国連と民間連携の「自然関連財務情報開示作業部会(TNFD:Task force for Nature-related Financial Disclosures)」は15日、初の開示フレームワーク案を公表した(*1)。TNFDは、気候変動リスクと同様に自然資源や生態系保全のリスクと機会を、企業活動に盛り込むことを目指している。
今回のフレームワークは、科学やデータ、テクノロジー、金融などのネットワークから得られる知識が基になっている。また、オンラインプラットフォームを通じて、市場参加者からのフィードバックを募集し、世界中の参加者が実践できることを目指すという。2022年から2023年にかけて順次バージョンアップしたものを公開、2023年9月には最終提言を発表する予定だ。
TNFDは、企業やビジネスの意思決定において自然を考慮する必要性への認識が高まっているとした。その上で、自然関連のリスクを企業が評価・報告し、アクションのための情報開示の枠組みを作り、最終的には世界における資金循環の転換を支援するとしており、今回のフレームワーク案を活用することで企業の手助けとしたい考えだ。
フレームワークは、投資家、アナリスト、企業幹部および取締役会、規制当局、証券取引所、会計事務所など、幅広い市場参加者に関連する自然リスクと、その機会に関するガイダンスを行うことを目的としている。また、フレームワークの3つの要素として①自然関連のリスクと機会の基本的な概念と定義②自然関連リスクと機会に関する開示勧告案③企業や金融機関が自然関連リスクや自然保護活動を取り入れるためのガイダンスや機会の評価、企業の様々な意思決定に情報提供するための報告と情報開示としている(*2)。
TNFDは今回のフレームワーク案の中で、自然関連リスクと自然保護に関する評価プロセスを開発し、LEAPアプローチ(①Locate②Evaluate③Assess④Prepare)と定めた。①Locate=自然との接点を見つける②Evaluate=自然との依存関係や影響を評価する③Assess=自然関連リスクと機会を評価する④Prepare=自然関連のリスクと機会に対応するための準備をし、報告するという4つのプロセスだ。
TNFDは自然関連リスクに対して、組織の自然への依存や、それによって起こる長期的な影響も含めて潜在的な脅威だとしている。組織が自然資本や生態系の損失リスクを軽減することや、自然の回復に貢献することで、組織と自然にとってプラスの活動になると述べた。これらのフレームワークを企業が取り入れることで、生物多様性の保全や向上に向けたビジネスモデルや製品づくり、サービスの戦略改善が期待される。
【参照記事】*1 TNFD「The TNFD Nature-Related Risk & Opportunity Management and Disclosure Framework Beta v0.1」
【参照記事】*2 TNFD「The TNFD Nature-related Risk & Opportunity Management and Disclosure Framework」
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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