、運用、売却、その他コストをそれぞれわかりやすく解説します。
目次
- 投資信託にかかるコスト一覧
- 投資信託の購入時にかかるコスト
2-1.販売手数料の仕組み
2-2.販売手数料の計算式
2-3.販売手数料のかからないファンドも多い - 投資信託の運用にかかるコスト
3-1.信託報酬
3-2.信託報酬以外のコスト
3-3.運用コストはインデックスとアクティブで異なる - 投資信託の売却時にかかるコスト
4-1.売却時には信託財産留保額がかかる - その他投資信託にかかるコスト
- まとめ
1.投資信託にかかるコスト一覧
まずは投資信託にかかるコストを一覧で紹介するので、名称やどのタイミングで発生するのかを確認してください。
投資信託にかかる主なコスト
- 販売手数料:ファンド購入時にかかるコスト
- 信託報酬(運用管理費用):ファンドを保有している間にかかるコスト
- 信託財産留保額:ファンドを売却する際にかかるコスト
記事冒頭でも触れていますが、投資信託のコストは購入、運用、売却の主に3種類です。その中で発生するコストが主に上記の3つとなります。
なお、投資信託にかかるコストは1%や2%といった表記が多いため、一見すると小さなコストに感じるかと思います。しかし、手数料率が1%変わると、たとえば運用金額が1000万円を超える場合は年間10万円以上、また運用金額が100万円でも運用期間が10年以上になる場合なども累計で10万円以上のコストの差に繋がります。
ですので、コスト面から比較する際は0.1%の違いも見逃さないようにしましょう。
2.投資信託の購入時にかかるコスト
投資信託のファンドを購入する際には、販売手数料と呼ばれるコストがかかります。購入方法によって計算が変わるため、単純にファンド1口あたり100円の手数料といった仕組みではありません。
ファンドを選ぶ際は、販売手数料の計算を理解した上で比較、検討するのが大切です。
2-1.販売手数料の仕組み
販売手数料は、証券会社などファンドを販売している販売会社に対して支払うコストです。ファンド購入時に購入金額から自動的に差し引く形で支払われます。
販売手数料の表記については、1%や2%といった手数料率で表示しているのが特徴です。また取扱企業によって名前が少々異なるケースがある点には注意が必要です。たとえばSBI証券の投資信託サイトでは「買付手数料」という名称で表示されています。
販売手数料が設定されている場合、料率は1~3%の間で設定されていることが多く、小数点1桁まで細かく設定されているファンドも少なくありません。
2-2.販売手数料の計算式
販売手数料の計算式は、金額買付と口数買付によって変わるため注意が必要です。
金額買付とは、投資信託のファンドを任意の金額で購入申し込みする方法です。5万円や10万円といった金額を入力し、発注手続きを行います。
一方、口数買付は、基準価額ではなく1口、2口と呼ばれる単位で購入申し込みを行います。たとえば基準価額1万円のファンドであれば、1口1万円、2口2万円といった単位で購入可能です。
販売手数料の計算には、それぞれ以下の流れでコストと実際の購入金額や口数を求めます。
金額買付の場合
- 購入金額×手数料率=販売手数料コスト
- 購入金額-販売手数料=実際の購入金額
- 実際の購入金額÷基準価額(1口あたり)=購入数量(口数)
金額買付の場合でも、上記のように購入口数を求めることが可能です。また、実際の販売手数料には、消費税を含めます。
【口数買付の場合】
- 基準価額×購入数量=購入金額
- 購入金額×手数料率=手数料
- 購入金額-手数料=実際の購入金額
実際の取引では、取引画面に口数と金額どちらも表示されるので、どの購入方法でも簡単に販売手数料を計算できます。また、NISA口座と一般口座で販売手数料が異なるファンドもあります。
2-3.販売手数料のかからないファンドも多い
2020年4月現在、ネット証券会社を中心に、販売手数料0円のファンドの取り扱いが増えてきています。この販売手数料0円のファンドを「ノーロード」と呼びます。
多くの証券会社ではノーロードのファンドに絞って検索することができるため、簡単に探すことが可能です。ノーロードのファンドは、インデックスや国際株式、国内株式など、多種多様なジャンルのものが2,000本以上存在します。
これから投資信託を始める場合は、ノーロードファンドであるかどうかも確認してみるのがいいでしょう。
3.投資信託の運用にかかるコスト
投資信託の場合は、ファンドを保有している間もコストがかかります。複数のコストに分かれているので、ここでは主となる信託報酬と、信託報酬以外に分けて簡単に解説します。
3-1.信託報酬
投資信託を保有していると、信託報酬(運用管理費用)と呼ばれるコストが発生します。
信託報酬は販売会社、運用会社、受託会社それぞれに対して間接的に支払うコストです。一般的には年率で表記されていて、保有ファンドから毎日日割り分が差し引かれています。
そもそも投資信託は株式投資やFXと異なり、販売会社、運用会社、受託会社が連携しながらファンドを運用しています。また、利益を得るためには、各会社が市場調査や投資家から集めた資金の保管管理、運用レポートの作成などさまざまな業務を遂行しています。そのため投資家は各業務をプロに任せる代わりに、信託報酬という形で手数料を支払うことになるのです。
手数料率は、0.1%~2%前後と幅広く設定されており、一般的には後述のようにインデックスファンドは安く、アクティブファンドは高い傾向にあります。
信託報酬は、信託財産(投資家から集めた資金)に手数料率をかけて日々差し引かれています。ただし細かな計算方法は各ファンドによって異なるため、目論見書(運用方針や投資対象の銘柄、コストなどが記載されている資料)で購入前に確認しておきましょう。
3-2.信託報酬以外のコスト
投資信託の運用中は、信託報酬以外に以下のようなコストもかかることがあります。
例:信託報酬以外のコスト
- 監査費用
- 売買委託手数料
- 保管費用
- 事務手続き
ファンドによっては、上記以外の費用項目を設定していることもあります。また、信託報酬以外のコストは運用状況で変動するため、具体的な手数料、手数料率は表記されていないことがほとんどです。
信託報酬以外の費用項目は、各ファンドが公開している目論見書で確認できます。
3-3.運用コストはインデックスとアクティブで異なる
ファンドの運用コストは、運用状況や購入金額だけでなく、インデックスファンドとアクティブファンドでも変わります。
一般的に信託報酬は、インデックスファンドの方が低く設定されています。なぜなら、指数(日経平均やNYダウなど)に沿った運用目標に向けて機械的に運用することから、運用会社にかかる負担もアクティブファンドより低いためです。
一方、アクティブファンドは指数を超える運用を目指すので、そのための調査やポートフォリオの入れ替えなど運用会社にかかる負担が大きく、その分信託報酬率を上げています。
手数料コストやリスク回避を重視する場合は、インデックスファンドを多めに組み込むのがいいでしょう。
4.投資信託の売却時にかかるコスト
投資信託では、ファンドを売却する際にもコストがかかります。売却コストは1種類のみですので、運用コストと比較して覚えやすい内容です。
4-1.売却時には信託財産留保額がかかる
ファンドを売却する時には、売却資産に対して信託財産留保額と呼ばれるコストがかかることがあります。
信託財産留保額とは、投資信託を継続している投資家への配慮という位置づけで、運用コストの負担を公平にするために、解約した投資家が支払うことになる費用です。信託財産留保額は販売会社の利益ではなく、信託財産に組み込まれるのが特徴的です。
信託財産留保額は、多くのファンドで1%未満に設定されています。ただし最近では手数料率0%(0円)のファンドも多く、初心者にとっても商品を選びやすい環境になりつつあります。
5.その他投資信託にかかるコスト
その他のコストとしては、以下の項目が挙げられます。
- 募集手数料:購入時のコスト。募集期間のみ購入できる単位型投資信託にかかる。
- 解約手数料:売却時のコスト。信託財産留保額とは別に、販売会社へコストを支払うファンドもある。
解約手数料や募集手数料は、必ずしも全ての投資信託にかかるコストではありません。ファンドによって発生の有無が異なるため、目論見書を確認しましょう。
まとめ
投資信託にかかるコストは、ファンドの購入、運用、売却それぞれで発生します。各コストはファンドによって手数料率が変わります。
投資信託の購入経験がない方は、まずは販売手数料、信託報酬、信託財産留保額の3種類を理解し、ファンドを探す際に計算、比較してみるのが大切です。
投資信託は中長期的に運用を行うことで資産を構築するための金融商品です。手数料率1%や0.5%の違いが、5年後、10年後には数十万円以上の差を生じさせうる要因ともなります。
投資信託を始める時は、株式や債券といった投資対象ジャンルだけでなく、購入や運用に伴うコストも確認しましょう。
菊地 祥
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