ソーシャルレンディングに投資するときにまず気にかかるのが利回りです。同じ金額を投資したとしても、利回りの高い案件に投資したほうが、無事に運用完了となった場合の収益額が大きくます。それだけに、その案件に投資することでどれくらいの利益が得られるのか、予定された運用利回りを重視する人も少なくないでしょう。
2018年前後までは、ソーシャルレンディング業界に属する複数の会社が、10%を超える予定運用利回りの案件を提供していました。しかし、そういった会社の多くは金融庁から行政処分を受け、現在は案件の募集を停止しています。
「予定運用利回りが高い案件は、リスクの高さも等しい」、必ずしもそのようには断言できませんが、運用利回りが返済や回収のあり方に影響して、リスクにつながることは否めません。そこで、比較的高い予定運用利回りを提供するソーシャルレンディング各社の案件とリスクについて、今回はチェックしたいと思います。
目次
- クラウドクレジット
1-1.クラウドクレジットの高利回り案件
1-2.クラウドクレジットのリスク
1-3.クラウドクレジットのリスク対策 - LENDEX
2-1.LENDEXの高利回り案件
2-2.LENDEXのリスク
2-3.LENDEXのリスク対策 - その他の高利回り案件
3-1.クラウドバンク
3-2.ネクストシフトファンド - まとめ
1.クラウドクレジット
予定運用利回りが高めの案件を多く提供しているソーシャルレンディング会社の一つに、クラウドクレジットがあります。クラウドクレジットは海外の投資案件を専門に扱うソーシャルレンディング会社です。広告でも表面利回りは2.5~13%を謳っています。
1-1.クラウドクレジットの高利回り案件
クラウドクレジットの高利回り案件には、以下のようなものがあります。
キルギスマイクロファイナンス事業者支援ファンド5号【社会インパクト重視ファンド】
こちらは社会的にインパクトをもたらす投資でありながら、表面利回りは12.2%と非常に高い数字です。
『【ケニアシリング建て】アフリカ未電化地域支援ファンド8号』
こちらも10%と、他の会社ではなかなか見られない予定運用利回りです。運用期間はいずれも25ヵ月です。
1-2.クラウドクレジットのリスク
クラウドクレジットの投資案件が抱えるリスクは、複数存在します。
まずは為替のリスクです。クラウドクレジットの案件は、すべて海外会社への投資です。その国の通貨建て、もしくは、ドルやユーロ建ての案件があります。日本円・ドル・ユーロの相場が大きく動く場合、当初よりもユーロ等が暴落するリスク、または損失が発生するリスクなどがあります。逆に、為替相場の変動で利益が出るパターンもあります。
融資案件の事業が成功しても、為替相場の影響で最終的に収支が変化することもあるのです。
つぎに案件を運営する国ごとのカントリーリスクです。特に途上国の場合は、法制度が満足に整備されていなかったり、国民のモラルや治安などの問題で資金を満足に回収できなかったりします。また、自然災害によるリスクや政情不安に伴う国家全体のリスクなども考えられます。
1-3.クラウドクレジットのリスク対策
クラウドクレジットで投資を行う際は、リスクに対抗するためにどのような手段を講じれば良いのでしょうか。
まず為替リスクに対応するには、円建ての案件に投資すると良いでしょう。クラウドクレジットの案件の中には海外向けであっても、円建てで投資できるものがあります。また、為替ヘッジをつけているものもあります。為替ヘッジとは、あらかじめ取り決めたレートで、1年後や2年後に海外と自国の通貨を両替することを指します。為替ヘッジは、為替の変動に伴うリスクを大幅に抑えます。
カントリーリスクに関しては、ある程度はやむを得ない部分があります。保証としてどのような取組みがなされているのかは、必ずチェックしましょう。そして、リスクを前提に複数の案件に投資することです。クラウドクレジットの杉山智之社長も、リスクヘッジとして可能な限り、多くの案件に分散して投資することを推奨しています。
リスクを取らないようにするのではなく、リスクの内容を知った上で、他の案件にも投資してトータルで利益を獲得していくこと、これこそがクラウドクレジットで利益を出すポイントと言えます。
2.LENDEX
2017年から営業しているソーシャルレンディング会社LENDEX。規模としては中堅のソーシャルレンディング会社です。不動産担保付き案件を中心に取扱っているという特徴があります。
2-1.LENDEXの高利回り案件
LENDEXが提供する不動産担保付き案件の運用利回りは、通常で7%~8%です。そして、無担保保証付き案件の予定運用利回りは12%と、かなり高い利回り水準です。
2-2.LENDEXのリスク
12%の高利回り案件に関して、LENDEXは無担保を前提に高い利回りを提供しているとしています。運用期間は3カ月と短く設定されています。融資先の倒産リスクに対しての備えだと言えるでしょう。
設定されている保証についてですが、内容は融資先の代表者連帯保証になっています。融資先が倒産した場合、代表者から回収できる資金も限られたものになるため、代表者連帯保証を信用しすぎるのは危険です。
2-3.LENDEXのリスク対策
LENDEXでのリスク対策は、クラウドクレジットと同様、すべての資金を特定の融資先につぎ込まないことです。上記の高利回り案件における運用期間は短期のため、基本的にはその間に融資先が倒産する可能性は低くなります。
しかし、倒産時に資金を回収できるとは限りません。短期だからといって多額の資金をつぎ込むのではなく、運用できる資金のごく一部のみを投入するようにしましょう。そして、有担保の案件に優先して資金を投入しましょう。無担保の案件で損失を被ったとしても、ソーシャルレンディング投資の現場から退場しないようなリスク管理を心がけていくべきです。
ハイリターン案件はハイリターンであればあるほど、それだけハイリスクと表裏一体になります。そのような認識を持って基本に立ち返り、1本の案件に集中して投資することを避けましょう。
3.その他の高利回り案件
クラウドクレジットやLENDEXほどでありませんが、他にも高利回り案件を提供しているソーシャルレンディング会社があります。
3-1.クラウドバンク
国内第3位の累計募集実績を誇る日本クラウド証券。同社が運営するソーシャルレンディングサイトがクラウドバンクです。クラウドバンクの平均的な想定利回りは5%から6%台ですが、案件の中には7%以上のものもあります。
こちらの案件は利回りが7.3%となっており、クラウドバンクの案件の中では高いほうです。米ドル建て案件であるため、為替変動に伴うリスクを想定しておかなければいけません。アメリカの不動産市場は日本と違って第三者が介入したり、不動産の信用保証会社があったりするなど、取引の透明度が高いと言われています。
また不動産担保も設定されています。これまでに貸倒れを発生させたことがない(2019年11月現在)クラウドバンクですから、比較的利回りが高い案件の中でも投資を検討する価値は一定数あるでしょう。
3-2.ネクストシフトファンド
『社会的インパクト投資』を標榜するソーシャルレンディング会社のネクストシフトファンド。同社はクラウドクレジットのように、海外への投資案件を中心に扱っています。その中でも利回りが高いのが、『カンボジア×ジョージア農家さん応援ファンド』です。
こちらの案件も、予定運用利回りが7%と高めの案件になっています。担保が付かないことから、リスク対策として分散して融資していることが挙げられます。ある程度の貸倒れを想定したうえで融資金を少額に分け、複数の個人投資家に貸付けています。
「融資先10社のうちの1社で貸倒れが起きたとしても、残りの9社から回収できれば問題ない」との認識に立って、大幅な損失の発生を防いでいます。社会への貢献と高い運用利回りが得られること、2つの面でメリットがある案件だと言えるでしょう。
まとめ
ソーシャルレンディング業界の予定運用利回りは次第に下がって、現在では6%前後になっています。2~3年前と比べ、明らかに低下しています。10%近くの高い予定運用利回りを謳っていた案件は、それだけリスクもはらんでおり、そうした案件を多く提供する会社の中には、実際に行政処分を受けた会社もありました。そして、案件の募集を停止する事態に陥っています。
投資を続けていくには、何があっても巨額の損失を出さないようにしなければいけません。今回ご紹介した高利回り案件にも、まったく同じことが言えるのではないでしょうか。しっかりとリスクを理解すること、そして、1本の案件に集中して投資するのではなく、ローリスクの案件と組み合わせて利益を確保し、リスクを分散させることが必要です。
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