株式分割は、株を発行している企業と投資家の双方にメリットがあります。しかし、企業の判断で株式分割が突然発表されることもあるため、株価への影響や注意点について知りたい方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、株式分割の意味や投資家に与えるメリット・デメリットを解説します。株式分割を発表した企業の確認・予測方法なども併せてご紹介するので、株式投資をしている方、これから株式投資を始めようと考えている方は、参考にしてみください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2021年10月14日時点の情報に基づき執筆しているため、最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。
目次
- 株式分割とは
1-1.株式分割を行う理由
1-2.株式分割する企業のデメリット - 株式分割が投資家に与えるメリット
2-1.取引の自由度が高くなる
2-2.値上がりを期待できる
2-3.増配を期待できる
2-4.株主優待を得やすくなる - 株式分割が投資家に与えるデメリット
3-1.値動きが大きくなりやすい - 株式分割を確認・予測する方法
4-1.株式分割を確認する方法
4-2.株式分割を予測する方法 - まとめ
1 株式分割とは
株式分割とは、すでに発行されている株式をいくつかの株式に分ける(分割する)新株発行形態です。投資家から払い込みを受けて株式を新たに発行する有償増資とは異なり、資本金は増えないものの、発行済株式数は増加する資本政策の1つです。
株式分割を行う際は事前に分割比率が発表されます。例えば、分割比率が「1:2」の場合、1株につき2株の割合で分割されるため、100株保有していれば200株に株数が増えます。
この分割比率は株を発行している企業が発行済み株数や株価に応じて決めることができ、「1:1.5」のような整数倍でない比率や「1:5」のように大幅に株数を増やす株式分割も可能です。
なお、株式分割された企業の株価は、資本金はそのままで株数だけ増える状態となるため、1株の価値が希薄化し株価は下がります。
例えば、1株1万円の株を100株(1万円×100株=100万円)保有している場合、「1:2」の分割比率で株式分割が行われると株数は200株に増えますが、株価は理論上1株5千円に下がるため、保有株式の総価値は200株×5千円=100万円のままです。
1-1 株式分割を行う理由
株式分割は主に株価が堅調に上昇している企業などで採用される資本政策です。本来、株価が堅調に上昇すると株を発行している企業は時価総額が高くなり、社会的な信用力の上昇などによって資金調達がしやすくなるなどのメリットがあります。
しかし、株式市場で取引される株式には単元と呼ばれる最小の取引単位があり、1単元100株が最小取引単位となっています。これにより、株価が高くなりすぎると株の購入に多額の資金が必要になり、株を購入できる投資家が少なくなるという問題が出てきます。
株を購入できる投資家が少なくなると流動性の低下を招くことになるため、業績が良くても予想通りに株価が上昇しないなどの弊害が発生することもあります。この問題を解決するために採用される方法が株式分割です。
株価が下がることによって多くの投資家が株の売買に参加できるようになり、売買が活発になる(=流動性が高まる)ことで、業績に見合った適正な株価の上昇などにも繋がります。
また、発行済株数の総数が増えることも企業にとってメリットです。例えば、東証二部に上場している企業が東証一部への市場変更を申請する場合、流通株式数2万単位以上という条件をクリアする必要があります。
すでに発行している株式数が100万株の場合、資本金を払い込んでもらう有償増資などで新たに100万株発行するという選択も可能です。しかし、大幅な増資は既存株主の持ち株割合を下げるなど株式価値の希薄化につながり、株価の下落を招く可能性もあります。
そこで、すでに100万株発行している場合、「1:2」の割合で株式分割を行うことで東証一部の上場基準をクリアすることができます※。
※東証一部への市場変更は株主数や時価総額など他にもクリアしなければならない基準があるため、単純に株数を増やすだけでは市場変更できない場合もあります。また、2022年4月からは市場再編があり、現在の各市場への上場基準とは違いが生じます。
1-2 株式分割は手間やコストがかかる
上場企業の場合、株式分割は取締役会の決議を経て実施されますが、事前に株主や市場関係者への通知が必要になります。
また、株式会社の発行可能株式数は定款で決められているため、株式分割によって発行可能株式数を超える場合、定款の変更が必要になります。定款の変更は事前に株主総会の決議を経なければならないため、手間やコストが余計にかかります。
さらに、株式分割の完了後も発行済株式数の登記変更や株主名簿の更新などが必要になるため、これらの手間やコストが膨らむ点は企業側のデメリットとなっています。
2 株式分割が投資家に与えるメリット
ここからは、株式分割が投資家に与えるメリットについて確認してみましょう。
2-1 取引の自由度が高くなる
株式分割が行われると投資家にとっては取引の自由度が高くなります。例えば、100株保有している株式が200株に分割される場合、株価の動向によっては1単元分(100株)を処分し、新しい銘柄の購入資金に充てることが可能です。
また、株を買い増しする場合でも分割前の半分の株価で購入できるほか、分割時にその株式を保有していなかった方も購入しやすくなります。
例えば、トヨタ自動車は2021年10月1日に「1:5」の割合で株式分割を実施しています。分割前の2021年9月末頃に1万円超だった株価は、それ以降、2千円前後で取引されており、株式購入に必要な最低資金も約100万円から20万円前後と大幅に減少しています。
このように資金的な理由で購入できなかった方も参加できるため、銘柄選びの選択肢が広がり、分散投資やポートフォリオの見直し等を行いやすくなります。
2-2 値上がりを期待できる
株式分割を行うと市場で流通する株式の総数が増える上、流動性が高くなります。これにより、取引参加者の間で「今後の取引の活発化によって値上がりするのでは」などの期待感が膨らむため、株式分割を発表した直後の株価が値上がりするケースもあります。
2-3 増配を期待できる
通常、配当金は「1株あたり〇〇円」のように株数に応じて受け取ります。株式分割では、株主還元策として分割後も配当金を据え置く企業もあるため、この場合、受け取れる配当金が増えます。
一方、株式分割で株数が増えた後に配当金を据え置く行為は単なる増配です。そのため、株式分割を行う企業が1株あたりの配当金を分割前の水準に合わせて引き下げるケースもあります。
そのため、株式分割が行われる際は、配当金の分配がどのようになるかを事前に確認しておくことも大切です。
2-4 株主優待を得やすくなる
企業の株主優待は基本的に100株などの1単元数以上の保有者が対象です。例えば、1株2千円の場合、株主優待に必要な100株を購入するためには最低20万円が必要です。
一方、「1:2」の割合で株式分割が行われると10万円程度で100株購入できるため、株主優待を受けるための最低必要金額が少なくなります。このように、株式分割が行われると理論上の株価が安くなるため、株主優待に必要な最低投資金額が少なく済むのもメリットです。
ただし、株主優待を受けるための株数や優待内容などは、株式分割時に変更されることもあるので留意しておきましょう。
3 株式分割が投資家に与えるデメリット
投資家が株主分割で注意したいポイントは以下の通りです。
3-1 値動きが大きくなりやすい
株式分割の発表後は、株価上昇の期待感から投機的な売買が活発になります。中には相当な金額・数量が短期的な売買益目的で取引される銘柄もあるため、企業の業績に関係なく大きな値動きとなる場合もあります。
また、企業の実力以上に株価が上がる銘柄もあり、タイミングによっては高値掴みなどで思わぬ損失を被る可能性があります。株式分割の熱が冷めれば市場での評価も下がり、株価も次第に落ち着くので、焦らず慎重な取引姿勢が求められます。
株式分割の発表後は、短期的な視点だけではなく、中長期的な視点で今後の値動きや業績等の動向に注視することが大切です。
4 株式分割を確認・予測する方法
こちらでは、企業が発表する株式分割の情報を確認する方法や予測する方法についても確認しておきましょう。
4-1 株式分割を確認する方法
株式分割は発表後の株価を大きく変動させる要因の一つです。また、配当金や株主優待の内容などが変わる可能性もあるため、発表の確認は投資家にとって重要な情報収集の一環になります。
株式分割の情報は、企業のIR情報や日本取引所グループのサイト上で確認することができます。例えば、トヨタ自動車は株式分割を取締役会で決議した5月12日、投資家向けの情報ページである「株式に関するお知らせ」で公表しています。
また、日本取引所グループでは、「適時開示情報閲覧サービス」から過去1か月分の株式分割や決算発表、配当金などの投資判断を行う上で重要な情報を確認可能です。
なお、1社ずつ確認するのが手間という場合、以下の通り、各証券会社が提供している「株式分割予定銘柄一覧表」などを利用すると手軽にチェックすることができます。
SBI証券 | 株式分割予定銘柄一覧 |
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楽天証券 | 株式分割 -国内株式- |
auカブコム証券 | 株式分割銘柄 |
SMBC日興証券 | 株式分割予定銘柄一覧 |
松井証券 | 株式分割 |
マネックス証券 | 株式分割等の銘柄情報 |
LINE証券 | 株式分割発表銘柄はこちら |
野村證券 | 株式分割銘柄 |
(いずれも10月14日時点)
4-2 株式分割を予測する方法
未発表の株式分割を確実に予測することはできませんが、企業が株式分割を判断する要因や株式分割が予測される銘柄の特徴はあります。
例えば、1単元あたりの取引価格が50万円超となっている銘柄です。有価証券上場規程では株券の投資単位が5万円以上50万円未満になるよう努力義務が明記されているため、これに基づき、1単元当たりの取引価格が50万円超の銘柄は株式分割を行う可能性があります。
また、業績などが堅調で新興市場から東証一部や二部、または東証二部から一部などの市場変更が予測される銘柄も株式分割を行う可能性があります。
市場変更の際は上場する市場によって定められた流通株式数や時価総額などの条件をクリアする必要があります。そのため、流通株式数などが不足している企業は株式分割という方法を市場変更のための手段として考慮することがあります。
どの企業がいつ株式分割するのかを正確に予測するのは難しいのですが、株式分割を予想できると大きなリターンも期待できるため、株式分割を予測する際の判断材料の一つとして参考にしてみてください。
まとめ
株式分割が行われると、1株あたりの株価が下がるため、個人投資家にとっては購入しやすくなるほか、発表直後は値上がりしやすいなど様々なメリットをもたらしてくれます。
一方、株式分割の仕組みや株式への影響を正しく理解しておかなければ取引に役立つ情報として活用することはできません。メリット・デメリットを正しく把握した上で、株主分割を行う銘柄の取引を検討することが大切です。
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