海外のソーシャルレンディング案件に投資する際、『為替ヘッジの有無』という記載があります。為替ヘッジとは何かを理解していないと、海外投資の際に思わぬ損失が発生する可能性があります。
そこでこの記事では、為替ヘッジとは一体どのような働きを持つのか、為替へッジを設定することによるメリットとデメリットなどをご紹介したいと思います。
目次
1 為替ヘッジは相場変動リスクを防ぐためのもの
為替ヘッジとは、外貨建て案件に投資する際に外国為替の相場変動リスクを防ぐためのシステムのことです。例えば1ドル100円の時に100万円を年利10%のアメリカの不動産案件に投資したとします。100万円は1万ドルに両替されてから投資されます。
順調に案件が運用されれば、1年後には年利10%、つまり10万円分配されているはずです。しかし投資したお金はドルに両替されて運用されるため、海外では1万ドルとして運用されるのです。
そして、1年後もし円高が進んで1ドルが90円になった場合、1万ドルを日本円に両替すると90万円にしかなりません。年利10%の分配金を合わせても99万円です。つまり運用が成功しても円高に相場が動けば、損失が発生してしまうのです。これが為替相場における変動リスクなのです。
そして、この為替相場における変動リスクを防ぐための取り組みが為替ヘッジです。
1-1 為替ヘッジのシステムとは
為替ヘッジはどのように為替相場の変動リスクを防止するのでしょうか。それは案件運用終了後に『同条件で両替する権利』を予約するのです。
例えば1ドル100円のときに100万円を1万ドルに両替したら、1年後に100万円を1ドル100円で両替できる権利を優先的に確保します。そうすることで運用期間終了後の為替変動リスクをカバーできるのです。
1-2 為替ヘッジを設定しているソーシャルレンディング会社
為替ヘッジを設定しているソーシャルレンディング会社にはガイアファンディングとアメリカンファンディングなど、アメリカの不動産物件専門のソーシャルレンディング会社があります。
また、海外案件を豊富に扱うクラウドバンクでは、案件により為替ヘッジが付いているものと付いていないものに分かれており、為替ヘッジがついていない案件にも投資は可能です。
2 為替ヘッジのデメリットとは
為替ヘッジがついていれば、相場の変動リスクを気にせずに投資できるというメリットがあります。しかし一方で為替ヘッジにはいくつかのデメリット(リスク)があります。
2-1 為替ヘッジは手数料がかかる
為替ヘッジは案件運用終了後の『両替予約権』を確保します。しかしその予約権の確保は無料ではなく、手数料を支払わなければいけません。相場としては運用金額の1%程度が多いようです。つまり為替ヘッジ付きの案件に投資すると、利回りが1%分下がってしまうのです。
2-2 為替ヘッジは万能ではない
為替ヘッジ付きの案件に投資しても、全ての為替変動リスクがカバーされるわけではありません。例えば海外の不動産案件に投資して貸し倒れが起きたとします。その際には担保を換金して投資家に返済が行われます。
為替ヘッジは投資家が投資した資金の両替権が確保されますが、担保を換金したお金に対する両替権はカバーされていません。
例えば10万ドルの案件で貸し倒れが起きたため、担保を10万ドルで売却したとします。そして投資家にも10万ドルが返金されます。投資家が直接投資したお金であれば、その10万ドルは案件の運用開始時と同じ相場で両替できるのですが、担保を売却したお金はその時のドル・円のレートで日本円に両替されます。そのため、もし為替相場が円高に進行していれば、損失が発生する可能性があるのです。
3 為替ヘッジを設定しないことによるメリット
一方で、為替ヘッジを設定しないことにもメリットがないわけではありません。為替相場の変動により円高に動いて損失が発生することがあれば、逆に円安に動いて利益が発生することもあります。もちろん円高に相場が動けば損失が発生しますが、円安に動くことによる為替差益を狙うのも一つの手です。
例えば1ドル100円のときに1万ドルを投資したとします。そして1年後に1ドルが110円になっていれば、1万ドルを円に両替すると110万円になります。そのためソーシャルレンディングの分配金というインカムゲインだけではなく、為替変動によるキャピタルゲインの獲得も可能です。
実際にクラウドクレジットのカメルーン案件ではユーロ建てで運用を行ったところ、ユーロが大幅に円安に動いたため、想定の利回りの10%が30%程度になったこともありました。今後相場が円安に動くと予想される時は、あえて為替ヘッジをつけないという選択肢もあります。
4 為替ヘッジはあったほうが良いのか?
では実際に海外のソーシャルレンディングに投資するとしたら、為替ヘッジが付いている案件と付いていない案件、どちらを選んで投資した方が良いのでしょうか。
4-1 現在の日本円の相場はやや円安気味
現在(2018年6月時点)の日本円の相場を見ると、ドルに対しては1ドル110円前後、ユーロに対しては1ユーロ130円前後で推移しています。あくまでも直近5年間の比較ですが、ドル・円の相場はやや円安気味とも言えるでしょう。
過去にはリーマンショック前の最円安時に1ドル125円程度まで相場は進行しましたが、その後の最円高時には75円程度まで円高が進みました。直近1年のレンジは104円~115円程度となっています。
4-2 途上国の為替ボラティリティは高い
それでも日本とアメリカは共に経済大国ですから、ドル・円相場の変動域はある程度予測することが可能です。少なくとも1ドルが200円になったり、50円になったりすることは現状では考えにくいでしょう。
しかし、発展途上国の為替相場に関してはその限りではありません。急激なインフレが起こる可能性もありますし、通貨危機などが起こる可能性なども考えられます。ドルやユーロといった世界的に信用度の高い通貨と比べれば、そのボラティリティ(変動幅)は非常に大きいものとなります。
もちろん利益が発生する可能性はありますが、リスクをできるだけ小さくしたいと思うのであれば、途上国の投資案件は為替ヘッジがついているものを選んだ方が良いでしょう。
4-3 クラウドクレジットでは為替ヘッジなしが人気
なお、クラウドクレジットが開催するセミナー内での話によれば、同社では為替ヘッジが付いている案件の投資より、為替ヘッジなし案件に対する投資に人気があり、その比率は1:2程度となっているとのことです。
為替ヘッジによって大きな利益を獲得したいと考える投資家や、円安に進むと考えている方がたくさんいるということが分かります。
5 まとめ
為替ヘッジはリスク回避の上で大いに役立ちますが、その分収益性が下がるデメリットもあります。一方で為替ヘッジを付けなければ利益が2倍以上になる可能性もあります。反対に円高に相場が進行すれば、案件の運用が成功したにもかかわらずまともな収益が得られない、もしくは損失が発生することもあるのです。
ガイアファンディングとアメリカンファンディングの2社は全案件で為替ヘッジを設定しているので特に選択の余地はありませんが、海外案件を豊富に扱っているクラウドクレジットでは、各海外案件の状況報告を毎月詳細に行っています。国ごとの経済の状況などを見ながら為替ヘッジあり・なしのどちらを選んでいくかを考えていきましょう。
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HEDGE GUIDE 編集部 ソーシャルレンディングチーム
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