東南アジア配車最大手のグラブ・ホールディングス(ティッカーシンボル:GRAB)は12月2日、米ナスダック市場に上場した。特別買収目的会社(SPAC)との合併を通じた上場としては過去最大規模で、合併後の企業価値は約400億ドル(約4兆4,800億円、1ドル=112円換算)に達する(*1、2)。上場初日の株価は初値が寄りついて以降大きく売られ、合併前の株価と比較して21%安で取引を終えた。
グラブはSPACのアルティメーター・グロースと合併して上場を果たした。SPACとは未公開会社の買収を目的に資金調達を行い、従来のプロセスよりも短期間で被買収会社を上場させる法人である。「ブランク・チェック・カンパニー」とも呼ばれるほか、事業を持っていないことから「空箱」に例えられることもある。今回のケースでは、合併後の存続会社はグラブとなる。
合併会社はPIPEと呼ばれる手法を用いて40億ドルの資金を調達。引受先には世界最大規模の資産運用会社であるブラックロック(ティッカーシンボル:BLK)や独立系資産運用グループのフィデリティなど、名だたる機関投資家が並ぶ。PIPEとは投資会社が上場会社の私募増資を引き受けることを指す。
グラブは配車、食品宅配、ホテル予約、オンラインバンキング、モバイル決済、保険といった様々なデジタルサービスを提供する東南アジア最大級のスーパーアプリを運営する企業だ。同社は東南アジアのほとんどの国々でサービスを提供しており、465都市以上に1億8,700万人を超えるユーザー基盤を有している。しかしながら、グラブの業績は低迷している状況。11月に発表された2021年7~9月期決算では、売上高が前年同期比9%減の1億5,700万ドル、最終損益は9億8,800万ドルの赤字だった(*3)。東南アジア各国で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響を受けるなか、特にベトナムで厳格なロックダウンが講じられたあおりを受け、配車の利用が落ち込んだという。
グラブの初期投資家には、ソフトバンクグループやトヨタ自動車、韓国の現代自動車、中国で配車サービスを手掛ける滴滴出行(ディディ)などが名を連ねる。アンソニー・タン共同創業者兼最高経営責任者(CEO)は「成長と収益性は相互に排他的なものでなく、ともに実現できるものとみている。当社が参入する業界は市場機会が多く、市場浸透(進出)率も低いものであり、我々にはコスト面での優位性があると確信している」と述べた(*4)。
足元ではオミクロン株が世界を揺るがすなか、グラブが黒字化に向けていかなる戦略を講じるか注目したい。
【参照記事】*1 グラブ「Grab to Trade on Nasdaq Following Successful Business Combination with Altimeter」
【参照記事】*2、4 cnbc「Softbank-backed Grab falls more than 20% in first day of trading following largest-ever SPAC merger」
【参照記事】*3 グラブ「Grab Reports Third Quarter 2021 Results」
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HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チーム

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