クラウドバンクへの投資は大丈夫?情報開示方針と案件ごとの開示内容を分析

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2019年3月18日に、金融庁からソーシャルレンディング各社に対し、融資先の匿名を撤廃する旨の通達が行われました。従来のソーシャルレンディング各社には、融資先の事業社名について非公開の義務がありましたが、通達の内容を受け、ソーシャルレンディング各社でも投資家に対して徐々に情報開示に取り組んでいます。

累計募集金額において業界第3位の実績を誇る『クラウドバンク』も金融庁の方針を受け、一部ながらも情報の開示を始めています。そこで今回は、クラウドバンクの具体的な情報開示の内容と投資家としてどういった情報を重視すべきかを確認してみましょう。

目次

  1. クラウドバンクの概要と情報開示方針
  2. 一部の案件では融資先の情報を公開している
    2-1.社名や財務状況を確認できる
    2-2.クラウドバンクと資本関係がないという点も要チェック
  3. すべての案件で融資先が開示されているわけではない
    3-1.太陽光案件はまだ非公開
    3-2.事業者向け融資案件も非公開が多い
    3-3.海外不動産案件は?
  4. まとめ

1.クラウドバンクの概要と情報開示方針

クラウドバンク
運営会社名 日本クラウド証券株式会社
本社所在地 東京都港区六本木七丁目15番7号 新六本木ビル 6F
設立 1993年(旧 ディー・ブレイン証券)
資本金 1億円(平成31年3月31日現在)
売上高 24億608万円(2019年3月期実績)
上場有無 非上場
サービス開始年月 2013年12月
参考利回り 6.99%(※2019年3月末までの3年間に運用したファンド実績)
投資金額 1万円から
投資実行額・応募総額 応募総額 805億円超(※2020年1月現在)
運用期間の目安 最短2ヶ月~最長36ヶ月

※2020年1月時点の情報となります。最新情報に関しては上記サイトを御覧ください。

まずクラウドバンクは、4月12日に以下のような情報開示に関する方針を発表しました。

要件の充足を図るべく対応を行いましたので、4月17日以降に募集するファンドについて融資先を特定し得る情報の開示を行うことといたしました。

4月17日以降に募集するファンドについては、下図のような「会員限定情報」というタブが追加されておりますので、ログインされた状態のお客様が、融資先を特定し得る情報を閲覧することができます。

クラウドバンクが4月17日以降に募集した案件情報の開示先については、あくまでクラウドバンクに投資家として登録している会員を対象にしています。

これらの情報に関しては、

転記等された情報を利用した第三者等が融資先に直接接触する等のトラブルが生じた場合、転記されたお客様の責任が問われる等の可能性がございます。

との見解が示されているため、情報を直接確認するには投資家としての登録が必要になってきます。金融庁の方針の転換を受け、同社でも情報開示の必要性を意識していることが文面から伝わってきます。

2.一部案件では融資先の情報を公開している

それでは具体的にどのような情報が公開されているのか、見てみましょう。

2-1.社名や財務状況を確認できる

こちらの案件では、会員に閲覧を限定した情報中に、融資先の社名が実際に記されています。また、ファンド名に上場企業支援ファンドという名前が付いているように、融資先会社はJASDAQ上場企業の子会社です。上場企業の子会社ということで、投資家はコンプライアンスに対する遵守意識の高さや、倒産リスクの低さをある程度は期待できるでしょう。

情報には会社名が記載されていて、その後にクラウドバンクの運営元である日本クラウド証券との関係性が記されています。内容によれば、融資先と日本クラウド証券との間、また、営業者であるクラウドバンクフィナンシャルサービス株式会社との間に資本関係や人的関係、利害関係などは無いとしています。

その後には会社概要として、

  • 住所
  • 業務内容
  • 資本金
  • 創設年

などが記載されており、業務内容は不動産事業となっています。

さらには、創設以降の会社の略歴についても、詳細に記載されています。加えてJASDAQ上場企業でもある融資先の親会社の社名や社歴、概要や事業内容などが記載されています。特に融資先の企業が上場企業であることから、企業に関する情報収集などは未上場企業よりも行いやすいと言えます。

また融資先の財務状況として、以下の点が記載されています。

  • 主要な財務情報
  • 売上高
  • 営業利益
  • 当期純利益
  • 総資産
  • 純資産

倒産リスクなどについても、この数字を見ながら検討できるでしょう。

さらに、この案件に対して設定された担保や保証の概要も詳しく記載されています。今回の案件では、担保として土地所有権に対する第一順位の抵当権設定。そして、100%保障として親会社による連帯保証もセットになっています。

担保の所在地についても、物件が特定できるように以下の情報が掲載されています。

  • 所在
  • 用途地域
  • 建ぺい率・容積率
  • 交通アクセス
  • 周辺施設
  • 土地面積
  • 現況

さらに、現在の建物が写真付きで掲載されていて、どのような状況になっているのか、また現地に赴いて実際に確認できるようになっています。不動産の数字に詳しい人が見れば、周辺の土地の価格や建物の評価額などを計算するのも難しくないでしょう。

クラウドバンクは、一部の案件について詳細な情報提供を行っています。これまでは融資先の業務内容や資金の用途などについては、おおよその範囲で掲載されていました。しかし、4月17日以降は一部ではありますが、投資家が具体的に特定できる融資先および担保に関する情報の公開まで行っているのです。

2-2.クラウドバンクと資本関係がないという点も要チェック

この中で特に確認しておきたいのは、クラウドバンクと資本関係がないと記載されている点です。

ソーシャルレンディングの融資先が親会社になってしまうと、親会社が事業に失敗したときに連鎖倒産が起きる可能性がありますし、また例えば親会社に不動産を売却させて融資した資金の返済を迫ることは関係上、基本的に困難である可能性が高いのです。

資本や人のつながりが一切ない会社への融資でしたら、連鎖倒産も起こりにくく、強く返済を迫ることも可能になります。こういった関係性が記載されている点は、クラウドバンクの強みと言えるでしょう。

3.すべての案件で融資先が開示されているわけではない

一方で、クラウドバンクでは全ての案件で融資先が公開されているわけではありません。情報が詳細に記載されているのは、2019年5月時点ではJASDAQ上場企業の子会社への融資案件のみとなっています。

3-1.太陽光案件はまだ非公開

クラウドバンクでは、太陽光施設への融資案件も数多く募集しています。しかし、こちらの案件においては、融資先からの希望で社名が非公開になっています。ただし、融資先の自治体の情報や財務状況、さらには、担保となる不動産の内容や所在地などは公開されているため、太陽光発電施設の特定が可能になっています。

3-2.事業者向け融資案件も非公開が多い

こちらの案件に関しては、中小企業の運転資金や事業資金の融資が中心になっています。融資先の社名は非公開で、住所については自治体の名称まで記載されているものの、特定が難しいものとなっています。

この案件については、担保に債権が設定されているため、債権の概要が詳しく記載されています。しかし、債権については、不動産のように「存在するかどうか」の確認は難しくなっています。そのため、ややリスクは高いと言えるでしょう。

3-3.海外不動産案件は?

また、最近のクラウドバンクでは、海外の不動産案件を扱い始めています。こちらはクラウドバンクの関連会社への融資になるため、融資先の名前自体は明らかにされています。また、不動産の担保の場所や評価額の算出の方法も記載されています。

ただし、融資先がクラウドバンクの関連会社になるため、どうしてもリスクは高くなってしまう点は承知しておかなければいけません。それでも自社の関連会社への融資であると明確に記載している点は、投資家がリスクを測る上での判断材料になります。情報の開示がしっかりと行われていると考えられます。

まとめ

クラウドバンクは特定の案件において、融資先についての情報を詳細に伝え、さらには、担保に関する情報を開示しています。投資家は公開された情報をもとに、リスクを正確に判断して投資の是非が決定できます。

残念ながら全ての案件において情報が詳細に公開されているわけではありませんが、融資先の名前がきちんと示されている案件であれば、情報を精査することで案件リスクを抑えることが可能になっています。

「限られた資金で損失リスクをできる限り抑えて、冷静に判断して投資したい」という方にとって、クラウドバンクは選択肢の一つとして検討に値するソーシャルレンディング投資先の一つと言えるでしょう。

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HEDGE GUIDE 編集部 ソーシャルレンディングチーム

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