株式投資の手法や考え方は非常に多種多様で、投資家によってスタンスも変わります。さまざまな手法を組み合わせて、自分なりの手法を作り上げることも大切ですが、株式投資初心者のうちは、損失につながる考え方・投資手法を独自に行ってしまわないよう注意することが肝心です。
そこで今回は、株式投資初心者がなるべく避けておきたい、リスクの高い投資手法を、5つに分けて紹介していきます。
目次
- 投資全体に対する考え方
- 銘柄選定に関する避けたいこと
2-1.値動きの激しい銘柄に投資
2-2.出来高の少ない銘柄に投資 - 取引に関する避けたいこと
3-1.デイトレードやスキャルピングといった短期取引
3-2.信用取引によるレバレッジ取引
3-3.信用取引による空売り - 資金管理に関する避けたいこと
4-1.一つの銘柄への集中投資
4-2.生活費や借金に手を出す - 投資判断に関する避けたいこと
5-1.損切りしない
5-2.感覚で投資を行う - まとめ
1.投資全体に対する考え方
株式投資は、インターネットで口座開設手続きと入金処理といった準備を完了するだけで行うことができます。しかし、実際に株式投資で利益を得るためには、知識と経験が必要です。
株式をはじめとした多くの金融商品には、元本保証が無いほか、価格変動リスクも生じます。つまり、利益を期待できるのと同時に大きな損失を被る可能性もあるということを覚えておきましょう。
- 元本保証なし:投資した自己資金が当初より減少する可能性もあること
- 価格変動リスク:株式投資の場合、株価が上がったり下がったりすること
なお、株式投資上級者でも損失を被ることは珍しくないため、取引数で見た勝率や利益の回数よりも合計の損益に注目することも大切です。たとえば9回利益を得ても、1回の損失で利益分を失ってしまっては、資産は増えません。いかに損失を抑えられるか、株式市場から退場せずに長く取引を続けられるか、そのために許容できる損失額についても取引のたびに考えておきましょう。
2.銘柄に関する避けたいこと
株式投資初心者の方が銘柄選定に関してもリスクの高い行動を避けられるよう、銘柄に関する注意点も確認しておきます。
2-1.値動きの激しい銘柄に投資
値動きの激しい銘柄への投資を控えることも大切です。値動きの激しい銘柄は、大きな利益を得られる側面もあります。しかし、売買タイミングや価格の予測が難しく、損失リスクも大きい銘柄です。
例えば、出来高の少ない新興株や俗に仕手株と言われる銘柄、レバレッジ投資を行うETFなどがこれに当たります。特に短期的な値動きについては経験豊富な投資家でも予測が難しく、初心者のうちは投資に的確なタイミングを掴むのは難しいといえます。
また、大きな含み損が発生した場合、どうしても恐怖心から損切り(損失を少しでも抑えるために売却すること)をしたくなるのが投資家の心理です。初心者のうちは、含み損が発生した状況で適切な売却のタイミングを図るのも難易度が高いため、一時的に損失が発生しても、中長期的には反転して利益を期待できるという自信が付くまでは、やみくもに値動きの激しい銘柄を購入するのは控えたほうが賢明です。
2-2.出来高の少ない銘柄に投資
株式投資を行う時は、出来高の少ない銘柄を選ばないようにしましょう。出来高とは、買いと売りが成立した数量を示したもので、各銘柄の概要ページ・チャート画面などに記載されています。
そして出来高の少ない銘柄は、株式を購入したい人・売りたい人も少なく、希望のタイミングで売買できない傾向があります。加えて先述のように短期的に大きな値動きをする傾向もあるため、リスクが高く値動きが読みづらいといえます。
出来高を検証する1つの目安として、証券会社が公開している出来高ランキングの上位から比較検討してみるのもいいでしょう。また、板(買いと売りの数量と注文価格が並ぶ一覧表)の中に表示されている価格が連続していない場合は、その日の出来高が少ないと考えられます。
3.取引に関する避けたいこと
株式投資には空売りやレバレッジ取引を含む信用取引やナンピンなど、さまざまな売買方法・手法があります。中でも信用取引は仕組みがやや複雑でリスクも高く、初心者向きではありません。まずは現物取引の買い注文から株式投資を始めるのが基本です。
3-1.デイトレードやスキャルピングといった短期取引
株式投資は、買いと売りのスパンによって、短期取引や長期取引などに分けて考えられます。売買スパンによる定義は、例えば以下の通りです(人により具体的な定義は異なりますが、本記事では下記の定義を用います)。
- スキャルピング:数秒~数分で1回の売買を完了させることを繰り返し行う
- デイトレード:数十分~数時間の間隔で、その日のうちに売買を完了させる
- スイングトレード:数日~数週間に1回の売買を完了させる
- 長期保有:1年以上株式を保有すること
- 超長期保有:10年以上株式を保有すること
中でも初心者はスキャルピング・デイトレードといった、短期取引は避けるのが賢明です。その大きな理由は、売買タイミングの判断が難しいことと、専業トレーダーが多く、総合的に見て難易度の高い相場といえるからです。また、平日の取引時間は(9:00~11:30、12:00~15:00)常にパソコンの前で準備しなくてはいけないため、平日勤務の方や家事・育児で忙しい方には適していません。
3-2.信用取引によるレバレッジ取引
信用取引とは、自己資金などを担保に証券会社から資金もしくは株式を借りて、株式投資を行う取引方式のことです。そして信用取引では、自己資金の数倍の倍率をかけて取引ができる「レバレッジ取引」も選択できます。
レバレッジ取引を上手く活用できれば、自己資金以上の取引および利益を得ることが可能です。しかし、状況によっては大きな損失を被るため、注意が必要です。
特に初心者のうちは損切りのタイミングや投資判断の基準なども十分に定まってはいないと想定されるため、レバレッジ取引によるメリットよりもリスクの方が強い影響を及ぼす側面もあります。
1回のレバレッジ取引で大きな損失を出して市場から退場となる可能性もあるため、初心者は避けるのが賢明です。
3-3.信用取引による空売り
信用取引では、証券会社から借りた株を売ることから入る注文方法である空売りと呼ばれる注文方法も選択できます。最初に入れた売り注文よりも安い価格で買い注文が約定することで利益を得られる仕組みです。
下落相場で利益を得られる注文方法のため、積極的に活用したいと考える方もいると思いますが、空売りもリスクの高い取引方法です。なぜなら株式は、価格下落と違い、価格上昇には上限がないためです。
- 株価が下落した場合:どの銘柄も下限は0円
- 株価が上昇した場合:理論上、価格上昇に限界がない
株価が下落した場合は0円よりも下がることはありませんが、上昇に限界はありません。空売りでレバレッジをきかせた取引を行ってしまうと、思いも寄らないイベントなどで資金を一気に失うリスクがあります。
また、信用取引では損失が拡大した際、強制的に損切りが行われる「ロスカット」や、証拠金の追加を求められること(追証)があります。資金が底をついたり、最悪の場合は生活費などを取り崩さざるを得ない状況に陥ることもあるため、取引には慎重にならなければなりません。
4.資金管理に関する避けたいこと
株式投資を始める時は、無理のない範囲で資金を準備、投資するのが原則です。しかし、中には利益を優先するあまり、やってはいけない方法で資金を集めてしまう可能性もあります。
資金管理に関して悩んでいる方は、特に確認してみてください。
4-1.1つの銘柄への集中投資してしまう
1つの銘柄に絞って投資を行うのは、特にハイリスクな行動です。
株価は、予測に反した動きを見せることがあり、一気に含み損が拡大する可能性もあります。そのため、価格変動リスクを軽減するための分散投資が株式投資における基本的な選択肢の一つとなります。分散投資とは5銘柄や10銘柄など複数の株式に投資を行い、1つの銘柄で損失が発生しても他の銘柄で得た利益でカバーできるようにする手法のことです。
1つの銘柄のみに投資をすると、その企業の業績や市場の反応により、資産全体の価格変動リスクが大きくなります。一方、異なる業界の複数銘柄に分散投資を行えば、大きく資産価格が上下する心配は少なくなります。株式投資や企業経営に精通し、自信をもって伸びる銘柄を選択できるようになるまでは、1つや2つといった極端に少ない銘柄への集中投資は避けるのが無難です。
自己資金は大切に扱い、少しでも損失を抑えられるような投資手法・資金管理を覚えましょう。
4-2.生活費や借金に手を出す
株式投資を始めるためには、資金を準備しなければいけません。しかし、人によっては現時点で投資に充てられる十分な資金がない場合もあります。そのため、生活費や老後資金・借金に手を出すケースも見られますが、生活を圧迫してしまうハイリスクな行動のため、推奨できません。
節約や副業で少しずつ、無くなっても支障がない余剰資金を貯めて投資の準備を行うことが基本です。投資をすぐに始めたいという気持ちを抑えて、生活費などには手を出さないのが大切です。
5.投資判断に関する避けたいこと
最後に、投資判断に関する基本、そしてやってはいけないことを紹介します。
5-1.損切りしない
株式投資を行う方の中には、株価下落による含み損(未確定の損失)が発生しても、売却せず保有し続ける選択を取る方も存在します。しかし、損切りをしなければ損失額は拡大し、自己資金の大半を失う結果にもつながりかねません。
損切りを行うためには、ルール作りとルールを守る意識作りの2点が大切です。具体的には、損切りを行うタイミングや価格設定などに関するルールを作ります。そしてルールを守りながら取引を進められるよう、逆指値注文を利用したり、機械的に損切りができる冷静な気持ち作りを行ったりしましょう。また少額投資から始めれば心理的な負担を抑えつつ取引を行えます。
5-2.感覚で投資を行う
株式投資初心者は知識や経験が不足しているため、冷静に分析を行わず感覚に頼って購入・売却を行うことはギャンブルに等しくなります。勝率が上がらない可能性が高いことはもとより、投資家として成長に繋がらない行為でもあるため、感覚だけで取引を行うことは禁物です。
まずは株式投資における売買や分析に関する基本的な手法を学び、自身で状況が理解できる相場で、かつ余剰資金の一部でのみ投資を実践しましょう。そして判断の難しい相場や銘柄に対しては、「取引しない」という選択を積極的に検討することが大切です。この繰り返しによって株式投資の技術を少しずつ向上し、利益を出していくことを目指しましょう。
まとめ
株式投資初心者がやってはいけない投資手法、リスクの高い行動は複数あるため、今回の記事も参考に、慎重に取引を行うことから始めましょう。特に資金管理に関しては、取引を継続するためには重要なポイントです。
他にも信用取引の仕組みを理解しないうちに始めてしまうと、大きな損失を被る可能性もあります。そのため信用取引ではなく、現物取引から投資を始めるのも大切です。
まずは株式投資に必要な資金作りやルール作り、投資手法の基礎を学ぶことから始めてみましょう。
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菊地 祥
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