2022年7月の利上げ動向は?物価高が続くなか、景気の先行きや雇用についても解説

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2022年6月13日からの相場は、主要中銀の金融政策発表が相次ぎ、FOMCに特に注目が集まりました。

この記事では、2022年6月下旬の振り返りと、7月に向けての動向を解説します。

※本記事は6月27日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. 2022年6月上旬のマーケット振り返り
    1-1.日本
    1-2.米国
    1-3.中国
    1-4.欧州
    1-5.英国
    1-6.オーストラリア
    1-7.ニュージーランド
    1-8.カナダ
  2. 2022年7月の注目材料
    2-1.ECBフォーラム
    2-2.四半期末の為替フロー

1.2022年6月上旬のマーケット振り返り

前週の米CPIの上振れを受けて、0.75%利上げ観測が浮上し、市場では0.75%利上げを事前に織り込んだ形となりました。結果も0.75%利上げとなり、むしろパウエル議長が0.75%は異例の対応だと述べたことでUSD買いの調整が入りました。

参考:ブルームバーグ「FRB、0.75ポイント利上げで形勢一変狙うか-インフレ退治で検討へ

参考:ブルームバーグ「FOMC、75bp利上げ-7月は75か50bpの公算大とFRB議長

その他FRB以外にも各国中銀の利上げが相次ぎ、世界の株式はパンデミック以来の安値となりました。リスクオフのUSD買いが進行したものの、パウエル議長が議会証言にて米国経済の軟着陸は極めて困難との認識を示したことから、米金利が低下し、USD売り地合いとなるなど、USDの方向性が錯綜する展開となりました。

参考:ブルームバーグ「FRB議長、軟着陸「非常に困難」-景気後退の「可能性」はある

サプライズだったのがスイス中銀(SNB)でした。市場の据え置き予想に反して、0.5%の利上げを発表しました。依然としてマイナス金利ではあるものの、予想外の結果にスイスフラン(CHF)が急騰しました。

参考:ブルームバーグ「スイス中銀が07年来の利上げ、政策金利マイナス0.25%に-予想外

SNBのサプライズ利上げを受けて、日銀(BOJ)決定会合でも政策調整の思惑が高まりUSD/JPYは132円台まで下落しました。しかし強力な緩和策の継続が発表されると、一時136円台後半まで急騰しました。

参考:ブルームバーグ「日銀が緩和維持、海外中銀利上げでも独自路線継続-円乱高下

ECBはイタリア債など南欧諸国の債券の急落(利回り上昇)やドイツ債との利回り格差急拡大への対応が迫られ臨時会合を開催し、分断化対策の第一弾としてPEPPの再投資の柔軟化が打ち出されました。今後も新たな方策を策定することが表明されEURの下落が止まりました。

参考:ブルームバーグ「ECB、国債利回りの不適切な上昇に対応する新ツール開発を指示

1-1.日本

前日のSNBのサプライズ利上げで、BOJに注目が集まったものの、政策を据え置きました。

黒田総裁は現時点での金融引き締めや利上げは景気の下押し圧力になり適切でなく、日本経済は回復途上にありしっかりと支えていく必要があると指摘しました。むしろ必要があれば、躊躇なく更なる緩和をする用意があると述べました。政策再点検も現時点で必要とは考えてないとのことで、先々の政策調整についても否定した形です。

参考:ブルームバーグ「日銀が緩和維持、海外中銀利上げでも独自路線継続-円乱高下

1-2.米国

予想を上回る米CPIが発表となったものの、翌週にFOMCを控える中、既にFOMCメンバーからはブラックアウト期間中の為発言が出ない状況でした。そんな中、6月のFOMCで0.75%の利上げという観測が浮上し、米金利が急上昇しました。

6月のFOMCは10対1で0.75%の利上げを決定しました。意外にもタカ派と見られていたカンザスシティー連銀のジョージ総裁が0.5%利上げを主張しました。

注目されたDOTSは、2022年末の中央値が3.375%、2023年末が3.75%と大幅に引き上げられました。その後2024年からは徐々に利下げモードに入るという見通しです。

パウエル議長は会見で、0.75%の利上げは異例の対応と牽制しながら、7月も0.5%か0.75%の可能性に言及しました。データ次第という姿勢を強調したことで、市場の過熱した利上げ織り込みが若干剥落しました。

今回の0.75%の利上げについては5月のCPIとミシガン大消費者信頼感指数(速報)の期待インフレが想定よりも上振れたためだとしているため、今後の経済指標次第では再び0.75%の利上げの可能性は残した状態です。

参考:ブルームバーグ「FOMC、75bp利上げ-7月は75か50bpの公算大とFRB議長

5月小売りは前月比▲0.3%と5カ月ぶりに前月から減少しました。自動車など高額商品の購入が大幅に減少し、財の需要が鈍化していることを示唆しています。

イエレン米財務長官は、ガソリン税の一時停止はインフレ対策として検討に値するとの見方を示しました。

参考:ロイター「米財務長官、ガソリン税一時停止の検討支持 インフレ対策で

バイデン大統領も連邦ガソリン税の一時停止を議会に求め、業界にもより多くの石油を精製し、価格を引き下げるように要請するなど、結果として原油価格は上値が重くなってきました。

参考:ブルームバーグ「バイデン米大統領、ガソリン税一時停止の是非を今週判断へ

パウエル議長の議会証言では、今後の積極的な引き締め姿勢を強調する一方、今後のリセッションについて目指しているわけではないが可能性はあると表現しました。ソフトランディングを目標としているが非常に困難であることを認め、景気後退の可能性を事実上認めています。

参考:ブルームバーグ「FRB議長、軟着陸「非常に困難」-景気後退の「可能性」はある

1-3.中国

中国の5月月次指標は予想より強い結果となりました。小売り売上高は前年比▲6.7%と前月の▲11.1%からマイナス幅が縮小しました。

鉱工業生産は、供給制約が解消されたため、前年比+0.7%と前月の▲2.9%からプラスに転じました。

一方、不動産投資は前年比▲4.0%と前月の▲2.7%から更に悪化し、様々な刺激策にも拘わらず不動産市場の低迷は続いています。

1-4.欧州

ECBのタカ派転以降、イタリアを中心とした周辺国の金利上昇が止まらないことを受けて、6/15にECBは緊急会合を開催、PEPPの再投資分について柔軟に対応するということと、新たなツールの開発を検討することで一致しました。

参考:ブルームバーグ「ECB、国債利回りの不適切な上昇に対応する新ツール開発を指示

1-5.英国

英5月雇用統計は、雇用者数は増加したものの、失業率は悪化しました。週平均賃金は予想を下回り前年比+6.8%と前月の+7.0%から伸び率が鈍化しました。5月のCPIが+9.1%であり、追いついていません。

英政府統計局が発表したインフレ調整済みの4月の平均賃金(賞与除く)は前年比▲3.4%と2001年以来最大の落ち込みとなりました。数十年ぶりのインフレで家計の購買力が大きく落ち込んでいます。

6月BOE政策決定会合は政策金利を0.25%引き上げて1.25%としました。今回は、引き上げ幅について幅広く予想が分かれていたものの、6人が0.25%、3人が0.5%を主張しました。

声明文では、インフレ見通しについて、10月の電気・ガスの再値上げを見越して10月に11%をやや上回るとしました。5月時点では第4Qに10%をやや上回るとしていたため、物価の想定を更に引き上げた形です。

しかし、今後の政策方針については必要なら強力な対応を取ると大幅利上げに含みを持たせつつも、政策は「経済見通しや物価についての評価次第」と、前回の「引き締めが適当」という表現からより柔軟に対応する構えを見せており、インフレによる個人消費減速懸念も滲ませています。

GDP見通しについては、第2Qには早くも▲0.3%のマイナス成長を予想しています。ベイリー総裁が、景気を過剰に冷やさずにインフレを抑制するには「narrow path」と表現しているように、金融政策運営は厳しいものになっていきそうです。

参考:ブルームバーグ「英中銀、政策金利を1.25%に引き上げ-必要ならより大きな動きも

BOEチーフエコノミストのピル氏はインフレ抑制の為には成長を犠牲にする用意があると、先日のFRBパウエル議長と同じような主旨の発言をしました。

参考:ブルームバーグ「英中銀チーフエコノミスト、インフレ抑制のため成長を犠牲にする用意

5月CPIは、総合指数は前年比+9.1%と予想と一致しました。コア指数は前年比+5.9%と予想を下回り、BOEの物価見通しより落ち着いた結果となりました。

このまま来月以降も落ち着いてくるようであれば、英中銀は利上げペースを0.5%に変えずに、0.25%のままでいく可能性があります。

1-6.オーストラリア

ロウRBA総裁は、今年後半にインフレ率は高い水準に上昇する可能性があるため、物価を中銀目標水準にまで抑えるべくさらなる措置を講じると述べました。インフレは年末までに7%に達し、低下するのは2023年第1Qと予想しています。

参考:ロイター「豪中銀総裁、追加利上げ示唆 75bpの可能性は低いとも指摘

豪新政権は豪厚生労働委員会に最低賃金の引き上げを申請しており、CPI上昇率の+5.1%を若干上回る5.2%に引き上げることが決定されました。

5月の雇用統計は、労働参加率が大幅に改善し、中身も正規雇用者数が増加するなど、堅調な雇用環境であることが示されました。6月に続き7月も0.5%の大幅利上げの可能性が高まっています。

しかし、ウェストパック消費者信頼感指数は昨年後半から毎月低下しており、徐々に個人消費が減速していることが気がかりです。

6月のRBA会合議事要旨は、今後の更なる引き締めが示唆されましたが、ロウ総裁の講演では7月の利上げ幅については0.25%か0.5%と市場よりも若干ハト目線で検討していることが分かりました。

1-7.ニュージーランド

第1QのGDPは予想を大幅に下回り前期比▲0.2%となりました。家計消費は増加したものの、オミクロン感染が経済活動を混乱させ生産と輸出が減少しました。

引き締めにより住宅価格は下落しているものの、実質所得の減少が今後消費を圧迫するのかを注視しましょう。

1-8.カナダ

4月小売売上高は前月比+0.9%と、堅調な雇用と家計貯蓄に支えられ個人消費は底堅く推移しています。

5月CPIは前年比+7.7%と1983年1月以来の伸びとなりました。

2.2022年7月の注目材料

2-1.ECBフォーラム

ECBが主催する討論会に米・英・欧の中銀総裁が出席します。テーマは、「急速に変化する世界の金融政策への挑戦」となっています。

中銀のインフレ退治を優先する姿勢が確認されて、成長見通しの不確実性が高まる方に投資家センチメントが向かうことが予想されます。結果として、金融市場のリスク回避傾向は続くはずであるものの、既にこのテーマについては市場は十分に織り込んだ状態の為、大きく反応はしないと予想します。

2-2.四半期末の為替フロー

四半期末を迎え、各社の予想では米株が強含むとの見方が優勢です。中には7%上昇する可能性を示唆している会社もあります。

年金基金や政府系ファンド(SWF)はポートフォリオを決まった時期にリバランスします。日本は殆どの会社が毎月末に資産のリバランスを実施するのに対して、欧米では四半期ごとに市場エクスポージャーのリバランスを行う会社も多く、四半期ごとに為替フローは増える傾向にあります。

しかし、昨今の市場の流動性は過去平均の5分の1程度に低下していると言われているため、今回の四半期末および月末リバランスは株価に大きな影響を与える可能性があります。米株の買いフローがあるのなら、指標などの材料とは関係なくリスクオンのUSD売りの展開になることもあるでしょう。

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