中国ではコロナウイルスの感染拡大後、ロックダウンをはじめとする強制的な取り組みによってコロナ感染者を徹底的に封じ込む「ゼロコロナ政策」と称した感染対策が実施されてきました。
しかしその後、2022年11月ごろから規制が緩和され始めたことにより、全国で感染爆発が発生している状況となり、株式市場にも大きな影響を与えています。
そこで今回は、中国のコロナ感染爆発が株式市場に与える影響と鎮静化後の注目業種について、詳しく解説していきます。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※2023年2月3日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。
目次
- 中国のコロナ感染爆発
1-1.ゼロコロナ政策の緩和 - 株式市場への影響
2-1.インバウンド関連株の値上がり
2-2.製造業関連株への影響 - コロナ鎮静化後の注目業種
3-1.ハイテク産業
3-2.流通・小売・サービス業 - まとめ
1.中国のコロナ感染爆発
まずは中国のコロナ感染爆発までの経緯を見ていきます。
1-1.ゼロコロナ政策の緩和
中国の衛生当局は、23年1月13日から19日の期間、新型コロナウイルスに関連する医療機関における死者数が1万2658人だったことを明らかにしました。
また、1月21日には衛生当局の専門家である呉尊友氏が、全国でおよそ80%(約11億3千万人)がコロナウイルスに感染したとの分析をSNSに投稿しており、感染爆発の状況が明らかになりました。
では、なぜ中国において再びコロナ感染者が急増したのでしょうか。今回の感染爆発の主な原因として、冒頭でも触れた「ゼロコロナ政策」の緩和が挙げられます。
中国ではコロナウイルス蔓延後、その感染対策として、都市の封鎖をはじめとする強制的な取り組みにより市中感染を徹底的に抑え込もうとするゼロコロナ政策を進めてきました。
そんな中、22年11月に入り入境規制の緩和やPCR検査の柔軟化などが始まり、12月にはさらなる緩和が進められ、その結果、経済活動正常化への期待などにより株式市場が急速に回復することとなりました。
しかし、中国では、日本で行われたような段階的な方法ではなく、ゼロコロナ政策を一気に緩和するという方法が採られたため、コロナウイルスの新規感染者数が爆発的に増加したというわけです。
しかし、23年1月末頃には感染爆発も終息に向かっているとの見解を中国政府は示しており、以後は中国内外の経済状況が大きく変わる可能性も考えられます(参照:BBC「中国の感染の波は「終息に近い」と当局 WHOは世界的な警戒解除は「まだ先」」)。
2.株式市場への影響
続いて株式市場にどのような影響を与えるのかを解説します。
2-1.インバウンド関連株の値上がり
東京株式市場では、中国におけるゼロコロナ政策の緩和を背景として景気が上向くとの期待感が高まっており、インバウンド関連株の大幅な値上がりが確認されています。
具体的には、百貨店やドラッグストア、専門店といった小売業種を中心として、年初来高値の更新が続出する結果となりました。
投資家の間では、足元は感染拡大によって経済が混乱している分、集団免疫の獲得を通して感染拡大が比較的早期の段階で収束し、景気のV字回復につながるとの見方が出ており、このような考えが株式市場の値上がりを招いたと見られています。
感染状況については、春節(旧正月)の前後にピークを迎え、3月あたりからは経済活動が急回復するのではと予想されており、中国政府による感染状況の発表を見ても、事態は好転していると見られます。そのため、今後の景気については前向きな見方が拡がっています。
2-2.製造業関連株への影響
コロナの感染拡大によって中国国内の工場が通常通り稼働できていないことから、製造業における供給網に混乱が生じ始めているという見方が出ています。
中国浙江省政府は、22年12月25日の時点で1日あたりの新規感染者が100万人を突破したと発表しており、自動車やスマートフォンの生産への影響が懸念されていました。
そんな中、23年1月2日、アップルが複数のサプライヤーに対して「MacBook」や「Apple Watch」、「AirPods」などの部品供給を減らすよう指示したことが報道されており、株式市場では製造業を中心に業績悪化への懸念が強まっている状況となっています。
3.コロナ鎮静化後の注目業種
以下、中国のコロナ感染爆発が沈静化し、経済活動が正常化する際に注目したい業種についても見ていきましょう。
3-1.ハイテク産業
株式市場では、コロナ鎮静化後の中長期的な中国経済の回復に対しての期待が高まっており、特に半導体関連をはじめとするハイテク産業に視線が集まっています。
実際、主要な半導体銘柄で構成されている「米フィラデルフィア半導体株指数(SOX)」は23年1月に入ってから大きく回復を見せており、2月2日時点では22年6月の高値の水準まで急激に値を戻しています。
さらに、「アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)」や「エヌビディア(NVIDIA)」といった主要銘柄も株価上昇が顕著であり、中国経済の回復に対する期待が先行するかたちとなっています。
3-2.流通・小売・サービス業
流通・小売・サービス業などの消費関連株にも中国経済再開の影響が現れています。
実際、中国における売上高の比率がおよそ15%と比較的高いアメリカの「ナイキ」は、22年10月末比でおよそ4割もの上昇を見せました。
また、売上高の3割を占めているアメリカの「エスティ・ローダー」は5ヶ月ぶりの高値をつけたほか、中国においても認知度が高い家電ブランド「ティファール」などを手がけるフランスの「グループセブ」の株価についてもいい影響が出ています。
アジアの銘柄についても、韓国で化粧品を展開する「アモーレパシフィック」や「LG生活健康」、またフィリピンの「JGサミット・ホールディングス」などといった中国における売上高が比較的大きい銘柄が次々に高値を付けています。
なお、中国経済の再開に対する期待から生じたハイテク産業や流通・小売・サービス業関連株の回復は世界の投資家たちの心持ちの改善につながっており、特に新興国市場においてその傾向が顕著に現れています。
具体的には、浮動株時価総額型の株価指数である「日経アジア300指数」がおよそ7ヶ月ぶりとなる高値を付けており、国別で見ると、タイ総合指数は1月に入ってから、およそ8ヶ月ぶりの水準となる高値圏で推移しています。
さらに、中国では市場予想を上回る経済指標の発表が相次いでおり、欧米の大手金融機関は23年における中国の成長見通しについて次々に上方修正を行っている状況だということです(参照:ブルームバーグ「中国経済の成長率見通し、23年も24年も上方修正-エコノミストら」)。
このように、コロナの鎮静化による中国経済再開への期待は世界中で高まっており、各株式銘柄においてもすでにいい影響が出始めています。
まとめ
中国ではコロナウイルスの感染拡大以降、ゼロコロナ政策と呼ばれる徹底した感染対策が実施されてきましたが、23年11月ごろから各規制の緩和が行われ始め、ゼロコロナ政策についても一気に緩和が進んだことから、中国国内において感染数が爆発的に増加する結果となりました。
そんな中、株式市場は今回の一連の動きを中国経済再開の兆しであると捉えており、ハイテク産業や消費関連の銘柄に特に大きな関心が集まっています。
しかし、感染状況が一段落を始めたとみられる一方でまだ先行きは不透明であり、ボラティリティの高い状況が継続すると見られているため、引き続き中国の動きおよびそれに対する株式市場の反応に注目していきたいと思います。
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中島 翔
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