立会外分売、2022年上期の実績と勝率は?値上がり銘柄の傾向も分析

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立会外分売は、割引価格で株式を購入できるので、安く株式を取得したい方や、分売企業の成長性に着目する方に適した取引方法です。立会外分売を実施する銘柄は、ネット証券で手軽に申込みできるので、誰でも参加可能な点も大きな特徴となっています。

この記事では、2022年上期に実施された立会外分売について、詳しく説明していきます。実績や勝率、値上がり銘柄の傾向に興味のある方は、参考にしてみてください。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は、2022年7月12日時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。

目次

  1. 立会外分売とは
  2. 立会外分売を利用するメリット・注意点
  3. 立会外分売の2022年上期の実績・勝率
  4. 立会外分売の2022年上期で値上がりした銘柄の傾向
  5. まとめ

1 立会外分売とは

立会外分売とは、大株主が保有する上場株式を取引時間外に不特定多数の投資家に売り出す方法です。東京証券取引所で株式を売買する際、通常は前場(9:00~11:30)と後場(12:30~15:00)の取引時間内(立会内)に行いますが、立会外分売では、取引時間外に株式を売り出すため、市場へのインパクトを抑え、株価下落リスクを防ぐ効果が期待されています。

立会外分売は、まとまった売り注文を小口に分売するので、企業側にとって株式の流動性を高められるほか、少数からなる大株主の影響も薄まり、株主の構成比率バランスが改善します。

また、2022年4月4日以降に新市場が誕生したことから、上位市場への指定変更を目指す企業もあり、例えば、東証プライム市場からTOPIX指数採用となれば、インデックスファンドなどの機関投資家の買いが入り、株価に追い風となります。そのため、上位市場への指定変更を目的に、立会外分売を行う企業もあります。

2 立会外分売を利用するメリット・注意点

立会外分売を利用して、株式を購入する場合、購入手数料がかかりません。通常、株式を購入する際には、購入手数料がかかりますが、立会外分売では無料です。そのため、市場で購入するより株式を安く取得できますが、売却時には手数料がかかります(なお、証券会社によっては、手数料コースにより売却時手数料を無料にできる場合もあります)。

次に、割引価格で株式を購入できる点です。分売価格は、立会外分売を実施した日の前日終値よりも割引されるケースが多いため、市場で株式を購入するよりも割安価格で購入できます。例えば、2021年2月22日に立会外分売を実施したイチケン(1847)の場合、前営業日終値1,844円に対して、分売価格は1,788円と3.04%の割引率となっています。

さらに、上位市場に昇格しやすくなるのもメリットです。立会外分売は、流動性を高め、株主数の増加が可能になるので、上位市場への昇格がしやすくなります。例えば、東証プライム市場の昇格条件は、「株主数800人以上」「流通株式時価総額100億円以上」としており、昇格できれば、多くの投資家の目に付いて株価も上昇しやすくなります。

一方、立会外分売を利用する上で注意点もあります。立会外分売の購入申込みが殺到している場合、抽選になるため、全員が購入できるわけではありません。人気銘柄で売出枚数が少ないと当選確率はさらに低くなります。そのため、立会外分売で当選するためには、複数の証券会社から申込みをするなどの工夫も必要になります。

また、立会外分売は必ず儲かるわけではありません。立会外分売を実施すると、流通株式数が増えて需給が緩むので、株価が下がりやすくなります。そのため、むやみに購入するのではなく、業績が堅調に推移しているかなどの確認も行う必要があります。

業績が良くない銘柄の場合、早乗り早降りで上がったらすぐに売りたい投資家が多い一方、業績好調の銘柄なら立会外分売で安く買い、保有を続ける理由になります。

また、市場区分のチェックも大切です。東証プライム市場は、上場基準が3市場の中で最も厳しく、有望銘柄も多いことから初心者の方でも狙いやすい一方、東証グロースの銘柄は、業績等で突出しているかなど、より慎重な見極めが求められます。

3 立会外分売の2022年上期の実績・勝率

2022年、立会外分売を実施した企業は33社となっており(福証を除く)、2020年、2021年の実施ペースより鈍化しているものの、依然として分売需要は高い状況となっています。以下は、2022年1月~6月までの市場別データによる立会外分売数、勝率、平均割引率のデータです。

市場 実施回数 勝率 勝ち(上昇) 負け(下落) 引分(同値) 平均割引率
東証プライム 4回(全体の11%) 75.00% 3勝 1負 0引分 3.14%
東証スタンダード 7回(全体の20%) 78.57% 5勝 1負 1引分 3.17%
東証グロース 4回(全体の11%) 100.00% 4勝 0負 0引分 3.04%
東証1部 6回(全体の17%) 91.67% 5勝 0負 1引分 3.00%
東証2部 4回(全体の11%) 12.50% 0勝 3負 1引分 3.62%
東証マザーズ 4回(全体の11%) 25.00% 1勝 3負 0引分 3.05%
東証JASDAQ 4回(全体の11%) 62.50% 2勝 1負 1引分 3.13%

※立会外分売により、割引価格で買った株を買付した当日の始値で売却した場合の勝率、平均割引率です。また、2022年4月4日から東証グロース、東証スタンダード、東証プライムの3市場に区分されています。

2022年1月~6月までの合計分売回数は33回で、勝率は68.96%、合計20勝9負4引分、平均割引率は3.16%となっています。

このように、立会外分売ではタイミング次第で高い利益を狙うことも可能です。分売を実施した企業に、中長期のキャピタルゲインを得られる潜在価値があれば、短期で売らず持ち続ける方法もあります。

次に、2022年上期までに実施された立会外分売を銘柄ごとに確認してみましょう。

実施日 銘柄(コード) 市場 前日終値 分売値段 割引率 対始値騰落率 分売日始値 結果
6/28 バルニバービ(3418) 東証グロース 985 955 0.0304 0.0219 976 勝ち
6/23 プラネット(2391) 東証スタンダード 1,275 1,224 0.04 0 1,224 引分
6/22 NATTY SWANKY HD(7674) 東証グロース 3,000 2,910 0.03 0.001 2,913 勝ち
6/21 ユーユーレンティア(7081) 東証スタンダード 1,230 1,193 0.03 0.0318 1,231 勝ち
6/13 愛知時計電機(7723) 東証プライム 1,471 1,427 0.0299 0.0259 1,464 勝ち
5/31 ミヨシ油脂(4404) 東証スタンダード 1,036 1,005 0.0299 0.0298 1,035 勝ち
5/30 はごろもフーズ(2831) 東証スタンダード 3,085 2,993 0.0298 0.0006 2,995 勝ち
5/27 DNホールディングス(7377) 東証スタンダード 1,051 1,015 0.0342 0.0817 1,098 勝ち
5/25 ヤマザキ(6147) 東証スタンダード 390 3,379 0.0282 -0.0343 366 負け
5/24 前澤給装工業(6485) 東証プライム 843 813 0.0355 0.0553 858 勝ち
5/24 イワキ(6237) 東証プライム 980 950 0.0306 0.0294 978 勝ち
5/23 兵機海運(9362) 東証スタンダード 1,371 1,330 0.0299 0.0526 1,400 勝ち
5/18 農業総合研究所(3541) 東証グロース 330 320 0.0303 0.0562 338 勝ち
5/17 タスキ(2987) 東証グロース 676 655 0.031 0.0167 666 勝ち
5/10 ハブ(3030) 東証プライム 508 493 0.0295 -0.0101 488 負け
3/29 スターフライヤー(9206) 東証2部 2,498 2,398 0.04 -0.0029 2,391 負け
3/25 スターフライヤー(9206) 東証2部 2,602 2,498 0.0399 0.00% 2,498 引分
3/24 プラネット(2391) 東証JASDAQ 1,414 1,358 0.0396 0 1,358 引分
3/18 三京化成(8138) 東証2部 3,215 3,103 0.0348 -0.0267 3,020 負け
3/16 住江繊物(3501) 東証1部 1,589 1,541 0.0302 0.0428 1,607 勝ち
3/15 愛知時計電機(7723) 東証1部 1,584 1,536 0.0303 0.0442 1,604 勝ち
3/15 佐藤食品工業(2814) 東証JASDAQ 1,421 1,378 0.0302 -0.0014 1,376 負け
3/04 初穂商事(7425) 東証JASDAQ 1,708 1,656 0.0304 0.0078 1,669 勝ち
3/04 カネミツ(7208) 東証2部 733 711 0.03 -0.007 706 負け
2/25 BCC(7376) 東証マザーズ 891 864 0.0303 0.0486 906 勝ち
2/25 シンクロ・フード(3963) 東証1部 243 237 0.0246 0 237 引分
2/22 パルマ(3461) 東証マザーズ 410 397 0.0317 -0.0277 386 負け
2/22 イチケン(1847) 東証1部 1,844 1,788 0.0303 0.0453 1,869 勝ち
2/21 タスキ(2987) 東証マザーズ 791 767 0.0303 -0.0182 753 負け
2/18 チノー(6850) 東証1部 1,525 1,472 0.0347 0.0258 1,510 勝ち
2/17 かどや製油(2612) 東証1部 3,605 3,497 0.0299 0.0022 3,505 勝ち
2/16 フォースタートアップス(7089) 東証マザーズ 2,543 2,467 0.0298 -0.0299 2,393 負け
1/25 シー・エス・ランバー(7808) 東証JASDAQ 3,110 3,032 0.025 0.0422 3,160 勝ち

※割引率は「(前日終値-分売価格)/前日終値」で計算した数値を、小数点以下第3位を切り捨てて表示しています。
※対始値騰落率は「(始値-分売価格)/分売価格」で計算した数値を、小数点以下第3位を切り捨てて表示しています。

これまで実施された立会外分売では、全銘柄が割引率2%以上となりました。2%〜2.5%未満は1社、2.5%〜3%未満は9社、3%〜3.5%未満は18社、3.5%〜4%未満は3社、4%以上が2社となっており、割引率2.5%~3.5%がおもなボリュームゾーンになっています。

4 立会外分売の2022年上期で値上がりした銘柄の傾向

分売後の株価の値上がり・値下がりは、各市場や時期によって異なります。例えば、東証グロースの場合、分売実施回数4回に対して勝率100%でしたが、対始値騰落率は1.10%なので、そこまでうま味のある投資ではありませんでした。

一方、東証2部や東証マザーズの対始値騰落率はマイナスで、東証JASDAQの対始値騰落率はプラスだったものの、例年の勝率70〜80%を大きく下回っています。

それでは、2022年上期で値上がりした各銘柄を確認していきます。シー・エス・ランバー(7808)は、2022年1月25日に立会外分売を実施しており、対始値騰落率は+4.22%となっています。シー・エス・ランバーは、高配当の増配銘柄ということもあり、取引需要の高い銘柄でした。

イチケン(1847)は、2022年2月22日に立会外分売を実施しており、対始値騰落率は+4.53%となっています。分売実施前に、増配が発表されていたことが上昇要因となりました。

BCC(7376)は、2022年2月25日に立会外分売を実施しており、対始値騰落率は+4.86%となっています。分売後は、需給悪化が解消し、上昇に転じています。

愛知時計電機(7723)は、2022年3月15日に立会外分売を実施しており、対始値騰落率は+4.42%となっています。分売後、薄い出来高と需給悪化の解消が合わさり、株価上昇に繋がりました。

住江繊物(3501)は、2022年3月16日に立会外分売を実施しており、対始値騰落率は+4.28%となっています。分売数量は、発行済み株式総数の約3.1%と多めで、需給悪化の懸念もありましたが、分売実施までには悪材料を織り込み、株価上昇となっています。

農業総合研究所(3541)は、2022年5月18日に立会外分売を実施しており、対始値騰落率は+5.62%となっています。分売発表から分売日まで株価は下落トレンドでしたが、分売実施後は、まれにみる上昇率となっています。

兵機海運(9362)は、2022年5月23日に立会外分売を実施しており、対始値騰落率は+5.26%となっています。同銘柄は高配当なほか、市況の改善なども寄与し、高い上昇率となっています。

前澤給装工業(6485)は、2022年5月24日に立会外分売を実施しており、対始値騰落率は+5.53%となっています。この銘柄は2019年3月期を除いて、過去5年間連続増配をしており、取引需要の高い銘柄となっています。

DNホールディングス(7377)は、2022年5月27日に立会外分売を実施しており、対始値騰落率は+8.17%となっています。高配当であるほか、業績も堅調だったため、まれにみる高い上昇率を記録しています。

まとめ

立会外分売は、割引価格で株式を購入できるので、銘柄の見極めや売買タイミングによっては、大きな利益を狙うことも可能です。2022年上期の勝率は68.96%と、例年に比べてまちまちですが、年後半にかけて市況が改善すれば、値上がり銘柄の増加も期待できます。

一方、立会外分売を実施した銘柄は必ず儲かるわけではないので、業績にもしっかり着目するなど、見極めも必要になります。

立会外分売に興味のある方は、過去の実績を参考にメリット・注意点などを十分に理解した上で、検討してみてください。

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HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チーム

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