「相場は感情が動かす」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。これは、相場はそこに参加する投資家の心理状態に大きく左右されるという意味ですが、AIトレードなどが多くなってきている現代でもまだまだ通用する格言です。
株式投資に利用できるテクニカル分析のインジケーターには様々な種類がありますが、相場に参加する投資家の心理状態を数値化して、指標化したものに「サイコロジカルライン」というものがあります。
そこで今回は、株式投資におけるサイコロジカルラインの使い方について、チャートから具体例で解説していきます。
目次
- サイコロジカルラインとは
1-1.サイコロジカルラインの計算式 - サイコロジカルラインの売買サイン
2-1.売りサイン
2-2.買いサイン
2-3.サイコロジカルラインを利用する際の注意点 - サイコロジカルラインを使用したトレード手法
3-1.基本的なトレード戦略
3-2.サイコロジカルラインを使用したトレード手法の詳細 - まとめ
1.サイコロジカルラインとは
サイコロジカルラインとは、その名の通り投資家の心理に存在する考え方を数値化した指標で、古くから多くのトレーダーに利用されているオシレーター系のテクニカル指標です。
株式価格の変動は一般的に、上昇もしくは下落といった一方向への動きが何日も連続して続くケースは比較的少なく、たとえ価格の上昇や下落が続いていたとしても、ある一定の数値まで達した場合、それ以上は上がったり下がったりせず、値動きが逆方向へ転換することが多いと言われています。
具体的には、株価の上昇が続いた場合、投資家の心理はいつもより強気になる傾向にありますが、相場がある程度まで上がった場合、そろそろ下がるのではないかという心理が働き、価格上昇のピークに到達する可能性が高くなります。
サイコロジカルラインは、このような投資家の心理状態の変化を明確に数値化することによって、相場の「売られすぎ」や「買われすぎ」を見極める、逆張りに利用可能なインジゲーターとなっています。
1-1.サイコロジカルラインの計算式
サイコロジカルラインの計算式は、下記の通りです。
サイコロジカルライン = (設定した期間内の価格上昇日の日数)÷(設定した期間の日数)× 100
サイコロジカルラインの計算式はとてもシンプル且つ分かりやすいことで有名で、上昇や下落に関する変動率などではなく、単に期間内において価格が上昇した日数が全体の何%を占めているか、という計算式で算出することが可能となっています。
そのため、株価が上昇傾向にある場合は、サイコロジカルラインが半分である50%を上回る日がより多くなり、反対に株価が下落傾向にある場合は、50%を下回る日がより多くなるというわけです。
なお、パラメータとしては、基本的に12(日間)を使用することが多いのですが、銘柄や状況によって随時調整することが大切です。
2.サイコロジカルラインの売買サイン
サイコロジカルラインを使用する際の売買サインの見方について解説していきます。
2-1.売りサイン
サイコロジカルラインの数値は0から100のパーセンテージで表され、一般的には数値が75%を上回っているケースでは「買われすぎ」の状態と見ることができます。
具体的には、パラメータを12とした場合、12日間のうちに株価が上昇した日数が9日間よりも多ければ、数値は75%以上と算出されるため、相場が「買われすぎ」であると判断でき、売りサインとなります。
また、サイコロジカルラインを実際の株価の値動きの「ピーク」および「ボトム」と照らし合わせて見た場合、サイコロジカルラインの方が実際の値動きと比べてより早くにピークとボトムに到達するという傾向があります。
このことから、まもなく相場の反転が来るのではないか、という判断を行う材料としてサイコロジカルラインを活用することが可能となっています。
なお、投資家の間では、サイコロジカルラインを省略して「サイコロ」と呼ぶことが多く、12日間のうちに株価が上昇した日数を「勝ち」、下落した日数を「負け」として表し、「サイコロ9勝3敗」などと表現するケースがあります。
このほか、サイコロジカルラインの数値が75%を超えて80%まで達した場合は、相場が過熱状態であると判断することができます。
2-2.買いサイン
売りサインのケースとは反対に、数値が25%を下回っているケースでは「売られすぎ」の状態であると見ることができます。
具体的には、パラメータを12とした場合、12日間のうちに株価が上昇した日数が3日間よりも少なければ数値は25%以下と算出されるため、相場が「売られすぎ」であると判断できます。
つまり、「3勝9敗」以下は買いサインであると見ることができる、というわけです。
なお、数値が25%を下回って20%以下まで達した場合は「底値ゾーン」と言うことができます。
2-3.サイコロジカルラインを利用する際の注意点
サイコロジカルラインを利用する際はチャートにトレンドが形成されているかどうかを確認することが大切で、トレンドがある場合は注意する必要があります。
トレンドが発生している場合では、「12勝0敗」という数値が出ることも珍しくなく、価格の上昇および下落が50%の確率で起こるというロジックに当てはめることが不可能となります。
このような状況下では、サイコロジカルラインを利用した逆張りが通用しなくなるため、数値を鵜呑みにすると大きな損害を被る可能性があります。
またこのほかにも、サイコロジカルラインでは10銭といったほんの少しの値上がりでも、1円の値上がりでも、すべて同様に「1勝」と見なされてしまうため、注意が必要です。
このように、サイコロジカルラインはある状況下においては機能しない場合もあるため、ほかのオシレーター系インジケーターと併せて利用するとより効果的です。
3.サイコロジカルラインを使用したトレード手法
サイコロジカルラインを使用したトレード手法も解説します。
3-1.基本的なトレード戦略
サイコロジカルラインを利用するトレード戦略は「逆張り」と呼ばれるものです。これは、直近までのトレンドの反転するタイミングでエントリーを狙うものです。
オシレーター系のインジケーターはそのような使い方をするものが多く、相場のリズムを捉えることが出来れば売りでも買いでも利益を得られるメリットがある一方で、初心者の方がどちらも狙う事は避けた方がよいでしょう。
トレードをする際には、最初に環境認識として、日足以上の長さのチャートを分析してトレンドの全体的な流れを把握しますが、初心者の方がオシレーター系のインジケーターを用いてトレードをする際は、大きなトレンドの流れに沿う形でトレードをすると良いでしょう。
つまり、大きなトレンドで見たときに上昇トレンドであれば、一時的に下降してからの上昇のタイミングを狙い、下降トレンドではその逆を狙います。
次に実際のチャートを用いて、サイコロジカルラインを利用したトレード方法について解説します。
3-2.サイコロジカルラインを使用したトレード手法の詳細
ここでは、東証プライム銘柄の任天堂(7974)のチャートを利用して解説します。
手順としては前述したように、環境認識からスタートします。
①環境認識で大きなトレンドを掴む
上の図は、任天堂の日足のチャートです。
このチャートから大きなトレンドを読み取りますが、最もシンプルな方法としてトレンドラインを描いて見ることをおすすめします。
任天堂のチャートは、3月29日を境にそれまでのアップトレンドから、緩やかなダウントレンドに推移していることが、お分かりになると思います。
そのため、大きなトレンドは「ダウントレンド」とし、サイコロジカルラインの売りサインを利用することとします。
なお、実際の環境認識では、週足や月足などのチャート分析やファンダメンタル分析も加えたうえで判断しますが、ここでは割愛します。
②サイコロジカルラインを使用したエントリー
サイコロジカルラインを利用した場合の売りサインとして、数値が75%を上回っているケースで「買われすぎ」の状態となるため、75%を超えた時点で売りでエントリーをします。
このチャートでは、上記の青い線が75%を超えたラインとなります。このタイミングでは、60,690円でエントリーをすることとなります。
③サイコロジカルラインを利用したイグジット
次にイグジット(利益確定・損切)です。
利益確定に関しては、売りの際はグラフが下落して25%、買いの際はグラフが上昇して75%の数値を超えてから、グラフが反転、もしくは再び25%、75%に達した時とします。
また、損切りに関しては、サイコロジカルラインではなく、自身の資金管理ルールに基づいて設定されるとよいでしょう。
今回の例では、60,960円で売りエントリーをし、25%ラインを超えて、再び25%ラインに戻った際の57,950円で利益確定し、1株当たり3,010円(約5%)の勝ちトレードとなっています。
まとめ
サイコロジカルラインは、初心者の方でも使いやすいインジケーターと言えるでしょう。
サインの発生頻度こそ多くはありませんが、常にモニタリングしておき、サイン点灯時にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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中島 翔
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