クラウドクレジット社長著書『さらば銀行 第3の金融が変えるお金の未来』を読む

ソーシャルレンディングの「クラウドクレジット」を運営する、クラウドクレジット株式会社・代表取締役社長の杉山智行氏が、2019年4月に『さらば銀行 第三の金融が変えるお金の未来』という本を講談社から出版しました。

ここでは書籍の本筋に触れながら、杉山社長の金融業界およびクラウドクレジットにかける想い、そして、ソーシャルレンディング業界の今後についての提言をご紹介します。

記事末尾には杉山社長ご本人に頂いたコメントも掲載しています。ぜひともご一読ください。

目次

  1. ずばり、本には何が書いてある?
  2. 杉山社長が世界に投資の種をまく理由
  3. 杉山社長の経歴
  4. クラウドクレジットという会社について
    4-1.クラウドクレジットでの投資に向いている人とは
  5. 本で触れられている現代、成長市場を持つ国と第3の金融
  6. まとめ
  7. 杉山智行社長から

1.ずばり、本には何が書いてある?

杉山智行社長の著書『さらば銀行 第三の金融が変えるお金の未来』は、以下の構成になっています。

第1章の「一人ひとりの小さなお金が世界を変える」では、クラウドクレジットが積極的に取り組んでいるマイクロファイナンス融資の例を挙げ、ソーシャルレンディングやフィンテックとはどういうものなのか、そして、現在の金融が世界でどのように発展しているかを包括的に述べています。

第2章および第3章は、杉山社長のこれまでの経歴を中心とした内容になっています。学生時代に何を学び、どうして金融業界を志望したのか。そして、就職後の社歴と業務歴、職場を転々としながら杉山社長がどのような想いで仕事に取り組み、クラウドクレジットを設立するに至ったかの経緯を詳細に記しています。

第4章の「世界四大陸を飛び回って」では、クラウドクレジット創業から現在に至るまで、杉山社長が海外ファンドを提供・創設するために世界を飛び回り、どのような業務に取り組んできたかを中心に振り返っています。

第5章は「クラウドクレジットの始め方」と題し、クラウドクレジットに投資する際の必要な知識や心構え、また、具体的な投資方法などについて触れています。

最終章の第6章では、「クラウドクレジットが作る新しい金融のかたち」として、現在の世界的な金融業界のトレンド、そして、今後どのように金融業界とそれをとりまく世界が変わっていくかについて持論を展開しています。

数々の金融機関で働いてきた杉山智行社長がクラウドクレジットを創業した理由、そして今、何を考えて業務に取り組んでいるかについて詳しく取り上げていて、非常に分かりやすい本になっています。

2.杉山社長が世界に投資の種をまく理由

杉山社長は第1章の「1人ひとりの小さなお金が世界を変える」において、クラウドクレジットが2018年にテレビ東京系の番組『ガイアの夜明け』の特集で取り上げられたことに触れ、TVで紹介されたことが同社を大きく飛躍させるきっかけになったと述べています。

特に番組中で取り上げられていたのが、杉山社長が現地のペルーに赴き、小さな商店に融資を行う様子でした。金融の世界は発展途上国と先進国では大きな差があり、先進国ではお金が必要な人に回すことができているため、金融が一定の役割を果たしています。

しかし杉山社長は、「発展途上国ではまだ、お金の流れを促進させる仕組みが不十分で、満足に機能していない。事業に必要な資金がないために成長ができず、事業を発展させることができない人が多い」としています。

そうした人たちに融資を行って利益を出し、ひいては社会に貢献する。これこそがクラウドクレジットのホームページなどでもよく取り上げられている「社会的インパクト投資」です。その投資の種を世界に撒きたいために、杉山社長は世界を飛び回っているのです。

また、同時に、なぜペルーを最初の投資対象国としたのか、クラウドクレジットの投資対象とする国の基準も別章で詳細に記載しています。ペルーという国の魅力、先進国と比較してひけを取らない投資先としての確実性。そして、海外を中心に投資対象を選定していく苦労談などを非常に詳しく著しています。

クラウドクレジットがどのように投資対象国を決めているかが気になる人は、ぜひ一度読んでみると良いでしょう。

3.杉山社長の経歴

第2章では杉山社長の学生時代について触れています。高校生の当時、当初は防衛大学校を志望していたのですが、社会を動かせるということで受験直前に東京大学法学部を志望するようになったこと、その後の勉強から大学入学後は公認会計士の道を捨てて金融工学に目覚めたことなどを綴っています。

そして、大学時代からすでに金融関係を志望して、金融機関や証券会社でのインターンシップに参加していたこと、アクチュアリーを目指した、などの体験談が続きます。

「会社を起業する気はなかった」本の中ではそのように独白していますが、学生時代から大きな目標を持って行動する意欲の高い人間だったことが分かってくる章です。

大学卒業後に杉山社長が就職した大和証券SMBCでは、3年目にトレーダーとして参加したものの、敗北感にうちひしがれる結果となったこと、その後はイギリスのリテール銀行であるロイズ銀行に転職し、そこでリーマンショックを経験したこと、大きなプロジェクトを立ち上げようとしたが頓挫したことなどにも触れています。

2社での勤務経験を経て、2013年1月にクラウドクレジットを立ち上げるに至った経緯も詳しく知ることができます。また、その際の苦労談として、社名やオフィスの選定にはじまり、ともに働くメンバーとの関係性などについて杉山社長の人間味が伝わるような実話も挙げています。

また、杉山社長が影響を受けた人物やプレゼンなどの方法についても書かれています。将来的に起業に興味がある人にも参考になる内容です。

4.クラウドクレジットという会社について

クラウドクレジットは国外の投資案件に特化するという特徴を持っているソーシャルレンディング会社です。その背景には発展途上国の経済発展に貢献したいという想い、同時にソーシャルレンディングは高金利に設定できる魅力的な投資商品であることへの期待感がにじみ出ています。

杉山社長はこの章の中で、ソーシャルレンディング投資家に対して様々なメッセージを送っています。

4-1.クラウドクレジットでの投資に向いている人とは

「正直に言ってしまうと、クラウドクレジットの投資案件のリスクは決して低くない」

杉山社長はこのように述べています。発展途上国のファンドは貸倒れのリスクが高く、個人向けの融資案件も数多くあります。そのため、杉山社長は分散投資を徹底して推奨し、中でも「可能であれば、クラウドクレジットの全案件に投資してほしい」とアプローチをかけています。

その理由として、「どのファンドもスタッフが厳密な審査を行い、どれもがおすすめできる案件となっているため、これが良くてあれが悪いといったものはない」ことを根拠に挙げています。

「できるだけ分散投資に努めれば、結果的に貸倒れが起きた際の損失を抑えることができる」杉山社長はグラフをまじえて説明しています。

同時に「どうしても海外向け案件は通貨リスクなどがあるため、安定したインカムゲインを得たい人には向いていない。株式市場の相場の変動のように上昇・下降があってもストレスを感じず、不安に耐えられる人に向いている」という点も伝えています。

もう一つ、投資家の目線で書かれた内容の中で気になるのが、ポンジ・スキームに近い事業を行っているソーシャルレンディング会社に対しての不満です。

「クラウドクレジットは事業の性質上、どうしても貸倒れが発生しやすいため、投資家からの評判は常に芳しいわけではなかった。しかし、ポンジ・スキームで資金繰りをしていた業者は、見せかけのやりくりでデフォルトを発生させていなかったため、良い評判を維持していた」

杉山社長はこの点についても「非常に悔しい思いをした」と率直な感想を述べています。

「リスクを明確に示していたからこそ、良い評判につながらなかった」という杉山社長の思いに触れた投資家は、反省する方も多いのではないでしょうか。常に見せかけで良い数字を作っている会社よりも、悪い点は悪いとしっかりと伝えるソーシャルレンディング会社のほうが結果的には信用できますし、なおさらのように痛感します。

5.本で触れられている現代、成長市場を持つ国と第3の金融

そして、最終章で触れているクラウドクレジットが作る新しい金融の形。これは表題にある『第三の金融』です。

「フィンテックの発展により、お金の流れは更に流動化・自由化し、伝統的な資本市場と呼ばれる第1の金融、銀行融資という第2の金融に続き、第3の金融はボーダレス化した世界のお金の流れである」

クラウドクレジットの目指すところは、第3の金融です。2018年12月の日経ビジネス社による『ネクストユニコーン系企業価値ランキング』のフィンテック分野では、クラウドクレジットが8位にランクインしました。

現在のフィンテック市場は米国と中国が中心になっていて、日本の場合、世界的にインパクトを持つフィンテック市場が存在しているとは言いがたい状況です。そのような中で「クラウドクレジットは期待される会社として、今後も更なる発展を遂げ、社会貢献を同時に行ないたい」という杉山社長の強い願いが伝わってきます。

6.まとめ

2019年3月時点のクラウドクレジットには55名の社員が在籍しています。これだけの社員を抱えるソーシャルレンディング企業は他にありません。融資の判断を担う部署を社内に抱えるクラウドクレジットは、投資案件の精査についても会社として責任を持って取り組んでいると感じました。

書籍は専門的な内容も扱っていますが、表現自体は非常に平易で読みやすい文章となっています。気になった方はぜひ一度、書店で手にとってみてはいかがでしょうか。

7.杉山智行社長から

もともと本書は、「地方の書店でたまたまこの書籍を片手にとった人が、シニア層でも、新しい金融について思わず読んでしまうもの」を世に出そう、という企画ではじまりました。

その中で、実際には上記に加えて、クラウドクレジットのお客様や貸付型クラウドファンディング一般への投資に興味を持っている方にもぜひ本書を手にとってみて頂きたいと思っています。

本書を発売してから半月になりますが、すでにクラウドクレジットのファンドに投資をいただいているお客様から「コンセプト、そういうことだったのか」というお声を多数いただいています。

普段ウェブサイトやブログ等でもまだまだ当社や私がお伝えしきれていない点が少なくないのだなと感じており、今後ウェブサイトのコンテンツの一層の充実を図るとともに、引き続き書籍という媒体を通じてお客様にもより一層クラウドクレジットのコンセプトや商品理解度を上げて頂けるサポートをさせて頂ければと思っています。

また、貸付型クラウドファンディングの投資家の方はお気づきの通り、クラウドクレジットのファンドは日本で提供されている、実体のあるすばらしい貸付型クラウドファンディングの事業者の方が提供されているファンドとは、仕組みがたまたま似ているだけで、アセットクラスとして同じかというとかなり異なります。

2019年4月現在のクラウドクレジットの投資リターンは、融資先の倒産や為替変動を考慮したネット・リターンで6~8%程度です。

米国株式の今後5年、10年間の期待リターンよりも高くなっていますが、同時に運用中ファンドのうち1%程度が貸し倒れ要因で元本割れをしてしまう見込みで、また現地国の国外送金手続きの変更要因を中心とした理由での返済の遅延が起きているファンドも5%程度(元本割れファンド、遅延ファンドどちらもほとんどがカメルーンのファンド)あります。

本書のタイトルを「さらば銀行」としましたが、既存の地域金融機関が新しい取り組みを行っていくことを放棄した現在、個人投資家の方に新しい投資手法のリスクやアップサイドに慣れていっていただき、クラウドクレジットとタッグを組んでいただくことで、21世紀の社会に合った金融の仕組みを一緒に作っていければと思っております。

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HEDGE GUIDE 編集部 ソーシャルレンディングチーム

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