証券会社に法人口座を作り、法人として株式投資を行うこともできます。法人は個人より利益への税率が高いのですが、あえて法人口座で行うメリットはどこにあるのでしょうか。
この記事では証券会社に法人口座を開設するメリット・デメリット、具体的な開設手順について解説します。
※2022年6月13日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定のサービス・金融商品への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※会計・税務上の判断については、税理士や税務署へご確認ください。
目次
- 証券会社の法人口座とは
- 証券会社で法人口座を開設するメリット
2-1.経費によって利益を圧縮できる
2-2.赤字を10年繰り越せる
2-3.損益通算ができる - 法人口座に関する注意点
3-1.個人よりも税率が高い
3-2.特定口座は開設できない
3-3.含み益に課税される恐れがある - 法人口座を開設できる条件(SBI証券の場合)
- 法人口座を開設する手順(SBI証券の場合)
5-1.必要書類の準備
5-2.入力フォームに必要事項の入力
5-3.口座開設申込書の受け取り
5-4.必要書類の返送
5-5.「口座開設手続完了のご案内」の受け取り
5-6.WEBサイトにログイン - まとめ
1.証券会社の法人口座とは
銀行や信用金庫だけでなく、証券会社にも法人口座を作ることができます。法人口座で投資をすることによって、利益を圧縮できたり、赤字を長期間繰り越せたりといったメリットがあります。その一方で個人口座よりも税率が高くなるなどのデメリットも発生します。
個人と法人のどちらが有利かは一概には決まらないので、自社および個人の状況、投資スタンスを踏まえて判断する必要があります。
2.証券会社で法人口座を開設するメリット
法人口座で投資をすることのメリットとして、下記3点が挙げられます。
2-1.経費によって利益を圧縮できる
法人口座で取引を開始するにあたり、用意したPC・書籍の代金やセミナー参加費などは経費として計上できます。役員報酬を自身や家族に支払う場合も経費になりますし、経営セーフティ共済などを使えば、利益への課税を合法的に先送りすることも可能です。
個人の場合、株式投資に関する支出は原則として経費として認められません。個人が必要経費として計上できるのは、株式の売買手数料などに限定されます。
法人のほうがさまざまな経費を計上しやすく、結果として利益を圧縮して節税することが可能です。
2-2.赤字を10年繰り越せる
投資で損失が出たとき、法人の場合は損失を10年繰り越すことが可能です。10年の間に利益が出れば、利益と損失を相殺することによって節税することができます。個人の場合の繰越期間は3年であり、法人より短いのでやや不利と言えます。
損失が大きくなる可能性がありつつ、長期的な視点で投資をするなら、損失の繰り越しを長期でできる法人のほうが有利となる可能性もあります。
2-3.損益通算ができる
個人では、たとえば株式投資の利益をFXの損失で相殺するといった損益通算ができません。FXでどれだけ大きな損失が出ていたとしても、株式投資で利益が発生していれば、その分は課税対象になります。
これに対して法人口座の場合、投資の利益を本業に関する損失で相殺するといったことが可能になります。
3.法人口座に関する注意点
法人口座にはメリットだけでなくデメリットもあります。以下の3点に注意しておきましょう。
3-1.個人よりも税率が高い
法人は節税手段が豊富である一方、税率は個人より高く設定されています。投資の利益に課税される税率は、個人は一律20.315%であるのに対し、法人の場合は20%~34%です。個人の方が税率は安い分、手元に残せる割合が多くなります。
3-2.特定口座は開設できない
特定口座とは、株式等の譲渡益に対する所得税や住民税の納税を、簡単な納税申告手続きで完了することができる口座のことです。自分で計算しなくても証券会社が代行してくれるので便利なサービスです。
しかし法人の場合は特定口座を開設することができません。よってすべての取引を集計して、損益を算出する必要があります。売買の頻度が多い場合、計算の手間がかかることもあるでしょう。
3-3.含み益に課税される恐れがある
税法において有価証券は「売買目的有価証券」と「売買目的外有価証券」に分かれます。このうち「売買目的有価証券」に該当したものは、期末に保有している有価証券の含み損益を実際の損益として加算しなくてはなりません。よって売却していない未実現の利益であっても、税金を支払うことになる可能性があります。
4.法人口座を開設できる条件(SBI証券の場合)
たとえばSBI証券の場合、法人口座を開設できる条件は下記のとおりです。
- 日本国内に本店登録されている法人であること
- 商業登記上の本店所在地で郵送物の受け取りが可能なこと
- 申込書の記載項目をすべて正確に記入できること
- SBI証券で他に同一の法人口座がないこと(1口座のみ)
- 取引責任者を選任すること(代表者が取引責任者となる場合も可)
- 口座開設予定の法人に固定電話の設置があること
- その他SBI証券が定める基準を満たすこと
日本国内に登録があること、郵送物の受け取りができること、取引責任者を定めることなどなどが条件となっています。
5.法人口座を開設する手順(SBI証券の場合)
SBI証券で法人口座を開設する手順は以下のとおりです。
- 必要書類の準備
- 入力フォームに必要事項の入力
- 口座開設申込書の受け取り
- 必要書類の返送
- 「口座開設手続完了のご案内」の受け取り
- WEBサイトにログイン
では1つずつ見ていきましょう。
5-1.必要書類の準備
口座開設に必要な書類・情報は以下となっています。
- 代表印鑑(シャチハタ不可)
- お届出印鑑(シャチハタおよび縁なし印は不可)
- 振込先金融機関口座
- 本人確認書類
本人確認書類に関しては、下記を添付することが必要です。
- 法人の印鑑証明書(原本・発行から6ヵ月以内)
- 商業登記簿謄本(原本・発行から6ヵ月以内)
- 代表者個人の本人確認書類2点(コピーでも可)
代表者個人の本人確認書類として使えるのは、運転免許証・住民票の写し・各種保険証・印鑑証明書などです。
5-2.入力フォームに必要事項の入力
SBI証券のサイトで、上部メニューの「サービス案内」→「口座の種類・法人口座」と進み、「法人口座開設のお申し込み」のボタンをクリックします。
入力フォームに、登記簿上の会社情報、代表者情報、振込先口座の情報を入力して送信します。
5-3.口座開設申込書の受け取り
情報送信後、約5営業日前後で口座開設申込書が郵送されてきます。必要事項として入力した内容が書類に反映されているので、正しいかどうかチェックしましょう。
なお口座開設申込書の送付先は、登記簿上の会社所在地にすることも、それ以外にすることも可能です。
5-4.必要書類の返送
「口座開設申込書」は必要箇所に記入・捺印し、本人確認書類を添付します。「実質的支配者に関する申告書」も必要箇所に記入します。なお実質的支配者とは、法人の事業経営を実質的に支配できる関係にある方を指し、誰が該当するかについては、事業形態により異なります。『「法人口座」外国税務コンプライアンス法(FATCA)に係る該当有無ご確認のお願い』も必要事項の記入が必要です。
上記の書類を記入・捺印し終えたら、同封されている返信用封筒に入れて返送します。
5-5.「口座開設手続完了のご案内」の受け取り
必要書類を返送してから10日程度で、「口座開設手続完了のご案内」が簡易書留郵便で届きます。口座番号・パスワード・取引パスワード等重要な情報が記載されているので、大切に保管しましょう。
5-6.WEBサイトにログイン
「口座開設手続完了のご案内」を手元に用意して、SBI証券のWEBサイトにアクセスします。「口座開設手続完了のご案内」に記載されているユーザーネーム・ログインパスワードを入力してログインすると、証券サービスが利用できるようになり、口座開設は完了となります。
まとめ
証券会社での法人口座の開設について解説してきました。経費によって利益を圧縮できる、赤字を10年繰り越せる、損益通算ができるといった点が法人口座のメリットです。その一方で、個人より税率が高い、特定口座は開設できない、含み益に課税される可能性があるなどの点に注意が必要です。
SBI証券を例に取ると、法人口座を開設できる条件として日本国内に登録があること、郵送物の受け取りができることなどが定められています。代表印鑑・法人の印鑑証明書・商業登記簿謄本など、口座開設に必要な書類も複数あるので、しっかり準備しておきましょう。
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