2022年4月4日以降の相場は、USD買いが優勢となりました。米金融当局のタカ派姿勢が一段と鮮明になったことが背景です。ハト派的とみられていたブレイナードFRB理事が「バランスシートを5月にも急速なペースで縮小」と述べたことがきっかけとなりました。
関連:ブルームバーグ「ブレイナード理事、5月にもバランスシートを急速に縮小開始へ」
この記事では、2022年4月上旬の振り返りと、4月下旬に向けての動向を解説します。
※本記事は4月18日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- 2022年4月上旬のマーケット振り返り
1-1.日本
1-2.米国
1-3.中国
1-4.欧州
1-5.英国
1-6.オーストラリア
1-7.ニュージーランド
1-8.カナダ
1-9.その他 - 注目材料
2-1.3月カナダCPI
2-2.第1QニュージーランドCPI
1.2022年4月上旬のマーケット振り返り
FOMC議事録では、多くのメンバーが1回以上の0.5%の大幅利上げを支持しました。しかしバランスシート縮小について縮小幅が米債の償還による自然減の範囲内であることが明らかになると、一時的にUSD売りとなる局面もありました。
その後、米高官のタカ派発言が相次ぎUSD買いが一段と進行しました。米コアCPIが予想を若干下回ったことをきっかけに、イースター休暇前のポジション調整の動きとなり、USD買いは止まりました。
しかし、USD/JPYだけはBOJから緩和維持の方針が改めて表明されたため、日米金融政策の差が意識されJPY売り止まりませんでした。20年ぶりのUSD高・JPY安水準となる126円台半ばまで上昇しました。
EUR/USDは、ウクライナ情勢をめぐる対ロ制裁強化が欧州経済の先行き不安を広げたことと、ECBが期待されたほどタカ派の方針を示さなかったことから一時1.07台半ばまで下落し、1.0800近辺でクローズしました。
1-1.日本
黒田総裁からは緩和堅持の方針が伝えられ、日銀大阪支店長から円安は関西経済全体としてプラス面が大きいといった発言がありました。JPY安の安心感が広がり、JPY売りが加速しています(2022年4月現在)。
関連:ブルームバーグ「黒田日銀総裁、現在の強力な緩和を粘り強く続ける-経済支える」
関連:ブルームバーグ「日銀、9地域中8地域で景気判断を下方修正-感染拡大が消費抑制」
1-2.米国
ハト派のブレイナード理事からタカ派的な発言が出ました。特に早ければ5月のFOMCで急なペースで(rapid pace)バランスシート縮小を開始する(QT)見通しを示しました。これまで利上げの方に比重を置いてQTの意識が若干薄まっていた市場にとってサプライズとなり、米金利とUSDが急上昇しました。
関連:ブルームバーグ「ブレイナード理事、5月にもバランスシートを急速に縮小開始へ」
注目度が上がった3月FOMC議事録が公表されました。QTの上限は米債600億ドル/MBS350億ドルとされました。仮に上限のペースで圧縮した場合、年間7200億ドルとなるものの、償還額が2022年は1兆ドル以上、2023年も8000億ドル以上あります。あくまでも米債償還による自然減の範囲内にとどまることになり、ブレイナード理事の発言程急速なバランスシート圧縮を予定しているわけではなさそうだということで株の下落は限定的となりました。
関連:ブルームバーグ「FOMC、月額最大950億ドルの保有資産縮小を示唆-議事要旨」
週間新規失業保険申請件数が16.6万人と1968年以来の低水準となりました。相当雇用が強く、賃金上昇圧力も維持されています。
3月CPIの総合は市場予想を上回る前年比+8.5%と40年ぶりの高水準となりました。コアCPIについては前年比+6.5%と予想を下回り前月とほぼ同水準にとどまりました。このコアの部分に着目して米金利は低下しましたが、中身を見ていくとまだ物価がピークを付けたとは考えにくいです。
ガソリン・食料品のインフレは深刻であり、特にガソリンが上昇しています。雇用が強く賃金上昇を伴っているため、引き続き需要は強いにも関わらず供給制約でモノがない状態が続いています。コアが落ち着いた要因は中古車価格でほぼ説明できるため、今後の継続性には一定の疑問が残る結果となりました。
3月の小売売上高は、前月の上方修正分を含めると全体としては堅調な結果となりました。ただ、中身を見るとガソリン価格高騰の影響が強く出ており必ずしも良質なプラスというわけではありません。
ミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)は65.7と市場予想を上回り2011年以来の低水準から改善しました。1年先の期待インフレは横ばいの+5.4%となっております。
1-3.中国
上海のコロナ感染拡大状況が悪化の一途を辿っています。中央政府が全上海市民に対しPCR検査を強制的に受診させているため、無症状の人も含めて感染者数が激増してしまい、結果として、経済活動の停滞による経済へのダメージも大きくなる可能性があります。
国務院は適切な時期の預金準備率引き下げなどを活用しパンデミックの影響を強く受けた産業や中小企業への金融支援を強化すると述べました。その後、預金準備率を4/25から0.25~0.50%引き下げると発表しました。
準備率の引き下げは4カ月ぶりです。貸し出し増により市中に出回るお金が増えることを狙った政策で、人民銀行によると約5300億元(10兆円)の長期資金が市場に放出されると見積っています。
しかし、ゼロコロナ政策を継続するのであれば、金融緩和を実施したところで効果は少なく、目標の5.5%の成長率達成は困難だと予想します。
関連:ブルームバーグ「中国、「適切な時期に」預金準備率を引き下げると表明」
1-4.欧州
ロシアのジェノサイドが明らかになるにつれて、エネルギーをロシアに依存している欧州でも苦渋の決断が相次いでいます。これまでのガス・原油だけでなく、ロシア産の石炭も禁輸の方向で動き出しています。
3月ECB政策決定会合の議事録は多くのメンバーが高インフレ持続により即座に正常化を進めるべきと考えていると、タカ派な内容となりました。QE終了後から利上げ開始までのフォワードガイダンスをshortly beforeからsome time afterに変更したことについて、市場では若干時間を空けたという見方もありました。
しかし、それらの見方を一蹴し、データ次第ではQE終了後即利上げもありうるとしていました。したがって、第2QにAPPが終了した後、7月利上げの可能性が浮上しました。
4月ECB政策決定会合は、資産購入プログラム(APP)を4月400億ユーロ、5月300億ユーロ、6月200億ユーロの減額ペースは変えずに7月から9月のどこかで終了するとの見方を示しました。一部では、APP終了の前倒しが期待されていたため、ハト的な結果だったと言えます。
主要金利の調整も市場ではAPP終了と同時に利上げという期待感がありました。しかしAPP終了後の一定期間後に行われ、穏やかなものになると繰り返し、市場の期待を否定する形となりました。
「sometime after」は1週間から数か月を意味するとされています。仮に1週間を採用するのであれば、7月に前半にAPPを終了し後半から利上げ開始の可能性は残された形となっており、3月よりはタカに傾いていると言えます。
ラガルド総裁は次回6/9の会合でAPP終了及び将来の利上げ方針について決定すると述べました。現時点ではスケジュール的に第3Qと第4Qに一回ずつ利上げして、マイナス金利をゼロに戻すというシナリオが一番現実的だと考えられます。
関連:ブルームバーグ「ECB、資産購入終了時期6月明示か-インフレリスク高まったと総裁」
フランス大統領選1回目の投票が行われました。直前に極右で知られるルペン候補が急激に追い上げて集計によっては支持率が逆転しているところも現れていたことから、政治の不安定化を嫌気してEURが売られていました。
結果は、マクロン大統領が28%、ルペン候補が23%と僅差となり、決選投票が行われることになりました。しかし、第3位の2割程度の票を獲得した極左のメランション氏が支持者に対しマクロン大統領を支持するように促したことから、決選投票でのマクロン大統領優位の状況が予想され、EUR/USDは4月11日月曜日早朝に窓を開けて上昇しました。
1-5.英国
3月の雇用統計が発表されました。失業率はパンデミック前の水準である3.8%まで低下し、3か月平均の総賃金は前年比+5.4%と加速しました。求人件数と雇用者数の伸びは鈍化傾向であり、堅調だった労働市場に陰りが見え始めています。
3月CPIは、燃料の高騰により住居費・交通費が上昇した結果、総合が前年比+7%、コアも前年比+5.7%と予想を大きく上振れました。来月は増税の影響でエネルギー価格が54%も跳ね上がることが予想され、更に大きな上昇が待っているでしょう。
英国では生活費高騰の危機が叫ばれている中で、BOEはインフレ抑制よりも成長支援にシフトする可能性が示唆されています。次回5月のBOE政策決定会合では利上げは実施されるものの、その後はしばらく金利を据え置くという予想も出てきております。
1-6.オーストラリア
RBA政策決定会合があり、政策金利は予想通り0.1%で据え置きました。声明文からはこれまで維持してきた「忍耐強く対応する用意がある」というフォワードガイダンスが削除されました。
また今後数カ月の間に持続的なインフレと労働コストに関して追加的な証拠を入手できると予想していることから、まずは4/27の次回CPI、その後5/18の賃金上昇率などの指標を確認した上で、6月頃の利上げ開始が予想されます。
関連:ブルームバーグ「豪中銀、「忍耐強い」が声明から消える-タカ派シグナルの可能性」
3月雇用統計は+1.79万人と予想の+3万人から若干下回りました。失業率は4.0%、労働参加率は66.4%となりました。失業率は過去最低水準、労働参加率も過去最高水準を維持しています。RBAの利上げ方針を後退させるような内容ではありませんでした。
今回の雇用統計の結果は、コロナによる供給制約から脱却しはじめていることを示している可能性があります。国境が解放されたことで労働供給の増加が見込まれ、今後もこの流れが続くのであれば、賃金上昇率が抑えられ緩やかなインフレに落ち着く可能性があります。
1-7.ニュージーランド
RBNZ政策決定会合では、22年ぶりとなる1度に0.5%の利上げを実施し、1.5%としました。5割強が0.25%の利上げ予想だったため、発表直後はNZDは買われたものの、その後売り返されました。
ニュージーランドでは経済活動と住宅市場が大幅に減速しているにもかかわらず、インフレはまだピークに達していません。RBNZは今回の決定を引き締めの前倒しであり、先手を打ったアプローチと表現しています。金利の最終到達点の予想3.5%は据え置いたことから、BOEの様なハト的な利上げと捉えられたのかもしれません。
関連:ブルームバーグ「NZ中銀22年ぶり大幅利上げ、0.5ポイント上げ政策金利1.5%」
1-8.カナダ
3月カナダ雇用統計が発表され失業率は5.3%と前回の5.5%から一段と低下しました。一方、雇用者数の増加は前回+33.66万人に対し、今回は+7.25万人にとどまりました。パートタイム労働者数が予想外の減少となっていたことが原因です。平均時給は+3.7%と上昇傾向が維持されました。
BOC政策決定会合は、20年ぶりとなる1度に0.5%の利上げを実施し1%としました。バランスシート圧縮に向けて国債の買い入れを停止し、償還後の再投資も4/25に停止するとして量的引き締め(QT)の開始を決定しました。
今年のインフレ見通しを+4.2%から+5.3%に引き上げ、第2Qの経済成長率は+6%と第1Qから大幅に加速するとの見方を示しました。政策金利についても従来の2~3%に設定されている中立レンジを0.25%上方修正しました。
関連:ブルームバーグ「カナダ中銀、約20年ぶりの大幅利上げ-月内に量的引き締めも開始」
マックレム総裁は、世界経済には多くの不確実性があるものの、スタグフレーションの再発は回避できると確信していると述べたことから、CADは大きく買われました。
関連:ブルームバーグ「カナダ中銀総裁、スタグフレーションを回避すると確信-大幅利上げ後」
1-9.その他
米国だけでなく国際エネルギー機関(IEA)加盟国の石油備蓄の協調放出決定とロックダウンを続ける中国の需要不足などが懸念されて、原油価格が下がりました。
2.今後の注目材料
2-1.3月カナダCPI
前年比+6.2%と一段とインフレが加速する予想となっています。直近の経済指標を見ていくと、失業率は低水準となっているものの、平均時給がが+3.7%と若干出遅れています。一方的なCPIの上昇はカナダ経済にとってマイナスとなる恐れがあります。
しかし先週のBOC政策決定会合では、世界的な資源需要を受けた好調な経済とそれに伴う堅調な雇用市場を受けて、マックレム総裁はスタグフレーション回避に自信を持っているようでした。
BOCの想定では、2022年のCPIは5.3%であり、3月か4月にピークとなることを予想しています。3月の数字が多少上振れてもBOCの想定の範囲内で、むしろBOCの早期利上げ期待に繋がりCAD買いとなると予想します。
2-2.第1QニュージーランドCPI
事前予想は前年比+7.1%とかなり高めの予想となっています。先週のRBNZの決定を見ると住宅市場が悪化を始め、景況感が既に崩れています。インフレ抑制を最優先課題とし、急いで利上げを実施している可能性があります。
仮に予想を上回り、早期利上げ期待が高まったとしても、それがニュージーランド経済にとってプラスとは言い切れません。イギリスのように長期的には景気減速により利上げが出来なくなることを織り込む可能性もあります。一時的にNZDが買われたとしても、直ぐに元の水準に戻ると予想します。
HEDGE GUIDE 編集部 FXチーム
最新記事 by HEDGE GUIDE 編集部 FXチーム (全て見る)
- LINE FXの評判は?メリット・デメリットや他FX会社とのスプレッドの比較も - 2024年9月27日
- FXの自動売買(システムトレード)のメリット・デメリットは?自動売買の始め方も - 2024年6月19日
- 外為どっとコムの評判は?キャンペーンやアプリについても - 2024年6月12日
- みんなのFXの口コミは?メリット・デメリットやキャンペーン情報も - 2024年5月15日
- マネーパートナーズの評判は?スプレッドや特徴も比較・解説 - 2024年5月15日