目次
- 2021年12月までの振り返り
- 各国の動向は?
2-1.米国
2-2.中国
2-3.欧州
2-4.イギリス
2-5.ニュージーランド
2-6.その他 - 年末年始に向けての注目材料
3-1.米CPI
3-2.RBA
3-3.オミクロン株の分析結果
1.2021年12月までの振り返り
2021年11月22日からの相場は、USD買いが強まりました。次期FRB議長としてパウエル議長の続投が事実上決まり、対抗馬のブレイナード理事よりタカ派色が強いとしてUSD買いが進行しました。その後、南アフリカ発のオミクロン変異株が登場すると今度はリスクオフのUSD買い・JPY買いが強まり、最後はパウエル議長が議会緒言でテーパリングの早期終了に言及したことからUSD買いが強まりました。
【参照記事】ブルームバーグ「パウエル氏、「数カ月早い」テーパリング終了検討も-高インフレで」
USD/JPYは、USD買いよりもオミクロン株を受けたリスクオフのJPY買いの方が勝り、115円台から112円台後半まで下落しました。EURは新型コロナウイルス感染症の拡大によりEU各地で部分的ロックダウンが決定されたことから上値が重く、一時1.11台をつけました。
GBP(英ポンド)は、BOE(欧州中央銀行)メンバーから金融正常化に対して慎重になるべきといった主旨の発言が多く、利上げ期待の剥落と共に1.32台割れへと下落しました。AUDやCADなど資源国通貨は、オミクロン株による資源価格の大幅下落を受けて、大きく売られました。
各国の動向は?
2-1.米国
バイデン大統領がパウエル議長の続投を決定し、対抗馬だったブレイナードFRB理事は副議長に指名され、恐らく議会はすんなりと通過する見込みです。一時は市場がブレイナード理事優勢といった方向に傾いていたこともあり、FRBがハト派スタンスに変わるという思惑も出ていましたが、パウエル議長の続投により、FRBの正常化への道筋はこれまで通りということでドル高の反応を見せました。またその後の記者会見においてハト派のブレイナード新副議長候補が、インフレの抑制にコミットしました。
【参照記事】ブルームバーグ「パウエル氏を次期FRB議長に再指名、ブレイナード氏は副議長に」
【参照記事】ブルームバーグ「インフレとの闘いが最優先事項-パウエル、ブレイナード両氏が強調」
2021年11月FOMCの議事録では、引き続きメンバー内でテーパリングのペースについて柔軟に対応するべきだという意見が大半となっているようですが、ペースを遅らせると考えているメンバーは皆無だった一方で早めるという方向のメンバーは数名≒3~4名(英語ではSOMEという表現)いたことを考えると、今後変更があるとすればタカ派方向となりそうです。
そして続投が事実上決まったパウエル議長の最初の議会証言で、インフレが一時的という表現を変え、テーパリングの早期終了の可能性を示唆しました。バイデン大統領から続投の要請を受けると同時にインフレ対応も依頼されたはずで、インフレ対応の全責任を負わされた形のパウエル議長が、今後ハト的発言をする回数は減っていくと予想します。
【参照記事】ブルームバーグ「米金融当局者、テーパリング加速にオープン-FOMC議事要旨」
米新規失業保険申請件数が19.9万件と1969年以来の低水準となり、個人消費の伸びも加速するなど、米国の雇用市場と個人消費の持続的改善が確認できる内容となりました。
【参照記事】ブルームバーグ「米失業保険申請19.9万件に改善、52年ぶり低水準」
一方でこれまでかなり低調なミシガン大消費者信頼感指数と比較して堅調な推移をしていた消費者信頼感指数がインフレ懸念によりとうとう崩れ、9カ月ぶりの低水準となりました。ただ、それでも過去10年の平均は大きく上回っていますし、労働市場に関しては仕事が豊富にあるとの回答比率が58%と過去最高を記録するなど、堅調な雇用が市場心理をサポートしています。
【参照記事】ブルームバーグ「米消費者信頼感指数、11月は9カ月ぶり低水準-インフレと感染で」
2021年11月の米雇用統計は21万人増と今年に入って最も小幅な伸びにとどまりましたが、失業率は、労働参加率が小幅に上昇する中でも4.6%から4.2%に大幅に改善したことで、FRBの金融政策の正常化方針には影響はないと見られます。
2-2.中国
中国人民銀行(PBOC)のQ3の金融政策報告書よると、国内景気に対する懸念を強めており、特に不動産市場に対する締め付けを一部解除するかのような雰囲気が出てきています。若干やり過ぎた石炭発電規制や不動産規制、その他一部の産業に対する規制を軌道修正し、これまでの過度な緩和・過剰流動性を回避するというタカ寄りのスタンスから再度緩和スタンスに切り替えた様子です。
また、李克強首相からも預金準備率を適切な時期に引き下げる方針が示されました。
【参照記事】ブルームバーグ「中国、預金準備率を0.5ポイント引き下げ-景気減速に対応」
2-3.欧州
ECB議事録が発表されました。予想通りインフレについての議論が多かったですが、多くのメンバーが供給要因によるインフレは2022年後半から落ち着きを見せ、賃金上昇の圧力も見られていないという認識であることが分かりました。この流れで行くならPEPPは2022年3月終了しますが、その後何かしらの緩和策を拡充し突然緩和策が止まることはないと思われます。
【参照記事】ブルームバーグ「ECB、12月以降も政策の選択肢必要 「不確実性極めて高い」=議事要旨」
しかし、今のところ緩和策の中身について具体的に議論された様子はなく、相変わらず中期インフレの不確実性についてメンバー内で意見の統一ができていないことから、12月の会合では何も決まらずPEPP終了予定の来年3月のギリギリまでデータを見ながら判断を先送りする可能性が高まったと言えます。
その後ユーロ圏11月のCPIが前年比+4.9%と統計以来最大の伸びとなりました。今回は、エネルギー関連以外にも広範囲な品目で物価の上昇が見られております。ECBの見通し通り、年明けから落ち着くのかどうか要注目です。
2-4.イギリス
11月のBOE政策決定会合で据え置きに反対し利上げを主張したソーンダース委員がオミクロン変異株の影響を見極めるため利上げを見送る可能性について言及しました。前会合以来、出てくる経済指標が好調で利上げ織り込みは30%程度残っていましたが、この発言を受けて20%程度まで織り込みが後退しました。
【参照記事】ロイター「英中銀政策委での投票、オミクロン株の影響見極める必要=ソーンダーズ委員」
一方で英国は、製薬大手会社GSKが開発した抗体医薬を承認しました。重症化や死亡を減らすだけでなくオミクロン株にも有効と見られています。
2-5.ニュージーランド
RBNZは予想通り0.25%政策金利を引き上げて0.75%としました。またフォワードガイダンスも0.5%の幅で引き上げ、2023年末には2.6%まで金利が上昇するという見通しを示しました。一方で、経済見通しに関する不確実性も懸念材料として挙げており、今回の利上げパスがそのまま実行されるかどうかは不透明な状況です。
2-6.その他
米国バイデン大統領主導で中国・インド・日本など複数の国が戦略備蓄を放出すると決定しました。しかし、規模は非常に小さく米国の5000万バレルは世界の消費量の半日にもなりません。このような備蓄の放出を受けてサウジアラビアとロシアを中心としたOPECプラスは、需給バランスを崩す恐れがあるという名目で協調増産の一時停止を検討しているとの報道も出てきていましたが、結局従来通りのペースで増産を決定しました。ただし、オミクロン株の影響による需給バランス次第では、生産を調整するということも付け加えられました。
【参照記事】JETRO「バイデン米政権、石油戦略備蓄を5,000万バレル放出へ、日本政府も一部放出決定」
WHO(世界保健機関)が南アフリカで検出されたコロナ変異株をデルタ株に次いで「懸念される変異株」に指定しオミクロンと命名されました。「懸念される変異株」とは、感染性や重篤度が増す・ワクチン効果を弱めるなど性質が変化した可能性のある株のことで、かなり深刻なものとの認識が世界的に広がり、英国などが南アフリカなどの国との渡航を禁止するといった制限を付ける対応を取った国も出るなど、リスク警戒の動きが一気に強まりました。しかし感染者は増えていますが、無症状か軽症が目立ち、死者の報告はWHOにも入っていないとのことです。
【参照記事】NHK「オミクロン株 軽症の可能性も「結論を出すには早すぎる」WHO」
3.年末年始に向けての注目材料
3-1.米CPI
12/16のFOMCに向けてブラックアウト期間に突入するため要人発言はなく、米CPIがFOMCを予想するために重要な指標となります。これまで通り高インフレが維持されるのであれば、テーパリングの早期終了が発表される可能性が高まります。
3-2.RBA
前回会合では3年国債のイールドカーブコントロールを撤廃し、利上げの条件が整う時期については2024年という具体的な数字を使わず一定の時間が掛かると曖昧な表現に変えました。その後四半期金融報告では2023年終盤に賃金指数が年+3%を達成する見解を示しました。RBAのインフレターゲットは2~3%ですから、3%の賃金上昇率は利上げに向けた一つの条件となりますが、第3Q賃金指数は+1.7%から+2.2%に加速しています。ロックダウンが終わったあとQ4の経済回復が見込まれる中、FRBが明確にタカ派転したことで、仮にRBAが多少タカ派転してもAUDが独歩高になる可能性は低く、タカ転できる条件は揃っています。
3-3.オミクロン株の分析結果
専門機関や製薬会社が分析を進めていますが、そろそろ何かしらの情報が出てくる可能性が高いです。ポイントは感染力というよりかは毒性だと思われます。毒性が弱ければ感染力が強くても、各国政府はインフレを助長するロックダウンという決断には至らないと思われます。また、新しいワクチンが必要なのかどうか、そしてどの程度で開発できるのか、といったことについても注目です。
HEDGE GUIDE 編集部 FXチーム
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