インバウンド・観光関連の国内スタートアップ・ベンチャー企業は?成功事例も

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コロナ禍から堅調な回復を見せる訪日外国人数を背景にインバウンド・観光関連産業は盛り上がりを見せています。政府のインバウンド政策などの後押しもあり、国内スタートアップやベンチャー企業も各自治体と協力して様々なインバウンド・観光関連事業への取り組みを進めています。

この記事では、日本のインバウンド政策と国内スタートアップ・ベンチャー企業の現状や、様々なインバウンド・観光関連事業に取り組む国内スタートアップについてご紹介します。

※本記事は2023年12月22日時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。

目次

  1. インバウンド政策と国内スタートアップ・ベンチャー企業
    1-1 日本のインバウンド政策
    1-2 訪日外国人の動向
    1-3 インバウンド・観光関連のベンチャー企業の現状
  2. 訪日観光客向けのコンテンツ整備に取り組むスタートアップ
    2-1 ディーパートラベル
    2-2 エクスペリサス
  3. 情報発信・予約対応に取り組むスタートアップ
    3-1 ソリッドインテリジェンス
    3-2 SKIDAY
  4. 現地での多言語対応に取り組むスタートアップ
    4-1 MATCHA
    4-2 ビースポーク
  5. まとめ

1 インバウンド政策と国内スタートアップ・ベンチャー企業

コロナ禍から回復を見せている訪日外国人数を背景に国内のインバウンド・観光関連業界は大きな変革を迎えています。まずは、ここ数年で取り組みが強化された日本のインバウンド政策と訪日外国人数の動向、国内スタートアップやベンチャー企業の現状について確認してみましょう。

1-1 日本のインバウンド政策

政府が2016年3月に「明日の日本を支える観光ビジョン」を取りまとめてから、観光立国の実現に向けた取り組みが官民を挙げて進められています。

このビジョンの目標は、観光資源を活用した地方創生や、観光産業の国際競争力をこれまで以上に高めて国の基幹産業にすることであり、海外及び国内の旅行者がストレスフリーで観光を満喫できるようにするべく、環境整備が進められてきました。

その後、岸田政権が観光立国推進基本法に基づく観光立国の実現に関する基本的な計画として新たな「観光立国推進基本計画」を2023年3月に閣議決定しています。この計画では、「持続可能な観光」「消費額拡大」「地方誘客促進」の3つのキーワードを掲げています。

新型コロナウイルスによって大きな打撃を受けた国内観光産業の持続可能な形での回復を目的に、今後3年間で持続可能な観光地域づくり、インバウンド回復、国内交流拡大(日本人の地方部における宿泊者数の拡大や国内旅行消費額の拡大)の3つの戦略に官民一体となって取り組むという内容です。

このように、観光産業の振興やインバウンドの獲得に向けた政策が官民挙げて進められており、今後も国の基幹産業化を目指した様々な施策が実行される予定です。

1-2 訪日外国人の動向

最新の訪日外国人動向を見てみましょう。コロナ禍前は訪日外国人数が年々増加傾向で、2019年には過去最高となる3,188万人を記録したものの、2020年以降は新型コロナウイルスによる影響で大幅な減少となりました。しかし、各国の渡航制限や行動制限なども徐々に緩和され、2022年後半からは回復基調です。

2019年 2020年 2021年 2022年 2023年
訪日外国人数 3,188万人 412万人 25万人 383万人 1,989万人

(※出典:JTB総合研究所「インバウンド訪日外国人動向」10月末時点)

日本政府観光局(JNTO)の「訪日外客数(2023年10月推計値)」によると2023年10月の訪日外国人数は251万6,500人とコロナ禍前の2019年10月を超える水準にまで回復しました。個人観光の再開から1年超が経過した現在は訪日外国人数も堅調な回復を見せており、今後、インバウンド・観光関連産業の盛り上がりが見込まれています。

1-3 インバウンド・観光関連のベンチャー企業の現状

2023年になり訪日外国人数が急速に回復する中、観光産業を取り巻く市場環境は大きく変化しています。観光地域によっては、観光客の数が持続可能なレベルを超えて急激に増加し、過度な混雑や生態系に悪影響を及ぼしかねないオーバーツーリズムも発生しており、対応が急務となっている状況です。

一方、インバウンド・観光業界ではこの変化を大きなビジネスチャンスと捉える企業もあります。

例えば、株式会社MATCHAが2023年9月27日に開催した日本最大級のインバウンド・観光関係者向けイベント「第4回インバウンドサミット2023」では、「チャンスを活かせ」をテーマにインバウンド関連企業の代表者による基調講演や起業家によるピッチコンテストなどが行われ約4千人が参加しています。

観光庁も地域の観光関係者とインバウンドベンチャー企業間のマッチングイベントの開催や、インバウンドの地方誘客や消費拡大に向けた観光コンテンツの造成を支援する事業を行うなど、インバウンド・観光関連に取り組むベンチャー企業の支援事業に乗り出しています。

コロナ以降回復する観光産業の盛り上がりを背景に、スタートアップ企業やベンチャー企業は、訪日外国人向けコンテンツの整備や情報発信、通信・決済環境の整備などの事業を各自治体と協力して積極的に進めており、大きな成長が期待されます。

2 訪日観光客向けのコンテンツ整備に取り組むスタートアップ

インバウンド・観光関連の国内スタートアップ・ベンチャー企業をご紹介します。まずは、訪日観光客向けのコンテンツ整備に取り組むディーパートラベル、エクスペリサスの2社です。

2-1 ディーパートラベル

ディーパートラベル株式会社は2021年7月29日に設立された企業です。ディーパートラベルを運営する訪日外国人向けオンライン予約サービス「Deeper Japan」は、代表取締役である石川光氏が経営していたコンサルタント会社(合同会社シュタイン)の一部門として開始されたものであり、ディーパートラベルの設立後は同社が中心となり運営しています。

ディーパートラベルは、観光庁の主催するマッチングイベントで旭川市とのマッチングが成立し、旭川エリアで地元の酒造・料亭が連携するパッケージツアーの開発や、外国人モニターツアーによる体験コンテンツの改善や充実を図ることに成功しています。また、2024年上半期からは、訪日外国人旅行者向けの本格的な伝統文化体験ができる予約サービスをヨーロッパ及び東アジアで開始する予定です。

※参照:ディーパートラベル

2-2 エクスペリサス

2017年1月25日に設立されたエクスペリサス株式会社は、高付加価値な体験コンテンツの開発や販売などを行っている企業です。

官庁自治体向けのBtoG事業や企業向けのBtoB事業で高付加価値の体験コンテンツの開発やプロモーション支援、マーケティング支援などの事業を展開しており、エクスペリサスの会員制ECサイトを通じた富裕層向けの販売や海外富裕層向け旅行会社への販売業務なども行っています。

自治体向けのBtoG事業では、2020年度から広島県観光連盟と共に広島県内での富裕層向け高付加価値体験の企画開発支援事業に取り組んでおり、90以上のコンテンツ開発やエクスペリサスの独自販路を通じ、世界中の旅行会社へ販売を行っている実績があります。

また、大阪観光局と大阪府の観光戦略である「大阪ゲートウェイ構想」を体現するため、大阪を始点として広域エリアへ訪日旅行客を送客する「上質な広域回遊ルート」の企画開発支援を行うなど、自治体との連携実績などを重ねながら事業展開しています。

※参照:エクスペリサス

3 情報発信・予約対応に取り組むスタートアップ

続いて、訪日外国人観光客向けの情報発信や予約対応などに取り組むソリッドインテリジェンス、SKIDAYの2社をご紹介します。

3-1 ソリッドインテリジェンス

ソリッドインテリジェンス株式会社は、世界中のソーシャルビッグデータの調査や活用、コンサルティングなどを行っている企業で、2013年4月2日に設立されました。

2017年1月から海外ソーシャルメディアによるオンラインアンケート調査サービスを開始し、2020年には日本旅行に関する海外SNSデータを収集して海外16市場の話題を都道府県別に分析開始するなど、インバウンド・観光業界とも関連の深い企業です。

ソリッドインテリジェンスは、観光庁主催のマッチングイベントで佐賀県嬉野市とのマッチングが成立した企業です。同社が嬉野市のインバウンド推進戦略(韓国、台湾、香港)向けのソーシャルリスニングを担当した結果、ターゲットとするアジア人観光客のSNS上の露出状況や投稿内容を客観的な事実として把握することができ、新たなサービスやプロモーション施策に役立っています。

※参照:ソリッドインテリジェンス

3-2 SKIDAY

株式会社SKIDAYは2020年6月23日に設立された企業です。同社は全国のスノーリゾートとスキーヤー、スノーボーダーが日本の恵まれた自然環境を満喫できる仕組みと情報を提供することでスノー業界や旅行・観光など地域経済の活性化を目指しています。

SKIDAYは観光庁のマッチングイベントで北海道旭川市とのマッチングが成立した企業であり、主な事業として屋外施設向けモバイル式ライブカメラのレンタルなどを行うライブカメラ事業や、企業・自治体向けのマーケティング支援事業を営んでいます。

同社は、パウダースノーを求めるスキー場の利用者向けに降雪や積雪状況をリアルタイムで発信するため、旭川エリアのスキー場にライブカメラと降雪計を設置しました。スキーヤーはWeb配信や空港・駅のTVモニターでいつでも確認可能になったため、利用者アンケートで91.1%が役立つと回答するなど、スキー場の利用者拡大に貢献しています。

※参照:SKIDAY

4 現地での多言語対応に取り組むスタートアップ

最後に、現地での多言語対応などでインバウンド・観光関連事業に取り組むスタートアップ2社も確認しておきましょう。

4-1 MATCHA

株式会社MATCHAは訪日外国人向けの情報発信を専門とする企業であり、2013年12月3日に設立されました。10言語で情報発信を行う訪日外国人向けWebメディア「MATCHA」を運営するほか、インバウンド対策のマーケティング支援などの事業も営んでおり、上記でご紹介したインバウンドサミットはその取り組みの一環です。

同社の提供するインバウンド向けコンテンツ・マネジメント・システム(CMS)の「MATCHA Contents Manager(MCM)」は、月間600万PVのWebメディア「MATCHA」に自由な投稿が可能で、地域観光PRを短時間かつ低コスト、そして多言語で発信できるサービスとして導入件数が700件を突破しています。

自治体や観光地域づくり法人(DMO)、各地の観光協会だけでなく、最近は宿泊施設などもMCMを直接利用するケースが増えており、公式の観光情報を発信するサービスとして国内最大級の規模に成長しています。

※参照:MATCHA

4-2 ビースポーク

株式会社ビースポークは2015年10月29日に設立された企業で、AIチャットボットの「Bebot」を運営しています。ホテルでの問い合わせ対応や観光案内などに利用者のブラウザの言語設定に合わせて、英語や中国語などの多言語でAIが情報提供してくれるサービスで、空港や駅での施設情報の提供などにも利用されています。

最近は自治体での接客窓口や課題解決係としての導入も進んでおり、24時間365日対応できる行政サービスとして、富山市や三重県など様々な自治体が導入しています。

多言語対応していることから在日外国人への対応だけでなく、インバウンド観光客に対する情報発信のツールとしても利用されており、地震や台風などの自然災害発生時の情報発信手段としても期待されています。

※参照:ビースポーク

まとめ

コロナ禍に落ち込んだ訪日外国人数は2023年10月時点でコロナ禍前の水準まで戻ってきています。このような状況下でインバウンド・観光関連産業は盛り上がりを見せていますが、人件費高騰による人手不足やオーバーツーリズムなどの課題も発生しており、ビジネスチャンスと共に様々な課題への対応も必要な状態です。

このような環境の下、インバウンド・観光関連産業では様々な国内スタートアップやベンチャー企業が訪日外国人向けコンテンツの開発や多言語対応など様々なサービスの提供を行っており、中には飛躍的な成長を遂げている企業もあります。

今後も政府のインバウンド政策などを後押しに訪日外国人観光客などは増える見込みなので、インバウンド・観光関連産業のスタートアップやベンチャー企業は注視してみましょう。

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HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チーム

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