ソーシャルレンディングで投資案件を選ぶ際には、貸し倒れが発生した時のための保証をよく見ておくことも重要です。
ソーシャルレンディングでは、保証の手段としてよく設定されている担保に不動産があります。しかし、不動産担保があるといっても、貸付額以上の評価が付いたものでないと、貸し倒れが起きたときに資金を満足に回収できない可能性があります。
そこで、担保の力を見る専門用語として『LTV』という言葉があります。このLTVという用語の意味を知って、ソーシャルレンディングに設定された不動産担保の安全性を確認していきましょう。
目次
- 不動産におけるLTVという用語の意味
1-1.LTVは低いほど担保としての安全度が高い
1-2.LTVの評価はタイミングで変わる
1-3.LTVチェックの重要性 - ソーシャルレンディング各社のLTVの数字は?
2-1.オーナーズブックのLTV
2-2.maneoのLTV
2-3.LENDEXのLTV
2-4.クラウドバンクのLTV
2-5.ポケットファンディングのLTV - まとめ
1.LTVという用語の意味
LTVとは、”Loan To Value(LTV)”の略です。この数字を算出するためには、借入金額に対して設定された担保の資産評価額で割り、その数字のパーセンテージを見ていきます。
たとえば8,000万円を借りるときに、評価額1億円の不動産担保を設定している場合、8,000万円÷1億円でLTVは80%となります。
1-1.LTVは低いほど担保としての安全度が高い
LTVの数字は低い方が良いと言えます。例えば8,000万円の融資案件に1億円の不動産担保が設定されているときは、当初1億円の価値がある担保物件を売却して、80%以上の価格を確保できれば融資した資金の全額を回収できると考えられます。つまり資産額に対する実際の売却価格の目減りを20%まで許容できるということです。
これが例えばLTV50%だとしたら、5,000万円の融資案件に対して1億円の不動産担保を設定していることになります。売却額が評価額の半分まで下がってしまっても資金を全額回収できるので、担保としての安全性は高いと言えるでしょう。
1-2.LTVの評価はタイミングで変わる
ただし、LTVの値はあくまでも目安です。不動産評価額はその時の市況などの影響で変化しますので、その価値は絶対のものではありません。不動産価格は需要と供給の影響を受け変動するからです。市況により10%程度は変化することがあります。
また、不動産価格が高額になればなるほど、一般的に買い手の数は減っていきます。たとえLTVの値が低くても、売却して資金が回収できるまでには時間がかかることもあります。
投資案件の安全性を見るうえでは、基本的にはLTVの値が低い案件に投資するべきですが、集める資金の額が大きい案件になればなるほど、資金回収が容易でなくなることも知っておきましょう。
1-3.LTVチェックの重要性
LTVの値をチェックすることは非常に重要です。たとえば現在、第二種金融商品取引業免許を取り消されたソーシャルレンディング会社の一つに、ラッキーバンクがあります。
ラッキーバンクは全ての案件に不動産担保を設定していました。さらに、評価額が高い東京都内の不動産を担保の中心にしたことをセールスポイントにしていました。しかし、全案件で返済遅延が発生したあと、設定していた担保をサービサーに売却して回収できた資金は、融資額のわずか32%にしか過ぎなかったのです。
設定された担保の住所は自治体名まで公開されていましたが、住所などは明らかにしていませんでした。そのため、詳細な情報を確認できない投資家たちは、担保のある自治体名を見て、「資金回収の見込みが高い案件かどうか」を判断せざるを得なかったのです。
結果的には、ラッキーバンクが設定していた担保は融資額に対して評価額が非常に低いものばかりであり、結果的に投資家は満足な額の資金を回収できませんでした。
そのため不動産担保が付いている案件だからと安易に信じ込むのではなく、どのような評価額がついているのか、どのような不動産担保なのか、誰が担保の評価を行っているのかなど、しっかりと確認する必要があると言えるでしょう。
詳細な情報を公開しているソーシャルレンディング案件を選ぶことが、安全な投資のためには必要になってくるのです。
2.ソーシャルレンディング各社のLTVの数字は?
では、実際にソーシャルレンディング各社が設定している不動産担保のLTVを見ていきましょう。
2-1.オーナーズブックのLTV
オーナーズブックでも、案件ごとに不動産担保の評価額と融資額を公開しています。
例えばこちらの案件では、担保に設定した不動産の大まかな立地などを公開しており、また、メザニンローンという形で融資を行っていることも明らかにしています。
上記の案件に関しては、募集額1億円に対して1億2,000万円の担保を設定しています。ただし、メザニンローンであるため、抵当権の順位が第二順位になっている点は要注意です。担保を売却して回収した資金は、第一順位の債権者に優先して支払われます。そのため、第二順位の債権者はどうしても、資金を回収できる見込みが付きにくくなってしまいます。
2-2.maneoのLTV
このところ、複数の案件で貸し倒れが発生しているmaneoです。案件の詳細を確認していくと、LTVがどれくらいの値で設定されているのかを確認できます。
こちらの案件では、9,000万円の募集案件に対し、1億800万円の担保を設定しています。案件ごとにLTVの値は異なっていますが、80%から90%の案件が多くなっています。
一方で、誰が担保物件の審査を行ったのかがわからず、また、具体的な担保物件の場所などが記載されていないため、信用力や安全度が疑問視されるところです。
2-3.LENDEXのLTV
LENDEXは、LTVを80%に設定している点を会社のアピールポイントとして掲げています。また、自社評価だけではなく第三者機関の評価も受けていて、どちらか担保額が低いほうを基準にLTVを80%と設定しています。
この案件では、担保としている不動産の具体的な住所は書かれていませんが、推測できる情報がおおよそ揃っています。担保評価額は記載されていませんが、1億2,500万円の80%と考えると、評価額は1億4,500万円から、1億5,000万円辺りになるでしょう。
2-4.クラウドバンクのLTV
クラウドバンクでも、不動産を担保に設定した案件を投資家に提供しています。
案件の詳細を見ていくと、担保についての説明と融資先である事業者についての説明は、むしろ詳しく行われています。しかし、残念ながら担保評価額についての記載はありません。そのため、貸し倒れ発生時の資金の回収額については十分な推測が立ちません。
2-5.ポケットファンディングのLTV
沖縄の案件を中心に取り扱うソーシャルレンディング会社のポケットファンディングでも、案件の詳細でLTVについて記載しています。
案件の詳細を見ていくと、融資金額に対してどのような方法で担保評価額を算出しているのか、そしてその金額についても詳しい根拠を示しています。上記の案件では1,600万円の募集に対して担保評価額が約2,700万円ですから、LTVの値は約60%と非常に低い数値です。問題が発生した場合でも、資金を回収できる見込みは高いと言えます。
まとめ
ソーシャルレンディング業界で貸し倒れが続々発生している現在、投資資金に対する保証として担保の評価額を知っておく必要があります。担保評価額はどの程度なのか、また、評価は誰が行っているのかという点について、もし疑問が残った場合、投資前にソーシャルレンディング会社に直接聞いてみるなどして確認を取ると良いでしょう。
そして、LTVの値ができるだけ低い案件を選び、1社に集中させることなく、分散投資を心がけることでリスクヘッジを行ってください。
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HEDGE GUIDE 編集部 ソーシャルレンディングチーム
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