ソーシャルレンディング業界が過去に受けた金融庁指導まとめ

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ソーシャルレンディング投資は投資後の売買取引の作業がいらず、年間5%前後の利回りが得られる投資手法です。しかし、数年前には数々のソーシャルレンディング会社が行政処分を受ける不祥事が発生していました。

ソーシャルレンディング投資を検討するのであれば、これらの行政処分からソーシャルレンディングにはどのようなリスクがあるのか、どのような点に注意すべきかを知っておくことが大切です。

そこで今回は、過去にソーシャルレンディング会社を受けた行政処分の内容、なぜ行政処分を受けたのか、どのようにソーシャルレンディング業界が変わっていったのか、説明していきます。

目次

  1. 1.金融庁からのソーシャルレンディング事業者への通達内容
  2. 2.過去に行政処分を受けたソーシャルレンディング会社と事例
    2-1.maneoマーケット
    2-2.グリーンインフラレンディング
    2-3.ラッキーバンク
    2-4.みんなのクレジット
    2-5.エーアイトラスト
    2-6.クラウドバンク
  3. ソーシャルレンディング業界における改善点
  4. 事業者リスクを回避するために投資家はどうするべき?
  5. まとめ

1.金融庁からのソーシャルレンディング事業者への通達内容

過去のソーシャルレンディングの不祥事を経て、金融庁のホームページには以下のような記載があります。

II 行政処分について
●ソーシャルレンディングの仲介を行う一部の業者において、インターネット上の募集画面で投資者に対して虚偽の表示や誤解を与える表示を行っていたほか、投資者保護上の問題が認められたことから、金融庁(財務局)では登録取消しや業務停止命令などの行政処分を行っております。

*金融庁「ソーシャルレンディングへの投資にあたってご注意ください」から引用

このように現在も金融庁が注意喚起するほど、ソーシャルレンディング会社の中には行政処分を受けるような会社が複数存在していたことが伺えます。

また、このページでは、行政処分を受けたソーシャルレンディング会社の問題点が指摘されています。

(指摘事例)
・担保設定をしていないものが存在しているにも関わらず、貸付債権が保全されているかのような誤解を与える表示
・ファンドの償還金に他のファンドの出資金が充当されている状況
・第二種金融商品取引業者の代表者が自身の借入れ返済等に出資金を使用している状況
・グループ会社の増資資金に出資金が充当されている状況
・正式な不動産鑑定評価を行ったものではなく、対外的に公表できない不動産価格をウェブサイトに掲載し、担保評価について誤解を与える表示
・ウェブサイト上の資金使途の表示と実際の資金使途が同一となっているか確認せず、事実と異なる表示のまま取得勧誘を継続した虚偽の表示
・ウェブサイトに記載した事業自体が実在しない虚偽の表示
・ファンド資金が流出しており、事業実態の確認や資金使途を把握するための管理態勢を構築していない状況

*金融庁「ソーシャルレンディングへの投資にあたってご注意ください」から引用

上記の指摘事例から、募集時に投資家に通知した内容とは異なる事業を行っていたり、投資家保護の取り組みが十分ではなかったりした点が問題視されたことが分かります。

2.過去に行政処分を受けたソーシャルレンディング会社と事例

次に、実際に行政処分が行われたソーシャルレンディング会社について見て行きましょう。

  1. maneoマーケット
  2. グリーンインフラレンディング
  3. ラッキーバンク
  4. みんなのクレジット
  5. エーアイトラスト
  6. クラウドバンク

2-1.maneoマーケット

maneoマーケットは日本国内でソーシャルレンディング事業を始めて立ち上げたソーシャルレンディング会社です。

国内最古参のソーシャルレンディング会社であり、2020年3月時点での累計募集金額の実績値は国内最大となっていました。

しかし、maneoマーケットは第二種金融商品取引業登録を行っていない会社にソーシャルレンディング用のプラットフォームを提供していました。

第二種金融商品取引業登録を行っていない会社の募集業務を代行することで、無登録でもソーシャルレンディングの資金募集を行うこと可能でした。

このような状況で、それらの会社がソーシャルレンディングのファンドを募集する際の資金の用途や、募集事業の有無を確認しておらず、結果的に投資家に対して虚偽の内容を含んだファンド募集が行われていることが発覚しました。

maneoマーケットは管理体制に不備があるとの指摘を受け、2018年7月に金融庁から行政処分を受けることとなりました。

2-2.グリーンインフラレンディング

maneoマーケットが行政処分を受けた理由の1つに、同社のプラットフォームを利用していたグリーンインフラレンディングの問題が挙げられます。

グリーンインフラレンディングでは、太陽光発電電力所やバイオマス発電電力所などの自然由来エネルギーの開発のための資金を募集していました。

しかし、投資家から集めたお金を政治家への献金のために使っていたり、自然由来エネルギー開発以外の事業に流用したりと、そもそも発電所自体が開発されていなかったなどの諸問題が発覚しました。

2-3.ラッキーバンク

2018年3月にラッキーバンクは行政処分を受けました。行政処分の内容は以下のようなものです。

  • ラッキーバンクの主な融資先にラッキーバンク社長の親族が経営する不動産会社が含まれていた。
  • 融資先の会社の財務状況は水増ししたものであり、実際は資金的に余裕のない倒産寸前の会社にも融資を行っていた。
  • 全案件に不動産担保を設定していたが、担保価値の算出は不動産鑑定士による第三者の評価ではなく、自社の独自基準であった。

このような理由により、行政処分を受けています。

ラッキーバンクは不動産の案件に担保を設定しており、貸し倒れ時の資産保全性の高いソーシャルレンディング会社であると考えられていました。

しかし、実際の担保価値は低く、貸し倒れが発生しても投資家には募集資金の3割しか返済できなかったのです。

2-4.みんなのクレジット

2017年2月に行政処分を受けたソーシャルレンディング会社が、みんなのクレジットです。
同社は、ソーシャルレンディング事業の開始から1年も経たずに行政処分を受けました。

また、2017年から2018年にかけて多発した行政処分の中でも、最初に行政処分を受けたのがみんなのクレジットです。

主な行政処分の内容は、以下のようなものです。

  • 投資家から集めた資金を社長が個人的な借金の返済に利用していた。
  • 不動産や有価証券の担保があると表示しながらも、実際には担保が設定されていなかった。
  • 投資家へ配当金や資金の返済を他のファンドで集めたお金で捻出していた。
  • 融資先の会社が債務超過損失を発生させる状態で引き続き融資を行っていた。

危険性の高い融資先への融資や、他のファンドで集めたお金を返済金や配当に充てるなどを行っており、行政処分を受ける結果となりました。

また、社長の個人的な資金流用など投資家に対する不正行為もあり、ソーシャルレンディングという事業を健全に運営して利益を分配する体制を整えていなかったのです。その結果、みんなのクレジットは投資家から訴訟を受けるに至っています。

2-5.エーアイトラスト

公共事業関係のソーシャルレンディング案件を運営していたのが、エーアイトラストが運営するソーシャルレンディングサイトのトラストレンディングです。

同社も2018年10月に行政処分を受けました。その内容は、以下のようになっています。

  • 官公庁が関与する公共事業性の高いファンドを募集したが、その実態がなかった

国が運営する公共事業関係のファンドを組成していましたが、その実態は存在せず、投資家に対して資金の返済が行われないままになっています。

現在のエーアイトラストは、第二種金融商品取引業登録を抹消され、営業停止状態に陥っています。

2-6.クラウドバンク

行政処分を受けたソーシャルレンディングサイトで、2020年の現在において唯一営業を続けているのがクラウドバンクです。

クラウドバンクは、過去2度にわたって行政処分を受けています。

2015年5月、1回目の行政処分

この行政処分では、資金の分別管理を適切に行っていないという指摘が入り、3カ月の業務停止命令という処分を受けました。

その後は金融庁の指導に適切に対応したため、大きな問題に発生しませんでした。

2017年5月、2回目の行政処分

2年後にも2度目の行政処分を受けています。こちらは手数料返還キャンペーンの手数料を投資家に還元していなかったため、行政処分を受けました。

また、投資案件において一部の投資家に対して提示した内容と違う融資を行っていたということも問題視されました。

クラウドバンクは過去2回の行政処分を受けましたが、その都度適切に対応したことで投資家の信用を損なうような事態には陥らず、案件の募集停止には至っていません。

クラウドバンクの場合、投資家に大きな損失を与えるような業務内容の不備、また、自社の利益のために詐欺行為を働かなかったことから、同社の信用を損なうような事態に発展しなかったと言えます。

3.ソーシャルレンディング業界における改善点

maneoマーケット、ラッキーバンク、みんなのクレジット、エーアイトラストなどでは、投資家が大きな損失を被る事態が頻発したため、行政処分が下されました。

ラッキーバンクやみんなのクレジットの例からわかるように、融資先の名前を伏せておくことで危険な融資先への融資が平然と行われ、結果として投資家が損失を被る事態がありました。

その結果、2019年3月に金融庁は融資先匿名化の解除に向けての方針を発表し、融資先の会社名が開示されることで投資家が融資先の名前や財務状況をチェックできるようになったのです。

ソーシャルレンディング各社は積極的に情報を開示するようになり、投資家も危険な融資先を見抜きやすくなりました。

4.事業者リスクを回避するにはどうするべき?

ソーシャルレンディング投資では、投資先のソーシャルレンディング会社が「どれだけ信頼できるのか」という視点を持ち、事業者リスクを回避することが重要です。

2008年に始まったばかりの日本のソーシャルレンディングは、発展途上の投資手法であるとも言えます。案件ごとのリスク対策だけでなく、事業者リスクへの対策として、信用できるソーシャルレンディング会社に投資することを重視しましょう。

提供元のソーシャルレンディング会社の主要株主や財政状況などを確認し、投資先として問題が無いか慎重に検討しましょう。

現在のソーシャルレンディングでどのような点に注意すべきか、下記の記事でも詳細に解説していますのでご参考下さい。

【関連記事】ソーシャルレンディング投資歴5年の私が本当に伝えたい7つのこと

まとめ

ソーシャルレンディング業界では、2017年から2018年にかけて行政処分を受ける会社が続出しました。

特に最大手のmaneoマーケットが行政処分を受けたことは、ソーシャルレンディング業界の根幹を揺るがす程の大きな衝撃を与えたと言えます。

しかし、金融庁の情報開示にあたっての匿名化の解除や、新しい投資スキームを構築したソーシャルレンディング会社の登場により、ソーシャルレンディング投資は徐々に健全化しつつあります。

過去に行政処分を受けた理由と背景をよく知り、良いソーシャルレンディング投資先を選ぶようにしましょう。

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HEDGE GUIDE 編集部 ソーシャルレンディングチーム

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