PO株(公募増資・売出)の主な事例と結果は?参加のポイントも

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新型コロナウイルスによる巣ごもり需要や世界的な財政出動により、上場企業の公募増資や売出による資金調達が活発化する中、成長性の高い企業の株を割安で購入できるPO株に注目している方もいるのではないでしょうか。

この記事では、PO株のメリット・デメリット、主な事例と結果について詳しくご紹介します。PO株の特徴や参加のポイントを知りたい方は参考にしてみてください。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は、2022年3月14日の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。

目次

  1. PO株とは
  2. PO株のメリット・デメリット
    2-1.割引価格で購入可能
    2-2.将来的な株価上昇が期待できる
    2-3.情報収集がしやすい
    2-4.購入手数料がかからない証券会社が多い
    2-5.短期的な値下がりリスクがある
    2-6.株価上昇が期待できないケースもある
  3. PO株の主な事例と結果
  4. PO株の始め方
  5. まとめ

1 PO株とは

PO(Public Offering)とは、上場企業が株式を新たに発行もしくはすでに発行された株式を投資家に取得させることを指します。また、このような方法で募集がかけられている株式を「PO株」と言います。

IPO(Initial Public Offering)が未上場企業の株式を投資家に取得させるのに対して、POはすでに上場している企業が追加の資金調達や大株主の保有株売却等を目的としている点が大きく異なります。

POには、おもに「公募増資」と「売出」という2つの方法があります。公募増資とは、資金調達を目的に株式を新たに発行することで、調達した資金はおもに設備投資や事業拡大等に使われます。

一方、売出は、大株主が株を売却する際に一般投資家に取得してもらうことです。大株主が株を売却すると、市場に大きな影響を与えかねないので、混乱を回避するため事前に売出を行います。

なお、PO株は申し込みをした上、抽選が行われる仕組みとなっているため、誰でも購入できるわけではありません。しかし、最近はネット証券での取扱いも増えているため、手軽に購入できるようになっています。また、PO株の価格は決まっておらず、基準日の終値から数えて1~5%ほど割引されているのも特徴です。

2 PO株のメリット・デメリット

PO株は投資家にとって多くのメリットがある一方、デメリットもあります。PO株は一般的に取引される株とは違い、企業の動向や市場の反応など、注意したいポイントがあるため、それらを理解した上で取引することが大切です。

2-1 割引価格で購入可能

PO株は市場価格より安く購入できるのが特徴です。ディスカウント率(割引率)は、ブックビルディング方式によって決定されます。ブックビルディング方式とは、新株発行において、仮条件を投資家に提示し、投資家が提示価格でどれくらい買いたいかなどのニーズを調べた後、新株の価格決定を行う方法です。

ディスカウント率の決定後は、抽選によって購入者を決めます。ディスカウント率は1~5%程度で、割引価格で株を取得することが可能になります。

過去のPO事例では、2020年11月18日に日本航空(公募増資)が3.04%割引し、2020年11月30日にリクルートホールディングス(売出)は3.02%割引しています。

2-2 将来的な株価上昇が期待できる

POで調達した資金は、設備投資や新事業及び新製品等の開発に充てられるケースが多く、成長する可能性が見込まれれば、将来的な株価上昇を期待できます。また、POを行った銘柄の中には、将来的に「市場替」や「指定替(昇格)」を実施するケースもあるため、株価上昇の追い風となります。

ただし、必ずしもPOで調達した資金が設備投資や新事業及び新製品等の開発に使われるわけではなく、調達資金の用途は様々です。そのため、企業成長および中長期的な株価上昇に繋がる保証はありません。

そのため、PO株投資を行う際は、調達した資金は何に使うのか、設備投資に使うならどの程度の成長が見込めるのかなど、慎重な判断が必要になる一方、POの目的やその効果を理解できれば、中長期目線で大きなリターンを狙うことも可能です。

2-3 情報収集がしやすい

IPO株の場合、未上場企業の情報収集は難しい一方、PO株の場合、上場企業の業績等は財務諸表などで確認できるため、情報収集をしやすいのも特徴です。

ただし、PO株投資では、調達した資金の用途と効果を慎重に判断しなければならず、その目的や効果をしっかりと理解できなければ、リスクの高い投資にもなり得るため、留意しておきましょう。

2-4 購入手数料のかからない証券会社もある

通常、株式を取引する際には購入手数料がかかる一方、PO株取引では購入手数料のかからない証券会社もあります。中でもPO株を取り扱っている主要証券会社のSBI証券、楽天証券、SMBC日興証券では、購入手数料無料でPO株を取引することができます。

2-5 短期的な値下がりリスクがある

公募増資を行った場合、発行済株式数が増加することで株の希薄化が発生し、1株あたり利益が少なくなるため、短期的に値下がりする可能性が高まります。

一方、売出の場合、公募増資と異なり株を新規発行するわけではないので、株価の希薄化は発生しません。しかし、大口の売りというマイナスな材料と売却された株が市場に放出されるため、良くも悪くも大きく変動する可能性があり、最悪の場合、大幅下落となる場合もあるので、既存株主にとっては悪材料となります。

しかし、底値で拾えるかは別問題として、PO実施で株が急落し、割安状態かつ割引価格で購入できるため、その株を新規購入する方にとってはプラスに捉えることもできます。

なお、PO実施で売り圧力が強まる上記の例とは異なり、銘柄によっては、POを実施した銘柄の受渡期日始値が発行価格を上回り含み益になるケースもあります。

例えば、リート(不動産投資信託)銘柄は、POを行った分、その資金で物件を取得するケースが多く、受渡日の値下がりは限定的となり、始値損益率がプラスになりやすい傾向です。そのため、過去にPOを実施したリート銘柄の場合、POの受渡期日当日に値下がりするケースはそこまで多くありません。

上記のような特殊なケースを除き、PO株投資は、短期的な値下がりと企業が成果を出すまでの時間を考慮した長期目線の運用が必要です。

2-6 株価上昇が期待できないケースもある

POによる調達資金は設備投資や新事業及び新製品等の開発などに充てられるケースもありますが、株主が過剰投資と判断すれば、株価上昇の期待は薄くなります。

また、前向きな目的で行われるPOも多くある一方、資金不足にあえぐ企業が資金確保を目的に、POを行っているケースもあります。

例えば、2020年以降のコロナ禍で打撃を受けた産業である外食チェーンや旅行関連企業は、相次いでPOを行っています。このような企業が行うPOは、業績を伸ばすためというよりは、業績を悪化させないため、もしくは立て直すためであり、将来の事業拡大を見据えた設備投資とは目的が違うため、将来的な株価上昇を期待できないケースとなります。

3 PO株の主な事例と結果

以下では、過去に実施されたPOの主な事例と結果を確認してみましょう。

会社名 PO種類 PO発表日 株式交付日 発行価格 調達金額 割引率
アサヒグループHD 増資 2020年8月25日 2020年9月15日 3,357円 1,575億円 -3.00%
ソフトバンク 売出 2020年8月28日 2020年9月23日 1,205円 -3.02%
日本航空 増資 2020年11月6日 2020年11月26日 1,916円 1,826億円 -3.04%
ANA HD 増資 2020年11月27日 2020年12月15日 2,286円 2,887億円 -3.01%
リクルートHD 売出 2020年11月30日 2020年12月4日 3,947円   ― -3.02%
西日本旅客鉄道 増資 2021年9月1日 2021年9月21日 4,996円 2,786億円 -3.01%

アサヒグループホールディングスは、2020年9月15日に公募増資を実施しています。調達金額はおよそ1,575億円となっており、調達用途は、膨らんだ有利子負債の返済や自己資本増加による財務の健全化です。PO発表直後、2%超の下落となっており、2022年3月14日終値は4,108円と発行価格より751円の上昇となっています。

ソフトバンクは、2020年9月23日に売出を実施しています。売却総額は、1兆2000億円超となっており、売却は親会社であるソフトバンクグループによるものです。PO発表直後に3%近い下落となっており、2022年3月14日終値は1,448円と発行価格より243円の上昇となっています。

日本航空は、2020年11月26日に公募増資を実施しています。調達金額はおよそ1,826億円となっており、調達用途は、航空機などの購入や有利子負債の返済です。PO発表直後に10.9%の下落となっており、2022年3月14日終値は2,071円と発行価格より155円の上昇となっています。

ANAホールディングスは、2020年12月15日に公募増資を実施しています。調達金額はおよそ2,887億円となっており、調達用途は、航空機などの購入や有利子負債の返済です。PO発表直後に1.4%下落となっており、2022年3月14日終値は2,401円と発行価格より115円の上昇となっています。

リクルートホールディングスは、2020年12月4日に売出を実施しています。売却規模は約9,472万株となっています。PO発表直後におよそ2.8%の下落となっており、2022年3月14日終値は4,597円と発行価格より650円の上昇となっています。

西日本旅客鉄道は、2021年9月21日に公募を実施しています。調達金額はおよそ2,786億円となっており、調達用途は財務基盤の立て直しや機器の導入等です。PO発表直後に13%超の下落となっており、2022年3月14日終値は5,060円と発行価格より64円の上昇となっています。

4 PO株の始め方

PO株を始めるには、PO株取引が行える証券会社の口座を開設した後、POの申込みを行う必要があります。そして購入申込期間内に目論見書の確認を行い、ブックビルディング期間に希望の割引率で申告を行います。例えば、割引率の幅が3.0%~6.0%であれば、4.0%などと入力します。

需要申告が完了したら、公募および売出価格が決定します。当選すれば、当選通知が送られ、実際にPO株を購入することができます。なお、需要申告が上限に達したら、申込みが打ち切られ、株式交付日が早まる場合もあります。

まとめ

PO株は株式市場よりも割引価格で購入できる一方、企業は公募増資等で調達した資金で新製品開発や事業拡大に取り組むことが可能になるため、将来的な株価上昇が期待できるようになります。ただし、PO実施は必ずしも株価上昇に寄与するとは限らず、短期的に下落しやすいなどのリスクにも注意が必要です。

PO株に関心がある方は、PO株の事例と結果を参考に、メリット・デメリットをしっかり把握した上で、慎重に検討してみてください。

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HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チーム

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