その信頼性の高さから、株式投資のみならず、FXや仮想通貨トレードにおいても活用できる投資理論の一つに「ダウ理論」と呼ばれるものがあります。
ダウ理論はトレーダーにとって、基礎とも呼べる知識です。そこで今回は株式投資におけるダウ理論の使い方について、チャートから具体例を用いて解説します。
目次
- ダウ理論とは
1-1.ダウ理論の概要
1-2.ダウ理論の6の法則 - ダウ理論の売買サイン
2-1.買いサイン
2-2.売りサイン
2-3.損切りの目安 - ダウ理論を使用したトレード手法
3-1.様々なトレンドスタイルに活用できるダウ理論
3-2.ダウ理論を用いたエントリーとイグジット - まとめ
1.ダウ理論とは
まずはダウ理論の概要をお話します。
1-1.ダウ理論の概要
ダウ理論とは、チャールズ・ダウ氏というアメリカの証券アナリストが提唱したチャート分析についての理論です。
チャールズ・ダウ氏は投資業界において大きな功績を残した人物の一人で、誰もが耳にしたことがあるであろう「平均株価(日経平均株価・NYダウ)」も、彼が考案したものです。
さらに、彼が設立した「ダウ・ジョーンズ社」によって発行されている経済新聞「ウォール・ストリート・ジャーナル」は、1889年の刊行以来、常に大きな権威を持つ存在とされています。
ダウ理論は元々景気の循環を探ることを目的として生み出され、株式市場の分析のために用いられていましたが、その後100年の歳月を経て、現代ではFXなど多くの投資分野において利用できるとして、多くのトレーダーに愛用されています。
1-2.ダウ理論の6の法則
ダウ理論は下記6個の法則によって構成されており、これらをしっかりと理解することで相場分析のための基本的な考え方を習得することができます。
①価格はすべての事象を織り込む
これは、市場価格の形成は需要と供給バランスによって決定されるため、ファンダメンタルズや戦争、テロなどを含むあらゆる要因が値動きに織り込まれるという考え方です。
逆に言うと、これら情報は全てチャート上に反映されるため、株価を予想する際は平均株価の動き方に注目していれば良いということになります。
そしてこの法則が、投資においてチャート分析が大変重要だと言われる理論的根拠となっています。
②トレンドには下記の三種類が存在する
- 長期トレンド:一年未満から数年間続く
- 中期トレンド:十日間から三ヶ月間続く
- 短期トレンド:数時間から一ヶ月間続く
また、トレンドは一方向に推移するのではなく、これらいくつかが組み合わさって形成されており、調整局面が必ず存在していると考えられています。
③トレンドには下記三つの段階が存在する
- 先行期:一部の先行トレーダーが底値での購入または天井からの売却を行い、価格に少しの変動が出る時期。
- 追随期:先行期の動きに追随して相場の転換を確信したトレーダーが参入し、価格が急激な動きを見せる時期。
- 利食期:一般のトレーダーや初心者が参入し、先行期に購入していたトレーダーが利確を実行する時期。
④平均株価は互いに確認されるべき
トレンドをより正確に見極めるためには、複数の銘柄で同一のトレンドを互いに確認するべきという考え方で、株式市場における分析でより重要となります。
⑤トレンドは出来高でも確認されるべき
これは、トレンドが発生した際に、出来高も増加するはずだという考え方です。
長期トレンドが上向きに推移している状態では、出来高はそれに付随して増加し、調整局面においては減少します。
一方で、価格が上がっているにもかかわらず出来高の上昇が見られない状態では、相場転換の可能性が高いと考えられます。
⑥トレンドは明確な転換シグナルが出るまで継続する
ダウ理論では、チャートが絶えず変動している状態でも、一旦発生したトレンドは一定時間継続する性質があると考えられています。
また、トレンドには特徴的な波形があり、これに乱れが生じた時、明確な転換シグナルと見なすことができるとしています。
2.ダウ理論の売買サイン
最も基本的な活用方法として、相場が切り替わる転換ポイントを見極めることで、エントリーポイントを判断することが可能です。
2-1.買いサイン
チャートが上昇トレンドを形成しており、追随期に入りそうな状態では、それに伴って中期トレンドの下降も収まりつつあるはずです。
この時、長期トレンドの方向に値動きが回帰することが予想できるため、短期トレンドが高値を更新した時点で買いサインとなります。
2-2.売りサイン
買いサインとは反対に、チャートが下降トレンドを形成しており、追随期に入りそうな状態では、それに伴って中期トレンドの上昇も収まりつつあるはずです。
この時、長期トレンドの方向に値動きが回帰することが予想できるため、短期トレンドが安値を更新した時点で売りサインとなります。
2-3.損切りの目安
トレンドの崩壊を根拠として、損切りの目安にも利用できます。
トレンドの形成とは、上昇トレンドについては直近の高値を更新し、直近の安値を割らないこと、下降トレンドについては直近の安値を更新し、直近の高値を越えないことを指し、これらが崩壊した際に相場の転換が発生するというわけです。
転換シグナルについては、上昇トレンドでは、前の安値を割り込み、前の高値を越えないポイント、下降トレンドでは、前の安値を割らずに前の高値を越えたポイントとなります。
このような明確な転換シグナルの理論を根拠として損切りの目安を判断すると、上昇トレンドであれば直近の安値、下降トレンドであれば直近の高値に損切りラインを引くことができます。
なお、相場にはダマシが発生する可能性もあるため、本来よりも2tick離れた場所に損切りラインを引くと良いとされています。
3.ダウ理論を使用したトレード手法
最後にダウ理論を使用したトレード方法について、日本株のチャートを用いて具体的に解説します。
3-1.様々なトレンドスタイルに活用できるダウ理論
ダウ理論はデイトレード、スイングトレード。長期投資など株式投資の様々な局面で、利用することができます。
また、その信頼性が比較的高く、銘柄や取引期間による違いはあるものの、高くて80%。低くても50%台でダウ理論が当てはまります。
もっとも、トレードに聖杯はなく、裏を返すと20%〜50%の確率で当てはまらないことにはなりますが、初心者の方にも利用しやすい理論と言えるでしょう。
3-2.ダウ理論を用いたエントリーとイグジット
今回は、東京電力ホールディングス(9501)のデイトレードで4時間足を用いて解説します。
環境分析の結果、本銘柄は今年の1月より長期の上昇トレンドにあるため、相場が強気に転換する時にエントリーし、反発の兆候を捉えて利益確定をするトレードイメージです。
まず、エントリーですが、相場がいったん下がり、再び上昇を始めるタイミングを、ダウ理論を参考に探します。
ダウ理論では、下降トレンドについては直近の安値を更新し、直近の高値を越えないことを指し、これらが崩壊した際に相場の転換が発生すると考えるため、それが崩れるポイントを探します。
上記チャートの黄色の枠の中をご覧ください。ここでは、左から二本目のローソク足の安値が、一本目のローソク足の安値を切り上げています。つまり、下降トレンドの崩壊を意味し、買いエントリーをするタイミングだと示唆しているのです。
3本目からエントリーをして良いように見えますが、すぐにエントリーするのは、騙しも多く、注意する必要があります。そこで、ひとつ前のローソク足の高値・安値を2本連続で共に切り上げるタイミングを待ちます。
そうして相場を見ていると480円付近にレジスタンスラインが形成され、しばらくエントリーチャンスはないように見えますが、11本目で急騰します。
12本目は、高値こそ僅かにひとつ前のローソク足に届きませんが、これは誤差の範囲とし、11本目の高値を超えたときにトレンドをフォローするようにエントリーします。
この例では、520円で買いのエントリーをしました。
次に、決済のタイミングですが、ここは完全にダウ理論に従います。
ローソク足の形状が、トレンドの鈍化を示しているため、前のローソク足の最安値である575円に指値注文をいれます。
結果的に白の矢印がある、575円で決済され、結果としてこのトレードでは55円、約10%の利益獲得ができるトレードが成立しています。
まとめ
ダウ理論をトレードに活用するときは、杓子定規に理論にしたがうのではなく、バッファーをうまく読み取ることが大切です。
1時間足以下のチャートではノイズも多くなるため、初心者の方には4時間足以上の長い時間足のチャートでゆったりとトレードされることをおすすめします。
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中島 翔
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