2022年6月米消費者信頼感指数、米5月PCEデフレータは?景況感とインフレ見通しを解説

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2022年6月現在、多少金融政策の終着点に対する思惑の違いはあるものの、世界各国の中銀の引き締めは概ね市場に織り込まれています。為替相場のメインドライバーは世界経済の景気後退懸念に対するリスクセンチメントの増減に変わりつつあります。

各国中銀は、経済の後退に目をつぶってでも徹底してインフレ退治することを主眼としています。一方で各国の最新のCPIのデータを見るとどの国もインフレは高止まり、もしくは加速しています。

CPIが各中央銀行の目標値近くまで落ち着くまでは、当面利上げサイクルが継続されるのでしょう。

今回は、景況感と物価の両方の状況を確認するために重要となる、米消費者信頼感指数とPCEデフレータついて詳しく解説していきます。

※本記事は6月27日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. 米カンファレンスボード消費者信頼感指数
    1-1.米カンファレンスボード消費者信頼感指数の概要
    1-2.5月米カンファレンスボード消費者信頼感指数の結果
    1-3.6月ミシガン大消費者信頼感指数の結果
    1-4.6月米カンファレンスボード消費者信頼感指数の予想
    1-5.指標発表後の反応予想

  2. 米5月PCEデフレータ
    2-1.PCEデフレータの概要
    2-2.前回4月PCEデフレータの内容
    2-3.5月のCPIの結果
    2-4.今回5月PCEデフレータの予想
    2-5.発表後の反応予想

1.米カンファレンスボード消費者信頼感指数

1-1.米カンファレンスボード消費者信頼感指数の概要

消費者の観点から米国経済の健全性を図る指標です。米国の民間調査会社コンファレンス・ボードが毎月、現在の景気・雇用情勢や6ヵ月後の景気・雇用情勢・家計所得の見通しについて5000世帯を対象にアンケート調査し、1985年を100として指数化したものです。

個人消費の先行指標とされ、消費者心理を反映した指数と言われます。

米国の消費者マインドを探ることのできる代表的指標として本指数以外にミシガン大消費者信頼感指数が挙げられます。この二つはサンプル数がミシガンが速報値300なのに対して、カンファレンスボードは5000です。

またミシガンはサンプル数は少ない分発表の時期が早いため、カンファレンスボードよりも先行指標として注目されます。

1-2.5月米カンファレンスボード消費者信頼感指数の結果

ミシガン大の数字がインフレ懸念を織り込んで悪化しているのに対して、カンファレンスボードの数字はまだそこまで落ち込んでいません。5月も4月よりは悪化しているとはいえ予想を上回る106.4と持ちこたえました。

1-3.6月ミシガン大消費者信頼感指数CPIの結果

参考として、6月ミシガン大学消費者信頼感指数を確認しておきます。インフレ懸念と引き締め懸念が強まり2011年以来の過去最低水準を大幅に更新し50.0となりました。

景況感の悪化による需要減が物価抑制に働くという思惑から、1年先のインフレ期待は5.3%と前月の5.4%から多少落ち着きを見せました。また、5年先のインフレ期待は、FOMCのDOTSでも見られたように将来的な景気減速とそれに伴う利下げも織り込む形となり、3.1%と前月の3.0%から上昇しました。

パウエル議長が、6月FOMCで0.75%の利上げを決定した要因の一つにミシガン大のデータを挙げていたことから、注目度は高まっています。

参考:ブルームバーグ「FOMC、75bp利上げ-7月は75か50bpの公算大とFRB議長

1-4.6月米カンファレンスボード消費者信頼感指数の予想

ミシガン大の大幅下落を受けて、6月の消費者信頼感指数の予想も100と前月の106.4から下落する予想となっています。100を下回るという予想も多く、予想の最高値でも前回の水準を下回ることから、弱い数字が出るでしょう。

1-5.指標発表後の反応予想

パウエル議長が米経済のソフトランディング(軟着陸)は非常に困難との認識を示し、インフレ抑制のための利上げが景気減速を招くことは、市場参加者の間でも浸透してきています。

参考:ブルームバーグ「FRB議長、軟着陸「非常に困難」-景気後退の「可能性」はある

問題はいつから減速するのか、もしくはどの程度の政策金利水準に到達してから減速するのか、仮に悪化した場合どれだけ悪化するか、になってきます。

現時点では、その思惑にはっきりとした市場の合意はなく、どちらかというと先日のFOMCのDOTSを元に、いずれ景気は減速するため将来的には利下げを実施し、株は持ち直すという、先の終着点を見越した、にわかリスクオンの様相を呈しています。

ただ、実際はそれ以前に色々紆余曲折があるはずです。今後は、発表される欧米の経済指標を見ながら、細かい景気の変動に対する市場の合意が形成される段階になるでしょう。

強い結果となれば、一旦景気の底は付けたため、今後のFRBの利上げのペース次第では回復する可能性があるという若干のリスクオンへの期待に繋がります。反対に弱い結果となれば、予想以上にリスクオフが早く到来し、もう一段の景気の底を見に行く展開を予想しにいくでしょう。

特に先行きは景気減速となることがほぼ確実視されていることと、直近の株が一旦反発基調になっていることから、強い結果が出た際のリスクオンのUSD売りの方が市場は大きく反応することになると予想します。

ただ、仮に強い結果となった場合、FRBとしては安心して利上げペースを加速することが可能となります。次回CPIで高水準が維持されていれば、再び0.75%の利上げを実施する可能性が高くなり、結局はUSD買いに戻ると予想します。

2.米5月PCEデフレータ

2-1.PCEデフレータの概要

米商務省が毎月末に発表している個人消費の物価動向を示す指標です。個人消費支出(Personal Consumption Expenditure)のデフレーターで、名目PCEを実質PCEで割ったものです。

消費段階での物価上昇圧力を測る尺度として用いられます。PCEデフレーターから、価格変動が激しい食品とエネルギーを除いたものを「PCEコアデフレーター」と呼び、FRBが最も重視している物価指標として知られています。

同様の指標に消費者物価指数があるものの、PCEデフレーターの方が調査対象が広いため、実際の物価動向を反映しているとされています。

2-2.前回4月PCEデフレータの結果

前年比+6.3%と3月の+6.6%からは減速しました。コアデフレータも前年比+4.9%と3月の+5.2%から減速しました。主に中古車とエネルギー、宿泊サービスが要因となっています。

しかし、エネルギー価格に関しては4月は確かに下落したものの、その後5月は3月の水準まで回復しているため、3月でピークを付けた形にはならない可能性があります。

2-3.直近5月CPIの結果

5月のCPIは予想に反して幅広い項目で上昇が加速し、前年同月比の伸び率が+8.6%と40年ぶりの上昇幅となりました。3月が+8.5%、4月が+8.3%とインフレがピークに達して落ち着き始めているとの希望的観測は打ち砕かれました。

記録的な高値で推移するガソリン価格に加え、食品とサービス分野で最大の構成要素でCPI全体の約3分の1を占める住居費の上昇にも衰えが見えません。物価高騰のもう一つの大きな要因である自動車価格については、4月からは鈍化したものの、水準的には高く消費者の生活は強く圧迫されています。

2-4.今回5月PCEデフレータの予想

PCEデフレータは前年比+6.4%と4月の+6.3%を上回る予想となっています。予想の分布を見てもどちらかというと上振れしています。

前月比でも+0.7%へ再び加速するとみられ、インフレ警戒心はなくなりそうもありません。

2-5.指標発表後の反応予想

直近の5月のCPIが予想を上振れたことから、PCEデフレータも加速する予想が多くなっています。またパウエル議長の議会証言でもあったように、インフレが安定的に収まるまで余程のことがない限りは引き締めを続けるということなので、予想を大幅に下回った時の方が、市場の反応は大きくなりそうです。

参考:ブルームバーグ「FRB議長、軟着陸「非常に困難」-景気後退の「可能性」はある

2022年6月現在、相場は既に将来的な金利引き下げとそれに伴う景気回復を見にいっています。今回の結果が予想を下回れば、金利引き下げ時期が早まる可能性についても織り込まれる可能性があります。

次回CPIが出るまでは金利低下とリスクオンの両面からのUSD売りの展開になると予想します。

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HEDGE GUIDE 編集部 FXチーム

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