オミクロン株の市場への影響は?2021年11月22日~26日の株式・為替・債券マーケットレポート

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記事目次

  1. 債券市場の動向・振り返り
  2. 株式市場の動向・振り返り
  3. 為替市場の動向・振り返り
※本レポート中に記載された見解は、執筆時点での妥当な前提に基づく所見や展望を示すものであり、将来の動向や予測の実現を保証するものではありません。市場環境やその他の状況等によって将来予告なく変更する場合があります。
※本レポートは情報提供を目的としており、有価証券の売買の申し込みやその他勧誘を目的とするものではありません。投資の決定に関しては、ご自身でもよくお調べの上、ご判断いただきますようお願いいたします。

債券市場の動向・振り返り

米国債市場は新型コロナウイルス感染症のアフリカ変異株が登場したことにより、リスク回避姿勢が強まったことから、金利は大幅低下しました。

米国債10年金利は1.48%まで低下しており、米国が2022年に利上げする確率を、マーケットが織り込んでいることから低下しています。新型コロナウイルス感染症の拡大懸念が出ていたなか、南アフリカでの変異株「オミクロン株」が出てきていることがネガティブな材料となって反応している様子となっています。

いつ「オミクロン株」の動きが明確になるかはまだわからないため、債券市場は買われやすい地合いが継続しそうな印象です。短期ゾーンから中長期ゾーンまで全体的に下落しやすいとも考えられます。

今後再び新型コロナウイルス感染症が拡大し、緩和方向になる可能性も否定できないことから、金利上昇の見通しは一旦撤退して、方向性を見直す必要が出てきています。

10年債金利は1.30%付近までの低下の可能性が出てきており、金利ショートのポジションは取るべきではないタイミングと考えられます。

欧州債や日本国債の市場も買われやすい地合いになっているため、世界的な金利低下の動きが継続する可能性もあります。

株式市場の動向・振り返り

2021年11月22日~26日の株式市場は南アフリカの新たな変異株「オミクロン株」が現れたことが報道され、株式市場は急落しました。ヨーロッパ圏の株式市場を中心に大きく調整する動きが見られました。

日経平均株価は、11月26日(金)には28,751円で引けており、NY時間の日経平均先物ベースで28,000円付近まで下落する動きとなっています。

米国株式市場はパウエル議長の再任が決定したことにより大きな波乱のないスタートとなりましたが、南アフリカの変異株のニュースによりNYダウが36,000ドル台から一時34,000ドル付近まで下落しました。S&P500指数も2021年2月以来の大幅安となっており、ラッセル2000も1日で4%以上の大幅下落となりました。

航空機関連銘柄の下落が顕著であり、旅行関連銘柄も下落するなど、感染拡大の可能性を意識した値動きとなりました。

2021年11月22日~26日は特に欧州株の調整幅が大きく、現在のコロナ感染者拡大の流れに、変異株による景気腰折れ懸念が強まっているとみられます。

原油価格も1バレル68ドルまで下落し、急激な調整となりました。

ポイントとしては金価格が若干ながら上昇しており、マーケットが通常クラッシュとなった場合、現金化の動きが出てくることから最初の動きとして株安、コモディティ安となりやすいですが、今回の動きでまだその動きは出ていないことから、まだ調整が完了したとは考えにくいでしょう。

日経平均株価はチャートでも少し上値が重くなってきており、フィボナッチリトレースメントで年初来安値から高値を結んだ3分の1戻しの位置25,000円台後半までの調整は考えておいた方がいい場面となっています。

しかしコロナ感染拡大が起きた後に備えて政府や日銀が緩和方向の話を言い始めると反転上昇する可能性が高いため、そのタイミングを図る必要があるでしょう。それまでは戻り売りのスタンスとなりそうです。NYダウも同様にコロナ次第という動きになりつつあり、チャートではタイミングが図りにくい場面となっています。

為替市場の動向・振り返り

ドル関連

FRBパウエル議長の再任により、ドル高の地合い隣、ドル円は一時115円台半ばまで上昇しました。

【参照記事】ブルームバーグ「バイデン米大統領が下した決断、パウエルFRB議長再任で安定性優先」

ユーロドルも1.1200ドルを割れる場面も見られましたが、米国債金利の低下に伴ってドル安方向へ反転する動きとなり、1.1300ドル台まで反発しました。

ドル円も同様に、リスク回避姿勢から円高圧力が強まり、115円台から一気に113円台後半まで下落しました。また、週末まで流れが継続したことで113円台前半まで下落する動きとなりました。

オセアニア

またオセアニア通貨である豪ドルやニュージーランドドルの下落が顕著に見られており、豪ドル円は83円台から80円台まで大幅下落となりました。

ニュージーランドドル円は、RBNZ(ニュージーランド準備銀行)が0.25%の利上げを行いましたが、マーケットでは0.50%の利上げを見込んでいたことから予想よりも小幅な利上げ幅となったことで下落しました。80円台から77円台へ3円ほど急落しており、短期的なロングポジションのストップロスが巻き込まれた様子です。

【参照記事】ブルームバーグ「NZ中銀、政策金利0.75%に引き上げ-利上げペース加速も示唆」

今後は、引き続き米国債金利の低下で米ドルの弱い地合いが継続する印象があることから、強気でのポジションは取りづらいため、ドル円は戻り売りのスタンスが良いでしょう。

足元IMM先物ポジションを見ると、円のショートがポジションが積み上がっていたことから、週末の動きでどこまで解消されたかがポイントとなります。まだある程度ポジションが残っている場合はドル円は112円台を見ておく必要も出てきているため、ポジション動向はチェックしておきたい場面です。

新興国

新興国通貨はトルコが一時クラッシュする動きになりました。

トルコのエルドアン大統領が利下げがインフレ抑制に繋がると、マーケットの理解とは反した発言をし、更なる緩和方向を示唆したことからトルコリラがストップを巻き込み急落しました。
【参照記事】ロイター「トルコ中銀が1%追加利下げ、一段の緩和も示唆 リラ最安値」

1日で20%近く急落しており、日本人のスワップ狙いのロングポジションが狩られる場面も見られました。

また南アフリカランドもコロナ変異株の影響により、大きく下落する動きとなっています。新興国通貨はコロナの影響や先進国の景気腰折れ懸念により、上値が重くなりやすくなってきているため、ロングポジションの構築は控えておきたい状況でしょう。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12