ドキュサイン、ズーム、ペロトン…「巣ごもり消費銘柄」を手放す機関投資家から見る市場の動きは?

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クラウド型電子署名サービスのドキュサイン(ティッカーシンボル:DOCU)が12月2日に発表した2022年度8~10月期(21年8~10月)決算は、売上高、1株利益ともに市場予想を上回りました。ところが、翌3日に株価は前日比42.22%安と暴落しました。

2022年度11~1月期(21年11月~22年1月)の前年同期比増収率について、これまでの伸び率を下回る見通しを示したことなどから、アナリストの間で「成長が鈍化している」との懸念が広がったためです。

今回はドキュサインの動向および、そこから予測される市場の動きについて解説します。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※2021年12月10日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。

目次

  1. ドキュサインCEOが需要の急減を認める
  2. 市場は赤字グロース株に厳しい
  3. 値ごろ感で買い進むのは危険
  4. まとめ

1.ドキュサインCEOが需要の急減を認める

経営陣が示した11~1月期の予想売上高は5億5700万ドル~5億6300万ドルで、前年同期比の伸び率は約30%となります。これに対し、過去6四半期は増収率がいずれも40%を超えていました。

また、11~1月期のビリング(Billings=未計上分を含めた売上高)の伸び率が前年同期比で約28%にとどまったほか、11~1月期は21~23%に低下すると予想しています。

ドキュサインのように最終赤字続きで株価収益率(PER)が算出できない企業にとり、「成長ストーリー」が揺らぐことは市場の評価を得るにあたって致命的です。

決算発表とともに開かれたアナリスト向けのカンファレンスコールで、ダニエル・スプリンガー最高経営責任者(CEO)が、「8~10月期に入ってサービス需要が減速した。新型コロナの恩恵はいずれ薄れると思っていたが、予想よりも早かった。それが8~10月期の業績と11~1月期のガイダンスに反映されている」と正直に述べたことも懸念を裏付けたようです(参照:DocuSign Q3 Fiscal 2022 Earnings Call and Webcast、ヘッジガイド編集部訳)。

ドキュサインは新型コロナウイルスの感染拡大を追い風に急成長した「巣ごもり消費銘柄」(stay-at-home stocks)の代表格です。2018年4月にナスダックへの上場を果たし、わずか2年余り後の2020年6月に時価総額上位100社(金融を除く)で構成されるナスダック100指数に加わりました。優良グロース銘柄とみなされ投資家の人気が高かったことがうかがえます。

2.市場は赤字グロース株に厳しい

ところが、米連邦制度準備理事会(FRB)が早ければ来年にも政策金利を引き上げると予想されているなか、高PERまたはPERを算出できないハイパーグロース銘柄に対する市場の見方が一転して厳しくなりました。

具体的な社名を挙げると、ドキュサインのほか、ウェブ会議システムツールのズーム・ビデオコミュニケーションズ(ティッカーシンボル:ZM)、在宅フィットネス機器製造などを手掛けるペロトン・インタラクティブ(ティッカーシンボル:PTON)、遠隔医療サービスのテラドック・ヘルス(ティッカーシンボル:TDOC)などです。

このうち、ペロトンも11月4日に発表した決算が市場予想に届かなかったことと、22年6月期ガイダンスを下方修正したことで失望を招き、翌5日には株価が前日比で35%下落しました。

このほか、個別企業ではありませんが、ハイパーグロース株への大胆な投資で脚光を浴びた資産運用会社も苦戦しています。アーク・インベストメント・マネジメントです。「破壊的なイノベーションをもたらす」として選んだ企業を中心に、アクティブ型上場投資信託(ETF)「アーク・イノベーションETF」を組成。巨額の資金を集めましたが、21年2月中旬をピークに株価は低迷が続いています。

3.値ごろ感で買い進むのは危険

これら企業・ETFの株価は、2020年には新型コロナの感染拡大前と比べて数倍に上がりました。ですが、ワクチンの普及によって米国で経済活動の正常化が進んできたことにより、新型コロナがもたらした特需はしぼんでいます。そうしたことが株価に反映されているわけです。

それでは、「巣ごもり消費銘柄」の株価の急騰・急落から個人投資家が学ぶべきことは何かといえば、機関投資家の評価が一転してネガティブになって値ごろ感が出てきたとしても、安易に買わないことではないでしょうか。

今回紹介した4社の株価は、12月中旬時点でいずれも50日移動平均線はもちろん、200日移動平均線を下回っています。各種のテクニカル指標が明確な底打ちや反転を示すか、大きな出来高を伴って株価が上昇基調を取り戻すまで積極的な押し目買いや新規の買いなどはしない方が賢明です。

まとめ

FRBによる大規模な金融緩和を背景に、大型ハイテク株やグロース株がけん引する形で米国株式市場は20年、21年と驚異的な成長を遂げました。ですが、今後は業績が底堅い企業やディフェンシブ銘柄へと資金が移り、高PER銘柄は低迷すると予想されます。このようなときは市場動向をよく見極めた上で、投資プランを考えていく必要があるでしょう。

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HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チーム

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