米電気自動車(EV)大手のテスラ(ティッカーシンボル:TSLA)が3月4日、ドイツ・ブランデンブルク州政府よりベルリン郊外のグリューンハイデに建設している「ギガファクトリー」での生産開始の許可を得たことが分かった(*1)。
テスラは当初2021年の初夏より生産を開始する予定であったが、新型コロナウイルスのパンデミックやサプライチェーンの混乱、さらには環境保護団体による反対運動に合い認可が遅れていた。なお、今回の承認を得たことですぐにEVの生産を開始できるわけではなく、大気汚染や水利用などの条件を満たす必要がある。
ギガファクトリーは年間最大50万台の生産能力をもつほか、電池の生産も行う計画だ。近年、欧州ではフォルクスワーゲン(VOW)やアウディ(AUDVF)と競合するなか、中国・上海工場より同地域へ輸出しており、グローバル生産の拡大を目指すテスラにとって非常に重要な拠点となる。なお、米テキサス州の工場も近く生産を開始する見通しである。
イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は2019年、ドイツに工場を建設する計画を発表(*2)。その際には同国の卓越したエンジニアリングを称賛していた。しかしながら、生産を開始するための承認を得るには当初の予想より時間を要し、地元当局も「多くの点で通常とは異なるプロセス」を踏んだという。
20年には環境保護団体の要望に応じ、新工場での水利用を3分1以上減らすことに合意。また、森林伐採にくわえ、ヘビやトカゲの冬眠が妨げられるとして工場の建設を一時的に停止せざるを得なかった。直近では4日、ブランデルブルク州の環境省がテスラと地元水道局の水利用契約を十分調査せずに認可を与えたとして、環境活動家らが契約の取り消しを求める行政訴訟の審理を開いている。同裁判で環境活動家が勝訴した場合、工場の稼働がさらに遅れることになる。
市場調査会社Canalysによると、21年の世界のEV販売台数は前年比109%増の650万台だったという。欧州では230万台が販売され、テスラの「モデル3」が最も売れたとのことだ。Canalysのアナリストは欧州の多くの国々でEVが新車販売の25%以上を占めており、引き続き強い需要があると述べている(*3)。
消費者の環境意識の高まりに伴いEVの需要も拡大傾向にあるなか、テスラを始めとする自動車メーカー各社がいかにして生産の拡大と環境との共生を両立していくのか注目したい。
【参照記事】*1 ブランデンブルク州「Discover Brandenburg – All around Berlin」
【参照記事】*2 ツイッター(イーロン・マスク)「GIGA BERLIN」
【参照記事】*3 Canalys「Global electric vehicle sales up 109% in 2021, with half in Mainland China」
HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チーム
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